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無念無想、ただ打つことのみを考える

エイジシュート21回の塩じいが語る 塩田正
無念無想、ただ打つことのみを考える

「スタンスをとってしまえば、すべてが決定したのだ。なすべきことはただ一つ、ボールを打つの一途あるのみ」と言ったのはイギリスの心理学者レスリー・スコンである。

摂津茂和さんの「ゴルフ名言集」(鶴書房)の中に出てくる言葉だ。著者の解説によれば「スタンスを取った時には、すでに方針は決定されているのだから、あとは遅疑逡巡することなく、ボールを打つことに精神を集中すればよいのだ」ということになる。

また、アメリカ女子ツアーのレジェンド、スウェーデンのアニカ・ソレンスタムのコーチとして知られているピア・ニールソン女史も同じようなことをいっている。

「ボールの後方で目標を確認し、スウィングのチェックをしてから構えに入るのが一般的な方法だが、アドレスしたらスウィングのことは忘れて、ただボールを打つだけです」という話を東京での講演会で聞いた。

なぜ、こんな話を持ち出したかというと、近頃、塩ジイは実戦のティーグラウンドでも、フェアウェーでも、ボールを打つことよりも、スウィングのチェックのほうに、重点を置いて構えているような気がしてならないからだ。

ここ数年、塩ジイはダウンスウィングのスタートで、両手をドロップさせると説く、アメリカの有名なレッスンプロの言葉に従って練習を続けてきた。

難しい動きだが、ある程度の結果が出たので「今度こそは、ナイスショットにつながるのではないか」と大きな期待を抱いてコースに出ていた。

ところがである。この両手ドロップは、なんとも期待に背いて、いつも無残な結果に終わってしまう。ドライバーを始め、ウッドからアイアンまで、ダフる回数が目立ち始めたのだ。

なぜだろうと振り返ってみた結果、「構えたらボールを打つだけ」という言葉に反して、構えてもなお「両手をどのように振り下ろすか」とか「いつ体重を移動させるか」などの技術的なポイントに、力点を置きすぎていることに気がついた。

アドレス後は雑念を払う

「アドレスしたらボールを打つことに集中」という言葉は、ゴルフのスウィングが、頭で考えてコントロールできるほど簡単なものではない。「下手な考え、休むに似たり」ということにならないように気をつけろと言っているようにも聞こえる。

年間グランドスラムを達成したことで有名なボビー・ジョーンズも、スウィングの難しさを次のようにいっている。

ゴルフがひどく腹立たしいゲームである理由の一つは、一度学んだことをいとも簡単に忘れてしまうことであり、われわれはすでに何度も気がついて矯正したはずの欠点と、いまだに戦い続けている自分を発見する。

しかしどんな矯正法にも永続的な効果があるとは思えず、スウィングの他の部分に気を取られた途端に、古い欠点が頭をもたげて、またしてもわれわれを悩ませる」

出典:ゴルフのすべて=ゴルフダイジェスト社・永井淳訳

ボビー・ジョーンズにしてこの言葉である。われわれ一般のアマチュアが、構えてから前記のような技術のポイントにばかりとらわれていたら、身につきはじめた新しい技法などを生かすチャンスは全く絶望的である。

そればかりか、ジョーンズがいうように、すでに矯正されて良い方向に向かっているのに、古傷である力ずくのスウィングや手打ちなどを生き返らせてしまうことにもなりかねない。

以上のように考えてくると、塩ジイが選んだ新打法のラウンドで、貧打続出となったのも当然といえるかもしれない。

だが、実際問題、構えたらボールを打つことのみに集中しようとすると、これがなかなか難しい。

手本は若い女子プロたち

では、アドレスしたら、ただひたすらボールを打つことに専念するにはどうしたらよいか。まず頭に浮かんだのは、スポーツ雑誌社に勤めていたときに見たボクサーたちのシャドーボクシングである。

彼らがあの狭いリングの上で、軽快なステップを踏みながら、鋭く左右のストレートやジャブを繰り出す姿が印象的だった。

このときトレーナーにシャドーボクシングの効用について聞いてみた。彼は「ボクサーが相手の隙を見つけたとき、瞬時に手が出るように筋肉に教えているのです」と説明してくれた。

このようにシャドーボクシングが、無意識のうちに筋肉が反応して、パンチを出せるものであれば、素振りという〝シャドースウィング〟も「アドレス後には、ただボールを打つだけ」という心の環境作りに、もってこいの方法ではないかと考えたのである。

そこでシャドースウィングのお手本だが、塩ジイは女子プロ、それも〝黄金世代〟といわれる人たち若い人たちのスウィングだと思う。シンプルな軌道上を加速させたヘッドで振り抜くスウィング型のフォームがぴったり合うような気がするからだ。

女子ツアーを実地やTVで見る機会があれば、彼女らの素振りを参考にするのをお勧めする。

男子プロのスウィングにも学びたい人はたくさんいるが、シニアゴルファーの筋力からすれば、女子プロの飛びとフォームの柔らかさのほうに親しみが湧く。

プレーを遅らせないよう注意しながら、最初の素振りはハーフスウィングでゆっくりと振り、2回目はボールの先で「ビューンと音が出るようなスウィング」をして、なんとか雑念を払いのけるインパクトを目指したい。


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塩田正

塩田正

昭和7年、千葉県生まれ。昭和31年東京教育大学(現筑波大学)体育学部卒業。体育心理学専攻。同年(株)ベースボールマガジン社入社。ゴルフマガジン誌編集長を経て独立。会社役員、短大講師を兼ねながらゴルフライターとして活躍。

最高のハンディは5。現在は14。ベストスコア69。アルバトロス1回。ホールインワン4回。エージシュート21回(平成29年1月現在)。著書「ゴルフ“死ぬまで”上達するヒント」(ゴルフダイジェスト社)ほか多数。日本ゴルフジャーナリスト協会顧問。

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