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ゴルフスタジアム堀社長が「社員ゼロ」の近況を語る 前編

 2017/07/12 注目記事
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ゴルフ界では今、「ゴルフスタジアム問題」が注目されている。ITを駆使してゴルフのマッチングビジネスを目指したゴルフスタジアムが、零細のゴルフ練習場や個人事業主のレッスンプロに対してホームページ(HP)を制作・提供し、併せてスイング診断ソフトのモーションアナライザー(MA)を数百万円で販売した。

ゴルフスタジアムは契約者に対して、個々のHPに掲載されるバナー広告料を支払い、契約者はその収益をMAの購入代金に充て、月々の返済を相殺する。いわば、契約者はタダで自分のHPをもらえるということで、契約者が相次いだ。

ところが、広告不況の影響もあり、ゴルフスタジアムは契約者のHPに掲載する広告費を払えなくなった。支払いが止まりはじめたのが今年2月で、契約者には数百万円の借金が残った。その被害者は1000人超、負債総額40億円規模と見られ、多くのレッスンプロは自己破産の影に怯えている。

事態を複雑にしているのは、契約者は広告契約をゴルフスタジアムと交わし、ソフト代金の返済契約を信販会社(8社)と結んでいること。双方の契約は別々であり、ゴルフスタジアムの経営状況とは関係なく、ローン契約は継続される。「被害者の会」を結成した西村國彦弁護士(さくら共同法律事務所)は、

「これだけの被害者を出すのは社会問題。責任はゴルフスタジアムだけではなく、審査を簡単に通した信販会社にもあると見られ、被害者の債務不存在と支払い済み代金の返還を目指して戦っていく」――。

その渦中の6月15日、本誌はゴルフスタジアムの堀新(ほり・あらた)社長にインタビューを行った。一般ゴルファーにしてみれば、通っているスクールのレッスンプロが「自己破産者」に陥ったり、スクール自体が閉鎖に追い込まれる可能性もあるなど、影響は決して軽微ではない。

なぜ、こんなことになってしまったのか? 堀社長は、

「わたしの拡大主義が招いた失敗」

と猛省するが、背景にはゴルフ業界が抱える負の部分があったことも無視できない。そこで本稿は、ゴルフスタジアムの事業構造に焦点を当て、堀社長が描いた野望の挫折を紐解くことで、再発の防止に努めたい。

なお、記事は「月刊ゴルフ用品界」7月号に掲載された内容の要約で、取材日は6月15日。文章量が長いので、前・後編に分けて掲載する。

拡大する市場しか知らなかった

本誌の取材記事は、掲載前のチェックをお断りしています。

「はい、承知しております」

で、顔写真はNGですか?

「申し訳ございません。個人的にはあまり気にしていませんが、家族がおりますので・・。騙したとか詐欺とか言われますと、我々はまったくそう思っておりませんが、やはり周囲の視線が・・」

了解です。それではまず、業界の皆さんに一言どうぞ。

「お騒がせして大変申し訳ございません。弊社としては1153件(練習場478、プロ334、ショップ・工房314、その他27名)のお客様に対して誠意をもって対応しておりますので、業界の皆様という意味では、それ以外に言葉もございません」

今回の件は様々な意味でゴルフ界の脆弱性を表している。この取材はその検証が目的ですが、堀さんの人間性が引き起こした面もあるでしょう。そこでまず、堀さんの経歴を教えてください。

「わかりました。わたしはそもそも、通信関連商材を扱う商社(ネクサス)で働いておりました。二十歳の頃にアルバイトで入社して、当時は10名ほどの会社がピークで2000名規模になるなど、業界に勢いがあったのです。

いわゆる新電電のときでして、市外電話が安くなるとか携帯電話が自由化されて、ソフトバンクも参入しました。その中でケータイ・ショップを200~300店舗管理したり、ケータイ・メールに広告を載せて売ったりと、すべてが伸び盛りだったわけです」

銀座で豪遊していた?

「いえいえ、そういうことではありませんが・・。ただ、イケイケの業界で育ちましたし、これは本当に反省点ですが、わたしは拡大するマーケットでしか働いたことがないんですね。とにかく広げると評価が上がり、収入が増えて会社も潤う」

その感覚で「ゴルフ」に来た。

「はい。ゴルフ業界は単価も総額も人口も、すべて半減する中で、ゴルフスタジアムを引き受けたときは年商2億が、昨年は30億まで拡大しました」

無理をして広げた?

「おっしゃる通りです。無理をして進めたことが大きな反省点ですし、このような結果になったのは自分のリードが間違っていた。そのことを本当に反省しています」

ネットレッスンという新境地

ゴルフスタジアムの発祥は何ですか。

「元はアソボウズという野球のデータ解析をする会社があって、動作解析が主業務ですが、ここにネクサスが出資をして、アソボウズからスピンアウトする形でGSが立ち上がります。

わたしがMBOでオーナーになったのは3期目からで、売上が2億で赤字が1億7000万というボロボロの状態でしたが、ウェブを上手く絡ませたら復活できると考えました。ちょうどその頃、光通信がネクサスを吸収する形になって、十数年仕えたオーナーも退任された。そのことも転機になっています」

ゴルフスタジアムの主業務はゴルフスイングの解析ソフトですね。

「最初はソフトではなく『モーションアナライザー』(MA)という解析機が中心でした。筐体があって、これを練習場に設置すればコインが入ってくるという目論見でしたが、不人気で埃を被ってしまった。その後iPadなどがドンドン出てきて、筐体や専用カメラ、そのための専用ケーブルも不要になります。

