地クラブの神髄

トップ > Vol.15 スポーツライフプラネッツ『ロッディオ』
Vol.15 スポーツライフプラネッツ『ロッディオ』

2016.07.20

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Vol.15 スポーツライフプラネッツ『ロッディオ』

神の鞭、「ロッディオ」―-。クラブに拘る煩方が足繁く通う工房で、「ロッディオ」は工房店主の腕を問い、磨かせ、そして調えられる具材として、盤石な立ち処を築こうとしている。シャフトの銘として生を受けた「ロッディオ」は、そのシャフトを活かすヘッドの秀でた個性により、ヘッドが先行した感が否めない。しかし、カーボンのDAIWAの名を欲しいままにした釣竿の技術を背骨に、新たなシャフトを生み出し、リールに求められる精密機器の製造技術を地盤に新たなヘッドを生み出す。そして新たな「ロッディオ」の三種の神器が生まれた。

神髄一 二律背反と整合性

photo_roddio2016_1.jpg

「上げて下ろす」―。この世界で幾度となく使われてきた言葉。それはクラブとしての究極の理想の形。そこに近づけたのが、新たな型を備え、二つの相反する性能を一本のシャフトに搭載した『AMORPHOUS SLIM SHAFT』だといえるだろう。

『AMORPHOUS SLIM SHAFT』は、上げて下ろせばアベレージゴルファーが自動的に、楽しくやさしく使えるシャフト。 それでいて理想的な飛距離を実現することを、開発コンセプトに据えた。二つの矛盾点は「ハイスピードで撓りながら」 、 且つ、「正確なインパクトを向かえる」。このシャフトに至る経緯があった。

2013年から2014年にかけて発売された『ロッディオMシリーズ』、そして 『ロッディオSシリーズ』は、当時のパーツ市場では比較的標準的な性格を備えたが、今となれば尖っていなかった。シャフトブランドが止め処なく生まれ、その多くが競技者・上級者志向のパーツ。しかし、工房利用者は近年、幅広いレベルのゴルファーに広がってきた。その大多数を占めるのがアベレージ層だ。そこで「上げて下ろす」ことで、「自動的にヘッドスピードが向上」しながら、「ミート率が向上する」という二律背反を開発要件に据えたのだ。

「自動的にヘッドスピードが上がる」には、撓り戻りの速さと、それを助ける捻れが必要となる。しかし、それらの数値が大きければ大きいほど、基本的にはヘッドが暴れるといわれる。つまり、もうひとつの開発要件である「自動的にミート率が向上する」ことに矛盾を来す。

その矛盾を解決したのがシャフトに巻き付けられた「アモルファス金属繊維」と釣竿の技術を用いた「スリムデザイン」。「細く」「強く」「撓る」―。細いことで空気抵抗を減らし、ヘッドスピードがあがった。しかし、軽量化されただけ強度も迫られる。

「試作の評価は高かった」

そう話すのは、ロッディオチームの統括・石川浩。しかし、

「スピン量が抑えられず、球が左にまく」

解決策は剛性の強化。だが、チームのメンバーは単純に剛性を上げることに退屈さを感じた。「アモルファス金属繊維を巻く」

元素の配列が無秩序な金属からなる繊維。逆説的にいえば、無秩序ゆえに「弱い」構造を持たない。それを編み込み、巻き付け工程で一体成形した。

photo_roddio2016_1.jpg

撓り、ヘッドスピードが向上して、ミート率が上がる。そして、この素材は音響機器(スピーカー)などに使用される素材だけあって、 振動を減らす、ノイズキャンセラー効果も発揮された。ヘッドの位置、シャフトの撓りを感じてヘッドが返る。二律背反が片付けられた。

神髄二 弄る幅を押し広げる

ロッディオブランドはシャフトが主。そのシャフトを輝かせるためのヘッドが開発される。『AMORPHOUS SLIM SHAFT』の性能を引き出すのがドライバーヘッド『S-TUNING』。同系統には『Sシリーズ』シャフトに合致する『タイプS』が存在する。しかし、『タイプS』は短尺仕様向けでヘッドが重い。シャフトを活かすにはヘッドも改良しなければならない。そして生まれたのが『S-TUNING』というわけだ。

最大の特長は軽量化による重量調整、そして重心位置調整の幅の広さ。ボディ素材を「6-4チタン」から軽比重の「8-1-1チタン」に変更。6gの軽量化に成功した。テスト販売でも高評価を得た。しかし、ヘッド性能によるスピン量の過多が見られた。

当初、『S-TUNING』のソールに設えられたハッチは、アルミ素材だった。スピン量を軽減するにはロフトを立てれば良い。しかし、それでは工房での弄り甲斐がない。ロフト、ライ角の調整には3種類の専用ホーゼルを準備することで、解決できる。

photo_roddio2016_1.jpg

「『AMORPHOUS SLIM SHAFT』は、アベレージ向けのシャフト。アベレージゴルファーにスピンコントロールは難しいと思った。ヘッド自体はやさしく、スピン量を減らした。しかし、 アベレージゴルファーにとって浅重心はボールがドロップしかねない。浅重心でもやさしいシャローヘッドであれば、彼らも使える。調整幅を広げて、あとは工房店主に任せよう」

