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    特定サービス産業動態速報(以下「特サビ」と省略)が、2025年1月より経産省から総務省へ移管されて、その最初の公表(2025年1月分・3月26日公表)にはゴルフ場、ゴルフ練習場のデータがありませんでした。残念ながら、移管に伴い削除されたのです。これにより、2000年から毎月2ヶ月後に公表されてきた公的ゴルフ産業需要動向データは途絶しました。 各ゴルフ練習場は来場数(売上高)が急減した時、市場全体の動向と自社の実績を比較したいはず。特に震災やコロナ期には「自社の来場回数急減は他の練習場と比べてどうなのか?」を知りたくなる。そんな時に比較できる「全体動向」は特サビ長期データだけだったので、これに替わる需要動向速報データを一刻も早く構築する必要があります。 特サビの特質 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/05/2505table1.jpg" alt="" width="788" height="99" class="size-full wp-image-87610" /> 表1 特サビは貴重ですが、少し使い勝手が悪いデータでした。〈表1〉は特サビ最後(2024年12月)の長期データ〈月・実数〉ワークシートの抜粋です。12月は1万5066打席のゴルフ練習場から、合計利用者数159万7664人でした。 特サビはあらかじめ調査協力に同意してくれたゴルフ練習場(推定250)から、毎月回答を集計する定点調査でした。調査対象練習場は閉鎖等で時々組み替えざるを得ず、前後の連続性が損なわれます。そのため経産省は組み替え発生を明記していました。ですから、合計利用者数の変化を単純に「需要変動」として引用できません。その対策として経産省は、毎月の稼働打席数も同時に報告していました。稼働打席数は毎月微妙に変化しますが、「稼働1打席あたり利用者数」が計算可能であり、連続性が保証されます。 <h2>特サビ1打席データを直近12ヶ月移動合計で短期ノイズを除去</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/05/2505graph1.jpg" alt="" width="788" height="521" class="size-full wp-image-87611" /> グラフ1 〈グラフ1〉は2019年12月~2024年12月の、特サビゴルフ練習場1打席あたり利用者数対前月増減です。 「合計利用者数」「1打席あたり利用者数」ともに季節要因、天候要因などで毎月大きく波動していました。この対策として筆者は「直近12ヶ月1打席あたり利用者数合計」を追加しました。毎月合計する12ヶ月の範囲を移動させるのです。季節要因、天候要因が除去されて、長期傾向が明確になります。コロナ特需は2021年11月の対コロナ前118%がピークで、2024年12月には104%まで縮小した長期傾向が明確に読み取れます。 <h2>特サビ代替は「カードシステム顧客来場履歴データ」しかない</h2> 特サビに替わるデータとして期待できるのが、一部のゴルフ練習場が導入しているカードシステムに基づく「顧客別来場履歴データ」で、筆者はこれしかないと断言します。 顧客カードシステム導入の目的は、フロントのコストカットや顧客を囲い込むポイント付与サービスにとどまっています。しかし定額プリペイドカードを除き、リライト型プリペイドカードやICカード、QRカードシステムは、来場者一人ひとりに決して重複しない顧客番号を与え、顧客番号別にすべての来場回数が記録、蓄積されます。その貴重な情報が活用されることなく眠っていました。筆者は10数年、複数のゴルフ練習場よりこのデータを抽出し、来場数の「変動要因」を分析する機会を頂きました。その結果、単に個別施設の変動だけではなく、ゴルフ需要全体の変動や、将来予測に有用な「法則」を発見できたのです。 <h2>パソコン手作業解析統合データ</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/05/2505table2.jpg" alt="" width="788" height="272" class="size-full wp-image-87614" /> 表2 前述のカードシステムから、筆者がパソコンによる手作業で抽出したデータが〈表2〉です。 ・顧客番号 ・直近12ヶ月の毎月来場回数 ・その前年12ケ月の毎月来場回数 ・それぞれの12ヶ月合計と対前年増減 のみで、個人情報は一切含みません。唯一の情報は顧客別月次来場回数変化です。このデータから以下の法則を発見しました。 ・来場回数はその顧客ゴルファーのゴルフ熱意を表す ・ゴルフ熱意は変化する ・ある12ヶ月間来場回数1回限りの顧客ゴルファーは翌12ヶ月70%以上再来場しない不安定顧客である ・ある12ヶ月間来場回数12回以上の顧客ゴルファーは翌12ケ月80%以上継続来場する安定顧客である ・30%の安定顧客が全体来場回数の80%を稼ぎ出す ・不安定顧客の安定化が個別ゴルフ練習場とゴルフ産業の将来を握っている <h2>来場回数による顧客階層別分析</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/05/2505table3.jpg" alt="" width="788" height="317" class="size-full wp-image-87615" /> 表3 〈表2〉の来場回数を、 1.来場なし 2.不安定(直近12ヶ月12回未満) 3.安定(直近12ヶ月12回以上) と、3階層に分類。そして横軸に「直近12ヶ月来場階層」、縦軸に「それ以前12ヶ月の来場階層」とし、顧客数、来場回数をクロス集計したのが〈表3〉です。まず当該ゴルフ練習場は、直近12ヶ月の実働顧客数1万4437人、来場数3018回の増加が読み取れます。 さらに〈表3〉の灰色網掛けした9枠は「直近12ヶ月前年来場階層→直近12ヶ月来場階層変化パターン別」に集計されました。全体来場回数増加の「3018回」は〈表4〉のように8種類の増減要因別に増減回数と該当顧客数が分解できます。「全体来場数3018回増加」のみでは安心できません。その背後に4つの隠れた減少要因が存在し、9131人の顧客が合計2万6277回も全体来場回数を減少させていたのです。さらに来場階層の変化は「ゴルフ熱変化パターン」であり、最適な集客対策が客観的に検討できます。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/05/2505table4.jpg" alt="" width="788" height="299" class="size-full wp-image-87616" /> 表3 ・3来場なし→不安定 新来ビギナーが減っていないか? ・1不安定→安定 ビギナーが順調に安定顧客に孵化しているか? ・2来場なし→安定 競合ゴルフ練習場との競争に負けていないか? ・6安定→来場なし 大切な安定顧客が減っていないか? など、重要な着眼点が来場回数の変化からキャッチできます。 <h2>特許取得</h2> 筆者が考案した〈2・3・4〉の分析手法は、全て個人情報に触れず「顧客番号別」の月次来場回数履歴のみで可能です。ゴルフ産業需要調査研究所は、このプロセスのコンピュータープログラム特許(特許第7303508号)を取得しました。 <h2>特許分析をビッグデータに</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/05/2505graph2.jpg" alt="" width="788" height="525" class="size-full wp-image-87612" /> グラフ2 日本シー・エー・ディー(株)は複数の優良ゴルフ練習場にカードシステムを構築提供し、その運用をサポートしています。練習場自身でカードシステムによる来場データを活用できるよう、分析システムを提供しており、個人情報を除外した来場分析に必要なデータを、練習場ごとに自社クラウドサーバに集結。そのデータを利用して、全体の動向を調査できる、単一の「全施設統合来場履歴データベース」としてまとめるプログラムも増設しています。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/05/2502table5_2.jpg" alt="" width="788" height="525" class="size-full wp-image-87617" /> 表5 日本シー・エー・ディー(株)のシステムエンジニア、吉田広章氏が「全施設統合来場履歴データベース」に特許分析方法を組み込みました。その2021年12月以降の結果が〈表5・グラフ3〉です。 2024年12月時点で、特サビとの両者調査打席数を比較すると、特サビ稼働打席数1万5066に対し、日本シー・エー・ディーの打席数は1913と、13%しかありませんが、1打席当たりの来場数変化を特サビと対比し〈グラフ2〉としました。一致とは言えませんが、近似しています。カードによるデジタル入力なので、特サビのヒアリング調査よりも正確です。また、平均回数は筆者が安定顧客の閾値とした「12ヶ月合計来場回数12回」に極めて近く、かつ安定しています。 <h2>来場回数階層の経年変化が示す情報</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/05/2505graph3.jpg" alt="" width="730" height="525" class="size-full wp-image-87613" /> グラフ3 〈表6〉は日本シー・エー・ディー(株)の「全施設統合来場履歴データベース」特許分析によるゴルフ練習場1打席当たりの指標で「調査対象期間:2025年3月」と「比較対象期間:直近12ヶ月前年」の増減です。「来場回数▲24・2」は「1打席当たり年間24・2人減少」を意味しています。 <h2>個別練習場の需要指標活用方法</h2> 2025年3月末時点で自ゴルフ練習場(自打席数60)の場合、〈表6〉の来場回数指標増減は▲24・2となるため、「▲24・2×60打席=▲1452」となり、自ゴルフ場実績減少回数が▲1452回ならば「全体市場動向並み」と判断できます。 <h2>全国市場規模推計の可能性</h2>  この数値は「1打席当たり」です。全国ゴルフ練習場の総打席数が解れば全国合計も推計できます。ゴルフ産業需要調査研究所では定期的に全国全ゴルフ場調査を実施しています。2024年11月の最新調査では11万9000打席でした。 2025年3月末時点の実働顧客数1打席当たり減少数は▲1・2人なので、全国ゴルフ人口=▲1・2×11万9000打席▲14万5251となります。ただ、日本シー・エー・ディー(株)の取引練習場は、平均より上位施設が多いと推察されるため参考値です。次号から毎月〈グラフ3・表6〉を掲載します。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/05/2505table6.jpg" alt="" width="788" height="409" class="size-full wp-image-87618" /> 表6 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2025年05月14日
    国立社会保障・人口問題研究所は2023年12月22日、2020年の国勢調査を基点とする「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」を公表した。前回2018年より5年ぶりで、次回は2025年国勢調査による2028年の公表まで待たねばならない。 調査内容は出生率、死亡率、移動率が織り込まれた2020年~2050年、全国市町村別、男女、5歳年齢別人口推計であり、官民問わずあらゆる政策立案の基幹となる。むろん、ゴルフ産業の将来予測もこのデータに立脚しなければならない。なぜなら、ゴルフ将来対象人口としてこれ以上正確な予測は存在しないからである。 将来ゴルフ対象人口 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/02/1.jpg" alt="" width="1000" height="930" class="size-full wp-image-80279" /> <グラフ1> 推計によれば、2050年の総人口は対2020年比で▲17%減少する。さらに10歳から79歳をゴルフ対象人口とすると、ゴルフ対象人口は▲22%減少となる。〈グラフ1〉  しかし地域、年齢によって減少には大きな差が存在する。〈グラフ2、3〉将来ゴルフ需要変動予測を年代差、地域差を含め可能な限り正確に予測するのが本稿の主題である。その範囲は2050年はともかく2035年までとする。  <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/02/2.jpg" alt="" width="1000" height="680" class="size-full wp-image-80281" /> <グラフ2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/02/3.jpg" alt="" width="1000" height="533" class="size-full wp-image-80282" /> <グラフ3> <h2>将来ゴルフ需要予測とは将来参加率、活動率の予測</h2> 「ゴルフ対象人口×ゴルフ参加率×ゴルフ活動率=ゴルフ需要量」であり、今回の調査で将来のゴルフ対象人口が高い確度で与えられた。 将来ゴルフ産業需要量予測は「将来参加率」と「活動率」をいかに予測、設定するかである。それも年齢別、地域別の将来設定が必要である。戦争や疫病、天変地異など、将来は何が起こるかわからないが、不測の事態を鉛筆をなめながら予測するのではなく、本稿では一貫した前提条件による計算で結果を導きたい。その前提条件として、 ケースA〉現在の参加率、活動率が今後も持続する ケースB〉過去の参加率、活動率変化の法則性が今後も持続する 以上を設定する。 <h2>2020年参加率、活動率</h2> まず令和5年地域別将来推計人口の基点である2020年の地域別、年齢別ゴルフ参加率、活動率の特定が必要である。参加率、活動率の信頼できる継続調査では、総務省社会生活基本調査に勝るものは存在しない。しかしこれは5年間隔の調査であり、2020年の参加率、活動率データは存在しない。直近の社会生活基本調査は2021年10月調査であり、コロナ特需ピークと重なるため異常値とみなければならない。〈グラフ4〉 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/02/4.jpg" alt="" width="1000" height="667" class="size-full wp-image-80283" /> <グラフ4> また、ゴルフ場利用税からみたコース利用者数と、特定サービス産業動態調査によれば、ゴルフ産業需要量は2011年から2019年は安定していた。従って社会生活基本調査2011年、2016年の参加率、活動率は2019年(コロナ以前)も持続していたと看做せる。本稿で最新の将来推計基点となる2020年のゴルフ参加率、活動率は、社会生活基本調査2011年、2016年平均とする。 また特定サービス産業動態調査によるコロナ前後のゴルフ需要変化から、2025年にはコロナによる影響が収束し、2019年以前の基調に戻ると考える。無論対象人口は戻らない。〈グラフ5〉 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/02/5.jpg" alt="" width="1000" height="660" class="size-full wp-image-80284" /> <グラフ5> <h2>〈ケースA〉2011年、2016年平均参加率、活動率継続〈ケースB〉過去の参加率、活動率変化の法則性</h2> 2006年→2011年、2011年→2016年の社会生活基本調査参加率、活動率変化から、以下の年齢別変化法則が導かれる。 2020年に20~24歳である同時出生集団が、2025年に30~34歳に加齢した時の参加率と活動率は、2011年に25~29歳であった同時出生集団が、2016年に30~34歳に加齢した時の変化率と同一であると仮定する。 2020年に25~29歳の同時出生集団と、2025年に25~29歳同時出生集団は別人集団であり、ゴルフ関心度が異なる。 しかし20~24歳→25~29歳への5歳加齢時参加率、活動率増減率は経済環境、価値観が変化しない限り安定していると考える。 