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    日本における権威あるプロゴルフ団体:PGAとLPGA 日本において権威あるプロゴルフ団体を挙げるならばPGA(公益社団法人日本プロゴルフ協会)とLPGA(一般社団法人日本女子プロゴルフ協会)であろう。もともとLPGAは1967年にPGA内に「女子部」として発足後、1974年にPGAから「日本女子プロゴルフ協会」として独立しているのでルーツは同じである。そして、2020年度からはPGAに女性会員が入会するなど、近年はPGAで資格を取得した女子プロも見られだしている。 2026年現在、PGA会員数は約5500名、LPGA会員数は1452名とされている。 少しずつ増えている「博士プロ」 2000年代初頭より日本において博士号を保有するプロゴルファーが誕生している。筆者の調査(2026年3月調査)によれば、日本初の博士プロは大東将啓氏であり2003年に博士(学術)を取得している。また、最近では2026年3月に鈴木タケル氏が博士(造形)を取得している。 2026年現在で約7,000名にも及ぶプロゴルファーのうち「博士プロ」であるのは下記の6名である。 〈PGA〉 ・大東 将啓 博士(学術)(高知工科大学)2003年9月 ・安藤 秀  博士(体育科学)(筑波大学)2007年3月 ・江原 義智 博士(スポーツ医学)(筑波大学)2017年9月 ・鈴木タケル 博士(造形)(武蔵野美術大学)2026年3月 〈LPGA〉 ・野澤むつこ 博士(工学)(東京工業大学)2010年3月 ・長谷川弓子 博士(体育学)(中京大学)2013年3月 博士プロはどんな研究で博士号を取得したのか 「研究」とは、ある問題意識についてどのような先行研究が行われているかを調査し、未踏の領域(現状の理論で欠けていること)は何かを明確にした上で、調査や実験によってその欠けている部分を明らかにし、理論として導出して行く作業である。 博士学位の要件を満たすパブリケーション(学術論文の積み重ね)として認められる実績を上げるには、学部(卒業論文)や修士(修士論文)はもちろん、入門的な査読ジャーナルへの投稿経験を多く積まない限り、博士取得レベルに到達するのはかなり難しい。近年、プロスポーツ選手がセカンドキャリアのために大学院(修士課程)にチャレンジすることが報じられるのを目にすることがあるが、博士号(Ph.D)はそれに比べて何倍もハードルが高い。 学位取得したプロゴルファーたちの博士論文タイトル(表1)を見ると、プロとしてのリサーチクエスチョンはスイング動作に限らず多様であることが見てとれる。なお、国立情報学研究所(NII)のデータベース(CiNii)で誰でも博士論文のタイトル等は閲覧することができる。 真価が問われるのは博士号取得後:『論文を書かない研究者はネズミを捕らないネコと同じ』 「末は博士か大臣か」という言葉があるように、研究者における集大成が博士取得であった時代がかつてはあったが、それは遠い昔の話である。現代の学術界(大学)では「研究者」とは単に博士号を有することとは考えられていない。30~40年ほど前から、博士号取得は集大成ではなく研究者としてのスタートラインであると捉えられるようになっており、いまではそう考えるのが普通である。 要するに、学位取得はあくまでスタートラインであり、その後その人が研究を継続するかどうか(絶えず論文を出し続けられるか)で博士としての真価が問われる。これは博士プロに限らず、筆者を含めた大学業界にアカデミックポスト(教授、准教授、講師、助教)で従事する者すべてに当てはまることでもある。 北海道大学の角皆静男名誉教授は、研究者にとっての論文十ヶ条を示しているが「研究者としての姿勢」が語られる論稿でよく引用される(上出2014,渡辺2016など多数)ので、筆者の稿でも下記に引用させて頂く。 〈論文十ヶ条:北海道大学角皆静男名誉教授〉 1.「書かれた論文は書いた人の研究者としての人格を表す」 2.「データのみ出して論文を書かない者は、テクニシャンである」 3.「データも出さず、論文(原著論文)を書かない者は、評論家である」 4.「研究者は論文を書くことによって成長する。また、成長の糧にしなければならない」 5.「論文は研究者の飯のタネである」 6.「論文は後世の研究に影響を与えなければならない」 7.「研究者は書いた論文に責任を問われる」 8.「忙しくて論文が書けないというのは、言い訳にはならず、能力がないといっているのと同じである」 9.「博士論文以上の論文を書けない者は、その博士論文は指導教官のものといわれても仕方がない」 10.「研究において最も重要なのはアイデアであり、それが試されるのが論文である」 日本ゴルフ学会に新設された研究方法を学べるプロ向け講座 日本ゴルフ学会関東支部(理事長:北 徹朗)では、2025年度より「サマーセミナー」を開始し多くのプロがこれに参加した。このセミナーを主宰するのは、博士プロの鈴木タケル先生(PGA・武蔵野美術大学講師)である。 日々のレッスン活動で感じる疑問や記録を「研究」としてまとめるにはどうすればよいのか、ゴルフ場や練習場でデータ収集するにはどうすればよいのか、収集したデータはどうやって集計や統計分析すればよいのか、そして最終的にレポート(論文)としてどうまとめて行けばよいのか等々、研究作法のハウツーを1泊2日の合宿で経験して頂いている。そもそも、問題意識(リサーチクエスチョン)をどう考えればよいのかさえわからない場合など、研究の着眼点についても初学者目線で解説し、参加者自身に手を動かして実践して頂くセミナーとなっており、研究経験のない人でもゼロから学ぶことができる。 ここに参加した多くのプロと学者(大学教員)の共同研究は、2025年11月に愛知県瀬戸市で開催された日本ゴルフ学会第35回学会大会で多数発表されている。日々、現場でレッスン活動をされている方で、エビデンス・ベースド・ティーチング(EBT)を体現できるアカデミック・プロを目指されたい方は、是非、日本ゴルフ学会の門を叩いて頂きたい。 参考文献・参考資料 1)日本女子プロゴルフ協会(2026)JLPGA公式女子プロゴルフ選手名鑑2026 2)(公社)日本プロゴルフ協会ウェブサイト:【歴史】https://pga.or.jp/about/history(2026年3月17日確認) 3)(一社)日本女子プロゴルフ協会ウェブサイト:【歴史】https://www.lpga.or.jp/about/history/(2026年3月17日確認) 4)上出洋介(2014)国際誌エディターが教えるアクセプトされる論文の書きかた、丸善出版 5)渡辺 豊(2016)角皆静男先生のご逝去を悼む、地球化学 50巻1号 北 徹朗|きた・てつろう 博士(医学) 武蔵野美術大学教授・同大学院博士後期課程教授 GMACゴルフ市場活性化委員会有識者委員(企業連携・交流部会副委員長)
    (公開)2026年04月02日
    高齢者に人気のスポーツのうち怪我の割合が最も高いのはゴルフ 2025年10月に権威あるスポーツ医学誌Orthopaedic Journal of Sports Medicineに公開された論文(Andrew Qi et al., 2025)に、米国で高齢者に親しまれるスポーツにおける整形外科的損傷の定量化に関する研究が掲載されている。 この研究では、米国事故情報監視システム(NEISS)の10年分(2014年~2023年)のデータベースが分析され、米国の高齢者に人気の12種目において合計5,561件の症例が確認された。 その結果、ゴルフの怪我の割合が最も高かった。 怪我の割合が多い順では、ゴルフ(22.8%)、ピックルボール(17.0%)、テニス(13.4%)、ウエイトリフティング(12.9%)であり、負傷患者の平均年齢は67.3歳(±8.6歳)であった。 中でも、ゴルフ参加者の平均年齢は71.2歳(±9.9歳)で最も高かった。 2014年以降、ピックルボールの怪我が急増しており、ここ数年ではゴルフを上回っている(図1)。 図1.米国における2014年~2023年までの高齢者に人気の12スポーツにおける整形外科的傷害の発生率(Andrew Qi et al.,2025) ゴルフ場での心停止の平均年齢は64.6歳 上記とは別の研究(2026年2月公開のJournal of the American College of Emergency Physicians Open)では米国ゴルフ場での心停止の状況についてまとめられた論文が掲載されている(Bret Gustafson et al., 2025)。 それによれば、2020年から2023年までの4年間において、米国CARESデータベースがカバーする406のゴルフ場における病院外心停止(OHCA)は476件確認され、患者は主に男性(91.4%、n=435)および白人(85.1%、n=330)に多かったとされている。 患者の平均年齢は64.6歳(±15.5)であった。 この研究の著者らによれば、ゴルフコースでのOHCA発生時の状況や予後、その後の生存結果について示された先行研究が殆ど報告されていないことから、安全にゴルフを楽しむための基礎資料としてこの研究をまとめる意義があるとしている。 ゴルフ場での心停止における生存率は30.5% 米国のゴルフ場で2020年~2023年までに発生したOHCA症例476件のうち、73.7%(n=351)の患者が心肺蘇生(CPR)を受け、24.6%(n=117)に対してAED(自動体外式除細動器)が用いられたが、その生存率は30.5%(n=145)であった。 なお、生存者の97.2%(n=141)は良好な予後であったとされている。 パブリックコースでのAED使用率が低い この研究の著者ら(Bret Gustafson et al., 2025)によれば、AED使用率はパブリックコース(19.7%)よりもプライベートコース(32.1%)で有意に高く(p=0.03)、パブリックコースで起きた心停止はプライベートコースに比べ生存率が低かったとされる。 また、PGA of Americaはゴルフ施設に「最低2台のAEDを設置」を推奨しているが、これらの勧告がAED使用に効果を及ぼしたかどうかや生存結果に与えた影響は不明とされる。 起伏の多い日本のゴルフ場では各カートへのAED搭載が必須 この研究(Bret Gustafson et al., 2025)の報告では、米国ゴルフ場で発生した心停止476件のうち、CPRを受けたのが351件、AEDが用いられたのが117件であり、死に至らなかったのは145件(生存率30.5%)であった。 日本のゴルフ場に目を向けると、平坦な丘陵タイプのコースよりも、いわゆる山岳コースや斜面が多く起伏が激しいゴルフコースの方が多い。 そのため、とりわけAEDの備えと、とっさの場面でためらわず使用することが必要である。 特に、カートへのAEDの搭載は必須だろう。 例えば、山梨県の上野原カントリークラブではカート1台おきにAEDを搭載するなど、安全対策が進んでいるゴルフ場も見られる。 セカンドショットは危険がいっぱい ティーショットやパッティングなど、緊張を伴いやすい場面では、激しい身体活動を伴わなくとも心拍数が急上昇しやすい。 例えば、よいスコアのかかったパッティング時にはプレッシャーがかかるが、その緊張は心拍数や血圧の上昇として現れる。 特に、ミスショットした後の「セカンドショット」前後の危険性が指摘されている。 要するに、ティーショットを右や左に曲げてしまったストレスに加え、ボール地点まで山を上ったり谷に下りたりと激しく動くことで、ショットの際に上昇した心拍数や血圧をさらに上げることになる。 そして、息が上がっている状況ではスイングし難いため、多くの場合はアドレスに入ると呼吸数や換気量を落としてショットをしようとする。 そのため、さらに心臓には負担がかかる。 また、ショットの瞬間(インパクト前後)は一瞬息を止めているため、一時的に心拍数や血圧は急上昇する。 図2.上野原カントリークラブのAED搭載カート(2024年3月25日、北徹朗 撮影) 日本のプレースタイルは血圧を変動させやすい 12月~3月頃までにかけては、いわゆるヒートショックが発生しやすい季節でもある。 日本のゴルフ場では、ハーフターン時に屋内で食事を摂り、ホールアウト後に入浴、15時以降の外気温が下がり始めたころに帰宅するパターンが一般的である。 プレー当日の気温の状況によっては血圧が上下し、心疾患などを引き起こしやすくなる可能性があるため、その点では米国よりも注意や備えがなおさら必要であろう。 参考文献・参考資料 1)Andrew Qi et al.,(2025)Sports-Related Orthopaedic Injuries in the Older Athlete: A 10-Year NEISS Database Analysis, Orthopaedic Journal of Sports Medicine. 2025 Oct 15;13(10):23259671251360439. doi: 10.1177/23259671251360439. 2)Bret Gustafson et al.,(2026)Cardiac Arrest Care on United States Golf Courses-Up to Par Yet?. Journal of the American College of Emergency Physicians Open, Volume 7, Issue 1, 100278, February 2026 3)PGA of America:Save a life with heart safe protocol, https://www.pga.org/CPR/save-a-life-with-heart-safe-protocol 4)北 徹朗(2024)カート1台おきにAED搭載(上野原カントリークラブ, 2024年3月25日撮影)X, https://x.com/Actionresearch_/status/1772989034706407907(2026年2月26日確認) 5)吉原 紳(2010)セカンドショットは危険がいっぱい ゴルフ場での突然死を防ぐ, ダイヤモンドオンライン, https://diamond.jp/articles/-/10069(2026年2月26日確認) <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2026年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2026年03月07日
