地クラブの神髄

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Vol.11 SONARTEC

2015.10.14

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Vol.11 SONARTEC

捲土重来――。世紀末。「SONARTEC(ソナテック)」は、ロイヤルコレクションの海外市場戦略商材として、この世に生を受けた。米国ではゴルフの職業人であるクラブプロが、ゴルフ愛好家に推奨し、FW、UTを使用した選手が、マスターズ、全英オープンなどメジャーも制した。一時、米国で売上7億円規模に育つも、大手の躍進で価格競争が激化し、「ロイコレ」に集約。2010年に「ソナテック」は米国から姿を消した。昨春、その「ソナテック」がパーツブランドとして日本で蘇る。UT、アイアン、ウエッジ――。そして、工房の世界で主力とされるドライバー、FWを今秋投入する。ツアーという戦場への想いから、職人が凌ぎを削る世界へ。捲土重来を期す「ソナテック」は、いま船出したばかりだ。

神髄一 変わる様に原点回帰の刻

「ソナテック」は、2000年から欧米向けの銘として誕生した。プロが求めるテクノロジーを駆使したモデルという触れ込みで、米国を中心に展開。2004年の全英オープン優勝者がユーティリティを使用したことが口コミで広がると、米国で一気に沸騰した。

ひとつの逸話がある――。

「全英オープン優勝直後、ユーティリティが1週間で1万本売れた」その刹那、ツアーという戦場での実力、市場での商品力は世界屈指だった。しかし、その隆盛は長くは続かない。ビッグブランドと呼ばれる強者どもの台頭によって、市場でのゴルフクラブは低価格化が進み、「ソナテック」は市場の売れ筋と価格が乖離した。そして、「ソナテック」は生きる場所を失い、世界最大の市場・米国からの撤退を余儀なくされた。そして「ソナテック」は文字通り、水面下に身を潜めた。

それから5年、「ソナテック」は完成品からヘッドパーツに様変わりし、時代の潮流に即して新たな商いに挑んでいく。ただ、それは原点回帰の情景を脳裏に浮かばせる。遡ること二十有余年。創業当時、「ロイヤルコレクション」は、ヘッドデザインの素晴らしさ、ヘッド性能の高さを武器にトップアマチュアたちが集まるゴルフ工房を巡り売り込みを続けた。上級者、トップアマ、そしてツアープロ。その世界への絶えることなき純粋なまでの想いは、新生「ソナテック」へ脈々と受け継がれている。

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新生「ソナテック」は、UT、アイアン、ウエッジから新たな命を吹き込まれた。「ソナテック」のUT――。ブランドの根幹であり、かつて世界を制した。そして、軟鉄鍛造のアイアンとウエッジ。世界に誇る日本の鍛造技術を背骨に、精を尽くした。しかし、ブランド「ソナテック」の再興に足らぬ。

その急先鋒が、『ソナテック TD Forged ドライバー』(6万8000円)と『ソナテック TD Forged Ti FW』(4万8000円)。ともに、製造原価を度外視し、国内外のトップベンダーと共同開発し、性能、品質の両面で、工房に集う煩方のゴルファーを唸らせる逸品に仕上がったと自信を漲らせる。

「ソナテック」とは、「ソナー」と「テクノロジー」を乗じた造語。造り手が水面下で、究め続けた技術を、工房の職人の手に委ねる。新たな「ソナテック」の神髄が始まる。

神髄二 座して尚、変わらぬ顔

熾烈を極める地クラブ市場。昨年、再興を目指して営みを始めた「ソナテック」に今年、ドライバーが揃う。精を尽くし、職人の手に委ねられる商材は、『ソナテック TD Forged ドライバー』。敢えて、「TD」=「ツアー・ディスタンス」と銘打った。プレーの匠であるツアープロではないが、しかしながら、憧れは彼らの飛び姿と距離。志向するヘッドは、座して尚、変わらぬ顔を欲した。

クラブの開発に携わった久保田康生が淡々と話し始める。「ゴルファーから見えるフェース面が、ソールの座り如何に関わらず、同じように見えるトップラインにデザインしました」――。

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何故なら、相反する形をソールが有するからだ。『TD Forged ドライバー』のひとつの形状的特長は、精密鋳造の技術を結集しソールの剛性を高めた「エックスラインソール」。僅かな重心の調整を求めるため可変式のウエイトを配し、結果、ソールデザインに凹凸が表れる。それは、奇しくもソールの座りに影響を及ぼし、フェースの見え方を変えてしまう。「だから、フェース面のトゥからヒールの左右、そしてフェースの上下で、フェースが同じ様に見えるよう均一化が必要だったんです」

そのため、フェースプログレッションは、0.1ミリ単位の精密さを求め、ヘッドの製造は台湾のベンダーに依頼。技術力は中国のベンダーを遙かに凌ぎ、チタンの溶解炉を有するレベルの工場。その工場ですら『TD Forged ドライバー』のヘッドは、1週間で数十個しか製造できない。歩留まりは2倍。製造コストは考えなかった。

