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  • 「ゴルフスタジアム被害者の会」西村弁護士が戦術語る

    片山哲郎
    1962年8月3日生れ。月刊誌GEW(ゴルフ・エコノミック・ワールド)を発行する(株)ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長。正確、迅速、考察、提言を込めた記事でゴルフ産業の多様化と発展目指す。
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    さくら共同法律事務所の西村國彦弁護士が中心となって3月26日、「ゴルフスタジアム信販問題被害者の会」が結成された。ゴルフ関連のIT事業を主業務とするゴルフスタジアム(GS)からスイング解析ソフト等を購入し、その支払いを信販系8社(ジャックス、オリコ、クレディセゾン、セディナ、ビジネスパートナー、東京センチュリーリースなど)とローン契約を交わした被害者が、返済に窮した。 「あまりに高額なリース・ローンであり、詐欺性も疑われる」(西村弁護士)との判断から「被害者の会」を立ち上げ、3月28日に専用ホームページを開設するなどで710人(4月5日現在)の参加を得ている。目指すのはローン残債の全額免除。信販会社との戦いに腕を撫す西村弁護士との一問一答を要約する。 問題の構図をどのようにみていますか。 「ぼくの理解ではまず、ゴルフスタジアム(GS)とは別に複数の信販会社があり、練習場やプロ達が個別にローン契約を結んでいる。被害者は1400人程度と考えられ、これはGSのホームページ(HP)に契約先として表示されていた名前を数えました。 これを基に呼び掛けて『被害者の会』を結成したのです。一人当たりの契約額は300万~500万円、中には1000万円近いケースもある。その平均を500万円と考えて、1000人ならば50億円、1400人で70億円の金が動いたという案件になります。当初、契約者はGSがHPを作ってくれるということで心が動いた。つまり、自分達でHPを作れない零細者がターゲットになり、GSの営業に乗ってしまった」 事件性はどこにあるのか。 「まずはHPありきの営業があって、そのHPにGSは自分達で取ってきた広告を載せて『広告費を払います』と。その後、高額なスイング解析ソフトの販売を持ちかけている。 PGA(日本プロゴルフ協会)がGSと提携していた時代もあったので、その信用から契約を交わした者も多く、数十億の金が信販会社から契約者を素通りしてGSへ流れ込んだ。『ホームページリース詐欺』という類型もありましてね、今回はその変形だと思うんですが、最大のポイントは巨額な金がリース・ローンから『無審査』で流れたところにあると考えています」 無審査がポイントになる? 「はい。個人事業主であるプロの大半は、収入証明が難しい。大きな練習場に属していれば源泉徴収がありますが、今回ターゲットになったのはHPを作れないレベルの小さな練習場や、そこで働くプロもやられている。ショップの場合も個人店レベルが狙われています。 HPを作ってくれて、広告費も払ってくれる。で、最後に解析ソフトのパッケージが来て、リース・ローン会社がその後に続く。 順序立てると、まずは借金なんかできないと思っているひとが6万5000円とか10万円の広告料をもらえる契約をGSと交わし、その後、送られてきたソフトの受領書に判子を押して提出するとリース、ローン、クレジットなど、信販会社によって異なる契約を交わす形になる。リースもあれば、サービス提供にリースを付けるなど様々です」 つまり、ひとつのビジネスでふたつの契約が存在する。 「とも言えますね。本件の場合はGSと被害者が(広告)契約を結び、これとは別に被害者と信販会社が(ソフト購入)契約を交わすもので、双方が『分断』されているのが特徴です。法律的な解釈では、仮にGSが破綻したときに、契約者はGSに要求することと同じことを信販会社にも言えるのかです。これを『抗弁権の接続』、逆にできない場合は『抗弁権の切断』と言います」 で、同じことを言えるのか? 「たとえばゴルフ会員権を購入して金を払ったけど、ゴルフ場ができなかった場合、ローン会社に『できなかったから払わない』と言えるのか? 学説的な判例では、原則的に『ダメです』となる。双方とも別の二者契約ですから」 すると焦点は「抗弁権の接続」で、これを主張するためにはGSと信販会社の癒着性、一体性を証明する必要がありますね。 「そうです。基本的な構造は、GSの資金繰りを助けるためにローン会社と組んで、リース物件を餌に契約者から金を集めた。その際に重要なことは、先ほど申し上げたように『無審査』で通した可能性が極めて高い。 契約者は充実したHPを開設でき、ローンを組まされるけど審査はない。返済は厳しいけど広告費で相殺できると安易に判子を押してしまった。そのように考えられます。 ただ、最初からGSと信販会社の癒着性を証明しろと言われると、現段階では厳しいので、まずは疑いを提起するために『被害者の会』を立ち上げてキャンペーンを始めました。すでにNHKが一報を打ちましたが、これはNHKが被害を認定してくれたと言えます」 本当に無審査だったのか。 「まあ、年収ぐらいは書いたかもしれませんが、年収を裏付ける書類を要求された形跡はない。常識的に考えて、HPさえ持てないプロが数百万のローンに耐えられる信用性があるとは思えません」 このようなソフトに数百万円のローン契約を結ぶ側にも非はあるでしょう。 「世間知らずといえばそうでしょうが、バブルやサブプライムの場合もね、多くの国民が踊らされた。ある種の群集心理が働いたはずで、今回のケースも似ています。たしかに迂闊な面は否定できませんが、1000人以上の被害者が出た案件の場合は、詐欺性が非常に強いと考えられます」

