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    2023年1月より、弊社が経営するザ・クラシックゴルフ俱楽部(福岡県)で大型プロジェクトが始まりました。スコットランドのゴルフコースデザイナー、ベンジャミン・ウォレンを起用し、全グリーンとバンカーを改修するのが目的です。その理由は前回詳述しましたので、今回は当プロジェクトのプロセスについて記述したいと思います。 アウトコースの改修 ザ・クラシックGCは27ホール(総面積148万m2)を有するため、2023年の改造初年度はまずアウトの9ホールを閉鎖して改修。18ホール営業となったため、来場者数は前年比20%減でした。 コース改修で最初に協議することはルーティングです。九州の穏やかな丘陵地に理想的な18ホールズを並べるにはルーティング(1番から18番までの流れ)が重要で、これがコースの良し悪しを決定します。 ゴルフ場周辺の美しい景観を見せるには、どこから打たせ、どこに旗を立てるのか。敷地内にある池や川等、天恵を存分に生かすために各ホールをどこに配置するか。ゴルフは歩きを基本とするスポーツなので、プレイヤーが心地よく18ホールを歩けるよう、ホール間のジョイントを短く、すぐに次のホールへ行けることを含めて18ホールの配列を考えます。それはまるで一つの「楽曲」を創作するようです。 優しく穏やかに一日のプレイが始められる1番ホールから、2番3番と続き、心身がフィールドに馴染む4番ホールあたりから徐々に山場を迎えて印象的なホールが現れる。そして7番8番では難易度が高くメモラビリティのある大きなホールを築き、ランチへと向かう9番ホールはペナルティ等を減らし、スコアを崩さず気持ちよくホールアウトしてもらいたい。設計者は土地のポテンシャルを見定めて、完成後にプレイするであろうゴルファーと、心の中で会話をしながら18ホールの絵を描いていきます。当倶楽部ではアウトコースで2~3ホールのルーティング変更を行いました。 ルーティングが決まれば、ホールのレイアウト設計に入ります。ここでの設計者の視線は、遠くの景観に向けられます。つまり、借景をデザインするのです。「この地域のあの山が美しいので、ここにグリーンを置く」というように考えます。 <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/05/2503tanimizu3.jpg" alt="" width="788" height="525" class="size-full wp-image-87761" /> 改修コースの上空より グリーンの位置が決まると、その形状や大きさを検討し、周辺のバンカーのデザインに進んでいきます。前回記述した通り、ゴルフコースの価値はコースバラエティにありますので、グリーンの仕様もホールごとに特徴を出します。当倶楽部では、最大1000m2(18番ホール)のグリーンから最小550m2(2番ホール)までの大きさのほか、大きなアンジュレーションもあればフラットに近いグリーンもあります。形状も実に様々です。 グリーン周りが決まれば、次はFWバンカーの工事に入ります。当倶楽部では2028年に「日本女子オープン」を開催するため、IP(ドライバーの落下地点)を250ydsに設定しました。その上で、遠くの山から徐々に視線をこちらに近づけていき、グリーン周辺のサイドバンカーを見て、それに調和するFWバンカーを造成します。当倶楽部から20km離れた遠方に三郡山地があり、アウト1番ホールではその借景を十分取り入れています。 本プロジェクトでは廣野や横浜、太平洋御殿場等のバンカー改造を行った米国のクイン・トンプソンを中心に全てのバンカーを改修しています。FWバンカーが決まると、ティーイングエリアの位置のデザインに入ります。日本のコースはレディースティーからバックティーまで4つのティーブロックが主流ですが、世界では3ブロックとなっています。 余談ですが、ティーイングエリアは排水対策として表面勾配をつけます。昔はパーシモンウッドを想定して、ティーイングエリア後方に向け1~1・5%の勾配でした。なぜなら、パーシモンウッドは、ティーアップしたボールをダウンブローに打ち、スピン量を増やして球を上げることが基本となるためです(現代のクラブは、アッパーブローに打っていくことが基本)。しかし近代ではクラブの変化と共にスイング理論も変わったことで、ティーイングエリア前方、つまりグリーンにむけて勾配を付けます。 当倶楽部は丘陵コースでありながら、ゴルファーに歩く楽しみを体験してもらうべく、グリーンと次のホールのティーイングエリアを可能な限り近づけました。特に1番ホールは、グリーン周りのコレクションエリアを次のホールまで刈込み、そのままティーイングエリアとすることで我々の想いを表現しています。他のホール間の移動距離も押しなべて短く、無理なく歩ける距離に設計しました。 <h2>インコースの改修</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/05/2503tanimizu2.jpg" alt="" width="788" height="525" class="size-full wp-image-87760" /> ザ・クラシックGC 17番ホール 2024年1月、インコースの改修に着工して、18ホールの楽曲も終盤に差し掛かります。当倶楽部のインコースには大きな天然の池が土地の中心にあり、その池を魅せるべく大掛かりな伐採工事を実施。池や川があれば、その外周をきれいに伐採(掃除)して、沿岸すべてを見せることはゴルフコースの演出として昔からのセオリーです。 伐採の観点で言えば、近代の設計者の多くは「空中のハザード」とされるFW真ん中の木々を決して評価しません。歴史あるスコットランドのリンクスには木々がほとんどないため、日本のコースの木の多さに違和感を覚えるようです。 