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都道府県と市町村はゴルフ場の敵なのか

月刊ゴルフ用品界2018年2月号掲載
なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。


ゴルフ場利用税は地方自治体や総務省などの抵抗により、今年も継続が決まった。ゴルファーが1ラウンドあたり約650円を納めている利用税が、市町村にとって手放せない財源となっているからだ。

一方でプレー代が下降の一途をたどり、利用税の存在自体がゴルフ場の経営を圧迫している。行政とゴルフ場の関係は、はたしてこれでいいのか。2つのケースを検証することで、その答えが見えてくる。

神奈川県が地代の減免を解除

ここに平成26年12月25日付の『ゴルフ場利用税の堅持を認める緊急要望』という文書がある。これは神奈川県の黒岩祐治知事、同県の市長会会長である内野優海老名市長、町村会会長である大矢明夫清川村長が3者連名で衆参両院議員に送ったもの。

その内容は「(前略)神奈川県におけるゴルフ場利用税の税収額(平成25年度)は約16億円で、このうち県内市町村への交付額は約12億円に達しており、ゴルフ場所在自治体にとって極めて重要な財源となっています。ゴルフ場自治体は、ゴルフ場の開発に係る住民調整に始まり、ゴルフ場が存在することによる様々な行政需要に誠実に対応してきました。ゴルフ場利用税は、こうした行政需要の対価として、その存続が認められてきたものです。(中略)以上の点をご賢察いただき、ゴルフ場利用税の堅持に向けてご尽力くださいますよう強く要望いたします」というもの。

しかしこの文面にある「ゴルフ場が存在することによる様々な行政需要に誠実に対応」という言葉とは真逆の事態が、昨年の7月23日に起こっていた。その舞台となったのが、神奈川県内の茅ヶ崎ゴルフ倶楽部だ。9ホールの同コースは大規模火災時等に、市民が駆け込む広域避難場所としての役割も担っている。

しかし土地の6割を所有している神奈川県は、3年前に減免措置を解除し地代(約1億円)の倍増を要求した。コースを借りて運営していた観光日本が撤退を表明したことで、県は事業者を公募。優先交渉権を得た電通・東急グループは、ゴルフ場を閉鎖しての複合商業施設を計画した。

木造家屋が密集し、ひとたび火事が起きると大火になってしまう危険性が高い茅ヶ崎市。住民らは「広域避難場所を守る会」を結成し、ゴルフ場の存続を訴え続けた。そうした地道な活動が、電通・東急グループの撤退で実ったとの見方もある。

その後新たな事業者は現れず、17年3月から、3年間の期限付きでゴルフ場の存続が決定。賃料もこれまでと同じ6200万円に減額された。

県が大家で観光日本が不動産業者、借主がゴルフ場運営会社の㈱武蔵野という構図で、20年3月までゴルフ場が存続できる。地元住民にも、ゴルファーにも朗報だった。

県が住民たちに嫌がらせ

いざという時の避難場所だけに、市民からは「ゴルフ場の中を見たい」との要望が上がった。ゴルフ場内でマルシエ(青空市場)を開催するプランが浮上。7月23日の15時から「未病」をテーマにしたセミナーを開催し、16時から地元の飲食店が多数参加するマルシエを行う予定だった。

ゴルフをしない市民にも、家族ぐるみでゴルフ場の解放感を味わってもらうことができるこのイベント。ゴルフ場にとっても、地元ゴルファーの掘り起こしが期待できた。

ところが開催1週前になって、神奈川県財産経営課が「ゴルフ場はゴルファーが使う以外は認めない」と運営者側に横やりを入れ、マルシエは中止に追い込まれた。

ゴルフ場を商業施設にする思惑を潰された、県側の意趣返しにも見える嫌がらせとも思えるが、困ったのは住民側だ。出展者や協力先に事情説明を行う傍ら、中止の告知をするチラシを3000枚作製。周辺住民へのポスティングにも追われた。当日も現場に詰め、中止を知らずに来た住民への対応に備えた。

12月6日、住民側は県の担当者に抗議したが「ゴルフ場はゴルファーにしか貸さない」と繰り返すのみ。こんな状況では多くのゴルフ場が行っているフリーマーケットやコンサートなど、一般向けの集客イベントは実現のしようもない。ゴルフ場の収益を上げることも難しくなる。