    社会運動を盛り上げる

    「被害者の会」を立ち上げた経緯は? 「2月末にゴルフスタジアムの資金繰りが詰まってしまい、『(広告費を)払えません』という書状を受けた被害者が相談に来た。ローン返済が滞れば、信販会社に裁判を起こされる、あるいはブラックリストに掲載されて潰れるしかなくなってしまう。 そこで弁護士に相談したら、『裁判をやっても難しいから破産しなさい』『自宅も売りなさい』というアドバイスしかくれなかったと。で、ぼくのところが駆け込み寺になりました。ぼくの考えは、リース・ローン裁判で個別に戦ったら不利だから、まずは被害者の団結が大事だと。実は、会員権問題も同じでした。 ゴルフ場が倒産したら紙屑になるという理論は法律的には正しいし、金融機関が競売に掛けることも法的に問題ありません。だけど、会員は納得できませんよね。するとデモが起こります。そのゴルフ場は150人ほどの会員でしたが、美しい女性がデモの先頭に立って抗議する映像をNHKが全国ネットで一日3回流してくれた。その結果、銀行は競売を断念しました」 つまり法理論だけでの対抗ではなく、社会運動で世論に訴える。世間の同情なり同調を取りつけて、権利保有会社の気持ちを萎えさせる。ある種のパワーゲームですか。 「ぼくの発想はそれに近いですね。法律には不備があるし、法の保護を受けにくいひともいる。信販会社はプロだから、割賦販売法とか熟知して巧妙な契約書を作ったはずです。 法律論だけで対抗したら被害者は分断され、生活破壊されてしまう。そのような被害者が1000人以上出る場合は、やはりおかしい。昔、借地人、借家人が権利を得られなかった時代には同盟を組んで、デモで対抗しました。同様に、ゴルフ場が倒産すれば会社更生法で処理しても、プレーできる権利は微妙でしたが、再生法・更生法で会員を追い出すと社会問題になる。 このケースで裁判所は、会員を残れるようにしたんです。いわゆる『大岡裁き』ですね。極論すれば本件は、被害者は名義を使われただけではないか。だから彼らの借金は、実質的に『GSの借金』と解釈できる。そこが一番のポイントです」 被害者はプロ、練習場、ショップの三者ですが、各々事情が異なる。 「そうですね。プロは個人事業主だから比較的シンプルだけど、練習場やショップは別の支払いがある中でこのローンを組まれてしまった。ほかのローンがある場合はかなり面倒なので、今回の被害者は通常のローンと切り離して、ブラックリストに載せるべきではない。そんな主張で監督官庁に呼び掛けています。 キャッシュフローが止まると倒産しますので、信用保証会社に載せないようアプローチします。その際、GSの借金を被害者に付け替えただけで、実質は名義貸しにすぎないと主張するわけですが、信販会社は『名義貸しに協力した責任はある』と反論するでしょう。でも、契約書はあるけど本当のことは説明していない。法律的には『説明義務違反』で被害性を訴えられます。これだけの規模の被害者が出るのは社会的事件ですからね」 戦う相手はGSよりも、信販会社に絞り込んだ? 「仮にゴルフスタジアムが破産したら、同社に対して裁判を起こす意味はあまりないし、債権の届け出を予備的に出すくらいでしょう。ただ、仮に裁判でローンが認められたら残債はGSが払うべきという主張はしたい」 GSが倒産した場合、被害者が得られる破産配当は数千円のレベルでしょう。 「ですから、実質的には被害者と信販会社の戦いになります。そのうちの1社は社会問題化を恐れたのか、ブラックに載せないための『状況説明書』を我々に送ってきて、詳しい事情を教えてくれと」 信販会社の懸念は、無審査ローンが社会問題化することですか。 「そう。経産省の商務課などにしてみれば、とんでもない話でしょうからね」 監督官庁が信販会社に営業停止を求める可能性もある? 「でしょうね。それと、信販会社の顧客は庶民なので、庶民イジメの烙印を押されることを恐れるはずです。銀行系の信販会社も多いため、逆に戦々恐々かもしれません。 彼らの弁護士が『契約書が整っているから勝てる』と主張しても、銀行は世論の風向きに敏感です。今はコンプライアンスが非常に厳しいこともあり、1000人以上の零細者が引っ掛かるリース・ローンは絶対にやるべきじゃない。 その確信があるから『被害者の会』を作ったわけで、低金利時代の病巣は無審査ローンの広がりですよ。消費者ローン的に薄く広く金を集め、その対象者は被害に遭っても対抗できない。それ自体が問題だと考えています」

