地クラブの神髄

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Vol.3 ROOTS GOLF 『THE ROOTS KEI』

2014.01.09

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Vol.3 ROOTS GOLF 『THE ROOTS KEI』

遷都一二二〇年。悠久の刻が流れている。身を委ねれば俗世を離れ、斎戒沐浴できると錯覚すら起こす京都。そこで生まれ、人々に愛されるゴルフクラブが、ルーツゴルフである。今年ルーツゴルフは十周年を迎え、世に送り出したのは『THE ROOTS KEI』。ゴルフクラブに、風情を吹き込んだ。それがルーツゴルフである。

絶え間ない経時のなかで、ゴルフ屋など渺々たる存在かもしれない。町角の佃煮屋や饅頭屋と同じ。でも、情報や物流システムが構築された現代では、"お取り寄せ"などという言葉が持て囃される。売り物は山河を越えて国中へと運ばれ、だから、生産者の顔すら知る由もない。只中、地産地消のゴルフクラブは、地クラブの神髄。造り手と使い手が顔を合わせながら、ゴルフライフを豊かにしていく。それがルーツゴルフだ。

京都に生まれ、頑なに十年。「アマチュアゴルファーがやさしく使えるゴルフクラブ」だけを造ってきた。若き日の飛距離を取り戻すべく...。多くのベテランゴルファーが愛することを善とした。

代表取締役である平野俊雄が語り始める。

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「量販店で販売員だった頃、プロモデル全盛期で、それを使い熟すことが上達の早道だといわれた。しかし、ゴルファーの上達は鈍化していましたね。だから、会社の反対を押し切って、使用者層を絞り込んだモノ造りを断行しました」

平野はゴルフ量販店の販売員として、十七年在籍した。販売部に身を置きながらPBの開発にも従事。モノ造りに傾倒し、誘われるがままゴーセンへ入社。

しかし、ゴーセンの事業撤退を機に、平野はブランドだった「ルーツ」の事業譲渡を受けルーツゴルフを興す。京都のものづくりに憧れて、京都に居を構え十年。しかし、創業数百年の老舗が点在する京都で、創業十年は青二才。それでも、ゴルフメーカーとしては存在感が滲み出てきた。平野が繰り返す。「いい塩梅」。それがルーツゴルフ。その神髄に迫る。

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神髄一 不易流行の粋

京都は七九四年の遷都以来、様々な文化が往来し幾つもの人間模様が行き交った町。だから、変わるものと変わらざるものとが背中合わせ。粛々と流れてきた時の積み重ね は変わらず、一方で御公家様に憧れ、移りゆく季節を、人々は生活に余すことなく取り込んできた。ものづくりも、また然り。ルーツゴルフにおいて、変わらないものの一つが素材。

二〇〇三年一月、ルーツゴルフは『MDウッド』シリーズからクラブメーカーとしての営みを始めた。同三月には『RSアイアン』を発売。翌年三月に、初めて「ルーツ」を冠した『ザ・ルーツアイアン』が発売されている。その後もすべての商品で不変だった素材。

平野が惚れ込んだのが「アーメット」だ。鉄にコバルト、ニッケル、炭素、クロム、モリブデンを配合した合金。耐力、引張強度とも6-4チタンの二倍強ともいわれる。戦闘機F-18の部品など幅広く使用され、至近距離からの銃弾もはね返すほどの強度を誇る。

しかし、その扱いは難しく、大量生産に向かず、溶接工程は複雑さを極め、メッキ加工が不可欠となる。その「アーメット」と前職時代から格闘すること十三年。いまでは進化した「スーパーアーメット(アーメット310)」を採用するまでに至った。

しかし、何故、それほどまでに惚れたのか?京都人である平野は、独特の言い回しをする。

「高強度ですが粘り気があり、極限まで薄くできる。インパクト時にボールがフェースに乗る感触を味わえる打感は、パーシモンを彷彿させます。そして打音は、高いけれども柔らかく長く響く。京都にみられる調和と同じで、これも〝いい塩梅縲桙ネのです」

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そしてもう一つ。アーメットの比重の高さだ。どれだけフェースを薄くしても、重心深度は浅くなる。今では業界のトレンドとなっている浅重心。他社に先駆けて採用している。新たな文化が流れ込んできた風土ならでは。受け入れることができる、京都のものづくりが感じられる。