    東京2020五輪ではテニスとゴルフの紫外線曝露リスクが突出 2025年12月に公表された米国の医学ジャーナル「Cureus:Journal of Medical Science」に、『ゴルフアパレルにおける紫外線防御評価:米国の主要ゴルフアパレルブランドが高リスク人口向けに提供しているスキンカバレッジ(皮膚を覆う度合い)の分析』(Evaluation of Golf Apparel for Ultraviolet Protection: An Analysis of Skin Coverage Provided by Leading U.S. Golf Apparel Brands for a High-Risk Population)(Taylor Merkle et al., 2025)という論文が発表されている。 この研究の背景として、先行研究で示されてきた「ゴルフをする人はしない人に比べて生涯の皮膚がん罹患率が2.4倍高い(Stenner B et al., 2023)」ことや、「紫外線暴露の影響を受けやすいゴルフにおいて日焼け止めを常に塗布していると回答したゴルファーはわずか36%だった(Weikert AE et al., 2021)」こと、「2020年東京五輪のデータではテニスとゴルフは屋外競技の中で最も紫外線曝露リスクが高いグループであったこと(Downs NJ et al., 2020)」などを挙げている。 ゴルファーはUVカットの意識が低く皮膚がんのリスクが高い ゴルフプレー中の身体への紫外線曝露は、肩、背中、首の後ろ、腕の後ろで最も高く、身体前面への曝露は比較的少ないと推定されている(Sung H et al., 2006)。そのため、UVカット効果を最大限に高めるために、暗めの軽量生地に長袖シャツと長ズボンを選ぶことが推奨されることが多い。 だが、通常ゴルフ場ではドレスコードが求められるため、ゴルファーにおいてはアパレルのデザイン選択には制限がかかる。こうした問題意識から、この論文の著者ら(Taylor Merkle et al., 2025)は、ゴルフ専用として市販されているアパレル製品(ブランド5社)における紫外線防止設計要素と生地特性評価を目的とした調査を実施した。 この調査は2025年7月7日~7月21日に行われ、各ブランドのゴルフアパレルサイトについて5名の評価者による構造化分析が実施された。 具体的には、帽子、トップス、ボトムス、アクセサリーのカテゴリーで商品数が記録され、アパレル製品の性別、年齢層別に分類された。さらに、帽子の場合はつばの広さ、トップスの場合は首やフードカバーの有無や形状、同じく背中、胸、肩、腕全体および手指のカバー度合い、ボトムスについては脚全体をカバーしているかどうか、アクセサリー(取り外し可能な袖やネックゲイターなど)については首、腕、手指をカバーしているかどうか等について調査された。 その結果、合計671点の製品について、形状やデザインの特徴、UPFラベル(Ultraviolet Protection Factor:紫外線防護係数)の有無について評価・報告されている。 ゴルフ用として販売されているウエアでもUPFラベル表示率が極めて低い 調査の結果、UPFラベル表示率はウエアで特に低かった(ボトムス7.1%、トップス16.7%)。アクセサリーについては性別で差が見られ(男性用50%、女性用100%)、男性向け製品の半分でUPFラベル表示が確認されなかった。 また、上肢のアクセサリーについては、腕全体を覆う製品が100%である一方、手指を覆う製品は存在しなかった。 ゴルフ場では襟付きシャツの着用が一般的なドレスコードとなっているが、先行研究ではスイング時の前傾姿勢に加え、多くのゴルファーがシャツのボタンを外すため、首へのUV曝露は防げないことが明らかにされている(Sung H et al., 2006)。 この論文(Taylor Merkle et al., 2025)の調査では、首を完全に覆っているデザインのシャツは、男性用14.5%、女性用27.7%、子供用4.8%に過ぎなかった。この点については「モックネックや袖口のデザインの工夫によってこれらの部位のUV保護をさらに強化できる」としている。 これからのゴルフウエア開発においては皮膚科医、公衆衛生学者、アパレルデザイナーの緊密な連携が求められる この論文(Taylor Merkle et al., 2025)の著者らは、現在「ゴルファー向け」として販売されているアパレルであったとしても、皮膚を保護する機能に欠けUV暴露のリスクが高い製品が多く含まれており、肌を適切に保護するためのデザイン性や素材への考慮が欠けているとしている。 メーカーはエビデンスに基づいた紫外線防御原理よりも、スタイルや着やすさを優先している傾向が強く認められる。 また現状においては、上肢に取り付けるような部分的アクセサリーなど、部位に特化した製品を補完的に併用することで、衣服だけの場合よりも効果の高い紫外線防御対策となる可能性もあるとされる。 最後にこの論文の著者ら(Taylor Merkle et al., 2025)は、こうした現状を根本的に改善していくためには、今後は皮膚科医、公衆衛生学者、アパレルデザイナーが緊密に連携・協力できる体制を構築し、エビデンスに基づくUV防御の原則をウエアのデザインに反映させていく必要があること、そしてゴルフアパレル企業のマーケティングだけに頼っていては十分なUV防御効果を確保するのには課題が多いことを認識するべきである、とまとめている。 なお、ゴルフを安全に楽しむためには、Kita T et al.(2024)が主張するように、UVおよび熱中症対策の双方の観点が重要となる。さらには、ウエアの形状や素材だけでなく、プレー中の所作についても、安全なラウンドを楽しむためには重要である(北, 2025)。 参考文献・参考資料 ・Taylor Merkle et al.(2025) Evaluation of Golf Apparel for Ultraviolet Protection: An Analysis of Skin Coverage Provided by Leading U.S. Golf Apparel Brands for a High-Risk Population, Cureus. 2025 Dec 2;17(12):e98314. doi:10.7759/cureus.98314. eCollection 2025 Dec. ・Stenner B et al.(2023) Golf participants in Australia have a higher lifetime prevalence of skin cancer compared with the general population, BMJ Open Sport Exerc Med. 2023;9:0. doi:10.1136/bmjsem-2023-001597. ・Weikert AE et al.(2021) Golfers' interest in multilevel sun-protection strategies, Int J Environ Res Public Health. 2021;18:7253. doi:10.3390/ijerph18147253. ・Downs NJ et al.(2020) Biologically effective solar ultraviolet exposures and the potential skin cancer risk for individual gold medalists of the 2020 Tokyo Summer Olympic Games, Temperature (Austin). 2020;7:89–108. doi:10.1080/23328940.2019.1581427. ・Sung H et al.(2006) UV radiation exposure to body sites of golfers and effects of clothing, Fam Consum Sci Res J. 2006;34:386–400. ・Kita T et al.(2024) Observation of Clothing Color and UV Transmission in Hot Environments: A Pilot Study on Playing Golf in Mid-Summer in Japan, The Conference of Digital Life vol.2 ・北 徹朗ら(2025) 猛暑下の「シャツ出しプレー」は着衣内温度を下げない-40℃越えの北関東ゴルフ場での検証-、ゴルフの科学 Vol.38, No.1, pp.40-41 ・北 徹朗(2025) 真冬のスポーツ実施中における紫外線量―ゴルフ、スキー、マラソンのうち紫外線対策が最も必要なスポーツは何か―、ゴルフエコノミックワールド 2025年4月号 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2026年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2026年02月02日
    2019年にファン付ウエア市場が拡大し、東京五輪ではキャディ2名がダウン、2023年にはJGAが文書を公表 近年の猛暑は年々厳しさを増しているが、この傾向は2019年頃から顕著になりだした。例えば、2019年5月26日には北海道で観測史上最高の39.5度を記録し、道内ゴルフ場で男性(36歳)が熱中症の疑いで死亡しているが、北海道の5月の気候において熱中症死亡事故が発生したことには当時大きな衝撃を与えた。急激な暑熱環境の変化から、この年を境にファン付きウエア市場が急拡大している。 2021年7月に猛暑の中で開催された2020東京五輪ゴルフ競技(於:霞ヶ関CC)では、キャディ2名が熱中症でダウンしたことが報じられるなど、屋外で長時間に渡るゴルフの暑さ対策・安全対策の必要性について、様々検討されるようになっていった。 こうした経過を経て、JGA日本ゴルフ協会は、2023年7月25日に『真夏のゴルフを楽しむ皆さんへ』を発表した。この文書には、プレー前、プレー中、プレー後の対策のほか、準備するアイテム例なども示されている。この文書の公表後、一部のメディアが「JGAがシャツ出しを推奨」などと報じたことから、会員からの問い合わせに戸惑うゴルフ場も多いと聞く。 ただ、JGAが出した実際の文書(プレー中の対策)には、【ゴルフ場のドレスコードで認められているのであれば、短パン(男性)、スカート・キュロット(女性)の着用、またプレー中にシャツを外に出すことで体温の上昇が抑えられると考えられます。プレーするゴルフ場に確認の上、実践してください】とされており、JGAからゴルフ場への“お達し”ではなく、あくまでも暑熱対策の“参考”のメッセージであることがわかる。 実験検証により「本当にシャツ出しプレーが涼しいのか?」を問う 観測史上最高を毎年更新する状況下が続く中、2024年4月1日には「改正気候変動適応法」が施行され、2025年6月1日からは「労働安全衛生規則」が改正され従業員の熱中症対策を怠った企業は罰則の対象となる法律の改正があった。こうした動きもあり、猛暑下ラウンドにおいては「シャツ出しをするべき」と言う潮流が強くなっている印象を受ける。 しかしながら、「シャツ出しが涼しい」ことを示すエビデンス(学術研究)は実は存在しない。この話の起源と思われる資料は、実験環境や条件設定が不明瞭な記事であり、それを根拠にシャツ出し推奨が言われていると推測されることや、そもそもゴルフ場での収集データが全く存在していなかった。 そこで、筆者らは、8月の猛暑下のゴルフプレーにおいて「シャツイン群」と「シャツアウト群」の着衣内温度データを収集し、どちらが涼しいのかを検証することを試みた。 日本観測史上歴代2位の猛暑下での検証(埼玉県鳩山町のゴルフ場) [実験環境] 2025年8月5日に埼玉県鳩山町のゴルフ場で実施した。実験開始時の環境は、WBGT32.9℃、気温37.4℃、湿度62.7%、風速0.18m/sであり、実験終了時の環境はWBGT34.2℃、気温42.8℃、湿度33.1%、風速0.51m/sであった。(気象庁によれば、実験当日、群馬県・伊勢崎で日本の歴代最高気温41.8℃を記録し、鳩山町はそれに次ぐ歴代2位の最高気温(41.4℃)であった。) [データ収集] 被験者には同じ規格の白ポロシャツ(ポリエステル製)を着用させ、温度センサーを前胸部に着用した。データは10秒間隔でデータロガーに収集した。被験者の健康を考慮し、前半9ホール(9時16分スタート)のデータのみを採用した。 [被検者] 健康な男性ゴルフ愛好者8名であった。実験にあたり主旨とデータの扱いについて文書と口頭で説明した。また、実験中に疑義や体調不良を感じた際には途中で実験を中止できること等を説明し被検者の同意の上で実施した。被検者をそれぞれ、シャツイン群4名(被験者A,B,C,D)、シャツアウト群4名(被験者E,F,G,H)とした(表1)。 猛暑下(40℃越えの酷暑日)ではシャツを出しても着衣内気候は変わらない データを分析したところ、被験者1名(被験者H)の記録が、機器の不具合により全てのデータが収集できていなかったため、7名(被験者A,B,C,D,E,F,G)を分析対象とした。また、熱中症警戒アラートが発出される猛暑日であったため、被験者の健康を考慮し、前半9ホールのデータのみを採用した。プレー中の着衣内平均温度を比較したところ、両者ともに32.9℃であり、温度には違いが見られなかった(図1)。 図1.暑熱環境下でのゴルフラウンド中における着衣内温度平均値 また、被験者別の着衣内温度推移(30分おき)を見ると、概ね31℃~35℃程度の範囲内で推移していた(図2)。 10時30分頃から外気温が急激に上昇したが、インとアウトで特異的な相違は見られなかった。 図2.気温と被検者別着衣内温度 シャツ出し“プラスアルファ”で効果が高まる可能性 今回の実験環境(気温37.4℃~42.8℃、湿度62.7%~33.1%)におけるラウンドプレーでは「単にシャツを出しただけでは着衣内温度は低下しない」と言う結果となった。 しかしながら、例えば、6月頃の高温多湿の環境下の場合や、外気温35℃程度で推移した場合など、条件によっては着衣内温度に差が見られるのかどうかは未だ不明である。 また、着衣をパタパタと扇いだり、大型扇風機などを用いて意図的に着衣内に風を起こした場合には、着衣内気候(着衣内温湿度)に違いが生じる可能性がある。こうした場合には「シャツ出しの有用性」が考えられる可能性がある。 このように、 <①シャツ出し+人工的な風 ②シャツ出し+プレー中の所作> などの、猛暑下において着衣内温湿度を下げるためには「単なるシャツ出しプレー」のみではなく、シャツ出しに「何か」を加える必要がある。どんな方法やプレー中の所作の有用性が高いのかについて、その「何か」を探る検証が今後行われる必要がある。 追記:本稿の内容は「日本ゴルフ学会第35回大会」において口頭発表した。 参考文献・参考資料 北 徹朗ら(2025) 猛暑下の「シャツ出しプレー」は着衣内温度を下げない-40℃越えの北関東ゴルフ場での検証-、ゴルフの科学Vol.38,No.1、pp.40-41 (公財)日本ゴルフ協会(2023) 真夏のゴルフを楽しむ皆さんへ、JGAウェブサイト https://www.jga.or.jp/jga/jsp/jga_news/news_detail_21914.html (2023年7月25日公開) ※2025年7月30日にJGAニュースで上記の内容を再掲 https://www.jga.or.jp/news/jga_news/news_detail_21914/ (2025年7月30日公開) <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2026年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2026年01月06日
