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  • テーラーメイドの買収先決定で直撃取材 デイビッド・エイブルスCEOの心中は?

    片山哲郎
    1962年8月3日生れ。月刊誌GEW(ゴルフ・エコノミック・ワールド)を発行する(株)ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長。正確、迅速、考察、提言を込めた記事でゴルフ産業の多様化と発展目指す。
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    アディダスは5月11日、米ニューヨークの投資会社KPSキャピタルパートナーズに4億2500万ドル(約467億5000万円)で傘下のテーラーメイドゴルフを売却し、今秋を目処に新体制でスタートを切ることを決めた。本誌は5月19日、テーラーメイドのデイビッド・エイブルスCEOに電話取材を行い、その一問一答を5月22日にアップしたが、割愛した部分が多かったので改めて全文を公開する。 テーラーメイドは自分でクラブを調整できる可変機能や「白いヘッド」に先鞭をつけるなど、革新的なクラブを好むゴルファーに人気がある。最盛期にはテーラーメイド・アディダスゴルフで1500億円規模の売上を誇ったが、過去数年は苦境に喘いでいた。大量供給と在庫過多で安売りの目玉にされるなど、収益力を大幅に下げ、親会社のアディダスは、世界的なゴルフ人口の減少もあり同社を切り離した格好だ。 日本のテーラーメイドファンも「いいクラブだけど、すぐに安売りされる」と渋い表情をするゴルファーが少なくなかった。 テーラーメイドを買収したKPSは、成熟期の未上場企業に投資するプライベートエクイティが主業務で、運用資産は約53億ドル。投資対象は製造業が中心で、多くのメーカーを再建した実績がある。その一方、企業規模3兆円のナイキがゴルフギアから撤退し、2兆円超のアディダスがテーラーメイドを売却したことで、ゴルフ市場の将来を不安視するムキも多い。 しかし、エイブルスCEOは「大丈夫です。KPSは市場の活性化策にも投資するでしょう」と明言した。同氏は長らくテーラーメイドの営業畑を歩んだ人物で、2015年3月にCEOへ就任、今回の売却にも深く関与してきた。いわばファンド系の考え方ではなく、ゴルフ事業への想いが強い。 以下、国際電話での一問一答を詳述しよう。

    買収希望は「かなり沢山」あった

    デイビッド・エイブルスCEO
    アディダスが売却を発表してから丸1年。決定に時間が掛かった理由は何ですか。 「理由は、売却の準備に十分な時間を費やしたからです。この間、候補企業は金融・投資会社や事業会社などかなりの数がありましたが、我々は(1)テーラーメイドの将来に投資できる資金力がある、(2)当社の戦略を理解し共鳴してくれる、(3)我々をリスペクトしてくれるという3点を重視して、時間を掛けて絞り込んだ。 遅いという印象はあるかもしれませんが、我々にとってスピード感は重要ではなかったのです。結果、KPSとなったことにアディダス、テーラーメイドの関係者全員が満足しています」 KPSは未上場会社に投資して、株式上場や第三者譲渡で収益をあげるプライベートエクィティだから、いずれ再度、売却されることもある? 「その点については現状、わたしの口から何も言えませんが、テーラーメイドにしっかり投資することは確認しています。当社の戦略や方向性についても、100%の相互理解が得られたと確信しています」 KPSは新会社を設立したが、これがホールディング会社となって経営と事業を分離するのか。あるいは、KPSから財務担当役員が乗り込んできて、経営の舵取りをしていくのか。 「違います。あくまで我々が経営と事業の全権を掌握するので、KPSのメンバーが当社の枢要な地位に就いて経営に関わることはありません。 当社はKPS傘下企業の一部に位置づけられ、都度、KPSと綿密に話し合うものの、KPSから財務担当役員が派遣されることもないでしょう」 つまり、KPSの役割は御社の将来に投資すること。 「その通り。KPSの主業務は当社の成長に向けた投資であり、将来のキャピタルゲインを生み出すことです。具体的な成長戦略は(1)すべてのゴルファーに役立つ高性能な商品開発、(2)世界一流のプレーヤーに我々の製品が選ばれること、(3)すべての品目に注力すること、(4)取引先との協力で最適な商品サイクルと最適な発売時期を徹底する。この4点が骨子となります」 KPSからの投資は、御社の成長戦略だけではなく、市場の活性化にも投じてもらいたい。大手企業は、市場のパイが縮小すると直接的な影響を受ける。その意味でも市場への投資は必要でしょう。 「カタヤマさん、その意見には全面的に同意します! 実際、KPSもそのように考えており、ジュニアプログラムへの投資をはじめ、ゴルフ体験プログラムの構築や優れた製品開発でゴルファーに楽しんでもらうための投資など、新規ゴルファー創造への投資には積極的に取り組みます」