ここでカーボンのDAIWAが活かされる。 生み出されたのはソールに配されるカーボン製ハッチ。加工の難しさからソールに配されるのは異例。世界のDAIWAの技術が余すことなく注入された。ドライバーヘッド『タイプS』と比較して最大13gの軽量化に成功したのだ。

もちろん、そのカーボンハッチだけではなく、専用ホーゼル、チタン、ステンレス、タングステンのウエイトスクリューも世界に誇るリールを製造する工場で作られる。その技術レベル、精度は、医療機器を製造できる水準」その製造技術の粋を集めたのが、ロッディオの神髄といえるだろう。

神髄三 加えることで性格を変える

photo_roddio2016_1.jpg

2015年1月、ロッディオの一員に加わったのが『フェアウェイウッドヘッド』。飛距離追求を第一に開発された。その性能の高さも含め、「事業規模を倍増させてくれたアイテム。それまでは、一部の工房店主の気概で売ってくれていた。しかし、ヘッドを扱う『ロッディオ・コンシェルジュ』のすべてから注文が来た。それによってロッディオの主であるシャフトの販売に寄与して、2年目を向かえるドライバーヘッドの販売を加速させた」

ロッディオが第二章に突入した刹那だった。 しかし、工房に『フェアウェイウッド』の試作品を持ち歩いた苦悩の1年間があった。「画期的な構造には満足してもらったが、製品の完成度に疑問を持たれた」―。

『フェアウェイウッド』の最大の特長は、ソールが変えられることだった。それは新規性があり圧倒的な差別化にもなる。しかし、その打音、球の上がりにくさに、工房店主は首を縦に振らなかった。

「ソールパーツを精密CNC加工で創り上げ、ボディの金型も変更することで打音の向上が見られた」

ソールパーツの試作品は10数種類にもなった。 ソールパーツのCNC加工には1個2時間を要する。 市場調査から1年。 やっとの思いで発売にこぎ着けた。ただ、ソールが変更できる最大の利点には程遠かった。

「ヘッドの性格を変えるオプションソールパーツの開発にはさらに時間がかかった」

発売と同時に『フェアウェイウッド』の売れ行きは事業全体を押し上げた。易しく飛距離を実現した『フェアウェイウッド』の球がつかまり、球が上がるという特徴は、時として上級者に、「球が左に巻く」と不安を募らせた。だから、『フェアウェイウッド』の購入者で上級ゴルファーは、球が左へ行かないソールの発売を待った。

そしてこの4月、待望の『T-Sole』とレール型の『R-Sole』が発売された。

『T-Sole』は、ツアープレーヤーをはじめとするドローヒッターが左へのミスを心配することなく、気持ちよく振り抜くことができるツアーソール。『R-Sole』は、過去のゴルフ市場に於いて北海道の芝を意識して作られたFWをヒントに開発された。

ソール1個2万円也。 特にツアーソールといわれる『T-Sole』を装着すると、『フェアウェイウッド』は別物に変身する。発売に至るまでにも、試打ソールを持って全国の工房に足繁く通った。

photo_roddio2016_1.jpg

「ロッディオを扱う工房店主は、中途半端な製品では納得しない。こちらが手間暇を掛けてあらゆる精度を向上させないと向き合えない」―。

身命を賭して開発する。背骨は世界のDAIWA。その精度、性能、そして変幻自在の調整の遊び。それに感銘する工房が呼応する。

神髄四 易しくなれるパーツ達

ロッディオに対して、

「いまのところ、不満はない」

そう語るのが、静岡県浜松市の老舗・メルサだ。41年目のメルサで20年腕を磨いた専務の長屋達忠。その惚れ込み様は尋常ではない。

photo_roddio2016_1.jpg

「商品サイクルを長期化しようとする企業努力、工房のチューニング技術を理解し、向上させる商品開発力。そして性能。どれひとつとっても、満足です」

製品についても高い評価を下す。

「ヘッドに関してはオーソドックスなものづくりで、工房で難しいヘッドにも易しいヘッドにもチューニングできる。 そんなヘッドはほかにはない」―。

そして各論に入ると、

「『AMORPHOUS SLIM SHAFT』は、難しいヘッドを易しくしてくれるシャフト。100人ゴルファーがいたら、10人の困った人にしか最適ではないかもしれない。しかし、各重量帯で1フレックス。しかも70g台で振動数は240cpm前後。レアスペックだけど、ロッディオはそれで良い」

そして、『フェアウェイウッド』のソール。

「百発百中で弾道が劇的に変わる。昨年1月の発売時期にも、今後の展開を示唆してくれていた。完成していないから、購入してもらってからの調整にも期待できる。妥協しない企業姿勢が垣間見られる」

そして最後にロッディオの神髄とは何かを問うた。 長屋は、

「標準モデルが、一番簡単なセッティングかといえば、そうではない。 ロッディオはそのパーツのチューニングと工房店主の腕で、如何様にもクラブを変身させられる。 それが、 ロッディオの神髄」― 。

photo_roddio2016_1.jpg

多くの地クラブが競技志向に立脚し、使用者層の想定は限られる。 しかし、 ロッディオのものづくりは、完成品を工房に供給しない。 工房店主の手練手管で完成する。 そしてそれは、 シャフトでもヘッドでも、チューニング次第で難しくも簡単にもなる。 ロッディオの神髄―。 その第二章が幕を開ける。

Vol.15 スポーツライフプラネッツ『ロッディオ』