地クラブの神髄

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Vol.16 ニューアート・クレイジー

2016.08.10

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Vol.16 ニューアート・クレイジー

最善か無か―。十年を経たクレイジーブランドで、その惹句はいまも受け継がれている。その拘りの傍らで、異彩なる世界観の構築術だけが、『クレイジー』という名辞を創造してきたと曲解されてきた。だがそこには、風姿だけにあらず、名実一体となった拠り処がある。その背骨に『クレイジー』の神髄が映し出される。

神髄1 原点たる聖地

際立つのは奇抜な容姿と飛びへの拘りだけではない。フルレングス高弾性シャフトの先駆者として、ニューアート・クレイジーには、それを成す聖地がある。東京足立区の東京工場の存在だ。

近年、地クラブ・工房ビジネスが台頭し、少量付加価値商材が注目され、それに呼応するようにシャフトブランドも雨後の竹の子の如く生まれている。しかし、その多くがシャフトを自社で製造せず、製造拠点を有する企業にOEM生産を依頼している。

「だからかもしれませんが、未だに自社でシャフトを巻いていないと思われている」―。

その鬱積は聖地である東京工場の存在で晴らされる。

Vol.16 ニューアート・クレイジー

直営店であるクレイジー足立店から徒歩1分。東京工場は静かに佇んでいる。そこで少数精鋭の匠の技を持つ職人達が、粛々とシャフトの製造に勤しんでいるのだ。

1本約40㎏のカーボンシートロール。素材から仕入れ、そのカーボンシートをシャフトの設計によって裁断していく。ただ、カーボンシートには、製造元による「不良部分」の表記されている箇所もある。

更に独自のチェックでクレイジーは、「使用に見合わない部分」を捨てる。何故なら、

「僅かな不良でも、製品精度が低下するのは目に見えている。厳密な素材選定が高品質なシャフトを製造する絶対条件です」―。

もちろん、素材の管理も徹底している。専用の保管庫を2台用意し、素材メーカー推奨の温度で管理。生ものといわれる素材の鮮度にも拘っている。

シートの裁断は自動制御されたオートカッターで行われる。ゲームセンターに置かれているエアホッケーのような台にシートをセット。 テーブルがシートとの間の空気を吸い込むことで、シートを台の表面に吸着させ、裁断時のズレを抑制。コンピュータに予めインプットされたパターンに裁断していく。

シャフトを成形する際の芯棒は30種類以上で、カーボンシートは25種類以上。そのパズルのような組み合わせが、豊富なクレイジーのラインアップを生み出しているが、その製造現場には驚愕の事実があった。

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神髄2 捨てる気概

高弾性カーボンシートをフルレングスでシャフトに採用するには、様々な障害が生じる。材料費が高く、その素材特性から加工には技術を要する。つまり生産性は低いといわざるを得ない。それを成すのが、東京工場である。

裁断されたカーボンシートのパーツは、丁寧に手作業で芯棒にアイロンで巻き付けられる。

「手巻き台の表面温度にも配慮しています」

そう語るのは工場長である正木清人。カーボンシートの目利きに始まり、製造工程すべてを把握して、高精度のモノづくりを率いている。

その製造工程での配慮は、巻き付けの最終工程でのローリング機でも垣間見られる。

「高弾性シートをフルレングスで巻く際には、ロールのスピード、高さ、そして圧力の微調整が肝となりますね」

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その圧力の微調整は、ゴムマットによるもので、試行錯誤の結果として、 シャフトの種類別の高さや角度を決めている。

またゴムマットの表面を常にチェックし、張り付きやすい高弾性シートを最適な状態での作業ができる為のクレイジーならではの工夫も行っている。

「ひとつひとつが高弾性シートをフルレングスで採用するために知恵を絞った結果です」

そして焼き入れ工程でも釜の温度と温度の上昇時間、全体の焼き入れ時間にも配慮しながらシートを硬化させていく。

そこからの重量計測、研磨、そして4方向のフレックス、振動数合わせが、クレイジーの神髄でもある。

まず重量を量り、研磨量を一本一本確認した後、第一研磨作業となる。その後にチップ径を研磨で8.5φに合わせ、同時に4方向のフレックス、振動数を合わせていくが、

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「この時点でシャフトのヨレを、必ず職人の手で扱きながら確認します。厳格な検査基準に満たない場合には、性能に差が生じ、塗装工程にも進めることができません」

この作業を三度も繰り返す。

「塗装も含め、検査で合格し製品化されるシャフトは全体の5割に満たない。もちろんそれ以外のシャフトは品質や性能の維持のために廃棄します」

高弾性カーボンシートをフルレングスで採用するための知恵と技術力。そして厳格な検査基準で、基準に満たないシャフトは捨てる。その気概が『クレイジー』の『クレイジー』たる由縁でもある。