そして、最大の特長は、高初速素材「SP700」を用いたカップフェースと編肉フェースを融合した「エックスラインフェース」。フェース中心をX状に支える強度をUPさせるほか、初速の向上に寄与している。初速が速いといわれる「SP700」は、高反発クラブのフェース材として多用され、薄肉加工に適しており、弾き感が強い素材。ゆえに、「反発係数を基準値内に収める作業に時間を有しただけではなく、金属音が高く打感が悪いイメージをも払拭しなければなりませんでした」

反発係数、打音、打感を極めるため、熱処理の温度と時間を研究し尽くした。低温で長時間。あらゆる試行錯誤の中で、最適を目指した。「工房でも顔、打感、打音、そして飛距離の全てに満足頂けるドライバーに仕上がったと自負しています」「ソナテック」再生の鍵となる『TD Forged ドライバー』――。造り手の想いは、FWにも受け継がれる。

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神髄三 委ねるために材を尽くす

「どうせ創るなら、コストを度外視して」――。ドライバーでもFWでも、「ソナテック」の再起に寄せる想いは同じだった。だから、「FWのヘッド原価とドライバーのそれはほとんど同じなんです」

『TD Forged Ti FW』に踏襲されたのは、新設計特殊肉厚フェース「エックスラインフェース」と、座り、顔、ヌケを意識した「エックスラインソール」。そして、FWにも鍛造チタンカップフェースとチタンボディを用いた。何故なら、「異素材なら、鍛造チタンカップフェースの絶妙な打感が失われます」

だから、「6-4チタン」×「6-4チタン」をプラズマ溶接で仕上げた。それだけではない。チタンボディには、余剰重量を生み出す素材特有の優位性が生まれる。#3ウッドで約25g。ソールに配されたウエイトスクリューをタングステン製に置き換えられば、重心位置は劇的に変わる。しかし、「一極に集中する重心特性のヘッドは工房では売りづらい」――。

売場を意識し、ソールの内側に余剰重量25gをアレンジした編肉ソールを設計。鋳造技術を活用したが、最厚部5ミリの編肉ソールは、「ステンレスの鋳造では、鋳型の中で素材が絶妙に流れ込まないという素材と構造のミスマッチもあるんです」FWに必要な低重心はチタンボディで成立する。そして、この編肉ソール「エックスラインソール」との形状的な相乗効果で秀逸な打音を奏でる。

「軟鉄鍛造アイアンの打感、打音を想起させます。キャリアの長いベテランゴルファーには、当社を代表する名器でキャビティソールの『CV1』の打感、飛び姿を彷彿とさせるかもしれませんね」――。「ソナー」という言葉の源には、"音"だけでなく、"反響"というセンスも内包される。こだわったのは顔、打感、打音、そして操作性。ソールに配される重量物は3タイプ(標準5g、別売3g、7g)を揃えた。

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「求めるクラブ長や捉まり具合によって使われるウエイトは異なるでしょう。そこから先は、売場である工房の職人さん達に委ねたいと思っています」――。託すために、材を尽くし、玄人に愛されるためのもの創りを徹頭徹尾貫いた「ソナテック」――。地クラブ市場で嵐の予感を漂わせている。

神髄四 数値の鬼に愛される上質と個の均衡

大阪市北区。数値の鬼と呼ばれる男が営む工房がある。「ゴルフギャレーヂ」を主宰する中井悦夫だ。シャフト、ヘッドの数値、品質に煩く、工房ながらにしてプロ用のチューンアップ機材のメーカーでもあり、全国の工房だけではなくクラブメーカーも、その機材を導入する。そのこだわりは、アイアンを1セット組むためなら、数セットのシャフトを取り寄せる。そして、製造誤差によるシャフトの曲りや重量誤差を許さない。そんな御仁が認めたのが、「ソナテック」――。

「ロイコレとは創業以来の付き合い。クラブを測定に来られてから20年以上になります」その鬼の言の葉は重い。「品質が高く、数値管理が徹底的になされている」中井が見るのは、アイアンならロフト角、フェースプログレッション、そしてソールインバージョン。特に、その均衡が抜群で、番手間でフローして、誤差が少ないブランドが「ソナテック」。そして、その評価は、『TD Forged ドライバー』と『TD Forged Ti FW』にも通じるところがあるという。

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「ウッドならリアルロフト、オリジナルロフト、そしてフェースプログレッションの精度、固体管理、そしてそのバランスが優秀です。特にトップエッジとリーディングエッジのデザイン、バランスが、スイングの目的に沿うように造形されています。売り手としては、ゴルファーのスイングを知り、シャフトが決まれば、フェースアングルとリアルロフトを推奨してあげるだけで、ゴルファーにマッチしたクラブに仕上がります」

同店のクラブメイキングには、パーツ固体の高い精度が求められるだけではなく、それがセットとして成立するための、番手間の均衡の高さが要求される。捲土重来を期す「ソナテック」を見て中井は、毒を吐かずして、繰り返す。「固体管理が出来ている」――。メーカーが供給するパーツに、長年苦悩を強いられてきたゆえの心の声。精度に魂を込めた造り手と工房が、ソナーの如く共鳴している。

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