この5歳加齢時変化率を「加齢係数」と名付ける。この各年齢加齢係数が将来も不変であると仮定し、2025年に25~29歳の参加率、活動率を計算される 〈図1〉。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/02/img1.jpg" alt="" width="1000" height="879" class="aligncenter size-full wp-image-80278" /> 将来参加率、活動率計算結果は〈表1〉となった。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/02/2402yamagishi1.jpg" alt="" width="1000" height="575" class="size-full wp-image-80286" /> <表1> これにより、必ず訪れるゴルフ対象人口の世代交代がより正確に反映する。 <strong>〈計算結果〉</strong> 令和5年地域別将来推計人口都道府県別・年齢別将来ゴルフ対象人口に〈ケースA・B〉の将来参加率、活動率を乗算した結果は〈表2・グラフ6〉である。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/02/2402yamagishi2.jpg" alt="" width="1000" height="647" class="size-full wp-image-80287" /> <表2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/02/6.jpg" alt="" width="1000" height="960" class="size-full wp-image-80285" /> <グラフ6> 〈ケースA〉ゴルフ産業需要は2020年比▲8%で対象人口減少量をわずかに上回る。 〈ケースB〉ゴルフ産業需要は▲39%と大幅減となる。 社会生活基本調査の参加率は活動率より統計誤差が少ない。したがって将来需要量予測よりも将来ゴルフ人口推計の信頼性が高い。A、Bともにゴルフ人口予測がゴルフ需要予測よりも厳しい。 <strong>〈計算結果 都道府県別差異〉</strong> より注目すべきは地域別差異である。全国減少量予測はあくまで全国平均値であり、地域別には大きな差が生じる。〈表3〉に都道府県別結果をもとめた。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/02/2402yamagishi3.jpg" alt="" width="1083" height="1995" class="size-full wp-image-80288" /> <表3> 人口減少は静かに確実にゴルフ産業需要に迫っている。能動的なゴルフ参加率アップ(ゴルフ人口増大策)、活動率アップ(回数増加策)がなければコロナパンデミックのような棚ボタを祈るしかない。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年02月13日
    ゴルファーを「増減要因別」に分析することの重要性 先月号では5万8640名のゴルファーを対象に、2019年1月(コロナ前)から連続48ヶ月の実来場記録により、2021年(コロナ特需ピーク)におけるゴルフ練習場来場者増加の詳細を分析した。ICカードによる実際の動きを追ったもので、部分的なアンケート調査からの推計とは異なり、リアルな動きがつかまえられる。 結果は、 1)休眠ゴルファー再開が最大の増加要因 2)コロナ禍による減少も大きい 以上が確認された。 〈グラフ1〉 また、 3)ゴルフ人口の背後にはほぼ同数の潜在ゴルフ人口(休眠中・消滅)が存在する 4)ゴルフ練習場需要の84%は僅か14%の安定ゴルファーに依存している 5)ゴルファーのその構成率はコロナ前もコロナ後も変わらない。 ことも確認できた。 <h2>ゴルフ需要生成・変動構造モデル</h2> 今後パンデミックが発生しなくとも、可処分時間、可処分所得の変動に伴ってゴルフ需要は〈グラフ1〉の要因別に増減し続ける。 コロナ特需の消滅、世界景気後退、人口減少の影響が、ゴルフ需要のどこに表面化するのかを、ゴルフ産業界は常に注視し、的確に対応して個別の経営に生かさなければならない。なぜなら、増減要因ごとに対応が異なるからである。 そのためにはゴルフ需要の変動を「要因別」にリアルタイムにキャッチする仕組みが必要となる。単に歴年合計値だけでゴルフ需要変動を議論するのは危険なのだ。 〈グラフ1〉の増減要因は、そのキャチすべきポイントである。それらを組み込んだ「ゴルフ需要生成・変動構造モデル」を考えた。〈図1〉 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/01/2401yama_image1.jpg" alt="" width="1000" height="692" class="size-full wp-image-79993" /> 図1 これは練習場から見えるゴルフ需要のみであり、コース需要の変動は隠れている。しかし両者は密接に関係する。コース需要と練習場との関係は〈図2〉となる。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/01/2401yama_image2.jpg" alt="" width="1000" height="570" class="size-full wp-image-79994" /> 図2 コースには練習場カードシステムのような、全来場者の動きを自動記録する装置が存在しないため、純粋ビギナーがコースに現れ、「安定ゴルファー」(12月号参照)に成熟するプロセスはコースから見えない。 当面利用可能なゴルフ需要変動の基礎データは、ゴルフ練習場カードシステム以外に存在しない。 <h2>ゴルフ需要マンスリーINDEX</h2> 「ゴルフ需要生成・変動構造モデル」より、複数の変動要因を的確に把握し、個別ゴルフ練習場経営、ゴルフマクロ需要の活性化に資すべき指標を「ゴルフ需要マンスリーINDEX」とした。〈表1〉 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/01/24jan_yamagishi.jpg" alt="" width="1000" height="555" class="size-full wp-image-79995" /> 表1 <ゴルフ需要マンスリーINDEX> ゴルファーを年間来場回数で階層化したので、INDEXも連続12ヶ月単位の比較を原則とする。前月対比、前年同月対比では季節変動、気候変動、打席稼働状況等のノイズに影響されてしまう。 <h2>個別練習場INDEX</h2> 今後、カードシステム導入ゴルフ練習場の理解が得られ、顧客番号と連続月次来場回数データ〈表2〉が弊社・ゴルフ産業需要調査研究所に提供されれば、特許分析方法により個別練習場INDEX(増減要因別増減)は翌月に報告可能である。保護の必要な個人情報は、一切必要としない。 仮に2024年2月末時点の個別練習場INDEXを求めると仮定する。必要なデータは〈表2〉のごとく「2024年2月を含む過去連続24ヶ月」となる。INDEXを毎月末に継続算出することが理想だが、大きく変化した月だけスポット的に算出しても効果は大きい。 また2024年2月の直近12ヶ月より遠い過去の12ヶ月との比較(例えばコロナピーク時)も計算可能である。その場合必要な〈表2〉期間も長くなる。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/01/24jan_yamaghishi2.jpg" alt="" width="1000" height="453" class="size-full wp-image-79996" /> 表2 <ゴルフ需要マンスリーINDEX> <h2>全体需要INDEX</h2> 同時点で計算された個別練習場INDEXが多ければ、その全顧客によるINDEXは全国全練習場の増減要因と近似する。仮に10施設とすると、顧客数は10万人を超える。サンプル数約20万人と、国内最大規模の「社会生活基本調査」でも、補足できるゴルファーは2万人程度に過ぎない。しかもそれは、アンケート回答の結果である。一方このINDEXは、全国2800練習場の10ケ所分に過ぎないが、補足するのは10万人ゴルファーの行動実記録である。 <h2>個別練習場INDEXと全体需要INDEXの対比分析</h2> 個別施設の経営状況は、全体INDEXと自施設INDEXを比較することにより、自施設の増減がマクロ需要変化によるものか、自施設特有のものかを判断できる。 ・単位が「1打席あたり」であるから、ゴルフ練習場の打席規模差異は無視される。個別ゴルフ練習場はINDEX値に自打席数を乗じて比較検討すればよい。 ・参加施設が増加すれば地域差も把握可能となる  筆者は今後30施設以上の賛同、同時算出を強く念願する。50万人規模のゴルフ行動をマンスリーにフォローできれば、ゴルフ界全体にとって需要変動構造の貴重な指標となるだろう。まさに「One for All. All for One 」である。 <h2>特定サービス産業動態調査との対比</h2> 特定サービス産業動態調査は2ヶ月遅れとなるが、毎月利用者数、稼働打席数が公表される。現状唯一のゴルフ需要変動公的月次データである。1打席あたり利用者数の連続12ヶ月合計値が得られるのでINDEXの比較検証が可能である。 <h2>特許分析の特徴</h2> INDEX算出を可能とした特許の内容をあらためて説明する。 1)ゴルファーを 連続12ヶ月合計来場回数により階層分類する 2)来場回数階層をゴルファーの成熟度・熱意の表象とみなす 3)比較分析対象二期間、連続12ヶ月単位における個別ゴルファーの階層変化別に集計する 4)顧客数、増減、延べ来場数の3点を集計する 5)INDEXの単位は「1打席あたり」とする  以上の説明は実は特許の内容ではない。カードシステムデータによる練習場来場者分析は50万人を超える連続来場履歴の迅速集計が必要とされる。その作業はコンピュータに依拠するしかなく、そのコンピュータプログラムが特許として認められたものである。
    (公開)2024年01月12日
    現在、ゴルフ練習場では入場から打席エントリー、料金支払いまでを「カード」で自動的に一括管理する動きが進んでいる。その目的は自動化、経費節減、ポイント付与など、施設運営のマーケティングを高度化するところにある。 実は、ICカードやリライト型プリペイドカードには、定額プリペイドカードにない「高機能」が潜んでいる。全ての顧客の全来場記録が自動的に蓄積され、個別ゴルファーの練習量の長期変化(ゴルファーの成長記録やゴルフ熱変化記録)が追跡、集計可能であり、個別練習場の集客対策にとっては無論のこと、「ゴルフマクロ需要」の時々刻々の変化をアンケート調査ではなく「実記録」から把握できる唯一の装置である。現在、これを導入している施設は全体の15%、約330センターと筆者は推測するが、問題は、宝の山と言えるこれらの記録が、殆ど活用されていないことである。 筆者はこの10年間、複数施設のカードシステム全来場記録を分析する機会に恵まれ、ゴルフマクロ需要生成・変動の貴重な知見を得た。2023年5月にそれらをまとめ「特許番号7303508号ゴルフ練習場の顧客構成分析方法」として認可を得ている。 本稿の内容は、その特許分析方法に基づく。(特許は複数のゴルフ練習場から提供いただいたカードシステム顧客来場履歴データ分析より得た知見であり、特許はその方々との共有名義である) コロナ期来場者急増分析 2019年から4年間のゴルフ需要大変動は、コロナ禍という特殊な状況が影響したもので、今後二度と起こらない異変であろう。その経過詳細は、今後のゴルフ需要減少に備える貴重な知見である。データの提供施設は少数ながら、コロナ期4年間で1度でも来場した、すべての顧客5万8840人のカードシステム顧客来場履歴データの提供を受けた。これをサンプルとして、ゴルフ需要全体のコロナ期変化を分析することが本稿の目的だ。 提供いただいたサンプルデータは〈表1〉である。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/12/2312yamagishi.jpg" alt="" width="1184" height="1426" class="size-full wp-image-79719" /> 表1 <strong>・ 重複のない顧客番号</strong> <strong>・ 登録年(最初に来場した年)</strong> <strong>・ 性別</strong> <strong>・ 来場時年齢階層</strong> <strong>・ 年間合計来場回数</strong> 以上に限定され、保護の必要な個人情報は含まれていない。 <h2>サンプルデータとマクロ需要のリニアリティ検証</h2>  サンプルデータにはすべての来場が記録されているが、限られた少数ゴルフ練習場における実績である。そこで、このデータで需要全体を推定できるかを検証する必要がある。特定サービス産業動態調査・稼働1打席あたり利用者数の12か月合計推移と突合させた。〈グラフ3〉 <strong>・2021年対2019年の増減率が近似している。サンプルデータにより需要全体を推理することは有意と考える</strong> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/12/image2.jpg" alt="" width="1000" height="1211" class="size-full wp-image-79721" /> グラフ2 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/12/image3.jpg" alt="" width="1000" height="989" class="size-full wp-image-79723" /> グラフ3 <h2>サンプルデータ基本集計結果</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/12/image1.jpg" alt="" width="1000" height="1037" class="size-full wp-image-79720" /> グラフ1 このデータを常識的に集計すると〈表1・グラフ1〉が得られる。 コロナ期の需要ピークである2021年を2019年と比較すると、 <strong>・ ゴルフ需要増加率119%</strong> <strong>・ 実動顧客数(ゴルフ人口)増加率120%</strong> <strong>・ 活動率増加率変わらず</strong> <strong>・ ゴルフ人口増加は25~29歳が中心(サンプルデータから確認〈グラフ3〉)</strong>  ゴルフ産業界の認識は、これら年間合計値のみを観察して、 ・ コロナ期のゴルフ需要急増は若者を中心とする新来ビギナーの急増である。  と結論したが、果たしてこれで今後のゴルフ市場活性化に必要な実態が十分に掴めているのだろうか?筆者はそこに疑問を覚える。  そもそもゴルフマクロ需要は「ゴルフ人口×活動率」によって決定される。需要変動は、 ・ ゴルフ人口の増減 ・ 活動率の増減  により発生し、たまたま合計値が増加しても、様々な理由によりゴルフを断念したり、休眠、回数減少を余儀なくされたゴルファーが常に存在する。そのため、合計値の増加に「隠れた減少要因」も把握しなければならない。 <h2>来場回数と安定・成熟ゴルファー</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/12/2312yamagishi2.jpg" alt="" width="1000" height="533" class="size-full wp-image-79722" /> 表2  筆者は、これまでの複数施設におけるカードシステム全来場記録分析から「年間12回以上来場する顧客の翌年継続来場率は80%以上で安定する(ゴルフを止めなくなる)」という法則を発見、紹介してきた。不安定ゴルファーが安定ゴルファーに進化することは、年間練習回数が増加することである。そこで筆者は、年間12回以上の来場顧客を「安定ゴルファー」、12回未満を「不安定ゴルファー」と定義した。その結果、すべての顧客にコロナ期4年間に、 <strong>・ 来場なし</strong> <strong>・ 不安定来場</strong> <strong>・ 安定来場</strong> という、その年の来場状況「(ゴルフ熱)3種類の符号」が付与でき、そのサンプルデータを〈表3〉にまとめた。 