    同じ失敗は二度と繰り返さない

    テーラーメイドは過去、過剰なシェア主義に走って失敗した。市場には御社の商品が溢れ、安売りの対象となって、日本でも安売り競争が勃発した。このことに対する反省は? 「もちろん、そこから多くを学びました。ですから、我々は今後、誰もが素晴らしいと認める製品が完成するまでニューモデルを出しません。 在庫状況をきちんと分析し、供給量と在庫の適正値を見極めるので、過去のようなことは絶対にないでしょう。当社は、以前のテーラーメイドとはまったく違った会社になっています」 テーラーメイドの姉妹ブランドであるアダムスゴルフとアシュワースの今後についてはどうですか。さらに、日本のテーラーメイドは組織面を含め、今後、大幅なテコ入れはあるのか。 「まず、最初の質問についてです。我々は現在、テーラーメイドに集中していますが、アダムスとアシュワースについては3つの方法が考えられます。再投資による強化、他社とのライセンス契約、そして売却です。 現在はいずれも白紙ですが、KPSとアディダスが最終の詰めをしており、今秋を目処に結論を固める予定です。個人的な見解としては、年末までにハッキリさせたいですね。 次に、日本のテーラーメイドについてですが、組織面を含めたテコ入れはまったく考えていません。現状、『M』シリーズが好調だし、日本モデルの『グローレ』やボールを含めた全商品が、理想的なポジションで受け入れられている。 日本のマーク・シェルドン‐アレン社長のリーダーシップには満足しているし、日本のスタッフの頑張りも素晴らしいと思っています」 テーラーメイドはアディダスの傘下になって以後、ゴルフギアとシューズ、アパレルで「テーラーメイド・アディダスゴルフ」として運営されました。今回の売却でアディダスゴルフは分離され、アディダスに戻るわけですね。 「はい。テーラーメイドは分離された事業体になりますが、分離直後は、ツアー選手への対応や小売店対策において、共有する部分があるかもしれません」 ところで、アディダスが先ごろ発表した第1四半期の業績によると「テーラーメイド・アディダスゴルフ」の合計売上は2億9400万ユーロ(約352億円)で7%僧と好調ですが、そのうちテーラーメイドの構成比は6~7割ですか。 「事業別の割合については申し上げられませんが、今年は米英と日本、韓国で特に好調なので、下半期も期待できるでしょう」 にも関わらずアディダスがテーラーメイドを売却したのは、世界的なゴルフ人口の減少など、この市場の将来は暗いと判断したからですね。ナイキもギア市場から撤退している 「うーん。たしかに過去5年間、プレー人口は減っていますが、将来的に暗いという見方には同意できませんね。2017年は、ゴルフビジネスに関わるキャッシュの流れが保たれているし、この業界は盛り返している。盛り返せば、投資環境も好転するはずです。 実際、昨年は米国で250万人の新規ゴルファーが誕生しており、これは2010年以降で最大の数字です。 理由のひとつは、USGAとPGAがジュニア活動に投資してきたことでしょう。指導プログラムも作っており、これが欧州にも広がっている。今後、アジアにも浸透するはずなので、将来が暗いとは思いませんね」 すると、ナイキの退場はミスジャッジになる? 「競合他社の戦略にコメントはできませんが、わたしはゴルフ市場の将来を明るいと見ています」 売却先決定の直前に、御社はロリー・マキロイと10年1億ドルと言われる契約を発表したが、ここにも積極姿勢が表れている。 「とにかくマキロイとの契約には興奮しています。彼はこれまで多くのギアを試した結果、『最高のプロダクトと出会えた』と言ってくれました。ただし、契約金額について具体的なことは話せません」 日本の小売関係者は今回の売却について、詳細がわからないだけに不安を覚えている。彼らにメッセージを送ってください。 「わかりました。まず、KPSによる買収は、非常に喜ばしいことだし、将来の成長に自信を深めています。投資を受けられることで技術開発や製品クオリティーが高まり、それが市場で評価されれば利益を取引先に還元できる。 このようなサイクルが生じれば双方の関係強化につながるので、日本の皆さま、引き続きサポートをお願いします」 以上、エイブルスCEOとの一問一答を全文公開した。同紙は1995年にテーラーメイドへ入社してから営業畑を歩み、途中、業界他社へ移籍したが、2015年3月に同社のCEOとしてテーラーメイド、アダムスゴルフ、アディダスゴルフ、アシュワースのビジネスを統括してきた。 過去数年は苦境に喘ぎ、特にこの1年は嫁ぎ先が決まらぬ「俎板の上の鯉」だっただけに、電話口の声は終始明るかった。 市場は、多種多様な企業群が個性を発揮し、その丁々発止が活力を生み出す姿が望ましい。テーラーメイドはこれまで「暴れ馬」の役割を任じ、新製品ラッシュや価格競争によるシェア争い、プロの抱え込み、毎週のように発信する「ツアー使用率トップ宣言」など、ケンカ腰のマーケティングで存在感を誇示してきた。 そのシェア主義は一敗地にまみれたが、今回の売却劇によって体質転換を図ろうとしている。荒々しいDNAは去勢される? それとも反転攻勢を仕掛けるのか? 日本市場では現在、キャロウェイゴルフの『EPIC』とテーラーメイドの『M』シリーズが激しく凌ぎを削っており、日本メーカーは旗色が悪い。が、国内勢が巻き返せば、その丁々発止で魅力的なクラブが市場に投入される。ゴルファーの購買意欲を刺激できるか?(片山哲郎)
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