    PGAにも責任がある

    この問題が騒がれるとゴルフ界、特にレッスン業界の体質改善も期待できます。 「おっしゃるとおりです。ぼくは今回の件を通じてゴルフ界の改革につなげたいと考えていて、『被害者の会』の決起集会では『今回の事件を教訓に情報交換・研究を行い、ゴルフ界のイメージアップ・改革につなげる』という一文を加えました」 改革は浄化を伴います。その意味でレッスン業界は深刻な問題を抱えていて、いわゆる「脱税行為」です。レッスンが現金払いの場合は所得を申告しないケースがあり、 レッスンプロの一部は国民の義務を果たしていない。「業界民度」の低さ、強い言葉でいえば「反社会性」が放置されて、だから正確な収入証明も出せなかった。これらの瑕疵がゴルフスタジアム問題の一因と言えませんか? 「そう。しかもPGAがそれを放置してきた。いみじくも被害者の一人が『これはぼくらの責任でもある』と話しているので、そういった取り上げ方は否定しません。プロ達は富裕層に取り入って、そのような行為を一部で行っている。 だからプロを全面的に擁護するわけではありませんが、生活破壊は絶対にダメだし、ゴルフ界をより良くするためにもこの案件に取り組みたい。あるプロが今回の件で『我々は本当に世間知らず』とFBに書きましたが、だから目を付けられてリース・ローンの草刈り場にされたとも言えるわけです」 PGAには諸問題を放置した責任がありますね。 「あるでしょう。GS問題では引っ掛からないための指導が必要だったし、ゴルフスタジアムがPGAと(過去に)取引があったから信用したという被害者もいるわけです。それと、そもそもPGAが会員にHPを作ってあげて、トータル的なシステムを組んでいれば、こんなことにはならなかった。会費を払っているプロ達が、HPをもちたいという動機で問題に巻き込まれ、路頭に迷うとしたら問題ですよ」 今回の案件で、最終的なゴールはどこですか。 「仮に調停に持ち込んだ場合、被害者のローン残高をゼロにできるのが最高だし、今回のリース・ローンは『GSの借金』だと認定してもらうことがベストです。ただ、証拠が完全に出てない段階なので、着地点は流動的でしょう。 いずれにせよ、裁判官も世間の空気を読んでいるし、マスコミの動きも気にします。ぼくはこれまで被害を社会問題化させて、裁判所に『大岡裁き』を求めるやり方をしてきました。訴訟だけでは運動が終息するし、動きが止まると弁護士も辛くなる。このようなケースでは、社会的な運動と弁護士の訴訟運動を両輪にしないと勝てません。特に銀行は、世論をもの凄く気にするので、運動を盛り上げたいですね」 以上が西村弁護士の戦術論だ。同氏は過去、ゴルフ場の会員権問題を複数手掛けた経緯もあり、ゴルフ界への思い入れが強いという。 被害者対信販会社の対立構図を浮き彫りにして、世論喚起と訴訟の両輪で攻めるわけだが、併せてレッスン業界やPGAの体質改善につなげたいと強調する。PGAは東日本大震災の発生直後、即座に会員の安否確認を行っており、ゴルフスタジアム問題についても同様の姿勢が求められる。 むろん、レッスンプロだけの問題ではない。ゴルフスタジアムの堀新(ほり・あらた)社長は、単独系のショップ・工房300店ほどが被害対象と推定するが、これらが返済の滞納でブラックリストに掲載されれば、他の金融機関から融資の一括返済を求められるなど事業の継続が困難になる。 倒産すれば、取引先の地クラブメーカーは売掛債権が未収となり、零細メーカーが多いことから連鎖倒産の恐れもある。負の波及効果は大きいといえる。「被害者の会」は残債の免除を勝ち取れるか? 解決に時間が掛かれば生活破綻が相次ぐだけに、スピード感が必要だ。(片山哲郎) 「ゴルフスタジアム信販問題被害者の会」専用HP
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    ゴルフスタジアム
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