さらに各顧客が2019年(コロナ前)から2021年(コロナピーク時)において、来場階層(ゴルフ熱状態)をどのように変化させたかが「2019・2021階層連結」に集約・表現される。来場回数の増減量も追加計算した。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/12/2312yamagishi3.jpg" alt="" width="1000" height="646" class="size-full wp-image-79724" /> 表3 <h2>コロナ期ゴルフ需要増減要因明細</h2> 〈表3〉を「2019・2021階層連結」別に集計し〈表4・グラフ4〉を得た。これがコロナ期の需要増減要因最終明細である。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/12/2312yamagishi4.jpg" alt="" width="1000" height="716" class="size-full wp-image-79725" /> 表4 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/12/image4.jpg" alt="" width="1000" height="942" class="size-full wp-image-79728" /> グラフ4 <strong>① ゴルフ需要増加最大要因は休眠からの再開者</strong> <strong>② ゴルフ人口増加は若者</strong> <strong>③ コロナ期、ゴルフ行動減少ゴルファーも多く存在する</strong> 増加要因の年齢構成比較を〈グラフ5・6〉とした。 <h2>休眠ゴルファー対策の重要性</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/12/image5.jpg" alt="" width="1000" height="825" class="size-full wp-image-79726" /> グラフ5 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/12/image6.jpg" alt="" width="1000" height="929" class="size-full wp-image-79727" /> グラフ6 コロナは余暇時間の急増により休眠ゴルファーのゴルフ熱を刺激したのである。休眠ゴルファーは常に発生している。サンプルデータの5万8840人は、4年間一度でもゴルフ練習場を利用した合計人数であり、ゴルフ界がゴルフ人口と定義する「過去1年間にゴルフ場、ゴルフ練習場を1回以上利用した総人数」は、サンプルデータの各年実動顧客数と同義である。とすれば休眠人口を含めた広義ゴルフ人口は倍増する。そもそも休眠させないことを含め、休眠ゴルファー対策の重要性をゴルフ界は深く認識しなければならない。なぜなら、未経験者をゴルファーにするよりも、休眠ゴルファーの再開を促す方が、市場活性化において遥かに効果的だと考えるからだ。 <h2>練習場データの死角</h2> 練習場カードシステムのゴルフ場来場記録は、ゴルフ用品POSデータ等も及ばない有用性があるとご理解頂けたと考える。しかし一方で、 <strong>・ 複数のゴルフ練習場を並行利用する需要が漏れている</strong> <strong>・ ゴルフコースラウンド行動が漏れている</strong> という欠陥を有する。複数施設の並行利用は、対象施設が多くなれば無視できるであろう。将来的には多数の施設データの統合を期待したい。 次号では「ゴルフ産業需要変動モデル」を想定し、需要変動指標として観測必要な項目を検討する。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年12月13日
    4月26日、国立社会保証・人口問題研究所が最新の将来人口推計を公表した。2020年国勢調査に基づいており、今後あらゆる政策の基幹データとなる。そこから10歳~79歳のゴルフ対象人口を抽出し、前回2015年国勢調査による推計と比較した。 〈グラフ1(いずれも出生率中位、死亡率中位の推計)〉 そのポイントは次の2点である。 ・ゴルフ対象人口減少がより厳しく減少量は将来程大きい。 ・2030年は対2020年比較で▲198万人(▲2%)である。 対象人口によるゴルフ人口推計 「対象人口が2%減だから、2030年ゴルフ人口も2%減になる」 と考えるのはかなり安易である。少子高齢化により、年齢別の人口減少率は等しくない。従って、年齢別構成率も変化する。年齢別に細分化し、年齢ごとの将来ゴルフ参加率を推計する必要があるのだ。 <h2>年齢別将来ゴルフ参加率推定とは</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/07/image2.jpg" alt="" width="1264" height="906" class="size-full wp-image-77757" /> <グラフ2> 2種類の「将来参加率推定条件」を設定し、それぞれ「年齢別将来ゴルフ人口」を計算した。 (A)コロナ後の2021年社会生活基本調査「年齢別参加率」を将来も固定 (B)コロナ前2001年以降の4次社会生活基本調査の各年齢参加率を「5歳加齢時」の平均増減率で将来参加率を設定 (B)の追加説明 (B)は少し難解であるから詳しく説明する。 2030年の35歳は、2020年に25歳だった。つまり2030年に35歳の参加率は、2020年に25歳だった集団のゴルフ関心度と、10年間の生活変化により決定される。25歳でゴルフに無関心でも、35歳で関心をもつ。あるいはその逆もある。 年齢別のゴルフ関心度は等しくないし、加齢とともに変化する。その結果が「年齢別参加率」だ。 しかし、各同一年齢集団間でゴルフ参加率に違いがあっても、5歳加齢後の参加率増減率(筆者は5歳加齢係数と名付けた)は就職、結婚、育児負担、年収変化、体力変化により決定し、長期的には安定と考えて良い。この平均増減率により、各年齢の将来参加率が推定できる。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/07/hyou1.jpg" alt="" width="788" height="534" class="size-full wp-image-77774" /> 表1 2001年以降の社会生活基本調査における「各年齢参加率」と、求めた「コロナ前加齢係数平均値」を〈表1〉とした。25年間におけるすべての同時出生集団の、5年毎の参加率増減率を捉えている。(B)はコロナ禍前の平均値で、各年齢の将来ゴルフ参加率を設定する。 <h2>計算結果</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/07/image4.jpg" alt="" width="1056" height="972" class="size-full wp-image-77760" /> <グラフ3> 結果を〈グラフ3〉とした。 ・2021年の年齢別参加率が今後も持続するとした場合、ゴルフ人口は対象人口と同一経過で減少し2030年▲9%、678万人となる。 ・コロナ前25年間の5歳加齢時平均増減率により年齢別将来参加率設定をした場合、2030年ゴルフ人口は▲35%、483万人となる。  要点は、コロナ過で急増したゴルフ参加率が今後も持続するとは考えられないことである。筆者はおそらく(A)(B)の範囲となるに違いないと考えるが、正解は2026年の社会生活基本調査の結果を待たねばならない。 <h2>特定サービス産業動態調査によるゴルフ産業需要最新動向</h2>  コロナが5類に指定変更されて旅行、外食需要が回復してきた。「コロナ特需を享受したゴルフ産業需要が今後どう変化するか?」は極めて注目されるため、毎月その動向を正確、迅速に捕捉したい。このニーズに合致するデータは経済産業省の特定サービス産業動態調査以外に存在しない。この見方・活用方法を考えてみよう。 <h2>稼働1打席、1ホールあたりの利用者数変化を重視</h2> 特定サービス産業動態調査は定点観測であり、すべてのゴルフ場、練習場利用者の総数ではない。全施設の総利用者数を毎月2か月後に集計公表することは不可能である。 このようなデータ特質にもかかわらず、ゴルフ産業界は毎月利用者数のみを注視し、その対前年同月増減で需要動向を判断しがちである。定点観測から全体総量を推定するには、対象定点と市場全体が乖離していないことを証明する必要がある。 調査対象定点は公表されないが、練習場60打席、ゴルフ場18ホールとすれば250センター、190コースの調査規模である。これだけの定点の合計利用者数で市場全体の総需要量動向を推計することは危険であろう。しかし、動態調査には利用者合計だけでなく、毎月の練習場稼働打席数、ゴルフ場営業ホール数、平均稼働日数がキチンと集計報告されており、稼働1打席、1ホールあたりの利用者数は統計的に正確に算出可能である。 利用者の総量よりも「客の混み具合連続変化」が確認できるのだ。利用者数の合計変動よりも、大きな情報価値がある。 <h2>単月比較よりも直近12か月合計を</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/07/image7.jpg" alt="" width="1836" height="1148" class="size-full wp-image-77761" /> <グラフ4> 動態調査は2か月遅れで毎月最新データが公表される。これを対前月比較、対前年同月比較で需要動向を判断するのは問題である。繁閑期差や天候によるノイズが含まれてしまうからだ。そこで、最新データ月を含む直近12ヶ月合計で比較したい。2023年2月であれば、2022年3月~2023年2月までの合計である。 2023年2月稼働1打席、1ホールあたり利用者数変化集計結果 ゴルフ場、練習場長期データによる稼働1打席、1ホールあたり利用者計算例と、コロナ前2019年1月を100%とする推移グラフを〈表2・3、グラフ4〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/07/hyou2.jpg" alt="" width="788" height="1015" class="size-full wp-image-77772" /> 表2 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/07/hyou3.jpg" alt="" width="788" height="1340" class="size-full wp-image-77773" /> 表3 コロナ特需は、 ・ゴルフ練習場  2022年1月ピーク +20% ・ゴルフ場  2022年6月ピーク +15%  であったと確認できる。練習場、ゴルフ場需要はともに未だコロナ前より増加を維持しているが、ピークアウトしたと考えるべきである。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年07月08日
    世界は3年にわたるパンデミックへの緊急対応から、ようやく通常経済に復帰しはじめた。この間、国内ゴルフ産業はコロナ特需のフォローに浴することができたが、それだけに3年間の「コロナ特需」の詳細を客観視する必要がある。一時的な好況に浮かれてはならない。 客観視するには市場データが必要だが、ゴルフ業界にはタイムリーかつ詳細に得られるデータは極めて乏しい。しかし筆者は以前より、少数ながらゴルフ練習場の来場データを分析する機会に恵まれた。コロナ前の2019年から2022年までの4年間、カードシステムを導入している練習場での「全来場データ」を分析したものである。 カードシステム導入のゴルフ練習場では、全来場者の利用料は現金ではなく、前払いチャージで決済される。そのためすべての顧客がいつ来場したかがコンピューターに記録される。いわば小売店のPOSレジデータと同じであり、市場分析の利用価値が極めて高い。 今回、情報開示の許諾を頂いたのは、関東以外某所の施設のものである。個人情報を含むので、開示情報は以下の5項目に限られる。 ・顧客番号 ・カード発行日(新来者年月日) ・4年間月別来場回数経過 ・性別 ・年齢 性別と年齢はヒアリング後の入力だが、この項目の不明者は5%未満と良質なデータである。 4年間1度でも来場した全顧客のデータであり、5万8840名となった。N数=5万8840で、国内ゴルフ需要の全体像を推量可能かは議論が必要だが、世の中にはこれより遥かに少ないN数でゴルファー動態を調べたものが多い。コロナ禍という異常事態を迅速タイムリーに詳細変化を分析し、将来予測を可能とするデータは他にない。 <h2>年間合計値の推移</h2> 4年間の単年度合計値推移を〈表1・グラフ1、2〉とした。 ・来場数、実動顧客数(単年度来場顧客数であり、他調査のゴルフ人口に相当)は、2021年が最大であり、コロナ前の119%だった。 ・新来数は2020年が最大でありコロナ前の129%。だが、2021年以降減少し、2022年は93%とコロナ前以下となった。 ・年間平均利用回数(ゴルフ練習場活動率に相当)もコロナ前以下となった。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/03/table1-1.jpg" alt="" width="788" height="427" class="aligncenter size-full wp-image-76410" /> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/03/graph1.jpg" alt="" width="788" height="738" class="aligncenter size-full wp-image-76401" /> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/03/graph2.jpg" alt="" width="788" height="693" class="aligncenter size-full wp-image-76402" /> 合計値推移からは、 ・コロナ特需のピークは2021年。 ・その原因は新来者の急増。 ・新来者による来場数は2022年も維持されている。 ・2022年の新来者は、すでにコロナ前レベル以下に減少した。 以上のことが読み取れる。 <h2>年齢別、性別詳細</h2> ゴルフ練習場POSデータは、さらに詳細な分析が可能である。2021年の来場数の年齢別、性別構成率を〈グラフ3、4〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/03/graph3.jpg" alt="" width="788" height="642" class="aligncenter size-full wp-image-76403" /> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/03/graph4.jpg" alt="" width="788" height="487" class="aligncenter size-full wp-image-76404" /> ・2021年対2019年の年齢別来場数増減では、20~24歳の増加量が最大である。しかし、コロナ特需は若い新来者急増によるとは言い切れない。45~49歳を中心とする増加を見過ごしてはならない。 ・コロナ後、女性比率が僅かだが高まった。コロナ禍の影響は女性にも及んでいる。 <h2>翌年継続来場率</h2> 当該年の来場回数による、翌年継続来場数の変化を〈グラフ5〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/03/graph5.jpg" alt="" width="788" height="641" class="aligncenter size-full wp-image-76405" /> コロナ前後では、当年来場回数による翌年継続来場率の変化に差がない。ビギナーゴルファーが安定顧客となる閾値を、本稿では「年間12回来場」として安定・不安定とする。 <h2>コロナ前後来場経緯の顧客分類</h2> コロナ前からの来場顧客か、コロナ後の新来顧客かを、新来カード発行年の来場回数により全顧客を以下の5分類とした。 1.コロナ後に安定ゴルファーとして新来場した。ゴルフを中断していたが、コロナによりゴルフを再開したとみなす。 2.コロナ後にビギナーゴルファーとして新来場した。 3.コロナ前から安定ゴルファーとして来場していた。 4.