    なぜゴルフは「18ホール」になったのか? ゴルフはなぜ18ホールになったのか、の問いに対する有名な俗説に「1ホールにウイスキーをワンショットずつ飲みながらラウンドすると、18ホールくらいでウイスキーの小瓶の中身がなくなるタイミングだったから」と言うものがある。この説については否定論が一般的ではあるものの、逆に本当にそうではなかったことをしっかりと説明するエビデンスも示されてこなかった。 語り継がれてきた「ゴルフとウイスキー」を関連づけたエピソード 例えば、セントアンドリュース近郊には歴史あるウイスキー蒸留所が多いことや、「ハイボール」の語源についてもゴルファーがウイスキーをソーダで割って飲んでいた時、突然高く飛んできたゴルフボールがバーの屋根に当たったことが由来となり、ハイボールと呼ばれるようになったとも言われている(サントリーウェブサイト, 2025年10月30日確認)が、実際にゴルフとウイスキーが関連付けられるエピソードは幾つか語り継がれてきた。 日本語版では出版されていないが、2016年に出版された『Why are There Eighteen Holes?: St Andrews and the Evolution of Golf Courses 1764-1890』(Peter N. Lewis著)という文献に、18ホールの起源はウイスキー説であることを明確に否定するエビデンスが初めて示されているので、本稿においてその一部を紹介したい。なお、本稿の概要は第35回日本ゴルフ学会(2025年11月15日~16日、於:愛知県)で発表した。 図1. 研究対象の文献<br />書名: Why are There Eighteen Holes?: St Andrews and the Evolution of Golf Courses 1764-1890(Peter N. Lewis著)<br />出版元: Royal & Ancient Golf Club of St Andrews(2016/3/1) 著者Peter N. Lewis氏について この文献によれば、Peter N. Lewis氏は、1988年~2009年まで、セントアンドリュースの英国ゴルフ博物館の館長を務め、その後R&amp;A映画部門ディレクター、歴史研究部門ディレクターに就任している。こうした実務経歴に加え、イギリスプロゴルフの黎明期を調べたものやR&amp;Aの歴史に関する書籍など、研究者としても多くの実績がある。 ゴルフが18ホールになったことの俗説 Peter N. Lewis氏は、なぜゴルフコースは18ホールになったのか、という問いに対して、通常よく見られる回答の1つ目としてウイスキー説を挙げ、この文献の中で次のように述べている。 <em>1つ目の典型的な理由として、標準的なスコッチウイスキーのボトル1本には18ショットのウイスキーが入っており、ボトル1本分のウイスキーの量がコースのホール数と一致すると信じられていた。</em> そして、イギリス国内で発信されている情報を引用し、以下のようにも述べている。 <em>www.lbc.co.ukでの典型的な回答では、1800年代にR&amp;Aがオールドコースを18ホールに短縮したこと、そしてこれはスコッチのボトルに18ショットが入っていたためだ、という噂があることが読者に伝えられている。</em> <em>同じサイト上の別の反応ではある年配の会員が「1858年のセント・アンドリュース・クラブ会員委員会の会話」を引用して話を誇張したとしている。この話はhttps://cybergolf.com/にも見られる。</em> R&amp;A委員会の会議議事録の分析 Peter N. Lewis氏の調査では1857年と1858年のどちらの議事録にも、ゴルフコースのホール数について議論したR&amp;A委員会の会議は開催されておらず、そのため「伝説のウイスキーのボトルについても言及されることはなかった」としている。 また、「ウイスキーボトルとオールドコースのホール数との関係について言及したR&amp;Aの会議議事録は見つからなかった(一度もそのような話題が出されていない)」と論じ「ウイスキーボトルの話は歴史的事実にまったく基づくものではない」と断言している。 ウイスキー説は歴史的事実に基づいていない 著者(Peter N. Lewis氏)は、ゴルフが18ホールになった本当の理由(存在する史実に基づく公文書)としては「もともと22ホールだったセントアンドリュースのゴルフ場から4ホールが削られて18ホールが成立した」と言う経緯を挙げており、その裏付けとなるR&amp;Aの議事録などを取り上げながら、ゴルフが現在の18ホールに至る複雑な背景を260ページ以上にも及ぶ著書において詳細に記述している。 こうした背景を論じる中で、『R&amp;Aの会議においてウイスキーのボトルとオールドコースのホール数の関係について言及されたことは一度もない』ことと、『ウイスキーのボトルの話は歴史的事実に基づいていない』ことを明確に示している。 本書は国内外においてもあまり取り上げられてこなかったが、ゴルフが18ホールになった理由が「ウイスキーの小瓶の中身がなくなるタイミングだったから」と言う説を否定するエビデンスを示す唯一の文献である。 参考文献・参考資料 北 徹朗(2025)ゴルフが18ホールになった理由は「ウイスキーの小瓶の中身がなくなるタイミングだったから」と言う説を否定するエビデンス、ゴルフの科学Vol.38, No.1、pp.48-49 Peter N. Lewis(2016)Why are There Eighteen Holes?: St Andrews and the Evolution of Golf Courses 1764-1890、R&amp;A/Royal &amp; Ancient Golf Club of St Andrews <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2025年12月05日
    筋パワーを補強するエクソスーツ 日本では「パワードスーツ」などの呼称の方がイメージされやすいかもしれないが、「エクソスーツ」とは着用することによって筋パワーの補助・増強をするウエアのことを指す。 図1の例は、ハーバード大学バイオデザインラボで開発されている下肢筋力を補強するエクソスーツである。 図1.Harnessing resistance: the impact of a passive exosuit on golf swing biomechanicsより引用 軍用からリハビリ、日常生活まで開発普及が著しいエクソスーツ市場 Data Bridge Market Researchによれば、2024年の世界のエクソスーツ材料市場規模は1億1,341万ドルであり、2032年には1億7,405万ドルにまで成長すると予想されている。 病気や加齢で筋力が低下した人や、神経疾患などで身体機能が不自由な人などの医療や介護の場面はもちろん、重い荷物を楽に運んだり、歩行効率の向上など、人間工学に基づき、健康な人が生活活動能力の増強に役立てるための製品も開発されている。 例えば、ミズノが販売する製品(MIZUNO POWER ASSIST SUIT)は脊柱起立筋の負荷を約15%低減し、重量物を持ち運ぶ際に役立つ製品であるとされている(図2)。 図2.ミズノ公式オンラインより引用 この様に、エクソスーツの用途は「医療・リハビリテーション」「軍事」「工業」のほか、「日常生活」や「余暇活動」など多岐に渡る。 また、技術別な側面から見た製品の種類には「動力付きエクソスーツ」「受動型エクソスーツ」「ハイブリッド型エクソスーツ」がある。 ゴルフに特化したエクソスーツ研究 2025年9月18日に公開されたJournal of Biomechanics(Volume 192, November 2025)に、"Harnessing resistance: the impact of a passive exosuit on golf swing biomechanics"(受動型エクソスーツがゴルフスイングのバイオメカニクスに与える影響)という論文が掲載されている。 この研究では、自然なスイングを妨げることなく、ボディの回転を補助し、クラブヘッドスピード(CHS)を高めるように設計された受動型エクソスーツ(passive exosuit)を作成しその効果を検証している。 このエクソスーツの具体的な構造は、弾性バンドを左肩甲骨上部から右腕の下を通し、被験者の腰ベルトに巻き付けロックボタンで固定している。 弾性バンドは調整式バックルが用いられ微調整可能とされている。 図3. Chung-Ang University Department of Mechanical Engineering AR Lab(Assistive and Rehabilitation Robotics Lab)より引用 自然なスイングを妨げることなくクラブヘッドスピードが向上 熟練ゴルファー12名の平均CHSを検証した結果、エクソスーツ着用時には43.3±3.8m/sから44.4±4.0m/s(2.55±0.70%、P=0.009)に有意にスピードが増加したとされている。 具体的には、Xファクター反動の最大速度がエクソスーツ着用時に有意に高く(P=0.03)なっており、ダウンスイング中の回転反動が増強したことでCHSが増加したとしている。 また、被験者12名全員がCHSの向上を示した。 今後も成長著しいと見込まれる世界のエクソスーツ市場 Data Bridge Market Researchによれば、エクソスーツはヘルスケア市場や一般消費者市場における拡大が著しいと見込まれている。 特に、リハビリテーション分野では、神経疾患や外傷を負った患者の理学療法や移動支援におけるエクソスーツの役割の重要性が認識されており、2024年には41.2%シェアを占めた。 また、製造業においては、反復作業や重労働における作業効率と安全性の向上を目的としたエクソスーツの導入増加を背景に、2025年から2032年にかけて21.3%の急速な成長が見込まれる。 老いてもテクノロジーの力で飛ばせるようになる日が来る 日本のゴルファーの間でも、高機能インナーとかコンプレッションインナーと呼ばれる製品は既に普及している。 ある程度の効果もあるようだが、パワーの補強度合いが大きいゴルフ用エクソスーツの開発促進が期待される。 前述のように、エクソスーツには、筋電図や関節の動きの情報をセンサーが感知しながら補強する「動力付きエクソスーツ」や、本稿で紹介した論文で用いられたような「受動型エクソスーツ」、また両方の機能を兼ね備えた「ハイブリッド型エクソスーツ」がある。 ゴルフ人口の超高齢化が進む日本において、各人の状況や日常生活活動レベルに応じた個別最適(症状最適)な製品が開発されることは、老いてもゴルフを楽しむことのできる環境整備にも繋がるはずだ。 参考文献・参考資料 1)Alireza Nasirzadeh et al.(2025) Harnessing resistance: the impact of a passive exosuit on golf swing biomechanics, Journal of Biomechanics Volume 192, November 2025, 112958 2)Harvard Biodesign Lab Augmenting and restoring human performance https://biodesign.seas.harvard.edu/soft-exosuits(2025年10月8日確認) 3)ミズノ公式オンライン https://jpn.mizuno.com/poweredlife/mizunoadapt/powerassistsuit(2025年10月8日確認) 4)Data Bridge Market Research https://www.databridgemarketresearch.com/jp/reports/global-exosuit-materials-market(2025年10月8日確認) 5)Chung-Ang University Department of Mechanical Engineering AR Lab(Assistive and Rehabilitation Robotics Lab) http://arlab.cau.ac.kr/sub1_2.php(2025年10月8日確認) <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2025年11月04日