神髄3 十人十色

何故、5割のシャフトを捨てるのか? 試打用での採用もあり得るはずだ。

「プロ支給用のシャフトであっても、一般ゴルファーが購入頂くシャフトであっても、同じ品質と性能でなければ、厳密なフィッティングができないはずです」

そう語るのは、クレイジー足立店の石山綱己店長。PGA会員で、直営店である足立店でプロ、アマを問わず、フィッターとして日々ゴルファーと対峙している。

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「フィッティングはクラブの重量や、シャフトの挙動を見ながらフィッティングを行いますが、当社のフィッティングの特長のひとつは、そのラインアップの豊富さにあります」

その数、ドライバーだけでも100種類、FW、アイアン、ウエッジ、パター用を含めれば、200種類にもおよぶ。何故なら、

「スイングのタイミングや軌道は10人いれば10人違います。すべてのプレーヤーが理想の弾道を実現するためのラインアップです」

十人十色―。その豊富なシャフトがクレイジーの底力でもある。そして、その豊富な商品構成を創り上げるラボ的存在を担うのも、直営店である足立店だ。

「フィッティングの設備だけではなく、工房も完備しています。そこで蓄積したノウハウは、商品開発のヒントになり、組立時の些細な情報さえ販売店にも共有することができるのです」

組立時のシャフトの推奨の長さや、差し込みの長さ、バランス調整法や振動数の合わせ方まで。そして、ここを訪れるゴルファーのフィッティングから新たな商品も開発される。

足立店チーフアドバイザーの吉田尚亮が語る。

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「足立店では、PGAのプロがフィッティングを行い、プロゴルファーに提供するサービスと同じ組立を行っています。豊富な試打クラブも用意しており、フィッティング後に試打クラブと同じシャフトを購入したいというお客様も多い。その時に、提供できるのが、試打クラブと寸分変わらない品質、性能、スペックのシャフトです。厳格な検品基準をクリアしたシャフトしか製品化していないので、満足頂けるシャフトが提供できるのです」―。

クレイジーシャフトには、プロ用、一般販売用という区別はない。そして、国内外から訪れるゴルファーはフィッティング後に8割以上の方がクラブを購入する。何故なら、十人十色に対応できる多彩な商品構成がゴルファーを迎え、フィッティング結果と購入するシャフトが寸分違わない。

匠の技が結集される製造工場、そして、商品開発のラボとなる直営店。そして十人十色のゴルファーに理想の弾道を提供できる多彩な商品構成。しかし、もうひとつ『クレイジー』を創り上げる背骨があった。

神髄4 攻めの体制

高弾性カーボンシート、厳格な検査基準、そして多彩なラインアップ。換言すれば、飛距離に拘るゆえに、非効率なモノづくりといわざるを得ない。製造工程で約5割を廃棄しながら、安定した品質の商品を安定供給していく。

そのクレイジーの体制を支えるのが、ジャスダックに上場している株式会社ニューアート(旧社名株式会社シーマ)で、ニューアート・クレイジーは、昨年6月にその100%完全子会社となった。

ニューアートの生業は、ブライダル・ジュエリーの製造販売を主とし、結婚式場、スポーツ事業と多岐にわたる。平成28年3月期連結決算では売上高127億5200万円、昨対53%増と勢いに乗る企業。その巨大な資金力を有する背骨は、今年2月に開催されたジャパンゴルフフェアにクレイジーの出展を実現させ、2000万円のティアラを展示。その余勢を駆ってか、「『クレイジー』の4月の出荷量は昨年同期比で二倍以上を記録しています」

そう語るのは、昨年9月に親会社ニューアートからニューアート・クレイジーに赴任した佐藤智彦本部長。そして、主流通である工房に足繁く通う営業部部長の石井昭浩は、クレイジーブランドをこう表現する。

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「利益よりもゴルファーの事を第一に考えるブランド」―。

利益よりも―。

上場企業の傘下たる企業では、利益追求は無視できない。しかし、それ以前に、豊富な資金的背景によって、素材の仕入れやゴルフアクセサリーの製造など、関係各所と潤滑で安心できるビジネスが行える。

「高弾性カーボンシートをフルレングスで使用して、シャフトが作れるのか?」

そんな問いは、クレイジーにとって、愚問でしかない。高弾性カーボンシート、厳格な検査基準、そして多彩なラインアップ。そして、全力のバックアップ体制。それが風姿だけでもなく、異彩なる世界観でもない、クレイジーの神髄だといえるだろう。

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