コロナ前からビギナーとして来場していた。 5.コロナ前は休眠していたが、コロナ後安定ゴルファーとして復活来場した。 以上5分類のコロナ前後来場経過を〈表2〉、2022年対2019年増減を〈グラフ6〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/03/table2.jpg" alt="" width="788" height="307" class="aligncenter size-full wp-image-76406" /> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/03/graph6.jpg" alt="" width="788" height="801" class="aligncenter size-full wp-image-76407" /> 2022年の来場回数対2019年の増減では、 ・コロナ前の既存安定ゴルファー来場数が▲12万716回と大幅に減少した。 ・それを補う形でコロナ後の新来者による増加14万9821回が生じた結果、合計では4万5545回プラスとなった。 ・コロナ前に休眠していた既存顧客のコロナ後来場再開2万94回も、コロナ特需と考えられる。 ・コロナ特需は、両者合計で16万9916回である。 <h2>コロナ前の既存安定ゴルファーが来場回数を減らした原因</h2> コロナ前の既存安定ゴルファー来場回数は、2020年以降年々大きく減少したが、その原因をPOSデータからは見いだせない。言えることは、コロナ後に回数増加した既存安定ゴルファーも存在したことである。年齢別の減少を〈グラフ7〉とした。40~59歳が目立つ。これらの顧客が今後回復するかを注視する必要がある。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/03/graph7.jpg" alt="" width="788" height="639" class="aligncenter size-full wp-image-76408" /> <h2>まとめ</h2> ・コロナ特需は決して若者新来者ではない。 ・増加の陰に、コロナ禍でゴルフ練習場利用を縮小したゴルファーも多く存在する。 ・結果的に合計はプラスだが、全体ゴルフ練習場需要は「既存安定」から「新来不安定」へシフトした。 ・今後来場量を維持するためには、不安定ゴルファーを安定化する施策が不可欠。練習場本来の使命、存在意義が問われる。 最後にPOSデータに表れたコロナ前後の安定化率実績を〈表3〉として掲載する。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/03/table3-1.jpg" alt="" width="788" height="273" class="aligncenter size-full wp-image-76411" /> <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年03月22日
    ゴルフ産業は、コロナ禍による需要増に恵まれた。他の多くの産業が塗炭の苦しみを味わう中、数少ない好況を謳歌しただけに、今後に向けて正確な長期予測が必要になる。山高ければ谷深し・・・・。そんなシナリオもあながち否定できない。 前号では〈表1〉の前提条件により、4種類のゴルフ将来需要計算結果〈グラフ1〉を示した。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/table1.jpg" alt="" width="788" height="400" class="size-full wp-image-75766" /> 表1 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph1.jpg" alt="" width="788" height="707" class="size-full wp-image-75749" /> グラフ1 楽観的なシナリオ3では、コロナ後の参加率、活動率、加齢係数が今後も継続するとした前提条件であり需要は増加し続ける。最も可能性が高いのは、コロナによる影響が時間と共に減衰するとしたシナリオ2だろう。 シナリオ1、2ともに2035年のゴルフ需要量は対2016年比▲34%減、対2020年比▲35%減となる。この予測に対して読者諸兄から「驚かすな。15年先が予測できるものか!」とお叱りを頂くかもしれない。しかし前号で説明したように、 ・ゴルフ需要公理(将来対象人口×将来参加率×将来活動率) ・年齢別将来人口予測(国立社会保障・人口問題研究所) ・参加率、活動率変動モデル(2006年~2021年社会生活基本調査実績値による) ・5歳間隔同一年齢集団別の計算による計算結果である。年齢別将来参加率、活動率は社会生活基本調査過去の年齢別データから導かれた「ゴルフ需要変化法則」に基づく。  論理的な将来予測には、これ以外の手法は考えられない。予測結果の年齢別ゴルフ需要量推移を〈グラフ2〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph2.jpg" alt="" width="788" height="724" class="size-full wp-image-75750" /> グラフ2 なぜ需要が減少し続けるか? 将来の需要が減少する原因は変動モデル〈表2〉にある。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/table2.jpg" alt="" width="788" height="1598" class="size-full wp-image-75768" /> 表2 このモデルは、 ・ゴルフ人口は20~29歳に最大となる(参加率1・0以上) ・30歳以後、ゴルフ人口は5年間に20%のペースで減少する ・存続したゴルフ人口は30歳以後5年間に20%のペースでプレー回数を増加させる。  以上を端的に示している。〈グラフ3〉それに加えてゴルフ誕生人口年齢の20~29歳人口は〈グラフ4〉のようにゴルフ対象人口の合計よりも大きく減少する。  以上によりゴルフ需要は年々減少し続ける計算結果となる。勿論20~29歳以外でゴルフを始める人数は存在するが、同一年齢全体の参加率加齢係数に影響するボリュームではない。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph3.jpg" alt="" width="788" height="739" class="size-full wp-image-75751" /> グラフ3 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph4.jpg" alt="" width="788" height="710" class="size-full wp-image-75752" /> グラフ4 <h2>変動モデルはゴルフ文化の本質を体現する</h2> 変動モデル(ゴルファー加齢による参加率、活動率変化の法則性)は意図的に形成されたものではない。日本社会にゴルフが普及した結果であり「するスポーツ」としてのゴルフの特質が強く反映している。日本社会が大きく変動しない限りこの変動モデルは今後も持続するだろう。 <h2>変動モデル他スポーツ比較</h2> 比較のため野球、サッカー、テニスの変動モデルを社会生活基本調査より作成した。〈グラフ5〉 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph5-1.jpg" alt="" width="788" height="850" class="size-full wp-image-75753" /> グラフ5 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph5-2.jpg" alt="" width="788" height="850" class="size-full wp-image-75754" /> グラフ5 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph5-3.jpg" alt="" width="788" height="850" class="size-full wp-image-75755" /> グラフ5 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph5-4.jpg" alt="" width="788" height="850" class="size-full wp-image-75756" /> グラフ5 それぞれ明確に異なっている。野球、サッカー参加人口は10~14歳で最大となり「学校スポーツ」の特徴を示す。テニスの場合は、 ・20~29歳の参加率加齢係数がゴルフより小さい ・参加率、活動率ともに年齢による落ち込みがない。  ゴルフは将来需要減少が不可避としても日本社会で最大、唯一無二の「生涯スポーツ」である。 <h2>ゴルフ市場活性化とは変動モデル意図的改造</h2> ゴルフ産業界はこの需要変動の法則性を尊重、熟知して、市場活性化に当たらなければならない。 人口減少が不可避ならば、ゴルフ需要の増大には変動モデルの意図的な改造が必要となる。求められる改造ポイントはゴルフ市場活性化委員会発足のスローガン「始めよう、続けよう、もっとゴルフを!」にきっちり集約されている。〈グラフ6〉 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph6.jpg" alt="" width="788" height="789" class="size-full wp-image-75757" /> グラフ6 <h2>最重点とすべき「続けようゴルフ」</h2> ゴルファー誕生最大年齢である20~29歳人口は、全体ゴルフ対象人口以上に減少する。また70代まで増加し続ける活動率増加も今以上の増加は困難であろう。活性化策最重点は「ゴルフ参入後参加率低下の防止(続けようゴルフ)」に絞られる。 <h2>続けるゴルフアーの特質は何か</h2> 一度はコース、練習場を利用したが、その後中断、停止する顧客と、連続来場し続け加齢と共に利用回数を増加させる顧客の相違点把握が重要である。そのためには年齢、所得、身体能力、健康状態、会員権の有無、到達平均スコアなど比較したい属性点は多くあるが、信頼できるデータがない。前号までも活用した「ゴルフ練習場複数施設2019年~2021年全来場者データ」を利用する。 その年の来場回数を横軸、翌年連続来場率(止めなかったゴルファー率)を縦軸とする〈グラフ7〉が得られる。 ・2020年、2021年間に殆ど差がない。 ・来場回数が増えるほど連続来場率が高くなり、12回を超えると80%以上で安定する。  練習場利用回数はゴルフ熱中度の良い指標である。その年12回以上の来場顧客を安定ゴルファー、12回未満を不安定ゴルファーと定義する。各年の安定・不安定ゴルファー比率推移を〈グラフ8〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph8-1.jpg" alt="" width="788" height="638" class="size-full wp-image-75758" /> グラフ8 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph8-2.jpg" alt="" width="788" height="638" class="size-full wp-image-75759" /> グラフ8 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph8-3.jpg" alt="" width="788" height="638" class="size-full wp-image-75760" /> グラフ8 ・安定、不安定比率ともに変化は小さい。 ・その年実動顧客の25%に過ぎない安定ゴルファーに来場数の80%を依存している。  ゴルフ産業の業績は安定ゴルファー量で決定し、「ゴルフ需要増加対策の『続けようゴルフ』」とは「不安定ゴルファー安定化対策」である。 <h2>安定ゴルファーの特質、要件</h2> ゴルフ界には安定ゴルファーの特質、要件の解明が重要課題だがデータは不足している。 ゴルフ練習場の複数施設全来場者データから得られる2021年安定ゴルファーの特徴を〈グラフ9、10、11〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph9.jpg" alt="" width="788" height="696" class="size-full wp-image-75761" /> グラフ9 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph10.jpg" alt="" width="788" height="1027" class="size-full wp-image-75762" /> グラフ10 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph11.jpg" alt="" width="788" height="696" class="size-full wp-image-75763" /> グラフ11 ・顧客数、来場回数ともにボリュームゾーンは40~59歳にある。 ・60回以上来場する来場量が圧倒的に大きい。安定ゴルファーを12回以上ひとまとめではなく階層を細分化した分析が必要である。 ・60回以上の階層でも来場回数の中心は40~59歳である。 <h2>コロナ後の安定化率</h2> 「ゴルフ参入後参加率低下の防止(続けようゴルフ)」とは前年休眠ゴルファー、不安定ゴルファーの翌年安定化にあることが立証された。コロナ前後3ヶ年の安定化率は〈表3〉である。「現在安定化率」は14%しかない。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/table3.jpg" alt="" width="788" height="988" class="size-full wp-image-75769" /> 表3 安定化率向上はゴルフ産業の使命、生命線といえるため、安定化率向上にあらゆる施策を集中させなければならない。たとえばゴルフスクールもその収益だけではなく、安定化率向上の貢献度で判断されるべきだろう。 「現在の安定化率14%」は、まだ不安定な潜在安定ゴルファーが大量に存在することを意味しており、「ゴルフ需要増加対策(続けようゴルフ)」には1143万人の大きな未開拓分野が存在する。 <h2>安定ゴルファー人口量推定</h2> 実動顧客とは全顧客(コロナ前後3年間に一度でも来場した全顧客)から休眠顧客を除いた、その年実際に来場した顧客数である。社会生活基本調査をはじめ各種ゴルフ調査のゴルフ人口は、すべてこの実動顧客数を調査している。強引であるが複数ゴルフ練習場実績から全ゴルフ人口中の安定ゴルファー数、安定化人数を推計した〈グラフ12〉。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/2302yamagishi_graph12.jpg" alt="" width="788" height="867" class="size-full wp-image-75764" /> グラフ12 ゴルフ界、ゴルフ産業界は、 ・2021年ゴルフ人口1300万人 ・安定ゴルファー188万人 ・不安定ゴルファー585万人 ・休眠ゴルファー527万人  であることをしっかりと共有すべきである。 <h2>不安定ゴルファーの細分化</h2> 安定化率向上は対象ゴルファーを細分化し、それぞれ最適な対策が必要である。筆者は、 ・1回のみ来場(ジャストビギナー) ・2~4回来場(コース未体験、ラウンド準備中) ・5~11回来場(コース体験済み、楽しさ未体験)  に三分割すべきだと考える。その推計人口と需要依存率を〈表4〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2023/02/table4.jpg" alt="" width="788" height="459" class="size-full wp-image-75767" /> 表4 ジャストビギナー集団のほとんどはクラブセットも未購入であり、翌年68%消滅する。この金の卵の再来場を誘導する強力な対策が求められる。 コース未体験、ラウンド準備中の集団には、ハッピーなコースデビューへのサポートが必要である。 以上の2集団に対してゴルフ界はゴルフ練習場でしか関与できない。日本のゴルフの将来、安定ゴルファー化には、ゴルフ練習場の役割が極めて重要である。 <h2>不足する必要データ</h2> 今回の連載でゴルフ界・ゴルフ産業界が直面している問題点をある程度定量的に明示できた。それは同時に「するスポーツゴルフ」の定性・本質に迫るものでもあった。いやしくも文化にビジネスとして携わるならば定性的判断が重要だが、そのためにはどうしても統計データが必要である。 ひるがえってゴルフ界・ゴルフ産業界の統計データは誠に心もとない。まず自助努力によるデータが殆ど無い。連載第1回で提示した調査結果はスポーツ全般に対する比較調査でありゴルファーを母集団とする調査ではない。最も重要な年齢別参加率、活動率にしてもゴルフ界がゴルフフィールドで直接ゴルファー対象に調査すれば小さな費用で精度の高いデータが得られる。そのような理念、覚悟、体制はいまだかつて存在しない。連載を終えるにあたり不足するデータを列挙する。 ・社会生活基本調査5年間隔を補完する毎年データ ・ゴルフ人口定義拡大(少なくとも過去3年間コース、練習場利用者) ・ゴルフ人口の定義拡大による、単年だけではない複数年間変化分析による安定化率調査 ・利用税コース利用者数に並置できる練習場利用者数大規模調査 ・社会生活基本調査以上に精度の高い年齢別参加率、活動率調査 ・年齢、所得、身体能力、健康状態、会員権の有無、到達平均スコアなど安定ゴルファー実態調査 データはないが「安定ゴルファーイコールシングルプレイヤー」でないことは誰もが確信できる。つまり「競技力の強化」だけでは「するスポーツの文化」は開花しない。ゴルフ関連団体は、このことを肝に銘じるべきである。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年02月10日