    練習場での「ひたすらスイングの健康効果」に対する問題意識 一般的にゴルフ場での1ラウンドをカートに乗らずにプレーすると、おおよそ8〜10km程度になる。身長や歩幅にもよるが、1ラウンドの歩数は約13,000歩程度に相当し、適度な有酸素運動効果が得られる。このように、ゴルフの運動効果(健康効果)は、「ほぼウォーキング効果」である。 筆者の問題意識として、ゴルフ場のようには歩かない「練習場」で、ひたすら打ち放すことで何か健康効果が得られないものかと考えた。足の踏ん張り、クラブの重量、体重移動…等々を考えると、練習場でのスイングの反復は太もものエクササイズになるのではないか、そんなリサーチクエスチョンが思い浮かんだ。 加齢に伴い衰えるのが大腿筋群 太ももやお腹の筋肉は50歳頃以降、年1%ずつ減っていくとされている。また、下肢筋群の中でも、加齢によって最も衰えやすいのは太ももの前側の「大腿四頭筋」であることは多くの研究が明らかにしている。大腿四頭筋(大腿直筋、外側広筋、中間広筋、内側広筋)は、主に膝の伸展で作用し、歩いたり走ったり、立ったりしゃがんだり、階段の上り下りなど、日常生活の様々な場面で役割を担っている(図1)。 図1.加齢に伴う筋量の変化(参考文献2より転載) ただ、歩行の際に主に使われるのは下腿(膝から下)筋群であり、太ももへの強度はかなり低い。つまり、日常生活においては大腿部の筋肉はあまり使われておらず、歩くだけでは鍛えられない。そのため、スクワットなどの筋トレに代表される、下肢に刺激を加えるエクササイズを意識して行わない限り、大腿筋群は発達し難い。 ありがちな「太ももに効くおすすめ運動」はつまらない 前述の内容は一般的にもよく知られているため、簡易に行える太ももを鍛えるエクササイズが色々と推奨されるのを見かける。例えば、日常生活でできる「おすすめ運動」としてありがちな、椅子を使ったスクワットなど、これに類する手軽なエクササイズが多く提案される(図2)。 図2.ありがちな「おすすめ運動」の一例(作図:北 徹朗) だが、こうしたエクササイズは効果があるにしても単調であるため、面白さは感じられにくい。 ゴルフ練習場での反復ショットは「爽快」「痛快」かつ「太ももの筋トレ」にもなる 以上の問題意識を踏まえて、2025年8月に群馬県のゴルフ練習場において、ショット練習時の筋活動データを収集・観察した。効果検証のために、代表的な自重トレーニングである「スクワット」と「フォワードランジ」(以下、筋トレ)のデータを収集し、その後、被験者(5名)のドライバーショット時のデータを収集した。具体的には、大腿直筋(ももの前側)と、大腿二頭筋長頭(ももの裏側)の筋電図データを収集した。 <大腿直筋(ももの前側)の活動> 筋トレ時の筋活動は図3のようであった。一般的に知られているとおり、動作の度にももの前側の活動が認められた。 図3.筋トレ時(スクワット/左、フォワードランジ/右)のももの前側の筋活動 次にドライバーショット時のももの前側のデータを観察したところ、右脚の筋肉は殆ど使われていないが、フィニッシュで荷重する左脚には、筋トレには及ばないものの高いピークが認められた(図4)。 図4.ドライバーショット時のももの前側(大腿直筋)の筋活動 <大腿二頭筋長頭(ももの裏側)の活動> ももの裏側の筋活動は図5のようであった。データにも認められるように、筋トレだけではピークと積分が小さいことがわかる。このように、スクワットやフォワードランジはももの前側に特化したエクササイズであり、ももの裏にはほぼ効かない。 図5.筋トレ時(スクワット/左、フォワードランジ/右)のももの裏側の筋活動 次にドライバーショットのデータを見ると、左右のもも裏ともにショットの度によく活動していた(図6)。 図6.ドライバーショット時のももの裏側(大腿二頭筋長頭)の筋活動 まとめ 18ホール(約4時間30分)のうち、打っているのは2〜3分であり、その他の時間は、歩いて(移動して)いるか、考えているか、仲間のプレーを見ている時間である。そのため、ゴルフは「歩くスポーツ」と表現されることもあるが、ラウンドに伴う歩行動作においては下腿部の筋群が主に使われている。 ゴルフ練習場では歩行を伴わないものの、試行錯誤しながら夢中でひたすら打ち続けることで、下肢におけるエクササイズ効果が得られる可能性が高い。 具体的には、スクワットなどの筋トレと比べた場合、ももの前側においては、前脚(左脚)はスクワットなどには劣るものの、それに近い筋活動が観察された。例えば、ゴルフの練習法で左右打ちが推奨されることがあるが、これを実践することで、両足のももの前側もバランスよく鍛えられるのかもしれない。 また、ももの裏側の筋肉は、例えばレッグカールのような機械的負荷をかけないと鍛え難い部位だと思われる。その点において、ドライバーショット時の筋活動は、5名の被験者ともに筋トレ時よりも遥かにピークや積分が大きいことが観察された。 単調で面白さを感じられないエクササイズが多い中で、練習場でのショットの繰り返しは「爽快」「痛快」かつ「太腿の筋トレ」になる、優れたエクササイズであると言えるのではないか。 参考文献・参考資料 1)北 徹朗(2025)練習場での反復スイング練習は(大腿の)筋トレになるか?-表面筋電図による観察-、第1回日本ゴルフ学会関東支部サマーセミナー、2025年8月22日発表資料 2)福永哲夫(2024)貯筋®のススメ~使って貯めよう筋肉貯筋~、公益財団法人健康・体力づくり事業財団、https://www.health-net.or.jp/kensyu/library/pdf/r6_01_004.pdf(2025年9月18日確認) <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2025年10月03日
    進むクーラー付きゴルフカートの普及 本連載2024年3月号において、ゴルフ場で最も熱くなる場所は「カートの座席」であることについて紹介した。当時は、PGMのクールカートにまだ目新しさを感じていたが、この2年弱で多くの企業からゴルフカート用クーラーが販売されゴルフ場での導入も進んでいる。 総プレー時間270分(4時間30分)のうち、実際に打っているのは2-3分であり、夏場のプレーでは日射を遮るためにカートに座っている時間が長くなっていることが考えられる。「カート内に涼しい風を送る」ことに関してはクーラーが解消してくれているが、カート内における暑さ対策の根本解決にはなっていない。 風で涼を感じても尻から熱せられている 暑熱下でのプレー中、キャディバッグからドライバーを抜き取ろうとした際「熱っ!」となった経験が1度はあるだろう。特に黒ヘッドの場合はそれを感じやすい。筆者らの調査では、気温39℃前後のプレー時におけるドライバーヘッドの温度は61.7℃になっていた。 前述のように、ドライバーヘッドよりも熱くなるのは「カートの座席」である。乗用カートの座面温度は70℃を越えており、ドライバーヘッドの温度よりも約10度(71.1℃)も高温になっていた。尻や腿裏は指先よりも熱さを感じ難いため、大半の人はショットを終えて、カートのシートにどっかりと着席し休息している「つもり」になっているかもしれないが、「実際」には尻から身体が熱せられて、座面の熱で体温を上昇させ逆効果になっている可能性も否めない。 ベビーカーにみる風の通りと蓄熱度合 図1.ベビーカータイプと1時間走行時の平均温度(頭部周辺と足元周辺) ベビーカーには押す人と赤ちゃんが向かい合う「対面タイプ」と、背中側から押す「背面タイプ」の2種類が存在する。今夏、移動中のベビーカー内温度(60分間)を調べたところ、「対面型ベビーカー」の方が高温になった(図1)。 具体的には、対面型の頭部周辺温度の最大値が42.1℃、背面型では39.5℃であり、対面型の方が2.6℃も高温になっていた。60分間のデータ平均値で比較すると、背面型は36.6℃、対面型が38.3℃となっており、両者間の温度差(1.7℃)には統計学有意差(p&lt;0.001)が認められた(図2)(図3)。この実験ではベビーカーを60分間押し続けたが、立ち止まりながらゆっくり進んだ場合、対面型と背面型の温度差はもっと開いた可能性がある。 図2.赤ちゃんマネキンの頭部周辺平均温度の比較 (実験条件:赤ちゃんマネキンを乗せた同型同色のベビーカーを同時に稼働。実験終了時のWBGTは30.7℃) このように、「対面タイプ」は熱がこもりやすいため、ベビーカー用扇風機などで風を循環させ、温湿度を抑える工夫が必要であることを提言している。 図3.ベビーカーの走行時における赤ちゃんマネキン頭部周辺温度の推移 正面から風を浴びられる背面型ベビーカーの方が涼しい ベビーカーの知見をゴルフカートに置き換えて考えてみたい。ゴルフカートの窓(フロントシールド)は打球事故防止のためのものであり基本的には開放しない。となると、背面型ベビーカーのように正面から風を浴びることはできないので、背面型ベビーカーと同じような熱籠りが生じる可能性が高い。 カートエアコンがそれを解消している場合はよいが、エアコンが設置されていないカートの場合や、4バッグプレー+キャディの乗車もある場合などは、当然蓄熱度合いが高まるだろう。 エアコンのないカートにはフロントシールド両側に小型扇風機を設置しよう フロントシールドは閉まりっぱなしなので正面から風が浴びられない上に、シート(尻)から熱せられ、さらには乗車密度が高い場合は熱籠りも促進される。カートから降りれば猛暑の直射日光が降り注ぎ、暑さから逃れることなくプレー再開となっている場合が多いと思われる。安全上、フロントシールドを開けようと言う提言には問題があると思うので、「エアコンのないカートにはフロント両側に小型扇風機を設置し熱籠りを解消しよう」と提案したい。 参考文献 ・鈴木タケル、北 徹朗ほか(2023)猛暑日におけるゴルフ場内各場所やゴルフ用具の表面温度変化についての実態調査、ゴルフの科学Vol.36, No.1,pp.40-41 ・北 徹朗(2024)「急がれるゴルフ業界を挙げた暑熱対策」(GMACセミナー2024:地球沸騰化時代、夏のゴルフを安全に楽しむには -ゴルフと環境とSDGsを徹底討論-、2024年3月9日発表資料) ・毎日新聞(2025)ベビーカーの対面型と背面型、どちらが暑い?実験を受けた対策は:https://mainichi.jp/articles/20250810/k00/00m/040/209000c (2025年8月13日配信記事) <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年9月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2025年09月05日
    保護者が最も心がける熱中症対策は「水分補給」と「帽子」 小学4年生から中学3年生の子どもを持つ全国の保護者870名を対象とした「子どもがいる家庭の熱中症・暑さ対策に関する実態調査」(2024年5月に株式会社明光ネットワークジャパンが実施)のレポートによれば、子どもが実施している熱中症対策として「こまめな水分補給」(73.5%)、「帽子の着用」(51.2%)、「室内を適切な温度に調節」(49.1%)の順に回答が多かったとされている。 同じく、筆者らが実施した、小学生の子どもを持つ保護者500名に対する調査(2022年5月実施)によれば、「子どもの熱中症対策について親として最も心がけていること」について、男性の66.8%、女性の74.4%が「水分補給」を挙げ、同じく「帽子による調節」(男性6.0%、女性9.2%)が続いている。筆者らが実施してきた先行研究においては、帽子の効用を高めるには、素材、色、形状を工夫することも暑熱環境下においては重要であるあることを明らかにしてきた(Kita et al.,2019)(北ら,2022)(北,2023)。 子どもの熱中症対策の盲点は「色」への配慮 筆者の調査(2022)では、「帽子」の「素材」「色」「形状」に関する意識についても調べている。調査結果を表1に示した。「帽子の素材」については、気を遣っている割合が男性42.0%女性46.0%、「帽子の色」については男性32.4%女性30.4%、「帽子の形状」については男性37.2%女性39.6%となった。このように、「色への配慮」が全項目の中で最も低い傾向であった。この調査では、ウエアについても同様の設問を設けたが、同じ傾向であった。この結果からは「帽子を被っていれば安心」と思い込みがちで、色への配慮は盲点になっている可能性が示唆される。 しかしながら、図1(撮影:北 徹朗)に見られるように、5月の気温においても赤帽は50℃近くにまで蓄熱し、白帽とは20~30℃もの差が生じている。黒髪をむき出しにしていると60℃を超える表面温度であることが観察できるので、高温になる赤帽であったとしても被らないよりはマシである。児童が履いているグレーのパンツも高温になっていることが見てとれる(北,2024)。 図1.児童用赤白帽の屋外環境下での蓄熱の状況<br />(撮影:北 徹朗、撮影日:2023年5月27日) 大人と比べてプラス7℃:子ども特有の暑熱環境「こども気温」 サントリーとウェザーマップ社が2023年に行った共同検証実験において、子どもの背の高さで計測した温度が、大人と比較するとプラス7℃程度にもなった結果から、子ども特有の暑熱環境を「こども気温」と称し2023年より子どもの熱中症対策に関する啓発活動が行われている。 この検証実験においては、日向と最も涼しい日陰では、WBGTに4.2℃の差(熱中症警戒レベル2段階分の低減)があったとされ、その結果から、日陰に入ることで日差しを避け身体にかかる熱ストレスを大きく低減させることができるので「連続した日陰を歩くことによって熱中症リスクを有意に低減することが確認されている」としている。 起伏やカート道路、風の通りの善し悪しなど、ゴルフ場のWBGTは一定ではない ゴルフ場におけるこの観点からの提言は、筆者がGMACセミナー2024において「急がれるゴルフ業界を挙げた暑熱対策」として具体的に述べている(図2)。 図2.<br />暑さポイントに応じたマッピングとスコアカードの工夫(GMACセミナー2024発表スライドより) 特に起伏のあるゴルフ場ではホールごとにWBGT値にバラつきがあることが予想される。他方、河川敷の様な平坦なコースでは、前述の先行研究で述べられるように「連続した日陰を歩くことによって熱中症リスクを低減することができる」と思われる。特に起伏のあるコースでは、来場者の参考になるよう、目安となる数値データを収集し示しておくことも熱中症対策として有用であり、夏場のゴルフ場マネジメントには必須であろう。 参考文献 ・株式会社明光ネットワークジャパン(2024)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000178.000071552.html(2025年7月20日確認) ・北 徹朗(2022)子どもの暑さ対策における保護者の「帽子」に対する意識、未公刊 ・Kita et al.,(2019)Changes in Temperature Inside a Hat During the Play of Golf -Comparison of Hats with Different Shapes-、International Journal of Fitness, Health, Physical Education &amp; Iron Games, Special Issue Vol.6, No.2, pp.163-166 ・北 徹朗ら(2022)帽子の素材・色・形状が暑熱環境下でのスポーツ実施中の生理指標と帽子内温湿度に及ぼす影響、デサントスポーツ科学Vol.42、pp.37-51 ・北 徹朗(2023)帽子の形状・色の違いが帽子内温湿度に及ぼす影響-暑熱環境下における各種スポーツ実施中の経時的変化-、繊維機械学会誌Vol.76、No.4、pp.199-205 ・北 徹朗(2024)人工暑熱環境下における児童用帽子の表面・内側温度の経時的観察-暑熱対策帽子の製品化に向けた赤白帽・黄白帽・桃白帽の比較検証-、日本運動・スポーツ科学学会第31回大会抄録集、p.24 ・サントリー食品インターナショナル株式会社(2025)https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF1594.html(2025年7月20日確認) ・北 徹朗(2024)「急がれるゴルフ業界を挙げた暑熱対策」(GMACセミナー2024:地球沸騰化時代、夏のゴルフを安全に楽しむには -ゴルフと環境とSDGsを徹底討論-、2024年3月9日発表資料 北 徹朗|きた・てつろう 博士(医学) 武蔵野美術大学教授・同大学院博士後期課程教授 GMACゴルフ市場活性化委員会有識者委員(企業連携・交流部会副委員長) <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2025年08月11日