神髄二 別嬪さんのお顔には京都の風情が善く似合う

平野はゴルフクラブに対して"いい顔"とはいわない。敢えて、"べっぴんさん"という言葉をつかう。そのべっぴんさんの条件は、クラウン上部から見たときに、トウ側の頂点は、"納まりの良い処"。対象者のゴルファーは、三十年以上のゴルフライフで、心地好いクラブを熟知している。物理的な真っ直ぐは、見た目の直線ではない。アイアンでも同じで、ソールは広くてもトップエッジはシャープに限界まで細くデザインされている。

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開発担当の其阿弥貴之(ごあみ・たかゆき)が、コスメについて説明する。「ゴルフショップに並べられたときに、飛びそうだなと思わせなければ手にとってもらえない。しかし、それは試打してみないと分からないじゃないですか。だったら、美しさで興味を喚起しようと」――。

それが京都の和だ。『ザ・ルーツKEI』には深緑色を盛り込んだ。ゴルフの聖地のブリティッシュグリーンだ。ルーツゴルフの旗幟もまた深緑色。ヘッドにデザインされた菱形には、深緑色をはじめ赤、臙脂、黄色を施した。京都の移りゆく季節、そして寺社の風情だ。

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シャフトにもこの京都色を存分にデザインして、表面に京都の和を設えた。

もう一つの理由があった。京都で業を営むには、京都で認められないと永く続かない。「商売は牛の涎の如く」――。細くとも、切れることなく永く続ける。京都の景色に溶け込まなければならない。それがべっぴんさんのコツでもあるのだ。

神髄三 プレーヤーの顔が見える

二〇一三年三月、同社が発売した『ザ・ルーツKEI』は、「ルーツ」シリーズ三代目。今年、創業十周年を迎えるにあたって、京都の「京」、そしてスーパーコンピューターの「京」に因んだ。

ドライバーをはじめFWやアイアンも、"大きな飛び"と"打感の心地良さ"を追及。同時に、クラブ造りにはある拘りがある。

それは、アドレスをとった瞬間にどれだけ素直で構えやすいと思わせるか。「難しそう」と思った途端、麗しいスイングは難しくなる。特に、アベレージゴルファーほどスイングの再現性が低いため、見た目の印象がスイングに影響を受けやすい。見た目の壁は、スイングをも崩壊させる。

だからクラブ造りでは、球が上がり易く、つかまえ易い、さらにはミスショットに寛容な機能を内包しながら、素直な顔つきを表現することに腐心した。

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「素直な顔つき」とは何か? 答えはペルソナにあった。開発時、具体的な"像"を描いた。

『KEI』のターゲットはベテランゴルファー。ゴルフの醍醐味を識る御仁達だ。「齢六十三」「会社役員」「プレー頻度六回縲恃ェ回/月」「伴侶との二人暮らし」「歴三十有余年」「スコア92」「手打ち、アウトサイドイン、スライサー」に、『KEI』を充てた。

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京都の政財界を始め、ロータリークラブの面々など、平野が顔を出す会合の御仁達がルーツクラブの愛好家。彼らはベテランゴルファー。古き良き時代を知る。だからこれまで、ルーツゴルフのドライバーには体積460cm3は存在しない。使い手が見えるメーカーならではの拘りでもある。だからペルソナが活きる。

『ザ・ルーツKEIアイアン』にも工夫が施されている。アイアンにみられるアマチュアのミスは、ダフリとトップ。同じゴルファーから起きる現象だけに、スイングの再現性は低く、ヘッドの入射角は、スイング毎にバラバラとなる。

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対応策はソール。リーディングエッジ側とバックフェース側でバンスを変え、中央の平坦な部分を合わせると3つの顔をもつ。その平面の面積も適切な広さ。いい塩梅なのだとか。さらにヒールとトゥを削り落とすことで、滑らかにボールにアタックし、スムーズに振り抜ける。

誰が使うのか? そのプレーヤーの顔が浮かんでくる。土着のゴルフクラブ。ルーツゴルフの神髄はここにもあった。

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