    ゴルフ業界は、コロナ禍の影響をふまえた「将来予測」が他業界以上に必要である。なぜなら、コロナが特需を発生させ、プラスに作用したからだ。これによりゴルフ業界は、一時の好況に沸き返った。 しかし、前号ではマイナス効果も存在することが確認できた。これらの実態をすべて明解に説明できる調査データはこの業界に存在しない。それでもゴルフ需要の将来予測は必要だ。明快に説明できるデータがないからといって、簡易な調査結果をあたかも正解のように発表したり、サイコロを振ったり、鉛筆をなめてひねり出した数字には意味がなく、却って混乱要因になりかねない。 過去の統計データから変化の規則性や法則を見出し、それを将来に延長する一貫した論理で予測しなければならない。現状、信頼できる過去の統計データは20万人規模の調査数を誇る、総務省の「社会生活基本調査」に勝るものはない。これに加えて、 ・国勢調査 ・国立社会保障人口問題研究所将来人口予測  がある。本稿では、これらを基にゴルフ需要量(コース+練習場行動日数)を予測しよう。 <strong>ゴルフ需要公理とは</strong> ゴルフ需要の「総量」を算定する計算式としては、 ・ゴルフ対象人口×ゴルフ参加率=ゴルフ人口 ・ゴルフ人口×ゴルフ活動率=ゴルフ行動量  があり、これは誰もが認める「ゴルフ需要公理」である。さらに各項は、 ・国勢調査ゴルフ対象人口×社会生活基本調査ゴルフ参加率×社会生活基本調査ゴルフ活動率  に置換可能である。〈図1〉 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_figure1.jpg" alt="" width="788" height="777" class="size-full wp-image-75227" /> 図1 <strong>将来予測とは年齢別将来参加率、活動率の予測</strong> ゴルフを対象とした「将来人口」は、国立社会保障・人口問題研究所から公表されており、ゴルフ需要の将来の「総量予測」は結局、 ・ゴルフ将来参加率 ・ゴルフ将来活動率 を予測すれば良い。 将来にわたり日本の人口が減少するのは明らかだが、ゴルフ対象人口は、各年齢別人口変化に左右される(世代交代変化)。ある年齢の現在の参加率、活動率が、将来も一定である保証はなく、各年齢別に将来値を予測しなければならない。その際に過去の推移から変化の法則性を発見して、その法則を将来へ延長して「将来値」を予測する作業になる。 では、「法則」とは何か? 筆者はゴルフ参加率、活動率における「年齢別過去変動データ」に存在すると考える。連載第二回で説明したように、年齢別参加率、活動率の精度は「社会生活基本調査」が圧倒的に高い。そのため、過去の社会生活基本調査から変化の法則性を発見し、 ・ゴルフ年齢別将来参加率 ・ゴルフ年齢別将来活動率 を設定することが賢明である。また、予測に幅をもたせるために予測の前提条件を複数設定し、比較シミュレーションを実行する。 <strong>社会生活基本調査年齢別データの信頼性を検証</strong> 予測基点となる社会生活基本調査の年齢別データの信頼性を、ゴルフ関連全数調査2データと比較した。 ・利用税非課税利用者との比較 これは、日本ゴルフ場経営者協会(NGK)が発表しているゴルフ場利用税の非課税者(70歳以上)のデータで、全数調査である。この「過去推移」と社会生活基本調査の「70歳以上行動日数」を〈グラフ1〉とした。コロナ以前は両者に相関が認められる。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_graph1.jpg" alt="" width="788" height="788" class="size-full wp-image-75228" /> グラフ1 ・特定ゴルフ練習場来場実績との比較 社会生活基本調査における「ゴルファー」は、コースと練習場の利用者が区別されていない。筆者は2012年にゴルフ市場活性化委員会(GMAC)で実施した、コース入場者一斉調査等により、練習場入場者数はコースの「1・2倍」と推定している。この比率が全年齢共通とすれば、年齢別練習場利用回数は〈表1〉のように求められる。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_table1.jpg" alt="" width="788" height="588" class="aligncenter size-full wp-image-75229" /> これを練習場来場実績年齢別平均利用回数と〈グラフ2〉とした。両者には相関が認められる。社会生活基本調査の年齢別データによる将来予測は、有意と考えてよい。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_graph2.jpg" alt="" width="788" height="746" class="size-full wp-image-75230" /> グラフ2 <strong>将来対象人口の確認</strong> ゴルフの「対象人口」の将来値ほど、確実な予測はない。国立社会保障・人口問題研究所の2018年予測を〈表2、グラフ3〉とした。これによれば、2035年には対象人口が現在より14%減少する。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_table2.jpg" alt="" width="788" height="638" class="aligncenter size-full wp-image-75231" /> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_graph3.jpg" alt="" width="788" height="658" class="size-full wp-image-75232" /> グラフ3 <strong>参加率過去変化の法則性</strong> まず、過去の社会生活基本調査の推移を確認する。〈グラフ4〉をご覧頂きたい。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_graph4.jpg" alt="" width="788" height="689" class="size-full wp-image-75233" /> グラフ4 同一年齢でも調査年度によって大きくバラついているが、果たして法則性はあるだろうか? ある年齢集団の5年後のゴルフ参加率の変化率を「参加率加齢係数」と定義しよう。この係数は、筆者が長年の市場調査から見出した将来予測の法則であり、その計算方法と結果を〈表3、図2〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_table3.jpg" alt="" width="788" height="345" class="aligncenter size-full wp-image-75234" /> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_figure2.jpg" alt="" width="788" height="368" class="size-full wp-image-75235" /> 図2 2006年に15~19歳であった集団は、5年後の2011年には20~24歳に加齢し、2006年の参加率2・8%を2011年には5・7%に変化させている。この場合、2006年→2011年における20~24歳の「参加率加齢係数」を5・7%÷2・8%=2・04とする。2006年に15~19歳であった集団は、2011年には20~24歳に加齢して、ゴルフ参加人口を104%増加させた。しかし、2021年には「参加率加齢係数」が0・82となり、5年間でゴルフ参加人口を18%減少させたことになる。 30代以降の参加率加齢係数は、調査年が変わっても常に安定しており、参加率加齢係数には一定の法則性がある。つまり将来参加率は、この法則性により設定すれば良い。10~14歳は基点データがないため、将来も変わらないとする。 <strong>加齢係数による将来値設定</strong> 例えば「2025年35~39歳の2025年将来参加率=2021年30~34歳実績参加率7・5%×加齢係数0・9=6・8」という計算によって設定する。〈図3〉 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_figure3.jpg" alt="" width="788" height="430" class="size-full wp-image-75236" /> 図3 <strong>将来予測基本加齢係数</strong> 活動率の推移〈グラフ6〉から、参加率と同様に活動率加齢係数を計算した。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_graph6.jpg" alt="" width="788" height="744" class="size-full wp-image-75237" /> グラフ6 <strong>ゴルフ需要変動モデル</strong> 2006年~2021年4次調査から3次の加齢係数を平均し、また30歳以降を移動平均値に置換し〈表4・グラフ7〉を得た。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_table4.jpg" alt="" width="788" height="1186" class="aligncenter size-full wp-image-75238" /> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_graph7.jpg" alt="" width="788" height="706" class="size-full wp-image-75241" /> グラフ7 これは非常に重要な知見である。ゴルフ需要がどの年齢で生まれ、加齢とともにどのように変化するかをシンプルに明示する、いわば「ゴルフ需要変動原理モデル」となるからだ。〈表4・グラフ7〉を、将来ゴルフ需要量を支配する変動法則としてゴルフ需要将来予測値を計算する。 <strong>予測前提条件・コロナ影響持続性の判断</strong> 2021年の社会生活基本調査に基づくゴルフ将来需要予測は、例年と異なりコロナ禍の影響にともなう困難がある。言い換えれば、ゴルフの将来需要はコロナの影響が今後どう変化するかによって大きな差異を生ずるわけだ。そこで筆者は、結果に幅をもたせるため4つの前提条件を設定し、それぞれ計算した。 (A)コロナが発生しなかった場合 2016年調査実績参加率、活動率を基点とし〈図3〉のように2020、2025、2030、2035年参加率、活動率を設定する。 (B)コロナ影響が短期に終焉した場合 2020年参加率、活動率のみ2021年社会生活基本調査実績値とする。2025年、2030年は(A)と同一とする、2035年は、コロナが2021年のみ影響するとした前提条件である。 (C)コロナ影響が持続する場合① 2021年参加率、活動率を起点とし三次平均加齢係数により2025、2030、2035年参加率、活動率を設定する。 (D)コロナ影響が持続する場合② 2021年参加率、活動率を基点とし、直近2016→2021年加齢係数により2025、2030、2035年参加率、活動率を設定する。コロナ特需が将来も持続する前提条件である。 <strong>計算結果</strong> 4つの前提条件と計算結果を〈表5・グラフ8〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_table5.jpg" alt="" width="788" height="252" class="aligncenter size-full wp-image-75240" /> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_graph8.jpg" alt="" width="788" height="706" class="size-full wp-image-75241" /> グラフ8 ここで得られた結果から、 ・2021年の需要は、2016年より6%減少するところ、コロナ禍により94%から101%へ7ポイント押し上げられた。 ・コロナの影響が持続すれば、2035年のゴルフ需要は、2015年比14%増加となる。 ・コロナ禍による需要増が短期に消滅すれば、2035年の需要は34%減少する。以上のことが読み取れる。 ここで「なぜ、将来時間が進むにつれゴルフ対象人口以上にゴルフ需要量が減少するのか?」との疑問が生ずるが、それは「ゴルフ人口増加年齢セクターである20~29歳の将来人口」が、全体減少以上に減少するからである。そのことを〈グラフ9〉が示している。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2301yamagishi_graph9.jpg" alt="" width="788" height="710" class="size-full wp-image-75242" /> グラフ9  本連載は今回を含めて計4回、最新の社会生活基本調査を中心に、信頼に足るあらゆるデータを駆使してゴルフ需要の分析を試みた。5回目となる次号を最終回として、 ・ゴルフ需要を維持・増大する対策は何か ・現状データの限界 について考察を述べたい。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2023年01月11日