    10種目(1200名)のスポーツコーチにおける熱中症知識指数の比較 ドイツは700カ所を超えるゴルフ場(世界6位)を有するゴルフが盛んな国の1つである(R&amp;A, 2021)。同国ハイデルベルク大学(医学部)のSophie Leerら(2024)による、ドイツの10大屋外スポーツのコーチ(1200名)を対象とした研究(Gaps in Heat-Related Knowledge, Practices and Adaptation Strategies Among Coaches in German Outdoor Sports)によれば、スキー、サッカー、ゴルフに関わるコーチの熱中症に関する知識が特に低かったことが示されている。 具体的には、各スポーツコーチにおける熱中症症状に関する知識指数(KOSI:knowledge of heat-related illness symptoms index)をみると、スキー(9.85±1.80)、サッカー(10.07±2.33)、ゴルフ(10.09±1.75)では、全体の平均値(10.31 ± 1.81)よりも顕著に低値であった。逆に、山岳スポーツ(10.56±1.73)と馬術(10.56±1.61)のコーチにおける知識レベルは高かった、とされている(図1)。 図1.ドイツの屋外スポーツコーチにおけるKOSI 値(黒:正偏差、白:負偏差)<br />(Sophie Leer et a(l. 2024)International Journal of Public Healthより引用) なお、調査対象者の平均年齢は44歳(最年少18歳,最高齢81歳)であり、そのうち68%が男性、コーチ歴は平均15年(±11年)であった。 熱中症対策の実施状況と改善可能性 ドイツスポーツ医学予防協会(German Society for Sports Medicine and Prevention:DGSP)の勧告に基づく10の予防策について、スキーのコーチを除く1080人に対して調査が実施された。熱中症予防対策の実施状況において顕著な欠陥が見られた種目として、テニス、山岳スポーツ、サッカー、水泳の順に多く、次いでゴルフが挙げられている(図2)。 図2.ドイツの屋外スポーツにおける暑熱対策の実施状況と改善の可能性(黒:実施度、白:改善可能性(%))(Sophie Leer et a(l. 2024)International Journal of Public Healthより引用) また、屋外スポーツのコーチにおける「熱中症予防に関する知識」、「熱中症予防の実践度」、「熱中症予防行動の選択肢」が、どの程度相関しているかについても分析されている(図3)。それによれば、コーチにおける暑さや熱中症に関する知識は予防行動には反映されていなかった。 図3.ドイツの屋外スポーツにおけるコーチの熱中症の「予防知識」・「実践度」・「予防行動の選択肢」の相関分析<br />(Sophie Leer et a(l. 2024)International Journal of Public Healthより引用) 他方、「熱中症予防行動の選択肢(Options for action)」と「熱中症予防の実践度(Practice)」の間には有意な相関関係が認められており、知識よりも現場で対応可能な選択肢の有無の影響の方が大きい可能性が示唆されている。 現在の予測では、約60年後に、医学的に許容できる気温リスク環境下で夏季五輪を開催できるのは、世界33都市のみと想定されている。22世紀初頭には地球上で開催に適した都市は僅か4都市とされる。この研究では、こうした状況を踏まえ、トップスポーツ選手よりもはるかに裾野が広く参加人口規模の大きいアマチュアスポーツにおいて、今後も懸念される極端な暑さに対して、十分な備えをしていると言えるのか疑問である、と締め括られている。 参考文献 ・R&amp;A(2021)Golf Around the World 2021 ・Sophie Leer et al.(2024)Gaps in Heat-Related Knowledge, Practices and Adaptation Strategies Among Coaches in German Outdoor Sports、International Journal of Public Health 2024 Dec 4;69:1607928. <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2025年07月02日
    市販されるUVカットスプレーの効果検証 気象庁によれば、2023年に日本に降り注いだUVインデックス値が初めて極端に強い(Extreme)レベルにまで上昇したとされている。こうした背景から、Kita et al.,(2024)は暑熱環境下におけるゴルフ場でのプレー中の着衣内への紫外線透過量について検証し、白やピンクなど淡い色において紫外線透過が多く認められたことを報告している。この研究概要については、以前のこの連載でも紹介した。前述の気象庁のデータサイトによれば、例年5月頃からUVインデックス値のレベルは急激に上昇し真夏並みになっている。 本稿では、市販されているUVカットスプレーを着衣表面に塗布することで、着衣内部への紫外線透過をどの程度抑制できるかを観察したので、その概要を紹介したい。 SPF50+およびPA++++タイプのスプレーをポロシャツ表面に塗布 図1.紫外線透過量は着衣内前胸部で計測 実験は2025年5月8日の13時12分~14時12分(60分間)、東京都内の人工芝グラウンドで実施した。一般的に皮膚や髪の毛など人体に直接スプレーするタイプの製品を用いた。2体のマネキンに綿ポリ製ポロシャツ(白)を着せ、一方に市販のUVカットスプレー(SPF50+およびPA++++タイプ)を塗布し、もう一方は塗布しないコントロールとした。紫外線量はマネキン着衣内前胸部に装着したデータロガーで10秒おきに計測した(図1)。当日の実験環境は最高気温30.8℃、WBGT24.3℃であった。 着衣内のUV-Aデータを10秒おきに60分間計測 図2はポロシャツ内のUV-Aを10分ごとにプロットした経時的推移である。スプレーを塗布した方は、概ね0.002mW/cm2~0.005mW/cm2の推移にとどまったが、スプレーを塗布していないコントロールにおいては、着衣内に0.041mW/cm2~0.033mW/cm2程度の紫外線透過が認められた(図2)。 図2 ポロシャツ内のUV-A量の経時的変化 実験を行ったグラウンドにおけるUV-Aの平均値(着衣無し)は2.280mW/cm2(最大値2.560mW/cm2)であった。UVカットスプレーを塗布したポロシャツでは平均0.005mW/cm2(最大値0.010mW/cm2)、塗布しなかった方(コントロール)では平均0.030mW/cm2(最大値0.050mW/cm2)のUV-Aが検出され、両者間には統計学的に有意な差(p<0.001)が認められた(図3)(表1)。 図3ポロシャツ内側胸部におけるUV-A透過量の平均値 7月下旬のゴルフラウンド中のポロシャツ内の紫外線透過について、筆者による過去の研究(Kita et al.,2024)では、ピンク・濃紺・グレー・白のうち「ピンク」が最もUV-Aを透過(最大値0.095mW/cm2)させていた。このように、着衣の素材や色によっては布で覆われた部位であっても紫外線は透過するが、今回の検証により通常皮膚に用いるUVカットスプレーを着衣表面に塗布することでも紫外線透過量は抑制されることを確認した。 今後、UVカットスプレーにおける素材や色との相性を調査することで、効果的な組み合わせが見つかる可能性もある。また、発汗してシャツが湿っている場合や雨などの影響はどうか。夏に向けて実際にヒトが活動中の環境で同様の効果があるか検証したい。 参考文献 1)Kita et al.(2024)Observation of Clothing Color and UV Transmission in Hot Environments:A Pilot Study on Playing Golf in Mid-Summer in Japan、The Conference of Digital Life vol.2 2)北 徹朗(2023)紫外線指数(UVインデックス)が『極端に強い』領域に日本は突入 来夏は暑さ対策だけでなく「紫外線対策」が必須、ゴルフエコノミックワールド2023年10月号 3)北 徹朗(2024)ゴルフプレー中における着衣の色と紫外線透過量の観察、ゴルフエコノミックワールド2024年10月号 4)北 徹朗(2025)真冬のスポーツ実施中における紫外線量―ゴルフ、スキー、マラソンのうち紫外線対策が最も必要なスポーツは何か―、ゴルフエコノミックワールド2025年4月号
    (公開)2025年06月02日
    大学とゴルフ産業の連携協定から9年 「大学体育のゴルフ授業の充実を目指した産学連携協定」(2016年6月27日,図1)からまもなく丸9年を迎える。この産学連携協定で交わされた大学への支援内容は「ゴルフクラブ無償提供」、「ゴルフ場の大学教育利用促進」、「教本や指導者マニュアルなどの共同開発」、「大学ゴルフ授業の教育研究支援」など、であった。 この間、日本ゴルフ用品協会加盟メーカー各社からは150大学に対し5976本ものゴルフクラブが無償提供されている(2025年4月現在)。また、2017年以降、キャロウェイゴルフは独自に100を超えるセットクラブの無償提供をしている。大学において教養科目とりわけ体育科目の予算は多くはないため、真新しい最新のテクノロジーが駆使されたゴルフクラブを使用できる授業はどこの大学でも人気が高い。特に、予算削減で苦しんでいる国公立大学においては、用具を無償提供頂くことでゴルフ授業の復活や新設が近年相次いでいる。 図1.GMAC 馬場委員長、大体連 安西会長、スポーツ庁 鈴木長官、PGA 倉本会長(引用元:公益社団法人全国大学体育連合ウェブサイトより) 教本や指導者マニュアルなどの共同開発においては、日本プロゴルフ協会からの支援を受けた。具体的には、大学教員との意見交換会を経て「PGAカレッジゴルフテキスト」(2017年)、「大学ゴルフ授業カリキュラム・指導マニュアル」(2019年第3版)、「大学ゴルフ授業副教材」(2017)を作成している。 ゴルフ場の大学教育利用促進については、2015年8月にイーグルレイクゴルフクラブ(千葉県)において第1回Gちゃれ(大学生のためのゴルフ場体験企画)を開催以降、2025年4月現在「第181回Gちゃれ」までが開催されている。累計2808名もの学生がGちゃれを介してコースデビューしたが、これだけの学生がコースデビューできた背景には、日本ゴルフ場経営者協会の多大なる支援がある。 ゴルフ場が変わらなければ何も変わらない 2015年に始まった「Gちゃれ」は正規予約客最終組のスタート後、未経験の大学生が3-4ホール程度のコース体験をする企画である。初心者にとってはこの程度のホール数でも充分満足できる(図2)。 一見、ゴルフ場の隙間時間を上手く活用した企画のように見えるが、現場従業員においてはその分仕事が増えているし、後片付けの開始時間も遅くなっている。学生にはこうした状況を説明し、感謝と御礼の気持ちを前面に出してゴルフ場を楽しむようにと、丁寧に指導してきた。 図2.ゴルフ場の1日とGちゃれの開催(作図:北 徹朗) だが、コロナ期以降、ゴルフ場が賑わいを取り戻したことで、現場は学生を受け入れるゆとりがなくなっているのではないか、と感じる場面がある。また、他大学の教員からもそういった主旨の報告を受けてきた。  本稿では、過去10年間の初心者向け企画(Gちゃれ)主催者として考える、ゴルフに親しむ人を増やすための6つの課題を述べさせて頂く。 大学生のコースデビュープログラム運営経験者として考える、ゴルフに親しむ人を増やすための6つの課題 課題1):費用の問題 ・未経験またはビギナーがゴルフにかけられるのは最大3000円程度と多くの学生が回答。 ・しかし、この金額では、ゴルフ場にとって3ホール程度であっても利益にならない。 課題2):交通の問題 ・都心から離れた地域のゴルフ場とのマッチングを推奨したいところだが、大学や住居から近いゴルフ場の方が圧倒的に人気が高い。 ・一例として、東京都内の大学生に「多摩地域や八王子のゴルフ場」と「千葉県のゴルフ場」での開催を同時募集した際、集客割合は9:1程度となる。 ・近隣のゴルフ場と上手くマッチングできるか、快く受け入れるゴルフ場が近くにあるか、は重要である。 課題3):指導者(先導者)の問題 ・初心者グループのため「次は誰が打つのか」、「どちらへ進むのか」といった指示や、状況に応じた臨機応変な対応など、先導できる経験者(指導者)が各カートに1人は必要。この人材確保が難しい。 ・例えば、学生20名参加の場合5名が必要だが、彼らへの謝金が無いのも課題(教員の熱意のみ)。 課題4):ゴルフ場の現場で働く人の理解の問題 ・企画を受け入れてくれる経営者と現場のゴルフ場従業員に温度差が見られる場合がある。 ・例えば、「ビギナーや若者が来ている」と言うだけで、現場が“上から目線”の変な雰囲気になることがある。 ・「ゴルマジ!」が停滞・縮小しているのもこの理由が大きいように感じる。 ・一般来場客の理解も必要である。 課題5):保険の問題 ・正課外の任意活動に学生を誘うにあたり、万が一の事故等を懸念し、教員に大きな心理的負担が生じている。 ・各イベントごとに任意保険に加入するなどの対応をしているが、学生の背中を押す教員のプレッシャーを如何に軽減し、ゴルフ場に送り出してもらいやすい環境を整えるかが課題。 ・例えば、「スポーツ庁」が後援・協力したり、「自治体」や「法人格を有する非営利団体」が主導するなど、ビジネス色を抑え、教育課程の流れで学生を送り出しやすい企画にできないか。 課題6):Gちゃれ後の接続プログラムがない ・指導者が付く体験企画(Gちゃれ)後に、個別にゴルフ場にチャレンジできるような手軽なパッケージがない。 ・例えば、朝日コーポレーショングループのゴルフ場が提供している「ピクニックゴルフ」のような、初心者やファミリーでもゴルフ場を手軽に楽しめるプログラムが必要。 まずは初心者を受け入れる雰囲気や気運を高める活動から始めてはどうか 日本のゴルフ場は約9割がメンバーコースとされている。そのため、多くのゴルフ場は簡単にプレースタイルを変えられないかもしれない。だが、「雪マジ」は大学生なら誰でも知っているのに「ゴルマジ!」が広がらないのはゴルフ場が変われないからであると思う。もちろん、すべてのゴルフ場が柔軟なプレースタイルに対応できるとは考え難いが、可能なゴルフ場には、是非、多様なプレースタイルや、それを望むプレー者層(初心者や若者)の受け入れ態勢を整えて欲しい。 例えば、ゴルフの業界団体等で「大学ゴルフ授業推進宣言」のような宣言文を作成しゴルフ場経営者に署名してもらうのはどうか。すなわち、ゴルフ場経営者が「自社は大学生を受け入れられる状況ではないが主旨には賛同する」姿勢を示す、と言うことである。こうした小さな積み重ねが、メンバー以外の客やゴルフ場に殆ど来ないプレーの頻度の少ない人にも関心を寄せるきっかけになるのではないか。 1)北 徹朗(2025)大学におけるゴルフ振興の取り組み-ゴルフ場と地方および企業との連携強化に関する提案-、自由民主党ゴルフ振興議員連盟総会での発表資料(2025年4月22日、於:自民党本部) 2)公益社団法人全国大学体育連合ウェブサイト:https://2020.daitairen.or.jp/dtr2020/?p=14419(2025年4月19日確認) <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2025年05月05日