神奈川県財産経営課は、どこまで茅ヶ崎GCの周辺住民やゴルファーたちをいじめるつもりなのだろうか。

市原市はゴルフ場と二人三脚

神奈川県とは対照的な自治体がある。ゴルフ場を市の基幹産業として位置付けている千葉県市原市だ。ゴルフコースの数は33で自治体日本一(2位は兵庫県三木市の25)。また市原には年間350万5000人の観光客が訪れるが、その半数近い169万人がゴルフ場の利用者だという。

しかし一方で若い層のゴルファーが増えず、高齢化によるプレー人口の減少も目に見えている。利用税交付金もピーク時に10億円を超えていたことを考えれば、直近の6億8600万という数字も日本一とはいえ手放しでは喜べない。ゴルフ場の減収は法人市民税や固定資産税などにも反映され、市の歳入にもダイレクトに影響する。見通しは決して明るくない。

そのため市とゴルフ場は危機感も共有しつつ、共存共栄を目指しガッチリとスクラムを組んだ。元々市原のゴルフ場には『ゴルフ場連絡協議会』という組織があり、支配人の意思決定や自治体との協議がスムーズに行える特長がある。その結果ゴルフ場と市が協力する態勢が整い、他の自治体ではできないプログラムが次から次へと実現しているのだ。

最も画期的なのは市内8コースに分かれ小学生284人が参加した「ゴルフキッカケ体験」。ゴルフ場でのランチに始まる課外授業はクラブバスの送迎が付いている。施設を見学後、レンタルクラブを手に練習グリーンやドライビングレンジで基礎練習を行う。最後は本コースを使い、ティーからグリーンまでのプレーを体験した。

ほとんどの小学生がゴルフ初体験。手ぶらでコースを訪れプロからグリップとアドレスを教わり、練習場で打ってみると「面白い」との歓声が次々に上がった。コースではゴルフ場ならではの解放感と、ゴルフカートの乗り心地も満喫。「ゴルフをちゃんとやってみたい」と語る子供たちも多かった。

この他にも中・高校生、一般向けのゴルフ体験も実施。特に高校生にはゴルフとお仕事見学のバスツアーを行うだけでなく、ゴルフ場を就職先の候補に加えてもらうため1~3日の職場体験も行っている。行政が積極的に学校と交渉したからこそ、実現した企画だ。

市原市とゴルフ場の目標は同じ。プレー人口とともに、ゴルフ場のスタッフも増やしていくことだ。同じテーマを協力し合って実現し、ウィン・ウィンの関係になる態勢が見事なまでに整っている。

神奈川県の黒岩知事と財政経営課の面々には、ぜひ市原の現状を見てもらいたいものだ。

市原だけでなく多くのゴルフ場が、子供たちに門戸を開いている

鹿沼72カントリークラブ(栃木)では8月21日に子供向けにコースを無料開放する「ごるふぁみふぇすた」を開催。

きれいな水に入れ替えられたウォーターハザードでは水遊びもOK。芝の上を自由に駆け回る子供たちの歓声が一日中響いた。5年目の昨年、参加者は500人に達している。

11月に「天体観測・イン・ゴルフ」という斬新な企画を実現したのはマグレガーカントリークラブ(千葉)。ゴルフ体験の後ティーグラウンドにテントを張り、天体観測をするイベントも家族連れから好評だったという。

レンブラントゴルフ倶楽部御殿場(静岡)も12月3日に「スーパーゴルフフェス」を開催。プロアマやニアピンコンテスト、レッスンやトークショーなどが開催され、よちよち歩きのゴルファーが注目を集めた。

良識あるゴルフ関係者たちは、すでに10年、20年先を見据え地道な努力を続けている。その一方で相変わらず幅を利かせ、昔の感覚で事を進める輩も多い。ミスリードをして平気な顔をしているゴルフ関係者には、猛省を促したい。

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ライター紹介 ライター一覧

小川 朗

小川 朗

1960年山梨県甲府市生まれ。甲府一高→日大芸術卒。82年東スポ入社。「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女のメジャー大会など通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後今年9月に退社。

フリージャーナリストとして本誌を始め、週刊誌、ニュースサイトなど各方面に執筆中。㈱清流舎代表取締役COO。東京運動記者クラブ会友。日本ゴルフジャーナリスト協会副会長。

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