    最新の「社会生活基本調査」では3つのことが浮き彫りになった。 1)ゴルフ人口▲13%減少 2)年間平均ゴルフ行動日数+16%増加 3)合計ゴルフ行動日数(コース入場者数+練習場入場者数)+1%増加 以上の数字は、定説のように語られる「コロナ禍の行動規制により若者を中心に来場者が急増した」というゴルフ業界の実感とは違和感がある。私達は、ゴルフ人口の「総量」としての増減は直接体感し難い。感じているのはコース、練習場の「来場者増減」であり、「総量」とは必ずしもイコールではない。 前号で説明したように、全体のゴルフ参加率、ゴルフ人口は、社会生活基本調査の精度以上のデータは望みえず、我々はゴルフ人口▲13%減少を受容するしかない。そこで先月号では、この「違和感」を他のゴルフ調査との比較で解消を試みた。〈グラフ1・2・3〉すると以下の考察が得られた。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2212yamagishi_graph1.jpg" alt="" width="959" height="762" class="size-full wp-image-74694" /> グラフ1 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2212yamagishi_graph2_new-1.jpg" alt="" width="703" height="839" class="size-full wp-image-74699" /> グラフ2 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2212yamagishi_graph2_new.jpg" alt="" width="703" height="839" class="size-full wp-image-74696" /> グラフ3 ・ 社会生活基本調査の都市階級別合計ゴルフ行動日数(コース、練習場合計利用者数)では、大都市コロナ後増加率+10%に対し、特定サービス産業動態調査の練習場は+18%と近い増加である。 ・ ゴルフ業界の実感と他のデータは一致するが、社会生活基本調査ではスッキリ一致しない。 これらをゴルフ業界はいかに理解し今後に対処すべきだろうか? スポーツ庁の「年代別参加人口変化 対2016年」で2021年の20代・30代の若者コース人口、練習場人口ともに増えているのに、なぜ社会生活基本調査の全体ゴルフ人口は減少したのか? 本号では、その点を<strong>特定ゴルフ練習場来場実績</strong>との比較によりさらなる解明を試みる。 <h2>特定ゴルフ練習場来場実績とは</h2> このデータは東海、近畿地方のわずか2練習場の2019年~2021年(36ケ月)における「全来場者」の連続月次来場回数記録である。全体の需要を論議するには非常に偏ったデータであるが、 ・全来場者データであること ・100%ゴルファーであること ・ 従って捕捉ゴルファー数3万6775人と社会生活基本調査の捕捉ゴルファー数1万1825人を大きく上回ること ・ コロナ前後3ヶ年の個人別ゴルフ行動変容が記録されていること 以上の理由で価値がある。データ概要を〈表1・グラフ4〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2212yamagishi_table1.jpg" alt="" width="2089" height="1545" class="size-full wp-image-74697" /> 表1 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2212yamagishi_graph4.jpg" alt="" width="851" height="703" class="size-full wp-image-74698" /> グラフ4 <strong>延べ来場者(利用回数・ゴルフ産業需要量)</strong> コロナ後に19%増加しており、特定サービス産業動態調査のゴルフ練習場伸び率と一致する。ここで注目すべきは、この2施設は大都市立地と考えられる。 <strong>実動顧客数(ゴルフ人口)</strong> その年1回以上来場したすべての顧客数であり、通常のゴルフ関連調査ゴルフ人口に相当する。社会生活基本調査とは異なり対2019年比であるが+29%増であり、社会生活基本調査の▲13%減(対2016年比)と大きく乖離している。 <strong>新来顧客</strong> 2020年の新来顧客は+38%増とコロナ直後に急増したが、2021年に減少した点は注目すべき。 <strong>年代別推移</strong> コロナ前2019年と2021年の「年代別実動顧客数増減」を〈グラフ5〉とした。20代の増加数が突出しており、ゴルフ業界の実感と一致している。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2212yamagishi_graph5.jpg" alt="" width="998" height="760" class="size-full wp-image-74700" /> グラフ5 ここで注意すべきは、20代以外の年代増加が全体増加数の46%あることだ。すなわちコロナ禍は、20代以外のゴルフ行動にも影響を与えた。 <h2>コロナ後ゴルフ行動変化別集計</h2> コロナ後の「練習場利用行動変化」が多様であることが明確になった。増加要因のかげに減少要因が存在している。しかし、既存のゴルフ関連調査は「単年度来場合計の変化」のみであり、複数年間に交錯する増加・減少を把握できない。そこで、2019年と2021年の練習場利用回数の変化を、 ・コロナ後新来 ・コロナ後中断 ・コロナ後復活 ・コロナ後減少継続 ・コロナ後増加継続 ・コロナ後変わらず継続 の6タイプに分類集計した。〈表2・グラフ6・7〉 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2212yamagishi_table2.jpg" alt="" width="1796" height="1312" class="size-full wp-image-74701" /> 表2 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2212yamagishi_graph6.jpg" alt="" width="984" height="760" class="size-full wp-image-74702" /> グラフ6 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2212yamagishi_graph7.jpg" alt="" width="1338" height="645" class="size-full wp-image-74703" /> グラフ7 <h2>2019年と2021年の来場数は、合計+4万5789回は増加要因合計16万3039回と、減少要因合計▲11万7250回の合計であり、合計値よりはるかに大きな反対変動である。まとめると、</h2> <strong>・コロナ後の新来+復活1万8896人</strong> <strong>・コロナ後の中断4943人</strong> <strong>・顧客数増減収支1万3953人</strong> この2施設では偶然増加要因が大きかったが、逆に減少要因が大きく、合計来場数がコロナ後にマイナスとなった施設も存在したはずである。したがって、社会生活基本調査の全国コロナ後ゴルフ人口▲13%減はここに原因がある。 しかし、既存のゴルフ関連調査でキャッチできるのは「単年度来場合計の変化」のみであり、背後に交錯する増加・減少要因を個別には把握できない。つまり、ゴルフ業界の実感は大都市における動きであり、コロナによる減少が増加を上回った地域・施設が多数存在すると推理される。残念ながらこれを全国規模でズバリ説明できるデータは存在しない。 <strong>・ コロナ後の年代別来場増加数</strong> 年代別来場回数の増減では、20代の増加が全体増加量の48%であることから、コロナ特需は<strong>若者が主役</strong>は間違いない。 <h2>新来者・復活者・休眠入り者</h2> 若者新来者の増加が、コロナ後の全体来場数増加の最大要因である。しかし、コロナ前に練習場利用を「中断」していたが、コロナ後に再開した「復活者」の存在もデータは示している。コロナ特需がゴルフ人口に今後も持続的増加をもたらすかどうかは、この新来者、復活者、中断者の継続が鍵を握る。個別施設は無論のこと、ゴルフ界全体での経過観測が必要となるが、その体制は殆ど存在しない。 <h2>2020年新来者、復活者の特徴</h2> 新来・復活者は20代が40%を占める。その特徴を確認する。 新来・復活者の2020年「年間来場階層別集計」は、新来者も復活者も構成率に差がない。年間4回以下の来場はビギナーの可能性が高く、コロナ後に急増した顧客の70%以上がビギナーと考えられる。2020年新来者の翌年継続来場率は51%である。5年後の継続率は、過去実績では25%以下となるだろう。 <h2>2020年来場「中断者」の2021年復活状況</h2> 2020年以後、まったく来場をストップした顧客が6923人存在した。彼等は2019年2万3253回・全体来場10%。2020年実動顧客(ゴルフ人口に相当)2万8259人の4%に相当する。その翌年、2021年の復活来場率は13%である。コロナ終焉時に彼らが100%利用を再開させることが、ゴルフ界の課題である。 <h2>連続来場者の特徴</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2212yamagishi_graph8.jpg" alt="" width="984" height="760" class="size-full wp-image-74704" /> グラフ8 コロナ後も練習場の利用状況を変えなかったゴルファーに、年代による特徴は見られない。しかし2019年の来場階層では、明確な特徴があった。 ・年間12回以上の来場階層 延べ来場回数89% 顧客数38% 年間4回未満の階層はビギナーと推定できる。逆に12回以上はコロナ禍であってもゴルフを続ける安定ゴルファーと考えて良い。安定ゴルファーは38%しか存在しないが、ゴルフ産業は需要の89%も依存している。 <h2>年間平均練習場利用回数</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/12/2212yamagishi_graph9.jpg" alt="" width="898" height="695" class="size-full wp-image-74705" /> グラフ9 特定ゴルフ練習場来場実績データの平均利用回数は、コロナ後に98%→92%と低下し、2021年の社会生活基本調査の平均行動日数+16%増と全く乖離している。これを説明できるデータは、残念ながら見出せない。 <h2>まとめ</h2> 偏ったデータではあるが、特定ゴルフ練習場来場実績は以下の点で示唆に富む。 ・安定ゴルファー創造 コロナ禍にあっても新来ビギナーを安定ゴルファーに熟成させる歩留まり向上が、ゴルフ振興の要であること。 ・ゴルフ人口再定義の必要性 直近12ヶ月のコース、練習場利用者数をゴルフ人口とするならば、ゴルフ振興はおぼつかない。最近中断者(潜在復活者)を含めたゴルフ人口の再定義が不可欠である。それは全ゴルファー数の年間行動変容・集客構造変化を常に把握するためである。 ・ゴルフ業界みずからゴルファーを母集団とする調査の重要性 全体ゴルファーの集団構造を明らかにするためにはゴルファーの属性(年齢、ゴルフ歴、年間利用回数、平均スコア等)が必要となる。それにはゴルファーを母集団とする標本調査でなければ精度の高いデータは得られない。全体ゴルフ参加率は社会生活基本調査に依存できる。ゴルファーを母集団とする標本調査は、ゴルフ業界が自らのフィールドに現れるゴルファーを自ら調査すること。今更ながら必要なことを実施する覚悟、体制が求められる。 <h2>ゴルフ練習場カードシステム来場データの価値と活用</h2> 幸いにもゴルフ練習場ではカードエントリーシステムが普及している。本号でも活用したように、練習場システムの中には全来場者データが蓄積されているため、個人情報保護に配慮しつつ全体ゴルファー集団構造の把握に活用可能だ。今回はたった2施設の調査だが、これを数十施設に拡大すれば凄いデータとなる。何よりも調査コストが少ないことが大きな利点といえる。 次号では2021社会生活基本調査に基づくゴルフ人口、ゴルフ行動日数の論理的将来予測を試みる。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年12月06日
    総務省が5年に一度、20万人規模の調査をまとめる「社会生活基本調査」が今年8月、発表された。これにより「コロナ禍におけるゴルフ人口の変化」を読み解く記事の第2弾をお届けする。 前号の第1弾では、2016年との比較でゴルフ人口13%減、ゴルフ行動日数16%増という、異常な凸凹の実態を明かした。本稿では信頼に値する各種調査との比較検証で、何がわかり、何がわからないかを精査しよう。 2021年社会生活基本調査を読むゴルフデータ間の比較検証 前号では、最新の「社会生活基本調査」から次の2点を確認した。 ① ゴルフ人口▲13%減少 ② 年間平均ゴルフ行動日数+16%増加 ゴルフ人口は大幅に減ったものの、プレー需要は大幅に伸びたことが確認された。この点は非常に重要なポイントである。 <h2>社会生活基本調査長期推移の確認</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph1.jpg" alt="" width="788" height="821" class="aligncenter size-full wp-image-74190" /> 2011年から2021年まで、3次調査の変化率を〈グラフ1〉とした。 最新の2021年の変化率は、2011年と良く似ている。言うまでもない。2011年は東日本大震災の発生により、ゴルフ人口▲9%減少、平均行動日数+14%増と大きく変化したが、その5年後の2016年は小さな変化量におさまっている。しかし、2016年のゴルフ人口量そのものは、その10年前の2006年レベルには回復していない。つまり、震災の影響が緩和しても、長期減少トレンドが働いたのである。 今回、2021年の変化原因がコロナ禍にあることは間違いない。コロナ禍による需要増と、長期トレンドによる人口減の推移を、正確に分離・把握して、将来に備えなければならないことは自明である。 <strong>他スポーツとの比較</strong> 社会生活基本調査は、ゴルフだけの調査ではないため、他のスポーツ市場へのコロナ禍の影響も確認できる。「プレー費用」「民間営利スポーツ施設依存度」で、ゴルフと似たテニス、ボウリング、スキーの状況を〈グラフ2〉に表した。ここから明らかなのは、他スポーツでも参加人口はゴルフより大きく減少している。 <strong>ゴルフ市場他データとの比較</strong> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/2211yamagishi_table1.jpg" alt="" width="2146" height="2113" class="size-full wp-image-74254" /> 表1 社会生活基本調査と比較検証できるゴルフ関連データを〈表1〉とした。 これらの「コロナ後の変化」を社会生活基本調査と比較し、コロナ後の変化をより正確に把握したい。 〈表1〉はどれも調査主体、調査方法が異なるため、社会生活基本調査と単純に比較できない。調査につきものの「誤差」は、調査方法、調査規模により変化するからである。〈表1〉は、 ・ 全数調査 ・ 標本調査 ・ 定点調査 に大別される。標本調査はさらに、 ・ 統計標本調査 ・ ネット標本調査 に区別される。以下、調査に関わる基礎知識を整理しよう。 <strong>全数調査とは</strong> 母集団(知りたい集団)に属するすべての個を調査し、母集団の全体量、平均値等をつかむ。誤差はないが時間、コストがかかる。 全地域・全住民をもれなく調査する「国勢調査」は政策、学術研究の根幹である。統治国家の必須条件であり莫大な調査費用をいとわない。その点「ゴルフ場利用税」から見たコース利用者調査は、業界がもつ異色の全数調査といえる。費用負担なく、すべてのコース、すべての利用者が調査されるもので、ゴルフ界、ゴルフ産業界にとっては市場を把握するうえで幸運な調査データである。ゴルフ振興のため、業界は利用税の撤廃運動を行っているが、仮にこれがなくなれば、ゴルフ界は貴重なデータを失ってしまう。筆者にとってはある種、皮肉な運動に思える。例:①、④ <strong>標本調査とは</strong> 母集団から可能なかぎり、偏りなく選び出した少数標本を調査し、その全体量、平均値から母集団を推定する。時間、コストを節約できるが誤差は避けられない。標本数が多いほど誤差は小さくなる。例:②、⑤ <strong>定点調査とは</strong> 〈表2〉では「特定サービス産業動態調査」が該当する。一定のゴルフコース、ゴルフ練習場の来場者数を定期的に継続調査するもの。全国来場者数(母集団)の推計は不可能だが、毎月の変化量が迅速に観測できる。〈表2〉はその1ホール、1打席あたりの来場者数で、対象調査施設の変動が除去されている。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/2211yamagishi_table2.jpg" alt="" width="1326" height="816" class="size-full wp-image-74255" /> 表2 <strong>統計標本調査とは</strong> 母集団から可能なかぎり偏りなく標本を選び出す調査(無差別抽出)。