    快晴時よりも曇りの方が紫外線量が多いことも 筆者は、以前の連載において、日本に降り注ぐUVインデックス値(紫外線が人体に及ぼす影響の度合いを示す指標)が、近年「極端に強い(Extreme)」という域にまで上昇し、オーストラリアの夏並みの紫外線レベルに到達する日が出現するようになっていることを紹介してきた(北、2024)。 気象庁によれば、地上に到達する紫外線量は、快晴時を100%とすると、曇りの場合約60%、雨の場合約30%の量になるとする一方、雲の間から太陽が出ている場合には、雲からの散乱光が加わるため快晴時よりも多い紫外線が観測されることもあるとしている。要するに、ギラギラと太陽がまぶしい時ではない状況下の方が、より紫外線レベルが高いこともある。 紫外線は目に見えない上に、感覚的にもわからないため、紫外線量を把握できる測定器や紫外線チェッカーを持っていない限りは、対策を怠りがちである。従来、「紫外線対策」と「暑さ対策」はセットで言われることが多かったが、今後は冬場でも紫外線対策がますます重要になってくると思われる。 そこで本稿では、真冬(2月)のゴルフプレー中の紫外線量と、冬場に人気の高いスポーツである「スキー」と「マラソン(ランニング)」実施中の紫外線量(UVA)を観察したので、その概要を紹介したい。 2025年2月のスポーツ実施中におけるUVA観察 図1.皇居(マラソン5キロ) 図2.東京湾カントリークラブ(ゴルフ) 図3.横浜海の公園(マラソン2.5キロ) 図4.湯沢高原スキー場(スキー) 筆者が2025年2月に実施した「ゴルフ」、「スキー」、「マラソン(ランニング)」の3種類のスポーツ実施時にUVAデータを収集した。これらスポーツのプレー中、着衣等に覆われていない頬に計測機器を装着しUVAを計測した(マラソンは皇居と海辺の2カ所で実施・計測)。活動内容と実験当日の気象環境は表1の通りであった。 また、スポーツ実施日(紫外線データ計測当日)の会場の様子を図1~4に示した。 観察の結果:ゴルフ場の紫外線量データが最も高かった 4つのスポーツ実施中のデータを確認したところ、2月13日に実施した東京湾カントリークラブでのハーフラウンド時に計測したデータが最も高かった。次いで、皇居マラソン(2月8日)、湯沢高原スキー場(2月23日)、海の公園マラソン(2月16日)の順に高かった(表2)。 【提言】「WBGTと紫外線量が同時に計測・表示されるモニタ」の新規製品開発 図5.冬場のスポーツ実施中のUVAとWBGT(数値は表1.2のデータを四捨五入) 近年の突発的猛暑により、事業所のみならず個人でハンディタイプのWBGT(暑さ指数)測定器を持参する人を夏場には見かけるようになった。だが、「暑さ」と「紫外線量」は必ずしも相関しないこともよく知られている。実際、今回筆者が収集した紫外線(棒グラフ/青)とWBGT(折れ線/橙)のデータを重ねて見ても、両者に相関関係は認められなかった(図5)。 すなわち、それほど暑くない日であっても紫外線量が高い日がある。だが、前述のように、暑さと違い紫外線量は感覚的にはわからない。そこで、WBGTと紫外線量の両方が同時に計測・表示されるモニタがあれば、ゴルフをする人にとってはより合理的な対策が取りやすくなる。こうした製品はありそうでまだないので、早期の製品開発が期待される。 1)北 徹朗(2024)ゴルフプレー中における着衣の色と紫外線透過量の観察、GEWゴルフエコノミックワールド2024年10月号 2)気象庁:オゾン・紫外線について,https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq21.html(2025年3月18日確認) <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2025年04月05日
    大型扇風機はクラブハウス前だけにあっても意味がない 筆者が過去に発表した論文において、「18ホールのランドプレーの中でも特に、グリーン上で帽子内温度は急上昇する」ことを明らかにしている(Kita et al.,2019)。この研究で得られた知見から、真夏のコースラウンドにおいては、『グリーン上でのプレー前後に脱帽して通気すること』や、『パッティング前後には水分補給を欠かさないようにすること』などの提言を示してきた。 また、2024年3月9日にパシフィコ横浜で開催された、ゴルフ市場活性化セミナー(2024年春GMACセミナー)では、【地球沸騰化時代、夏のゴルフを安全に楽しむには ―ゴルフと環境とSDGsを徹底討論-】にシンポジストとして筆者が登壇し、『急がれるゴルフ業界を挙げた暑熱対策』として講演した。この中で、ハーフに3カ所程度、大型扇風機等によるクーリングエリアを設置し、1分程度の強風を浴びることなどを提案した。この背景には、近年クラブハウス前のみに扇風機がある場面を見かけるが、熱中症予防の観点からは殆ど効果が無いと思われることなどの問題意識によるものであった。 本稿では、大型扇風機による冷却効果がどの程度あるのかのエビデンスを探るためのパイロットスタディとして、人工暑熱環境下での大型扇風機による冷却効果の観察を試みたので紹介したい。 人工暑熱環境下において15分に1回の風を浴びる検証(2025年1月23日実施) 本研究では、猛暑下のラウンド中に風を浴びることで、着衣内や表面温度の低下にどの程度貢献するのかを見据えた検証であった。実験実施時期が真冬(2025年1月)であったため、屋内に人工暑熱環境を再現しての実験を行った。マネキンに黒色のポロシャツを着用させ人工太陽を模した白熱灯を照射した。実験開始時の実験室内温度は15.2℃、湿度34.4%、WBGT10.3℃であった。 マネキンAには45分間照射し続けた。マネキンBには45分間のうち15分ごとに大型扇風機の風を1分間(計3回)当てた。検証に使用した大型扇風機の風速は0.60~1.30m/sであった。ちなみに、一般的な家庭用扇風機の風速は0.15~0.25m/s程度である。この実験条件のもとで、着衣表面温度と着衣内温度を測定し比較検証した。 高温環境になればなるほど大型扇風機の効果が高まる 図1 ポロシャツ「表面温度」の推移 図2 ポロシャツ「着衣内温度」の推移 今回の検証は、研究の手始め(パイロットスタディ)として行うため、まずは実験開始時の実験室内環境を低めに設定し実施した。データ収集の結果、【送風なし群】においては、着衣表面と着衣内温度はそれぞれ39.7℃と36.1℃まで上昇し続けたが、15分に1回の大型扇風機による【送風あり群】では最終温度において表面温度では27.2℃となりマイナス12.5℃、着衣内温度においては30.5℃となりマイナス5.6℃の差が認められた(図1)(図2)。 ポロシャツ表面温度およびポロシャツ内部温度のいずれにおいても、温度環境が高温になればなるほど大型扇風機による温度低減効果が顕著に認められた。15分での送風の際「表面温度」については送風後5分および10分後には送風なし群の水準に迫る温度上昇(回復)が見られたが、30分と45分の送風時のデータを見ると、高温環境になればなるほど、風の効果の有用性が高まり、表面・着衣内の両方の温度がより低く抑えられていた。 今回はマネキンを用いた検証のため、ヒトの体温や発汗、湿度等の影響が考慮されていない。今後、実際のラウンド時におけるフィールド検証が必要である。 追記:本稿の詳細は「日本ゴルフ学会第34回大会」で報告した。 参考文献 1)Kita,T et al.(2019)Changes in Temperature Inside a Hat During the Play of Golf ―Comparison of Hats with Different Shapes-,International Journal of Fitness, Health, Physical Education &amp; Iron Games, Special Issue Vol6, No2, pp.163-166 2)北 徹朗(2024)急がれるゴルフ業界を挙げた暑熱対策、ゴルフ市場活性化セミナー(2024年春GMACセミナー)において「地球沸騰化時代、夏のゴルフを安全に楽しむには-ゴルフと環境とSDGsを徹底討論-」(2024年3月9日、於:パシフィコ横浜)、https://www.golf-gmac.jp/gmacseminar2024spring/(2025年2月6日確認) 3)北 徹朗(2025)大型扇風機による着衣表面と着衣内部の冷却効果観察-猛暑下ラウンドを想定した人工暑熱環境下におけるパイロットスタディ-、日本ゴルフ学会第34回大会(2025年2月26日-28日,於:宝塚医療大学宮古島キャンパス)発表抄録集 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2025年03月13日
    1901年7月に六甲山頂に4ホールのコースが作られて以降、その後の約100年間において国内には2400カ所を超える凄まじい数のゴルフ場が建設された。 だが、1990年代初頭には日本のゴルフ人口はピークアウトしており、1999年にはゴルフサミット会議が「ゴルフをみんなのスポーツへ」をスローガンに掲げ、「ゴルフをより大衆化させる」ことの必要性がこの当時叫ばれ始めている。 歌謡曲の歌詞にはその時代の世相が反映されていると言われることがあるが、この間「ゴルフ」を歌う楽曲はどんな風に歌われ、どのくらいの楽曲がリリースされてきたのだろうか。本号では「ゴルフ」を歌詞に含む楽曲の調査を試みたので、調査結果の特徴を紹介したい。 ゴルフを歌った最古の楽曲は「麗人の唄」(1930年,河原喜久恵) 今回の調査において「ゴルフ」を歌詞に含む日本最古の楽曲であろうと思われたのが、1930年5月にコロムビアレコードより発売された「麗人の唄」(歌・河原喜久恵、作詞・サトウハチロー、作曲・堀内敬三)である。 この曲がリリースされる少し前の時代(1920年代)には、新宿御苑内に皇室専用コースが作られ、この曲がリリースされた年の4月には有馬GCと室蘭GC、8月には別府GC、10月には我孫子GC、11月には藤澤CCが設立されている。そして、翌1931年にはゴルフコース設計者のアリソンが東京GC、広野GCなどの設計を手がけるなど、この時代は日本におけるゴルフ場建設の黎明期であった(JGA,2001)。 だが、この楽曲の発表後の約30年間、ゴルフを取り上げた楽曲はリリースされていない。 1960年代~1980年代の30年で「ゴルフ」を歌ったものは8曲 1960年からの約30年間では8曲がリリースされていた。この時代に「ゴルフ」を歌っていたアーティストは、石原裕次郎、植木等、小林旭、チューリップ、BOØWY、ハナ肇とクレイジーキャッツ、関敬六、などである。 表1は各年代から1曲ずつ「ゴルフ」が含まれる歌詞部分を抜粋したものである。この当時の「ゴルフへのあこがれ」、「つきあいゴルフ」など、時代の様相が歌詞から何となく垣間見える。全てYouTubeで視聴可能なので、是非聞いてみて頂きたい。 1990年代~2010年代は112曲に急増:中でも「ゴルフ」の楽曲を最も多く手がけたのは吉幾三 1990年代~2010年代の30年間には112曲もの「ゴルフ」が歌われていた。誌面に限りがあるため、全ての情報は紹介できないが、日本人なら誰でも知っているような有名アーティストの楽曲にもゴルフが多く取り上げられている。例えば、長渕剛、THE BOOM、槙原敬之、B'z、ユニコーン、NOKKO、広瀬香美、水木一郎、Mr.チルドレン、吉幾三、井上陽水、クレイジーケンバンド、せんだみつお、秋川雅史、RAG FAIR、和田アキ子、藤木直人、あやまんJAPAN、矢島美容室、ケツメイシ、電気グルーヴ、さだまさし、はなわ、等々、多くのアーティストが楽曲をリリースしている。 なお、全ての年代を通して「ゴルフ」を含む歌詞の楽曲が最も多かったのが吉幾三(5曲)であった。具体的には、「これが本当のゴルフだ!」(1999年)、「その後の…お・じ・さ・ん」(2002年)、「お・じ・さ・ん」(2004年)、「うちのかみさん」(2016年)、「これが本当のゴルフだ!! パート2」(2012年)の5曲で、作詞・作曲は全て吉幾三であった。 「ゴルフ人口」と「ゴルフ楽曲数」は反比例の関係 日本の歌謡曲において「ゴルフ」を歌詞に含む楽曲数の推移を図1に示した。いわゆるゴルフ人口がピークに達したのが1992年とされているが、「ゴルフ」を歌詞に含む楽曲は1990年代から急激な右肩上がりを続けており、反比例のような関係性になっている。 近年、ポピュラーな楽曲内でゴルフが多く歌われるようになっているということは、「一部の人の娯楽だった時代」から「大衆化」が進んでいる、とも読み取れないだろうか。なお、この図には含まれていないが、2020年代においては「ゴルフ」を含む楽曲が13曲(2023年現在)リリースされている。 図1.日本の歌謡曲において「ゴルフ」を歌詞に含む楽曲数の推移<br />   (武蔵野美術大学教授・北 徹朗,2024年12月調査による) 参考文献 1) JGA日本ゴルフ協会(2001)特集ゴルフ場の100年,https://www.jga.or.jp/jga/html/about_jga/vol65/1p.html(2024年12月13日確認)
    (公開)2025年01月06日