という流れで、筐体からソフトウエア重視の方向性に変わっていきます。以前は撮影したスイングをCD-ROMに焼いてPCで見ていましたが、ウェブにアップロードすれば簡単にスイング解析できる。そこからホームページ(HP)の制作や運営に注力するようになったという経緯です」

スイング解析ソフトを普及・拡販するには「受画面」となるHPが必要だった。それが今回の話、レッスンプロにHPを大量供給した理由でしょうが、数百万円のソフトは桁外れに高い。

「皆さんそうおっしゃいますが、ソフトですからね、1000万円のCADだってあるし、開発コストと我々の売りたい値段、そしてお客様が納得した価格です。もっといえばローンやリース、クレジットがつかないと成り立たないビジネスなので、」

それは後で聞きましょう。「MA」はどんなソフトですか。

「純粋にスイングの解析ソフトウエアです。2画面で撮って、ラインを引いてスイングプレーンと比較したり、ヘッドスピードの計測やプロと自分のスイングも横並びで見られます。

カメラはスマホやデジカメで対応でき、その動画をレッスンプロに送ってレポートをもらうなどのやり取りもできる。これが『MA』の活用法のひとつです」

それによってインターネットレッスンを広げようとした。

「おっしゃる通りで、この画面がないとレッスンできません」

普及させるためにPGA(日本プロゴルフ協会)と折衝した経緯もありますね。

「10年近く前になるでしょうか。ネットレッスンは、たとえば福岡のプロが東京のゴルファーに対応できるなどの利点があるため、PGA会員の職域拡大につながるので、一緒に広げましょうという話でしたが、結局は実現せずに終わりました。

システムを使えるプロが少なくて、彼らにITスキルを求めたことが普及の障害となりましたが、これとは別にレッスン料金が2000~3000円と安いんですね。プロが慣れない手つきでパチコチやっても、商売的には採算が取れない。これも頓挫した大きな理由でしょう」

レッスンプロは「先生」じゃない

このようなソフト事業とは別に、御社はスクール事業も手掛けている。ITに注力する半面、ベタなレッスンにも意欲的だった。

「あのぉ、わたしがゴルフ業界に興味をもったのは、そもそも練習場の在り方でした。今、無茶苦茶足を引っ張っているわたしが言うのもアレですが、練習場は装置産業的な運営の中できちんと接客できていません。ほかの業界では頭を下げても来てくれないような富裕層や社会的地位の方が、勝手に来てくれるのに放置している。

レッスンプロが『先生』と呼ばれ、お客様が『生徒』や『弟子』になる関係は是正すべきだし、これによる機会損失はもの凄く大きいので、『あなたは先生じゃないですよ。接客業です』と意識改革を促したのです。ピーク時には50カ所ほど運営しました」

FCがメインですよね。

「いえ、すべて直営です。インドアではなく、練習場で5~6打席借りるスクールで、社員のプロを教育して送り込みました。同時に雇用環境も見直しています。練習場が一人のプロを丸々1週間抱えるのは大変なので、たとえば一人のプロを3日と2日に分けて違う練習場に派遣するとか」

いわゆる「空き枠」ビジネスで、ITの進化で可能になった。

「おっしゃる通りです。そもそも当社がゴルフ業界でやりたかったのは、大手がしないサービスですね。中小の小や零細企業、個人事業主ができないことを、我々がまとめて結びつける。

この業界は個々のネットワークが希薄で、個人的には同業者で知り合いかもしれないけれど、その人脈がきちんとマネタイズされていないわけです。その機会損失を、当社のネットワークで解決できると考えました」

スクール事業は成功した?

「いえ、結局7~8カ所まで縮小しました。プロを教育して派遣しても、独立して練習場と一緒に顧客をもっていってしまうとか、お金の問題もありましたから」

お金の問題というのは、申告しないで懐に入れるとか?

「ですね。生徒数がずう~っと25名で変わらない、調査したらもっといたとか(苦笑)。また、集金したお金が車上荒らしに遭ったという話もあって、クルマの鍵が壊されてなくてキャディバッグもそのままなのに、お金だけ盗まれたと」

証拠はないが胡散臭いと。だけど、それは御社の管理上の問題ですね。

「はい、魔が差す仕組みを放置していたことが問題なので、回収方法は口座引き落としかクレジットカードしか認めない、あるいは練習場のレジを使わせてくださいと。それで解決できるのに、ぼくの悪癖で拡大を急ぎ、『現金取引でいいから広げてしまえ』と。その反省から、一度絞り込んで環境を整え、再度広げようと思った矢先に今回の問題が起きたのです」=つづく=        (片山哲郎)

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ライター紹介 ライター一覧

片山哲郎

片山哲郎

1962年8月3日生まれ、東京都出身。月刊ゴルフ用品界を発行する株式会社ゴルフ用品界社の代表取締役社長として、ゴルフ用品産業の動向を中心に取材活動を行っている。ゴルフ市場活性化委員会(GMAC)のマーケティング委員も務める。2014年4月、日本ゴルフジャーナリスト協会(JGJA)会長へ就任。信条は「人の至福は健康で長生きすることであり、これに寄与できるゴルフは『善』である。善なるゴルフ産業が健全発展するために正確、迅速、考察、提言を込めた原稿を書く」――。

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