標本は母集団の精巧なミニチュアであり、誤差の範囲(標準誤差)を統計学的に明示できる。例:〈表2〉では社会生活基本調査のみ。 <strong>ネット標本調査とは</strong> 母集団は、知りたい集団そのものではない。民間調査会社があらかじめ募集登録を受けた「ネット調査協力者集団」(通常2、3百万人)である。そこから知りたい集団の構成率に合わせて標本を割当てる。ゴルフ参加率調査の場合、年齢・地域を国勢調査の構成率に合わせて、ネット調査協力者集団に割り当てて標本とする。標本は母集団の精巧なミニチュアとは言い難い。時間、コストが統計標本調査の10分の1以下に節約できるが、誤差は避けられない。また標準誤差も明示できない。 <strong>特定ゴルフ練習場来場実績</strong> ⑦はカードシステムを導入した東海、近畿2施設の2019年~2021年の全来場者データである。2019年以降、すべての顧客来場者の「連続来場経過」が記録されており、コロナ禍の影響が正確に分析集計できる。たった2施設であり、複数施設をかけもちする利用者による誤差も存在するが、多角的な分類集計結果が正確に得られる。 <strong>母集団に対する標本率</strong> ゴルフ人口(ゴルフ参加率)を得るには現実的に標本調査しかない。〈表2〉にゴルフ人口を比較検証できる三標本調査の特徴を整理した。 ・ 母集団 ・ 標本数(調査規模) ・ 標本抽出方法 ・ 捕捉ゴルファー数 ・ 母集団に対する標本率 により、調査結果の信頼性が決まる。この特性を常に留意して比較検証したい。この中で社会生活基本調査の信頼性が圧倒的に高いことが、直感的に理解できる。 ただし、社会生活基本調査の欠点は、調査が5年間隔であること。本稿のテーマはコロナ禍の影響分析にある。社会生活基本調査では2016年対2021年を比較するしかない。この間、必要なコロナ直前の2019年データについては「スポーツ庁調査」と「レジャー白書」でこの点を補いたい。 <strong>社会生活基本調査標準誤差</strong> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph3.jpg" alt="" width="788" height="684" class="size-full wp-image-74192" /> グラフ3 厳密な統計調査である社会生活基本調査は「標準誤差」も公表されている。年齢別ゴルフ人口の標準誤差を〈グラフ3〉とした。標準誤差の意味や計算式は難解だが、標準誤差が大きいほど母集団の真の値から外れる可能性を示す。 留意すべきは全体ゴルフ人口(全年齢)が最も正確であり、各年代別ゴルフ人口は段違いに不正確であることだ。その理由は、各年代別のゴルフ参加有効回答数が、母集団各年代別人口に比例しないためである。 このことは、最も信頼すべき社会生活基本調査の結果も、年齢別、地域別、行動頻度別等のゴルフ人口詳細を用いる場合に、注意が必要なことを示している。〈表1〉すべての標本調査で最も信頼度が高いのは、ゴルフ参加率すなわちゴルフ人口である。 <strong>他データとの検証ポイント</strong> 比較検証は以下の4点に絞りたい。 ① ゴルフ人口(ゴルフ参加率) ② 都市階級別ゴルフ人口 ③ 年代別ゴルフ人口 ④ ゴルフ活動率(平均利用回数) ⑤ ゴルフ行動量(コース利用者数+練習場利用者数) <strong>ゴルフ人口(ゴルフ参加率)</strong> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph4.jpg" alt="" width="788" height="696" class="size-full wp-image-74196" /> グラフ4 三標本調査の「ゴルフ人口変化対2016年」を〈グラフ4〉、「コロナ後の変化」を〈グラフ5〉とした。社会生活基本調査のゴルフ人口▲13%減は、スポーツ庁のコロナ後と一致する。コロナによるゴルフ人口の減少は間違いない。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph5.jpg" alt="" width="788" height="727" class="size-full wp-image-74197" /> グラフ5<br /> <strong>都市階級別ゴルフ人口</strong> 都市階級別ゴルフ参加人口の変化はスポーツ庁の調査と比較できる。〈グラフ6、7、8〉とした。 社会生活基本調査に表れた「大都市」の+10%増はスポーツ庁には確認されない。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph6.jpg" alt="" width="788" height="813" class="size-full wp-image-74198" /> グラフ6 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph7.jpg" alt="" width="788" height="618" class="size-full wp-image-74199" /> グラフ7 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph8.jpg" alt="" width="788" height="618" class="size-full wp-image-74200" /> グラフ8 <strong>年代別ゴルフ人口</strong> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/2211yamagishi_table3.jpg" alt="" width="1389" height="703" class="size-full wp-image-74256" /> 表3 「コロナ後に若い人が増えた」は、ゴルフ界共通の認識であり、これにより「全体ゴルフ人口も増えた」と考えがちである。ところが筆者はここに違和感を覚えるため、解明する必要があると考える。まず、年代別ゴルフ人口の変化を調査データで確認しよう。 社会生活基本調査、スポーツ庁調査のコース年代別人口変化を〈グラフ9〉、練習場の変化を〈グラフ10〉とした。レジャー白書の調査は年代別の有効回答数が少ないため、本稿では割愛する。 ・ おおまかな傾向として40代以上はコロナにより参加人口減少が読み取れる。 ・ コロナ後増加したはずの20、30代増加が少ない。 ・ スポーツ庁の10代コロナ後急増は〈表3〉のように有効回答数が少なく信頼度が低い。 以上の結論として「年代別人口変化」は、〈表1〉の現有標本調査では判断しがたい。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph9.jpg" alt="" width="788" height="561" class="size-full wp-image-74205" /> グラフ9 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph10.jpg" alt="" width="788" height="561" class="size-full wp-image-74206" /> グラフ10 <strong>ゴルフ活動率(平均利用回数)</strong> 2021年社会生活基本調査は「ゴルフ活動率」が急増した。しかし、これを他の標本調査で検証するのは年代別参加人口の検証以上に困難である。標本調査では直近1年間でのゴルフ参加の「有無」を最初に問う。参加したか、しないかの二択であり、誤回答はない。 活動率は、参加回答者に、さらにそのスポーツの参加回数を求める。それも参加回数そのものではなく、参加回数を階層化した選択肢から選ばせる。複数スポーツの参加者は、直近1年間の回数をそれぞれ集計し回答しなければならない。そのため全体平均回数は、各参加階層選択肢の「中央値」を設定し計算される。まして社会生活基本調査の場合は「コース回数」と「練習場回数」を合算しなければならないため、回答の「記入誤差」がどうしても大きくなる調査項目である。 標本数が小さい場合は、平均回数の信頼性はさらに低くなる。コロナ後の社会生活基本調査の平均活動回数増加(対2016年)の他調査比較・検証は、不可能である。 <strong>ゴルフ行動量(利用回数)</strong> 年代別参加人口、平均利用回数の検証は困難だが、全国コース、練習場利用回数のコロナ後の変化は確認しておきたい。〈表1〉の特定サービス産業動態調査、利用税から見たコース延べ利用者は、利用数そのものである。 対2016年、コロナ後の変化を〈グラフ11、12〉とした。コロナ後の変化は良く一致している。コース利用者は+3%増、練習場利用者は+18%増加した。カードシステムを導入する練習場は大都市に立地する。特定サービス産業動態調査の対象練習場が大都会ならば、コロナ後の大都市ではゴルフ練習場利用者が+18%増加と断定して良い。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph11.jpg" alt="" width="788" height="1015" class="size-full wp-image-74207" /> グラフ11 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/11/graph12.jpg" alt="" width="788" height="951" class="size-full wp-image-74208" /> グラフ12 <h2>なぜコロナ後コース、練習場利用者数増加に大差が生じる?</h2> コロナ後のコース利用者数は、 ・ 全数調査利用税+3% ・ 特定サービス産業動態調査+4% これに対し練習場利用者は、 ・ 特定サービス産業動態調査+18% ・ カードシステム練習場+18% である。コース、練習場利用者の変化に大差があることは間違いない。次号では、このギャップについての解明にも挑戦する。 最新の「社会生活基本調査」で明らかになった、コロナ後のゴルフ人口▲13%減を、ゴルフ界、ゴルフ産業界は真摯に受容し、将来予測をしなければならない。しかし、そのために必要なゴルフ人口・ゴルフ需要の詳細は、社会生活基本調査では十分でなく、他の標本調査でも補完出来ないことを本稿で確認した。 次回は特定のゴルフ練習場におけるカードシステムのデータと比較して、業界に今、何が必要なのかを考える。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年11月10日
    総務省が5年に一度行う「社会生活基本調査」の結果が発表された。調査件数20万人、有効回収数は17万人を超えるもので、国民の生活様態を大規模かつ精緻に調べた統計として類例を見ない価値をもつ。ゴルフ人口に関わる調査結果も含まれることから、市場研究者垂涎のデータでもある。 前回は2016年だったから、この間に生じたコロナ禍の影響も比較・考察でき、他の信頼度が高い調査と組み合わせることで「コロナとゴルフ人口」の関係が深掘りできる。ゴルフ市場研究の第一人者・山岸勝信氏の短期集中連載で、ゴルフ産業界の課題を丁寧に読み解く。 さる8月31日に「2021年社会生活基本調査」の結果が公表された。これは総務省が5年に一度行う国の基幹調査であり、「国勢調査」の体制による厳格な無差別抽出で20万サンプルという大規模な調査である。むろん、ゴルフ界にとっても最重要な統計データといえる。なぜなら、他の調査とは比較にならない最高精度で、ゴルフの参加人口が得られるからだ。 前回の調査は2016年であり、5年に一度の今回と比較することにより、コロナ禍によるゴルフ市場の変化を精査できる。業界では「コロナ特需」の影響を肌感覚で語られたり、簡易的な調査で断片的な動きが公表されてもいるが、「社会生活基本調査」の内容に、その他調査の中身を組み合わせることで、精度の高い考察が可能となる。本稿では、その作業を丁寧に積み上げていきたい。 まず、ゴルフ人口は「ゴルフ対象人口×ゴルフ参加率」の計算により得られることを強調したい。 「ゴルフ対象人口」は国勢調査により正確に得られるため、ゴルフ人口調査は「ゴルフ参加率調査」と同義になる。2020年の国勢調査と2021年の社会生活基本調査から、次のことが考察できる。 ・ゴルフ需要の長期トレンドを確認して将来の予測を立てる。 ・2020年に突如現れたコロナ禍による需要急増の詳細と持続性。  以上を把握することが本稿の目的となる。 <h3>(1)ゴルフ需要長期トレンドの確認</h3> 「社会生活基本調査」の主要集計値から、以下のことを確認したい。 1、ゴルフ対象人口 2、ゴルフ参加率 3、ゴルフ参加人口 4、年間平均ゴルフ行動日数(ゴルフ活動率) 5、ゴルフ行動量(参加人口×行動日数 コースと練習場の合計利用回数・ゴルフ産業需要量に相当する) 以上の2011年、2016年、2021年における調査の「三次推移」を〈表1〉と〈グラフ1〉に表した。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/2210yamagishi_graph1.jpg" alt="" width="788" height="694" class="size-full wp-image-73923" /> グラフ1 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/hyou1.jpg" alt="" width="788" height="340" class="size-full wp-image-73933" /> 表1 ゴルフ対象人口について、筆者は現状10~79歳とするのが妥当だと考えているが、この数字はゴルフ需要の長期トレンドをもっとも強く左右する因子である。 〈グラフ1〉に2011年と2021年のゴルフ対象人口を結ぶ直線を「ゴルフ対象人口傾向線」として記載した。すると、2021年の社会生活基本調査における「結果変動」は、傾向線との乖離程度により、 ・長期トレンドに沿った必然的な変化なのか? ・何か他の構造的変動が起きていないか? が判断できる。具体的には、2021年のゴルフ対象人口は2011年比▲3%減少となる。これに対して、 1)ゴルフ参加率、ゴルフ人口は▲13%減少(ゴルフ人口はゴルフ参加率に連動する) 2)年間平均ゴルフ行動日数は+16%増加 という結果が得られた。この二点は長期トレンドを超えた大きな変化であり、 「2021年社会生活基本調査はゴルフ参加率の異常な減少、ゴルフ活動率の異常な増加を示した」 と言える。 ゴルフ産業需要量を表す「ゴルフ行動量(ゴルフ産業需要量)」は、参加率の減少を活動率の増加で補い、長期トレンド上に留まった。ゴルフ界やゴルフ産業界は、これに安堵することなく、異常変動の二点について、それが「今後も継続し、将来予測を修正する必要があるか」を解明しなければならない。 現場感覚はデータと一致 <h3>(2)コロナ禍による需要急増を把握する</h3> ゴルフ産業界の現場皮膚感覚では、「コロナ禍による需要増は若者を中心に2桁増した」が共通認識となっており、ひとつの定説として業界に定着した印象がある。そのため筆者が提示した「ゴルフ人口13%減少・2021社会生活基本調査ゴルフ行動量対2016年+1%増加」について、違和感をいだき、社会生活基本調査の信頼性に疑問を覚える読者がいても当然だろう。この点をクリアにするために「コロナ禍需要増がどこにどれだけ発生し、今後も持続するのか」は、どうしても解明しなければならない。 その前提として、社会生活基本調査以上に正確な統計調査を実施するためには、莫大な費用を要し、ましてゴルフ界単独でより正確な調査を行うことは、まず不可能であることを付言したい。つまり今後も、ゴルフ人口を推計するには社会生活基本調査を受容するしかないわけだ。 そこで次に重要なことは、社会生活基本調査と他のゴルフ関連調査を比較検証することになる。次月号では他のゴルフ関連調査を活用して可能な限り検証したいが、その前に本稿では、社会生活基本調査の年齢、頻度、地域別等の詳細データを分析して、コロナ禍による需要増を確認する。 前述のように、社会生活基本調査は5年毎の実施であるため、コロナ禍直前の2019年データは存在しない。前回2016年調査の結果と比較して、コロナ禍による需要急増の実態を把握しよう。 1、年齢別ゴルフ行動量 2016年、2021年の社会生活基本調査におけるゴルフ行動量により、「年齢別ゴルフ行動量」の増減量と増減率を〈グラフ2、3〉とした。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/2210yamagishi_graph2.jpg" alt="" width="788" height="940" class="size-full wp-image-73924" /> グラフ2 「増減量」では若者20~29歳が大きく増加しているが、70~74歳をはじめ他の世代も増加したことがわかる。