    「同じスポーツを楽しむ夫婦」は親密度が高く離婚意向のスコアが低い(韓国の研究) 慶熙大学校(Kyung Hee University)のグループが2024年8月に発表したレジャー・スポーツ活動を行う夫婦350名を対象に実施した研究によると「同じスポーツ活動をしている夫婦」と「夫婦ともにスポーツ活動はしない」または「夫婦の一方だけがスポーツ活動している」の各群を比較すると、『同じスポーツ活動をしている夫婦のグループで肯定的要素のスコアが顕著に高かった』としている。具体的には「親密さ」と「満足度」において他の群よりも高いスコアを示し、逆に「離婚意向」は他より最も低かった。 近年、日本国内でも11月22日(いい夫婦の日)にちなんだ夫婦ゴルフ大会が毎年行われ、多くの参加者を集めている。例えば、ゴルフライフ株式会社が主催する「いい夫婦ペアスクランブルゴルフ選手権」は、“夫婦ペア限定参加という唯一無二の名物大会”として2017年にスタートしたとされ、毎年多くの参加者を集めているという。運営会社によれば、2023年度は21試合の予選会が行われ「カットラインが7アンダーというスコアも飛び出すほどハイレベルな戦いとなった」という。スコアメイクを求めるプレー頻度の高い夫婦ゴルファーにとっては、目標となる大会として今後も定着するのではないか。 スポーツエントリー:手軽なマラソンとは対照的なゴルフ 筆者は我が子の体力の保持増進と自らの健康維持のために、数年前からマラソン大会(ランニング)に参加している。様々なジャンルのスポーツイベントを扱う「スポーツエントリー」というポータルサイトから参加申込をしているが、2キロ程度の距離からフルマラソンまで、毎週全国各地で開催されるランニングイベントを検索・エントリーできる。 筆者の場合、子どもと走るため、せいぜい「5kmの部」だが、2019年に初めて参加して以来、時間を見つけてはエントリーを積み重ね、2024年内には出場100回の節目を迎える。 この「スポーツエントリー」ではゴルフイベントを検索することもできるが、その大半は18ホールや数日に渡る競技であり、気軽にエントリーするには少々ハードルが高い。子どもにゴルフ場を体験させたいといつも思っているので、ライトで手軽な企画を探しているが、我が家のレベルに合うゴルフイベントはまず無い。 「子どもにゴルフ場を見せてやりたい」と思うが… 昨年、あるゴルフ場で開催された子ども向けの企画に我が子(男児2人)を連れて参加した。「用具がなくても、初めてでも大丈夫です」と謳われていたが、これを機に「またゴルフをしたい」と言うかもしれないと思い、中古のハーフセットを2つ購入しそれぞれ子どもに持たせた。 当日現場に行ってみたところ、集まっていたのはハイレベルな「仕上がっている」子どもばかりで、皆カッコよくフィニッシュを決めていた。空振りばかりしているのは我が息子たちだけであり、そのあまりにも場違いな雰囲気に耐えられず、打ちっ放しとパターの練習場だけ参加させ、メインイベントであるカートに乗ってのゴルフコース体験は遠慮して逃げるように帰宅した。 要するに、子どもの体験イベントだと思った企画は、競技志向者の練習の場と化していたわけだが、遊びの延長的に軽く申し込んだ筆者とは異なり、他の保護者の表情は厳しく、子どもに熱心にアドバイスをしている親もいた。格安で本コースを回れることから3-4ホールの体験企画であってもこうした状況を生んでいるようだ。 朝日コーポレーションの「ピクニックゴルフ」が素晴らしい 東我孫子カントリークラブ(千葉県)など、ゴルフ場を全国に展開する株式会社朝日コーポレーショングループの各ゴルフ場では、「ピクニックゴルフ」と言う企画が定着している。その名の通り、ピクニック気分でゴルフ場を体験するもので、全くゴルフ経験の無い人や、コースデビューをためらっている層に「ゴルフは本当に楽しい!」という気持ちを実感してもらうための企画であるとされている。 ティーショットからホールアウトまでチャレンジするもよし、グリーンやアプローチのみをプレーするもよし、どんな回り方でも許容される。単にカートに乗ってゴルフ場を回遊したり、芝の上を歩きながらゴルフ場の景色を楽しむなど、楽しみ方は自由で「18ホールの完全ゴルフ」は想定されていない。 前述のエピソードとは対照的に、これこそ「手軽で簡単にゴルフ場を体験してみたい」と言う層にはピッタリな発想でとても魅力的だが、朝日コーポレーション以外にこうした事業を提供しているゴルフ場を見つけることは難しい。 「ピクニックゴルフ」のようなパッケージに簡単にアクセスできる環境が欲しい 年1回の賑やかし的なイベントや、競技を見据えたジュニアが集まるような企画ではなく、ピクニックゴルフのようなパッケージに簡単にアクセスできる環境があればと強く願う。 筆者が参加しているマラソン大会(5キロ程度)の1人あたりのエントリーフィーは概ね2000円~4000円程度であるが、毎週末多くの大会が開かれている。特に東京近郊ではその数が多いため、どれに参加しようかいつも迷いながらエントリーしている。 ピクニックゴルフの費用はマラソン大会の参加フィーと大差ない上に「ゴルフ場での食事とドリンク」、「クラブレンタル」、「シューズレンタル」、「ロッカー、浴室利用」等々も含まれているので、マラソンよりも格安なのかもしれない。 「Gちゃれ」や「ゴルマジ!」後の本格ゴルフへの接続パッケージにもなり得る 現状、初心者や子どもを連れて行こうとした場合、ショートコースでさえ敷居が高い。その要因は、選択の自由性の低さにある。9ホールや18ホールを完全に打ち繋ぐことを必須とするようなパッケージだけではなく、ピクニックゴルフの様な楽しみ方など、選択の自由性の高いプログラムを提供頂けたら、「夫婦でライトにゴルフに取り組もうとする層」、「Gちゃれやゴルマジ!のようなゴルフ経験のみの大学生」、「子どもにゴルフ場を見せてやりたい父親」等々、ニーズはあるはずだ。正規のお客(最終組)が全てスタートした後のため、後続組を気にする必要もないし、打ったり打たなかったりも自由。ピクニックゴルフのような企画や取り組みがもっと多くのゴルフ場で行われると本当に嬉しい。 冒頭に紹介した研究のように、高齢になっても夫婦で楽しめるスポーツの1つとして「ゴルフ」は思い浮かぶが、若いうちからの楽しい経験がその後の継続意欲には重要である。手軽で簡単にゴルフ場を体験できるピクニックゴルフのようなパッケージが広まれば、大学生向けに行われている「Gちゃれ」(大学ゴルフ授業研究会)や「ゴルマジ!」(リクルートホールディングス)を受け入れる環境形成が、日本のゴルフ場でも徐々に構築されて行くのではないか。 参考文献 1)JH Yang et al.(2024)Comparative Analysis of Stroke, Marital Intimacy, Marital Satisfaction and Divorce Intention According to the Type of Participation in Marital Leisure Sports,Behav Sci (Basel)27;14(9):757 2)ゴルフライフ株式会社(2023)激闘の末、夫婦ゴルファー日本一が決定!「2023いい夫婦ペアスクランブルゴルフ選手権」全国決勝開催,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000064888.html(2024年11月6日確認) 3)株式会社朝日コーポレーション:ピクニックゴルフ,https://www.asahi-c.com/picnic/(2024年11月6日確認) <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2024年12月07日
    ワークマンではゴルフウエアの売り上げが前期比255.6%増 作業服とその関連用品専門店の最大手として有名な、株式会社ワークマンの2024年3月期決算説明会資料(2024年5月7日)によれば、「ファン付ウエア」の売り上げは好調で前期比24.3%増だったとされている。 ちなみに、ワークマンでは、2022年5月からゴルフウエアの販売(ワークマンゴルフ)を開始している。この部門においては前期比255.6%増と大きく売り上げを伸ばしており、ゴルフ部門での存在感を示しつつある。 ファン付ウエア研究は「長袖」が主流 ファン付ウエアに関する研究論文は2017年頃から散見され始めた。2019年頃になるとファン付ズボンに関する検証も試みられるようになっており、気象環境や作業・活動状況に応じた様々なエビデンスが報告されている。 近年の研究では、ファン付ウエア内に着用するインナー素材について、桒原ら(2021)が「綿製インナーの残留汗量がポリエステル製よりも有意に高い」と言う結果を示している。要するに、インナーに綿を着用した場合は、汗が多く残る、と言うことだが、主観的な濡れ感覚には有意な差は見られなかったとしている。同じく、着衣内温湿度、皮膚温、発汗密度などにも、インナー素材の違いによる有意な差は見られていない。すなわち、この結果からみると、インナーに着用する素材は、あまり気にしないでもよいと考えられる。 また、榊原ら(2024)は、ファン付ウエアの効果を発揮しやすい気象環境について、温度28℃~35℃、湿度55%~64%の範囲内の環境の際、使用効果が高いとしている。 ただ、これらの研究は、全て長袖ファン付ウエアを対象として検証された論文である。この理由としてはおそらく「作業服」として建設現場や労働作業を想定した研究であるためと考えられる。 ゴルフの場面で好まれるのは「半袖」か「袖なし」 図1.<br />武蔵野美術大学のゴルフ授業用ファン付ウエア 真夏のゴルフの場面では、その運動特性から考えても、長袖よりも半袖や袖なし(ベストタイプ)のファン付ウエアが好まれることが多いのではないか。2019年にゴルフ用ファン付ウエアの先駆けとして株式会社プロギアから発売された製品も半袖タイプと袖なしタイプであった。 武蔵野美術大学でも、2022年度よりゴルフ授業用にファン付きウエア50着を活用してきたが、全て袖なしタイプを揃えている(図1)。 猛暑下における袖なしファン付ウエアの効果観察 ゴルフ場での実験プロトコル作成にあたり、まずは研究の手始めとして、普段から袖なしタイプのファン付ウエアを愛用している76歳男性に協力してもらい、畑での農作業時の着衣内温度を測定させてもらった(図2)。 図2. 野菜の苗の植え付け作業中の着衣内温度計測 (袖なしファン付ウエア着用中) 〈実験概要〉 ・ 実験日:2024年8月4日(日) ・ 実験開始時の気象環境:WBGT34.0℃、気温34.8℃、湿度69.3% ・ 実験終了時の気象環境:WBGT37.6℃、気温45.9℃、湿度37.7% ・ 被験者:日常的に農作業に従事する健康な男性(76歳) ・ 作業時間:9:40~10:20(前半20分Tシャツのみ,後半20分ファン付ウエア着用) ・ 作業内容:ブロッコリー8本、キャベツ8本の苗の植え付け  約40分間の農作業中の着衣内温度を観察したところ、図3のような結果が得られた。作業開始20分後からファン付ウエアを着用・稼働させたが、図を見ると、一見、着衣内温度自体は低下しなかったように見える。しかしながら、ファン付ウエアは猛暑下における使用が前提のため「外気温との差」を見ることが重要である。次にその観点からの推移を述べたい。 図3真夏の農作業における着衣内温度変化 袖なしファン付ウエアは7.5℃も涼しかった 観察当日、実験概要に示したように、実験開始時(WBGT34.0℃、気温34.8℃、湿度69.3%)に比べ、実験終了時(WBGT37.6℃、気温45.9℃、湿度37.7%)には著しい気温上昇が認められる環境であった。 「外気温との差」の観点からみると、ファン付ウエア稼働直後(10:00)における外気と着衣内温度の差は4.5℃、20分後(10:20)には7.5℃となった。すなわち、長袖で手首まで袋状になった形状でなくとも、袖なし形状でも7.5℃も涼しかった(図4)。 図4 袖なしファン付ウエア着用時の「気温」と「着衣内温度」の差 冒頭で述べたように、先行研究ではファン付ウエアが効力を発揮する温湿度環境が調べられているが、筆者らが過去に示したプレー中の帽子内温度実験(グリーン上で温度急上昇)のようにゴルフの種目特性により、ファン付ウエア使用の最適解が異なることもあり得る。また、半袖や袖なしタイプは空気の漏れによる冷却効果低減が懸念されることもある。それらの実際はどうなのか、フィールドでのラウンド検証が必要である。 参考文献 1) 株式会社ワークマン:2024年3月期 決算説明会資料(2024年5月7日)、https://www.workman.co.jp/ir_info/pdf/2024/43ki_03_kessan.pdf(2024年10月17日確認) 2) ワークマンゴルフ:https://workman.jp/shop/e/egolfgs/?srsltid=AfmBOoooe_nDZU9AXb6kLI-TXePMLOkhZFi1OIV53tZimtG8deKzmri1(2024年10月17日確認) 3) 山崎慶太ら(2017)建設作業員の快適感・暑さ感に及ぼす空調服の影響に関する実測調査に基づく基礎的検討、空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集G-44 4) 笹森暁ら(2019)ファン付き作業服が建設作業員の生理・心理反応に及ぼす影響に関する研究(第11報)、人間‐生活環境系シンポジウム報告集43巻 5) 桒原浩平ら(2021)ファン付き作業服内のTシャツ素材が生理心理反応に及ぼす影響、空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集F-9 6) 榊原康生ら(2024)歩行時に長袖ファン付作業服を着用すると生理・心理負担が軽減される温熱環境、日本建築学会環境系論文集第89巻第820号 7) 北 徹朗(2024)猛暑下における体育実技授業のガイドライン―武蔵野美術大学での試み―、大学体育123号、pp.101-103 8) Kita et al.,(2019)Changes in Temperature Inside a Hat During the Play of Golf-Comparison of Hats with Different Shapes-、International Journal of Fitness, Health, Physical Education &amp; Iron Games、Vol.6, No.2,pp.163-166 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2024年11月02日
