第五十五回 "プロアマ"大会の広がりに期待
小川朗
山梨県甲府市生まれ。甲府一高→日大芸術卒。82年東スポ入社。「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女のメジャー大会など通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。フリージャー...
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男女プロゴルフツアーの大半が無観客で開催され、プロアマ大会がコロナ禍でバタバタと中止される中、異色の〝プロアマ〟イベントが注目を浴びつつある。プロといってもプロゴルファーではなく、野球のプロと、アマチュアゴルファーが一緒にラウンドする試みだ。
ものまねタレントがプロゴルファーの代役を務める形もすでに試された。ウィズ・コロナの時代、プロゴルファーたちも、うかうかしては、いられない。
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2020年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ用品界についてはこちら
プロ野球のレジェンドたちがゴルフ場に集結
完全試合男・八木澤荘六(元ロッテ)、西武ライオンズ第1期黄金時代のリードオフマン・石毛宏典、かつての巨人打線で中軸へのつなぎ役を担った川相昌弘、神宮の人気者・ギャオス内藤尚行(元ヤクルト)‥‥。野球ファンにとってはこたえられない豪華な顔ぶれが、目の前にいた。 その光景がスタジアムの放送席や記者席なら、誰も驚きはしない。だがここはゴルフ場。たまたま居合わせた人々が驚きの表情を浮かべるのも無理はなかった。 常に注目を浴び続けてきた選手達から放たれるオーラは、現役時代と変わらない。自然ににじみ出てくる明るさとさわやかさが、そこにいる人々を引き付ける。 野球ファンにとってみれば、そうしたスター選手たちとゴルフ場の緑の中で一日を共に過ごすことができるとなればどうだろう。まさに感動もの。実はそんな夢を実現する試みが進行中なのだ。 9月30日、静岡・レンブラントゴルフ倶楽部御殿場。ここでメディアに対し、テスト的に行われたのが「アスリートとファンラウンド!!」というドリーム企画だった。 アスリートとそのファンがつながり、きずなを深める仕組みを構築するSNSサービス「KIZUNA」とバリューゴルフが運営する「1人予約ランド」がコラボ。これに日本プロ野球OBクラブが協力し実現した。 本来は1人のOBと応募したアマチュアゴルファーが1日一緒に回るこの企画。ゴルフというスポーツは4時間を超えるプレーの中で、ショットやパットに要する時間は10分程度と言われる。残りの3時間50分は雑談にあてられるだけに、選手たちとじっくり話す余裕がある。 この日はメディア関係者向けの体験ラウンドのため特別にレジェンドたちが全組と3~4ホールずつスライドする形でプレー。さすが野球の世界で一流だっただけに、引退しても筋力と運動能力がハンパない。 桁外れのビッグドライブが飛び出す一方で、パットの時に発揮される集中力も人並外れている。プレーの合間には面白エピソードが次々に飛び出し、笑い声が絶えない。楽しいラウンドが実現した。 通のファンなら、レジェンドたちに直接聞いてみたい材料は山ほどあるはず。日本シリーズのあの場面は、実際どんな指示が送られていたのか? とか、完全試合のチームメイトたちの素顔やエピソードなど‥‥。もちろんオフレコはあるだろうが、聞いてびっくりの(秘)情報を得られるかもしれない。まさに夢いっぱいの企画と言える。物まねタレントがプロの代役
実は昨年の9月5日、神奈川のレイクウッドGCで、これとは似て非なる企画が実現している。物まね芸人と一般ゴルファーのラウンドだ。 「第1回じゅじゅ苑カップ」と銘打って行われたこの大会には葉月パル、プリティ長嶋、アントキの猪木、ぺよん潤、リトル清原らが参加。7組すべてに、ものまね芸人が入って一般参加者と18ホールプレーする内容だった。 このコンペで何より楽しかったのは、表彰パーティー。芸人全員がものまねを披露し、参加者の爆笑を誘っていた。 参加費や収益の一部は世界の子供たちを支援するため、ユニセフに寄付された。ゴルフの楽しみだけでなく、一日笑って過ごせる上に、チャリティにもつながるコンペというのも、なかなかない。 コロナ禍のため今年の9月に予定されていた第2回は延期されたが、来年4月の開催に向け準備が進んでいるという。このイベントを企画したゴルフリサーチ㈱の代表取締役・長野豪洋氏は、11月11日に、千葉県のキングフィールズGCで「DREAM GOLF(ドリームゴルフ)」と題した一風変わったプロアマ大会も準備中だ。 「以前から『プライベートでプロゴルファーと回りたい』という声は多かったので、それを実現させる企画です。プロとのラウンド料金を入札していただき、落札した方がプレーできます」。 まず参加費2000円を払ってプロの氏名またはカテゴリーを記入する。2万円以上の金額を入札。落札できれば、一緒にラウンドした上、ホールアウト後に30分間、パターのレッスンとアドバイスが受けられる。ちなみにプレーフィーはキャディ付きで1万9800円がかかる。すでに賞金女王経験者と日本オープン歴代優勝者、PGAシニアツアー優勝者が参加することが決まっているという。 日本の男女レギュラーツアーは感染拡大防止の名のもとに、10月までプロアマ戦を開催することなく進んできた。しかしそれが正解なのかは、意見が分かれるところ。 協会の使命は選手たちに稼ぎ場所を提供すること。だが、今年はその使命をほとんど果たせていない。シーズン当初の開催中止続きの後、無観客やエキシビションで試合に出られるようになった選手たちはまだいい。プロキャディー、観客席やトイレなどの設備関係を請け負う業者などが食らっている打撃は大変なものだ。 そんな状況下、徐々に増えつつある野球選手やものまねタレントとラウンドできるイベントの数々。これが大きく育てば、プロゴルファーだけでなく、周辺の仕事をする人々も活路を見いだせる。 一方で、プロゴルファーといえどもコミュニケーション能力が低いと出る幕はますますなくなっていく。トッププレーヤーに求められているのは試合での素晴らしいプレーだが、ファンやアマチュアとのコミュニケーションも大切なプロアスリートの仕事の一つ。それを生かせる場を作れないのはツアーの責任だろう。■小川朗の目
最近、夕刊紙の連載でタレントやスポーツ選手をインタビューする機会が多い。その現場で感じるのは、コミュニケーション能力の高さだ。例えば元ヤクルトの飯田哲也さんはベストスコアが69。その一方で、アウトが39、イン69という大波賞など、面白エピソードがよどみなく出てくる ▼関根勤さんのゴルフ愛もスゴイ。ずんの飯尾和樹さんなど、事務所の後輩にはクラブを惜しみなくプレゼント。タモリさんとの猛練習体験や明石家さんまさんとのラウンドエピソードなど、爆笑の連続だった ▼翻って、プロゴルファーはどうか。ゴルフは自分の稼ぎ場所であるにもかかわらず、プロアマなどで一緒に回っているアマチュアに対する接し方は褒められたものではなかった。それはかつて、ツアーに届いていたクレームの数が証明している ▼プロアマは、お客であるアマチュアのゲストがいかに楽しく一日を過ごせるかにかかっている。タレントたちの多くが、その達人であることは間違いない。野球選手がファンにサービスできることも、今回のイベントで証明された。ことプロアマに関しては、プロゴルファーが他のスポーツ選手やタレントから学ぶことは山ほどある。この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2020年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ用品界についてはこちら
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