東京2020五輪ではテニスとゴルフの紫外線曝露リスクが突出
2025年12月に公表された米国の医学ジャーナル「Cureus:Journal of Medical Science」に、『ゴルフアパレルにおける紫外線防御評価:米国の主要ゴルフアパレルブランドが高リスク人口向けに提供しているスキンカバレッジ(皮膚を覆う度合い)の分析』(Evaluation of Golf Apparel for Ultraviolet Protection: An Analysis of Skin Coverage Provided by Leading U.S. Golf Apparel Brands for a High-Risk Population)(Taylor Merkle et al., 2025)という論文が発表されている。
この研究の背景として、先行研究で示されてきた「ゴルフをする人はしない人に比べて生涯の皮膚がん罹患率が2.4倍高い(Stenner B et al., 2023)」ことや、「紫外線暴露の影響を受けやすいゴルフにおいて日焼け止めを常に塗布していると回答したゴルファーはわずか36%だった(Weikert AE et al., 2021)」こと、「2020年東京五輪のデータではテニスとゴルフは屋外競技の中で最も紫外線曝露リスクが高いグループであったこと(Downs NJ et al., 2020)」などを挙げている。
ゴルファーはUVカットの意識が低く皮膚がんのリスクが高い
ゴルフプレー中の身体への紫外線曝露は、肩、背中、首の後ろ、腕の後ろで最も高く、身体前面への曝露は比較的少ないと推定されている(Sung H et al., 2006)。そのため、UVカット効果を最大限に高めるために、暗めの軽量生地に長袖シャツと長ズボンを選ぶことが推奨されることが多い。
だが、通常ゴルフ場ではドレスコードが求められるため、ゴルファーにおいてはアパレルのデザイン選択には制限がかかる。こうした問題意識から、この論文の著者ら(Taylor Merkle et al., 2025)は、ゴルフ専用として市販されているアパレル製品(ブランド5社)における紫外線防止設計要素と生地特性評価を目的とした調査を実施した。
この調査は2025年7月7日~7月21日に行われ、各ブランドのゴルフアパレルサイトについて5名の評価者による構造化分析が実施された。
具体的には、帽子、トップス、ボトムス、アクセサリーのカテゴリーで商品数が記録され、アパレル製品の性別、年齢層別に分類された。さらに、帽子の場合はつばの広さ、トップスの場合は首やフードカバーの有無や形状、同じく背中、胸、肩、腕全体および手指のカバー度合い、ボトムスについては脚全体をカバーしているかどうか、アクセサリー(取り外し可能な袖やネックゲイターなど)については首、腕、手指をカバーしているかどうか等について調査された。
その結果、合計671点の製品について、形状やデザインの特徴、UPFラベル(Ultraviolet Protection Factor:紫外線防護係数)の有無について評価・報告されている。
ゴルフ用として販売されているウエアでもUPFラベル表示率が極めて低い
調査の結果、UPFラベル表示率はウエアで特に低かった(ボトムス7.1%、トップス16.7%)。アクセサリーについては性別で差が見られ(男性用50%、女性用100%)、男性向け製品の半分でUPFラベル表示が確認されなかった。
また、上肢のアクセサリーについては、腕全体を覆う製品が100%である一方、手指を覆う製品は存在しなかった。
ゴルフ場では襟付きシャツの着用が一般的なドレスコードとなっているが、先行研究ではスイング時の前傾姿勢に加え、多くのゴルファーがシャツのボタンを外すため、首へのUV曝露は防げないことが明らかにされている(Sung H et al., 2006)。
この論文(Taylor Merkle et al., 2025)の調査では、首を完全に覆っているデザインのシャツは、男性用14.5%、女性用27.7%、子供用4.8%に過ぎなかった。この点については「モックネックや袖口のデザインの工夫によってこれらの部位のUV保護をさらに強化できる」としている。
これからのゴルフウエア開発においては皮膚科医、公衆衛生学者、アパレルデザイナーの緊密な連携が求められる
この論文(Taylor Merkle et al., 2025)の著者らは、現在「ゴルファー向け」として販売されているアパレルであったとしても、皮膚を保護する機能に欠けUV暴露のリスクが高い製品が多く含まれており、肌を適切に保護するためのデザイン性や素材への考慮が欠けているとしている。
メーカーはエビデンスに基づいた紫外線防御原理よりも、スタイルや着やすさを優先している傾向が強く認められる。
また現状においては、上肢に取り付けるような部分的アクセサリーなど、部位に特化した製品を補完的に併用することで、衣服だけの場合よりも効果の高い紫外線防御対策となる可能性もあるとされる。
最後にこの論文の著者ら(Taylor Merkle et al., 2025)は、こうした現状を根本的に改善していくためには、今後は皮膚科医、公衆衛生学者、アパレルデザイナーが緊密に連携・協力できる体制を構築し、エビデンスに基づくUV防御の原則をウエアのデザインに反映させていく必要があること、そしてゴルフアパレル企業のマーケティングだけに頼っていては十分なUV防御効果を確保するのには課題が多いことを認識するべきである、とまとめている。
なお、ゴルフを安全に楽しむためには、Kita T et al.(2024)が主張するように、UVおよび熱中症対策の双方の観点が重要となる。さらには、ウエアの形状や素材だけでなく、プレー中の所作についても、安全なラウンドを楽しむためには重要である(北, 2025)。
参考文献・参考資料
・Taylor Merkle et al.(2025) Evaluation of Golf Apparel for Ultraviolet Protection: An Analysis of Skin Coverage Provided by Leading U.S. Golf Apparel Brands for a High-Risk Population, Cureus. 2025 Dec 2;17(12):e98314. doi:10.7759/cureus.98314. eCollection 2025 Dec.
・Stenner B et al.(2023) Golf participants in Australia have a higher lifetime prevalence of skin cancer compared with the general population, BMJ Open Sport Exerc Med. 2023;9:0. doi:10.1136/bmjsem-2023-001597.
・Weikert AE et al.(2021) Golfers' interest in multilevel sun-protection strategies, Int J Environ Res Public Health. 2021;18:7253. doi:10.3390/ijerph18147253.
・Downs NJ et al.(2020) Biologically effective solar ultraviolet exposures and the potential skin cancer risk for individual gold medalists of the 2020 Tokyo Summer Olympic Games, Temperature (Austin). 2020;7:89–108. doi:10.1080/23328940.2019.1581427.
・Sung H et al.(2006) UV radiation exposure to body sites of golfers and effects of clothing, Fam Consum Sci Res J. 2006;34:386–400.
・Kita T et al.(2024) Observation of Clothing Color and UV Transmission in Hot Environments: A Pilot Study on Playing Golf in Mid-Summer in Japan, The Conference of Digital Life vol.2
・北 徹朗ら(2025) 猛暑下の「シャツ出しプレー」は着衣内温度を下げない-40℃越えの北関東ゴルフ場での検証-、ゴルフの科学 Vol.38, No.1, pp.40-41
・北 徹朗(2025) 真冬のスポーツ実施中における紫外線量―ゴルフ、スキー、マラソンのうち紫外線対策が最も必要なスポーツは何か―、ゴルフエコノミックワールド 2025年4月号
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この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2026年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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