また65~69歳のように、最大減少した世代も存在する。 そのため「現場感覚」では、そもそも少なかった20~29歳の来場増加が圧倒的に目立ったはずだ。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/2210yamagishi_graph3.jpg" alt="グラフ3" width="788" height="940" class="size-full wp-image-73926" /> グラフ3 その一方で、来場しなくなった層は現場では見えない。「年齢別ゴルフ行動量」の変化は現場感覚と一致しており、社会生活基本調査はコロナ禍における需要増の存在を証明している。 1、頻度別ゴルフ行動量 社会生活基本調査での「プレー頻度別行動量」の変化を〈グラフ4〉に表した。年間40回(コース、練習場の合計利用回数)を境に、低利用の回数減少・高利用の回数増加と、対照的に変化したことがわかる。つまりコロナ禍は、ヘビーゴルファーのプレー回数を増やし、ライトゴルファーを減らしたのである。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/2210yamagishi_graph4.jpg" alt="グラフ4" width="788" height="881" class="size-full wp-image-73927" /> グラフ4 2、地域別ゴルフ行動量 社会生活基本調査には県別、地域別のデータがある。そのうち「都市階級別ゴルフ行動量」の増減を〈グラフ5〉とした。都市階級の定義は、 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/2210yamagishi_graph5.jpg" alt="" width="788" height="1196" class="size-full wp-image-73929" /> グラフ5 大都市 東京都区部、政令指定都市 中都市 人口30万人以上 小都市A 人口30万人未満10万人以上 小都市B 人口10万人未満の市、町、村 である。興味深いのは、行動量の変化は大都市で圧倒的に増加し、中都市、小都市は逆に減少したことである。コロナ禍の需要急増は、大都市中心に起きたと考えられる。 3、ゴルフ統計他データとの検証 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/hyou2.jpg" alt="" width="788" height="497" class="size-full wp-image-73934" /> 表2 社会生活基本調査と比較検証可能な統計データを〈表2〉とした。本稿では比較するデータを厳選しているが、未掲載の調査にはSSS笹川財団によるスポーツライフデータがある。統計的に正しい調査方法であり、コース、練習場が別途に調査された貴重なデータだが、調査実施が定期的ではないため割愛した。これらとの詳しい比較検証は次号に譲るとして、ゴルフ行動量データが連続集計されている調査として、 ・ゴルフ場利用税から見た延べコース利用者数 一般社団法人 日本ゴルフ場経営者協会 ・特定サービス産業動態調査 ゴルフコース・ゴルフ練習場 経産省サービス産業調査室  このふたつの調査結果と、社会生活基本調査の「ゴルフ行動量」を比較してみよう。 <h2>一致点と非一致点の考察</h2> 利用税から見た延べコース利用者数は泣く子も黙る全数調査であり、一桁台までの人数が開示されるなど国勢調査人口と同等の重みがある。また、非課税利用者(70歳以上が大半を占め一部18歳未満等)の数が明確なため、70歳以上の利用者数変化が把握できることも貴重である。日本ゴルフ場経営者協会の協力により、2021年の社会生活基本調査対象期間(2020年11月~2021年10月)のデータを得た。 また、「特定サービス産業動態調査」は、コースと練習場が分離されたデータで、長期月次データが公開されている。複数コース・練習場の定点観測と推定されるが、永い間に観測地点の入れ替えが生ずるため、毎月稼働ホール数、稼働打席数が開示されている。各月1ホール、1打席あたりの利用者数を計算した。こちらは社会生活基本調査の対象期間に合わせて11月~10月の合計を1年とした。 社会生活基本調査と利用税から見た延べコース利用者数及び、特定サービス産業動態調査の対2016年の増減率を〈グラフ6〉に表したのでご覧いただきたい。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2022/10/2210yamagishi_graph6.jpg" alt="" width="788" height="650" class="size-full wp-image-73930" /> グラフ6 ここから得られるポイントは以下に集約されるだろう。 ・利用税からみたコース合計利用者の増減率103%は、社会生活基本調査におけるゴルフ行動量増減率101%と差異が2%しかない。 ・利用税70歳以上の非課税利用者増加率128%は〈グラフ3〉の年齢別行動量70~74歳121%と差異が7%しかない。 ・特定サービス産業動態調査コース利用者数の増加率は、社会生活基本調査、利用税から見た延べ利用者数の増加率を大きく超える。特定サービス産業動態調査の観測点が「大都市中心」に設定されているならば、その差は納得できる。 ・社会生活基本調査のゴルフ行動量は、コースだけでなく練習場も含む。コロナ禍による需要増が、特定サービス産業動態調査のように練習場の方が大きいとすれば、社会生活基本調査のゴルフ行動量は101%以下となり、利用税から見たコース合計利用者の増減率103%との差はもっと大きくなるはずである。 以上のように、社会生活基本調査は他のゴルフ関連統計データとある程度共通しているが、すべてすっきり一致してはいない。本稿のまとめとしては、 ●2021年社会生活基本調査は、長期トレンドから外れた異変が生じたことを示した。 ●2021年社会生活基本調査は、コロナ禍による需要増を反映している。 ●異変や需要増の詳細はある程度推定できるが、十分とは言えない。 以上、短期連載の初回として、国内最大規模の調査である「社会生活基本調査」の概要と、これをどのように考察し、位置づけるべきかを説明した。次号からは、比較検証可能な他データの特性を吟味しながら、詳細に迫っていくこととする。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年10月18日
    「レジャー白書2021」が9月に発表されました。ゴルフコース人口は対前年比▲60万人の減少となっています。調査時点が2021年1月なので、2020年のデータと捉えます。その一方、12月に日経MJ誌が「2021年ヒット商品番付」にゴルフを小結としてランクインさせました。その根拠として、経産省の「特定サービス産業動態調査」における2021年9月のゴルフ場利用者数急増をあげています。こちらは文字通り、2021年のゴルフ産業の景況を基にしています。  双方とも、ゴルフ産業界としては信頼したいデータです。対象期間が微妙に異なりますが、片や「人口減少」、片や「ブーム到来」と方向性が反対となりました。これをどう統合的に捉えるのか、過去10年間のゴルフ産業需要関連データの推移を確認しながら考えてみましょう。 レジャー白書ゴルフデータの推移 <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2022/02/2201yamagishi_table1.jpg" alt="" width="534" height="177" class="size-full wp-image-70725" /> 表1 〈グラフ1〉に2011年以降のレジャー白書ゴルフ関連データ推移として、2011年以降のコース、練習場の「参加人口」と「参加率」を図示しました。2011年を100%としています。その印象は、 (1)毎年変動が大きい。 (2)10年間で▲30%以上減少した。  この変化は、肌感覚として「そうかな?」と思う業界関係者が多いのではないでしょうか。レジャー白書のデータはマスコミ、経済界、学会等でゴルフの現況や将来を検討する代表的なエビデンスとされますが、そのデータが暴れるのはゴルフ産業界にとってマイナスです。 <h2>まったく一致する参加率、人口の変動</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2022/02/2201yamagishi_graph1.jpg" alt="" width="436" height="588" class="size-full wp-image-70726" /> グラフ1 また〈グラフ1〉によりコース、練習場とも参加率と人口の変動がピッタリ一致しています。そのため、「全体人口×参加率=参加人口」 のロジックで、ゴルフ人口を算出していると推定できます。レジャー白書2021の場合は、・ インターネット調査協力者から3264名アンケート調査する。・ 結果、その内173名、5・2%が「過去1年間にコースでプレーした」と回答した。従って、・ 全体人口(詳細未公表)×5・2% = コース人口520万人 と計算されたのです。回答者の3264名が全体人口を正確に反映していれば良いのですが、当然誤差は大きくなります。つまりレジャー白書のみで結論を出さず、常に他のデータとの相互比較で検証する必要があります。 <h2>ゴルフ産業需要比較データ</h2> 〈表1〉にレジャー白書以外のゴルフ産業需要関連データを対比しました。 (1)国勢調査ゴルフ対象人口 ゴルフ対象人口(筆者はゴルフ参加可能年齢を10歳〜79歳としています)を国勢調査から抽出しました。これは総務省による5年おきの全数調査であり、毎年10月1日時点中間データが公表されています。 (2)社会生活基本調査ゴルフ人口 やはり総務省により国勢調査翌年に全国20万サンプル規模で実施されています。レジャー白書とは桁違いの大規模調査・信頼度です。 (3)利用税コース入場者数都道府県税務課の協力を得て日本ゴルフ場経営者協会から毎年公表されています。これも正確で貴重な全数調査データです。 (4)、(5)特定サービス産業動態調査 経産省が民間調査会社に委託して集計されています。詳細は明らかではないが選抜した特定施設への定点調査と思われます。全需要量ではありませんがゴルフ場と練習場が区別され、月次、長期で時系列変動が掴める貴重なデータです。 (6)レジャー白書コース利用者数理論値「ゴルフ人口×コース平均利用回数=年間コース利用回数の合計」が成立します。これを「レジャー白書コース利用者数の理論値」としました。 たった173名のゴルファーで日本全体の平均利用回数を判定するのは強引ですが、これにより「利用税からみたゴルフ場利用者数」と相互検証が可能になります。 <h2>ゴルフ産業需要推移比較グラフ</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2022/02/2201yamagishi_graph2.jpg" alt="" width="528" height="510" class="size-full wp-image-70728" /> グラフ2 〈表1〉(1)〜(6)数値の2011年を100%とする推移を〈グラフ2〉としました。すべて利用者数ですから各データの相互比較が可能です。((6)レジャー白書のコース利用者数理論値は変動が大きいので、3ヶ年移動平均値です。)各データを比較しましょう。 (1)国勢調査ゴルフ対象人口 対(3)利用税コース入場者数 比較(1)、(2)は全数調査ですから最も信頼できるデータです。両者の10年間推移はピッタリ一致しています。コースの入場者数はゴルフ対象人口に従って減少してきたのです。ゴルフ産業需要量がゴルフ対象人口量で決定することが最近10年間でも確認できます。 (1)国勢調査ゴルフ対象人口 対(6)レジャー白書コース利用者 比較 ・ 2014年まではよく一致する。 ・ 2015年以降レジャー白書コース利用者がゴルフ対象人口よりも連続して減少し、両者の乖離が大きくなっています。 (1)国勢調査ゴルフ対象人口 対(4)特定サービス産業動態調査ゴルフ場利用者数 比較(4)は(1)にはないさざ波が見られますが長期的には(1)に連動しており、(1)と(6)ほどの乖離はありません。(4)は全数調査ではありませんがゴルフ人口と忠実に連動していると考えて良いでしょう(1)国勢調査ゴルフ対象人口 対 (2)社会生活基本調査ゴルフ人口 比較 社会生活基本調査ゴルフ人口と国勢調査ゴルフ対象人口の推移も対比確認しておきます。2011年、2016年はゴルフ対象人口以上に減少していますが僅かであり、(2)も対象人口に忠実に連動しています。 ゴルフ産業はレジャー白書のみで判断できない? 以上から、2011年以降のレジャー白書ゴルフ関連データだけが、他のデータと異なる推移をしていることが明白となりました。レジャー白書のみでゴルフ熱やゴルフ産業景況を判断できないと言えます。 これは、調査の誤りとは言えません。統計調査には必ず統計誤差が生じます。とはいえ、筆者はそもそも全国ゴルフ産業需要量のような計量データを、インターネット調査の3246サンプルで判断しようとするのが無謀と考えます。 レジャー白書はゴルフのみが対象ではありません。 ・ 他の余暇支出動向と毎年比較できる。 ・ コースと練習場が区別されている。 という点では貴重です。今後も(1)〜(5)のような他調査結果と相互検証しながらゴルフ産業の現状・将来を議論する必要があります。特に乏しいゴルフ練習場データ 特に信頼できる全国ゴルフ練習場利用者数データがありません。今後さらにゴルフ対象人口の減少が続きます。新規ゴルファーの涵養はゴルフ界の将来を決定します。全国の民間営利ゴルフ練習場がどれだけ存続できるかが、将来のゴルフ人口量に大きな影響を与えます。 <h2>問題はゴルフ界、ゴルフ産業界自助努力データの欠如</h2> 「レジャー白書だけでゴルフ産業経営はできないよ」と訳知りになるのは良いのですが、問題は今回引用したデータにゴルフ界、ゴルフ産業界が汗して自ら(他人以上に)調査したデータが無いことです。(3)利用税コース利用者数はNGKの多大な貢献により得られていますが、一方でゴルフ界、ゴルフ産業界はこぞって「利用税撤廃」を運動しています。利用税が廃止されれば(3)はどうなるのだろうと気をもむのは、筆者だけでしょうか? <h2>2021年ゴルフはヒット商品?</h2> <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2022/02/2201yamagishi_graph3.jpg" alt="" width="398" height="440" class="size-full wp-image-70729" /> グラフ3 最後に「日経MJ2021年ヒット商品番付ゴルフ小結」を、本欄引用データで検証します。関連データの2019年(コロナ禍以前)を100%とする推移を〈グラフ3〉としました。 日経MJが、2021ヒット商品番付ゴルフ小結ランクインの裏付けとしたように、特定サービス産業動態調査のゴルフ場利用者数は2021年106%に増加しています。 一方、特定サービス産業動態調査の練習場利用者数は、126%とゴルフ場以上の急増です。しかも2020年(コロナ1年目)から増加を開始しています。 <img src="https://www.gew.co.jp/wp-content/uploads/2022/02/2201yamagishi_table2.jpg" alt="" width="1033" height="1300" class="size-full wp-image-70732" /> 出典:日本経済新聞2021年12月3日朝刊掲載 気になるのは、より正確な利用税ゴルフ場利用者数が、2020年対象人口以上に減少したことです。減少幅は最近10年間で最大です。 以上3点をゴルフ産業界はどのように理解すべきでしょうか? 筆者はゴルフブーム到来ではなく、コロナ禍での行動規制の結果、制限された消費がゴルフにだけ解放された幸運(棚ぼた需要)と考えています。 「松山プロのマスターズ制覇によるブーム」とは考えられません。対コロナ後はゴルフ対象人口減少による需要減が、鉄壁のように続きます。解放された消費が逆にゴルフ以外に向かう「逆リベンジ不況」も想定しなければなりません。 <hr> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://www.gew.co.jp/magazine">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2022年02月22日