    日本に降り注ぐ紫外線量が初めて「極端に強い/Extreme」の域に達した(2023年夏) 以前の連載において、「ゴルフをする人はしない人に比べて生涯の皮膚がん罹患率が2.4倍高い」(B Stenner et al.,2023)と言う研究を紹介した。この論文の著者らは、ゴルフを月1回以上行うオーストラリア人の皮膚がんの生涯罹患率の高さから、ゴルフの様な長時間の紫外線暴露を伴うスポーツにおいては特に予防策を講じる必要がある、と結論付けている。 気象庁が公開しているデータによれば、2023年の夏に日本に降り注いだUVインデックス値(紫外線が人体に及ぼす影響の度合い示す指標)が初めて、極端に強い(Extreme)という評価レベルにまで上昇している(図1)。2005年データと比較すると20年前は全体的なレベル自体が低い(図2)。 このように、近年、日本ではオーストラリアの夏並みの紫外線レべルに到達する日が出現するようになっている。過去20年間のデータを見ても、日本の紫外線量がこの域に達したことは一度もない。 図1.2023年のUVインデックス値の推移 図2.2005年のUVインデックス値の推移 着衣の色が紫外線透過に及ぼす影響(2024年7月28日、栃木県某ゴルフ場での実験) 一般的に黒など明度の低い色は紫外線を透過し難いとされている。だが、これらの色は日射吸収率が高く蓄熱し高温になりやすいため、猛暑時の着用は適切でないことはこの連載でも紹介してきた。 本稿では、2023年夏から新たに見られだした、極めて深刻な紫外線量の問題意識から、ゴルフプレー中における、紫外線透過量データを着衣の色別に収集することを試みた。実験方法・実験環境の概要は下記であった。 ・ 実験日:2024年7月28日 ・ 実験場所:栃木県のゴルフ場 ・ 実験開始時の気象環境:WBGT27.6℃、TA28.7℃、湿度81.2%、風速0.15 m/s ・ 実験終了時の気象環境:WBGT27.8℃、TA29.2℃、湿度83.1%、風速0.18 m/s ・ 被験者:スムーズなラウンドに支障ない技量の健康な成人男性4名。 ・ 着衣の色:被験者はそれぞれ、白・ピンク・濃紺・グレーのポロシャツを着用 ・ データ収集:9ホールプレー(9:28~12:36)中の着衣内紫外線量(mW/cm²)データを10秒おきに収集した。 ピンクが最も紫外線を透過させ、濃紺は全く通さなかった 実験の結果、紫外線検出量が最も多かったのはピンクであり、胸の内側に装着したセンサーからは、平均値0.017 mW/cm²、最大値0.095 mW/cm²が検出された。2番目に多かったのはグレーで、平均値0.003 mW/cm²、最大値0.019 mW/cm²であった。次いで3番目が白で、平均値0.002 mW/cm²、最大値0.013 mW/cm²が検出。そして、濃紺については紫外線透過を一度も検出しなかった(0 mW/cm²)(表1)。 「暑さ」と「紫外線」対策、効果的な色は真逆 実験当日は、高温多湿(最高気温29.2℃、最高湿度91.4%)であり、体感的には直射日光を感じ難い気候であった。着衣表面温度を一番上昇させたのは濃紺であったが、紫外線を全く通さなかったのも濃紺だけだった。北ら(2022)の先行研究では、蓄熱を抑えられる色として「ピンク」の有用性を示したが、紫外線透過の観点からは真逆の結果となった。 過去の観察では、猛暑下では薄いピンクと濃紺の表面温度の間には、20℃程度の温度差が生じることもあった。つまり、猛暑下に濃紺や黒系などを着用するのは、熱中症リスクを高める恐れがある。しかしながら、紫外線対策を考慮すると、ピンクや白では透過する矛盾が生じる。 「表面は白」で「裏地が濃紺」:急がれる蓄熱しにくい上に紫外線も通さないウエア開発 こうした矛盾を解消できる、蓄熱しにくく紫外線を通しにくい帽子やウエアの新開発が望まれる。ハーフ2時間以上の時間を要するゴルフにおいては、オーストラリアでの研究報告に見られるように、紫外線対策についても真剣に考えられなければならない新たな問題である。 例えば、表面は白やピンクなど日射反射率の高いカラーとし、裏地やインナーに黒や紺など紫外線を通しにくいカラーを施したデザイン開発はどうか。日傘では、既にこの発想で製品化されているのものが多いように思われる。 UVカットスプレーの持続性、発汗量との関連など検証実験が必要なことは多い 裏地やインナーの工夫とは別に、UVカットスプレーなどを着衣表面に直接塗布した場合の持続効果はどうだろうか。この点についても一考の価値がある。着衣の素材との相性も考えられるし、色や素材によって効果的な組み合わせが見つかる可能性もある。また、発汗してシャツが湿っている場合や、雨などに影響を受ける可能性も考えられる。暑さ対策と紫外線対策においては不明な点が多いため、ゴルフプレーを想定した、こうした様々な環境での検証実験が必要な状況である。 「暑さ」と「紫外線」の両方に強い帽子やウエアの開発や、UVカットとして既に存在する製品をどのように活用すれば効果的かなど、フィールドでの実験検証が必要なことはまだまだ多い。画期的なアイデア創出とそのエビデンス検証が急がれる。 参考文献 1)Brad Stenner et al.,(2023)Golf participants in Australia have a higher lifetime prevalence of skin cancer compared with the general population,BMJ Open Sport &amp; Exercise Medicine, Volume 9, Issue 3 2)気象庁(2024)日最大UVインデックス(観測値)の年間推移グラフ,https://www.data.jma.go.jp/env/uvhp/link_daily_uvindex_obs.html 3)Kita et al.,(2024)Observation of Clothing Color and UV Transmission in Hot Environments:A Pilot Study on Playing Golf in Mid-Summer in Japan,The Conference of Digital Life vol.2 Proceedings 4)北 徹朗ら(2022)帽子の素材・色・形状が暑熱環境下でのスポーツ実施中の生理指標と帽子内温湿度に及ぼす影響,デサントスポーツ科学Vol.42,pp.37-51 北 徹朗|きた・てつろう 博士(医学) 武蔵野美術大学教授・同大学院博士後期課程教授 GMACゴルフ市場活性化委員会有識者委員(企業連携・交流部会副委員長) <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2024年10月04日
    国連のプラネタリーヘルスとウェルビーイングに関する新たな報告書(2024年7月公表) 2024年8月も「観測史上最高」や「猛暑日過去最多」が各地で相次いだ。気象庁が発表している「観測史上最高気温ランキング」(2024年8月18日現在)を見ると、上位21件(41.1℃~40.4℃)のうち14件が2018年以降に観測されている。2000年以前に観測されたものは2件しかなく、この5年程度で地球が急激な気温上昇している状況がわかる(表1)。 表1.日本における最高気温ランキング(2024年8月18日現在 ) 2024年7月15日に国連環境計画(UNEP)と国際科学会議(ISC)は、プラネタリーヘルスとウェルビーイングに関する報告書(A global foresight report on planetary health and human wellbeing)を発表した。数百件のリファレンスを用いたこの報告書は96ページにも及び、世界の気候変動等に関する新たな課題を予測し示している(図1)。 図1.<br />2024年7月に発表された報告書 報告書の内容は2024年9月に開催される国連未来サミットでの議論に反映される 図2.<br />8つの重大な世界的変化・現象(報告書より) 報告書では、中長期的な観点から、3つの地球の危機(気候変動、自然と生物多様性の喪失、汚染と廃棄物)を加速させている8つの「大きな変化」について言及(図2)し、18の「変化の兆し(Signal of change1~18)」が強調されている。この報告書は、9月22日~23日にかけてニューヨークで開催される国連未来サミット(Summit of the Future)での議論に反映される予定である。 報告書ではSDGs目標達成の遅れが指摘される 図3.<br />SDGsの17個の目標の進捗状況評価(報告書より) 2015年に国連加盟国が採択したSDGsについて、10年が経った現在の状況について、報告書は「成果は期待外れ」としている。項目によっては、2015年以降何の進歩も見られないばかりか、さらに悪化・後退しており、環境関連の項目についても目標から大きく外れている(図3)。 太陽光を宇宙に反射させて地球を冷却する研究 報告書に記載される18 の変化の兆し(Signal of change1~18)のうち、7番目に興味深い研究動向が示されている。(Signal of change 7:Deployment of Solar Radiation Modification,日射調整装置の導入) 具体的には、太陽放射修正:Solar Radiation Modification (SRM)と呼ばれる分野の研究が進んでおり、太陽光を宇宙に反射させて地球を冷却する(温暖化を抑える)ことを目指している。但し、本研究については環境や生物、社会経済への影響などの議論もあることが記されている(図4)。 図4.<br />Signal of change 7:Deployment of Solar Radiation Modification(報告書より) 参考文献 1)気象庁(2024)歴代全国ランキング,https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/rankall.php(2024年8月18日確認) 2)United Nations Environment Programme International Science Council(2024)Navigating New Horizons: A global foresight report on planetary health and human wellbeing、https://wedocs.unep.org/handle/20.500.11822/45890(2024年8月18日確認)
    (公開)2024年09月04日
    「観測史上最高」が続出した7月、米国では50℃越え 高温でアスファルトが溶けて高速道路の防護柵が相次いで傾いたり、道路が陥没するほどの激しい猛暑は、2019年前後から日本では報告されるようになった(北、2024)。当時は、2020東京オリパラを控えており、マラソン競技やゴルフ競技の会場やプレーの時間帯など、暑さ対策について様々な議論がされてきたが、今日の猛暑はその当時よりも深刻になっている。 この原稿は7月15日に書いているが、この日沖縄県(那覇空港)で観測史上最高の35.7℃となり、108年ぶりに3日連続の猛暑日となったことが報じられた。7日前の7月8日には、和歌山県新宮で39.6℃、東京都府中市で39.2℃となり、いずれも観測史上最高を記録した。 暑さは年を追うごとに厳しさを増しており、特徴的な猛暑日を取り上げて原稿を書こうとしても「観測史上最高」はすぐに塗り替えられる状況にある。いま書いている内容も、じきに古くなるのだろう。 ただ、この状況は日本だけではない。7月7日、アメリカのラスベガスでは観測史上初の48.9℃、デスバレーでは53.9℃を記録するなど、健康に日常生活を送るには困難なほどの猛暑に見舞われている。ヒトは文明の発展と引換に「地球の健康」をないがしろにしてきた。本稿ではプラネタリーヘルス(地球の健康)と言う考え方に着目しその最新動向を概説する。 「プラネタリーヘルス」(Planetary Health)の概念と広がり 「プラネタリーヘルス学環」の構成(長崎大学ウェブサイトより) 【ヒト含む生物の健康は地球の健康と一体的に考えるべき】という「プラネタリーヘルス」と言う概念が浸透しつつある。環境省によれば、比較的新しい概念であるため、国際的に合意された定義や考え方は、現時点では明確には存在していないとされる(環境省、2023)。 三菱UFJリサーチ&amp;コンサルティング株式会社(2021)によれば『地球と人間は別々の存在ではなく、相互依存関係にあることを前提に置き、全ての生態系と地球の健康の共存を目指すプラネタリーヘルスという概念が誕生した』とされている。つまり、地球が健康でなければ人類も健康に暮らせない、ゆえに地球の健康を維持するために考え行動しよう、と言う考え方である。 プラネタリーヘルスという言葉は、国際的な医学研究誌であるランセットに掲載された論文(R Horton et al.,2014)の中で初めて示された用語であり、2015年にロックフェラー財団とランセット誌が「Rockefeller Foundation-Lancet Commission on Planetary Health」を立ち上げたことで、プラネタリーヘルスの考え方が世界的な広がりを見せ出したとされている(長崎大学ウェブサイト)。 日本における「プラネタリーヘルス」のフロントランナーは長崎大学 国立大学法人長崎大学は、大学を挙げて「プラネタリーヘルス」に取り組んでいる。2020年に「プラネタリーヘルスへの挑戦」を宣言し、2021年には「プラネタリーヘルス入門」を全学生必修科目とした。そして、2022年10月には「大学院プラネタリーヘルス学環」(募集定員5名)が開設された。授与される学位は博士(公衆衛生学)とされる。 永安武学長によれば、長崎は江戸時代に海外に開かれた唯一の窓口だったことから、海外から持ち込まれる感染症の対応にも迫られ、それ以来続く長い経験の蓄積などもあって、必然的に「グローバルへルス」を理念に掲げる大学となっていったことがベースにある。 そして、近年の気候変動、環境汚染、未知の感染症、人口問題、食糧問題、格差、ジェンダー、宗教や文化の対立、高まる核リスク等、多くの地球規模の課題を抱えており「グローバルヘルス」をさらに発展させ『地球の健康の実現』という目標を新たに掲げ、地球規模の課題解決に資する教育・研究を推進していくことを宣言している。 「プラネタリーヘルス」と「SDGs」の違い SDGsは2030年に達成すべき17のゴールが掲げられており世界中で多様な取り組みが生まれているが、そこに矛盾点があることにあまり焦点が当てられていない。代表的な一例として、本来、全てのゴールに気を配るべきであるが、一部の目標だけを選んで取り組む場合が多くなってしまっている(長崎大学ウェブサイト)。 他方、プラネタリーヘルスでは地球全体のバランスを考えるので、1つの事柄に対して別の事柄の関係性を見ていくことに重きをおいている。例えば、森林を伐採して農地に転用した場合、食糧問題は解決するかもしれないが、生態系や温暖化にはマイナスの影響が出るかもしれない。このように、常に「自然と人間社会との関係性」や「ローカルとグローバルの関係性」を考え、長期的な目標を見据えて短期目標をクリアし続けていくことがプラネタリーヘルスの特徴であるとされる。 【出典】 1)北 徹朗(2024)急がれるゴルフ業界を挙げた暑熱対策、ゴルフ市場活性化セミナー2024配布資料、https://www.golf-gmac.jp/wp-content/uploads/2024/04/gmac_kita2.pdf(2024年7月16日確認) 2)環境省総合環境政策統括官グループ(2023)第六次環境基本計画に向けた基本的事項に関する検討会取りまとめ、https://www.env.go.jp/council/content/i_01/000136528.pdf(2024年7月16日確認) 3)三菱UFJリサーチ&amp;コンサルティング株式会社(2021)Planetary Healthに関する取り組み事例と日本に向けた示唆、https://www.globalhealth.murc.jp/vc-files/GlobalHealth/20210630_PlanetaryHealthDoLG.pdf(2024年7月16日確認) 4)長崎大学大学院プラネタリーヘルス学環ウェブサイト:https://www.planetaryhealth.nagasaki-u.ac.jp/(2024年7月16日確認) <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
    (公開)2024年08月03日