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  • 新打法へ日の目をみるかチェ・ホソン選手のスウィング

    塩田正
    昭和7年、千葉県生まれ。昭和31年東京教育大学(現筑波大学)体育学部卒業。体育心理学専攻。同年(株)ベースボールマガジン社入社。ゴルフマガジン誌編集長を経て独立。会社役員、短大講師を兼ねながらゴルフライターとし...
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    塩ジイにとって、昨年からあるプロの打ち方に何か引っかかるものを感じている。 もうお気づきかもしれないが、韓国のチェ・ホソン選手のインパクトの後、右肩を下げながらもう一度くるっと回ってフィニッシュに至るあのスウィングだ。 塩ジイが初めてチェ・ホソン選手を知ったのは、2018年11月のカシオワールドオープンだった。TV観戦を決め込んでいたのだが、彼はこのビッグイベントで、ちょっと普段お目にかかれないフォームながら、堂々15アンダーの好スコアで優勝した。 続く日本シリーズJTカップでも、画面を通して彼のフォームを穴のあくほど見た。 どの大会でも彼の組には多くのギャラリーがついて回って、ショットごとに大きな歓声が上がっていた。同時に何か珍しいものでも見たような驚きの声も混じっていたように思えた。 塩ジイも最初のうちは、インパクト後に体を回しながら、あたかも歌舞伎役者が六法を踏むようなあの動きには、どんな意味があるのだろうかと思った。失礼ながらギャラリーへのサービスかとも考えた。 だが、待てよ、塩ジイにも、インパクト後に回転こそしなかったが、右足を半歩前へ出し、右肩を下げて、ボールを見送ったことがあった。彼のスウィングを頭に描いているうちに、幾たびかそれに近いフォームで打ったことを思い出した。 なぜそのようなフィニッシュになってしまうのか、よく考えてみると、そんな時に限って、インパクトの直前にフックの予感があり、フェースがかぶるのを防ぐために、咄嗟に右足を前へ出していたように思う。もしそのまま打ったら、俗にチーピンと言われる大フックを招いていたはずである。 だが、フィニッシュが不安定な割には、インパクトでボールのつぶれる感じが手に伝わり、軽いドローで飛距離もそこそこ出ていたように感じた。 そんな動きを頭に描いているうちに、もし、チェ・ホソン選手のようにボールを打ってすぐに、右肩を下げながら右足を半歩前に出し、その足を軸に1回転したら、彼と同じようなスウィングになるのではないだろうかと思った。 そして、結果はつかまり感の良いインパクトと程よいドローボールで距離も伸びているはず――と勝手にイメージを広げていた。 後でわかったのだが、彼の狙いは「年をとって(1973年生まれ。36歳)飛距離が落ちたのを考えてこの打ち方にした」と言っているそうだ。実際、インパクトでのつかまりの強さが36歳にして、今も282ヤードの平均飛距離を保つ要因になっているのではないか。

    砲丸投げも回転投法

    塩ジイは中学(旧制)、高校、大学(2年半ばまで)で、陸上競技の砲丸投げ、円盤投げ、ハンマー投げなどをかじってきた。 中学時代を除けば、いずれも3流、4流選手で、これといった記録を残していない。ただ、大学2年までは、いわゆる部活で相当激しい練習をやってきた。 今も時々陸上競技をTVで見るのを楽しみにしている。その中で砲丸投げの選手のほとんどが、円盤投げのようにサークルの中で体を1回転させて投げているのに驚いた。 塩ジイのころは砲丸を右首に当て(右利きの場合)、背中を投げる方向に向け、右ひざを曲げ、右肩を下げた低い姿勢から、右足でステップして、直線的に腕を突き出して投げていたものだ。 それが今では前述のように、右足のステップに代えて、左足を軸に回転することから始動、その勢いを利用して、最後に前方へ突き出すやり方に変わったのだ。中には古い直線ステップ方式で投げている選手がいるが、傾向は回転の投げ方に移りつつあるという見方が強い。 砲丸投げの日本記録は18.85メートル(中村太地選手・ミズノ=2018年)だが、もちろん投げ方は回転投法だ。 投てき競技は日本人にとって不得手の種目といわれてきた。欧米人に比べて体力的に大きく劣っていたからである。今でもその傾向は残っているが、新技術を採り入れるという点では、日本人の器用さが有力な武器になる。 現在日本記録と世界記録の差は4メートル弱だが、回転投法による技術革新と欧米人に近づきつつある体力アップで、ここ数年で世界との差は大きく縮まってくるのではないかと期待している。

    未来打法への第1歩か

    塩ジイはチェ・ホソン選手の体の回転で飛ばすという打ち方が、回転投法へ進化を遂げた砲丸投げとかぶさってきてしまう。 塩ジイの頃は、砲丸投げの回転投法など考えもつかなかったと同じように、異常とさえ思える現在のチェ・ホソン選手の回転打法が「未来のゴルフスウィングへの入り口になるかもしれない」と、つい思ってしまうのである。 ほぼ半世紀前、オーストラリアの物理学者ミンディ・ブレーク博士は「未来のゴルフ」(日本語版/産報出版社=1952年)という著書で①強いフックグリップ②両つま先を飛球方向へ向けた構え③極端なアップライトスウィングなどの特徴を挙げていた。だがこの未来を透視した技術論は日の目をみることはなかった。 その点チェ・ホソン打法には、進化への伸びしろがたくさん残っているような気がする。 10年後、ダスティン・ジョンソンが新回転打法と称して、進化したチェ・ホソン打法を継承、45歳になっても、さらに飛距離を伸ばしている姿が重なって、どうしても頭から離れない。
    この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ用品界についてはこちら
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