インコースはトーナメントにドラマと興奮が生まれるよう、18番ホールに向けて徐々に難易度を高め、最終ホールは長めのPAR4(ストロングpar4)としました。最終ホールはクラブハウスとの位置関係も大切で、グリーンの背景にクラブハウスが見え、セカンドショットをハウスに向かって打ってゆく。このような演出に設計者はこだわります。 私は数年前、全英オープン開催コースであるスコットランドのロイヤル・トゥルーンをプレイしましたが、最終18番のグリーンからハウスまでの距離は5mほどだったと記憶しています。その他の海外メジャー開催コースの多くも同様の造りでした。スコットランドのゴルファーは、最終グリーンとハウスが近いほど〝クール〟だと言います。ホールアウトした前の組がお酒を飲みながら後続組のショットを見守る。そんな光景が目に浮かびます。ちなみに当倶楽部の最終ホールからハウスまでの距離は直線20m程であり、今回の改造で可能な限りハウスに近づけて造成しました。 松山英樹プロは今季米ツアー初戦で35アンダーの新記録をマークし、若い女子プロも世界のトップレベルで活躍しています。その姿に憧れる子供たちがクラブを手に取り、ゴルフを始めれば市場活性化につながります。同時に、日本のゴルフ場が世界標準のコースを目指せば競技レベルが高まり、回りまわってゴルフ経済に大きく貢献すると思うのです。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2025年05月25日
    本稿では、弊社ザ・クラシックゴルフ倶楽部(福岡県)が2028年の「日本女子オープン」開催に向けてコースを強化すべく、2年間に及ぶコース改修プロジェクトを実施した裏側をご紹介します。 ザ・クラシックGCは過去、国内メジャー大会を3回開催しています。直近は2020年の日本女子オープンで、九州での同大会開催は32年ぶりのこと。コロナ禍で一般非公開となり、静寂に包まれたコースで大輪の花を咲かせたのはメジャー初優勝となった原英莉花選手でした。  大会終了後、弊社は主催団体の日本ゴルフ協会に、再度大会誘致をしたい旨を伝え、ありがたいことに了承して頂きました。今度は一般公開をして、ギャラリーの歓声に包まれる大会にしたいと念願しています。 前回のこの連載に書きましたが、弊社のメジャー大会誘致はロマンやビジョンという精神論のみならず、経営戦略上の意味合いも大きいと言えます。少子高齢化が進む日本の人口構造を考えれば、特に地方都市のゴルファー減少は自明の理で、福岡も例外ではありません。この状況から脱するには、関東や関西など大商圏のゴルファーを福岡に誘引して、商圏拡大を図る必要がある。メジャー大会の開催は、ザ・クラシックGCの知名度を全国区にするための施策なのです。 選手が口を揃えた20アンダー <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/04/2501tanimizu2.jpg" alt="" width="788" height="591" class="size-full wp-image-87191" /> ザ・クラシックGC No,7 レダンホール 前回開催した2020年の大会で忘れられない光景があります。 トーナメントウイークに入り、注目選手たちが記者のインタビューに応えていました。記者から「優勝スコアはいくつになりそう?」と質問された際、多くの選手が「20アンダー」と口を揃え、当コースの印象についても「日本女子オープンっぽくない」「練習ラウンドをしましたがよく覚えていません」など、我々にすれば、忸怩たる思いを禁じえない言葉が並んだのです。 国を代表するナショナルオープンは、最高難易度のゴルフ場で行うという印象が強いだけに、優勝予想が「20アンダー」とは・・・。原選手の優勝スコアは、予想に4打足りず16アンダーでしたが、ビッグスコアに変わりはありません。 そこで大会終了後の月曜日、我々はコースレイアウトの改善を決意したのです。数か月後、親交のあったスコットランド人のベンジャミン・ウォレンにコース改修の設計を依頼します。マスタープランの策定期間を経て、2023年1月より2年間にわたる大改修に着手。初年度はアウト9ホール、次年度はイン9ホールを改修しました。 若手設計家のベンジャミン・ウォレンとの出会いは、R&Aメンバーの紹介がきっかけでした。彼はスコットランドでも特に美しい港町、ノースベリックに生まれ育った生粋のリンクスゴルファーです。改修に入る前年、私は彼と一緒にロイヤルトゥルーン、ノースベリック・ウエストリンクス、ミュアフィールドやプレストウィックあたりを視察して、多くのことを学びました。 <h2>ゴルフ場のレイアウト評価</h2> ゴルフコースの評価は、3つの概念が重視されると言われます。 <strong>ショットバリュー</strong> ゴルフゲームの基本であるリスク&リワードの思想が反映され、リスク覚悟のショットに成功すると、次のショットで恩恵を受けられる <strong>デザインバラエティ</strong> 距離や形状、ハザードの位置などが変化に富み、多様な戦略が備わっている <strong>メモラビリティ</strong> ホールごとに見た目の個性があり、周辺の景色とコースが一体化してゴルファーの記憶に残る この3つを満たすため、本改修では全てのグリーンとバンカーを取り壊して1から造り直しました。ランドスケープを整えるためのコース外周の木々の伐採は、今も継続中。張芝の延べ面積は約15万m3に及び、芝生の仕入から張芝、養生までの大部分を自社で行ないました。二度とないであろう大規模改修は、終わりの見えない作業で途方に暮れ、コース管理スタッフと共に地を這って張芝に従事したことは貴重な経験です。 多額なコストも掛かりました。国内における改修事業の相場は、バンカーで3億〜4億円、バンカー及びグリーンで6億〜8億円と言われます。海辺に近い砂ベースのコースの造成は、排水管を入れなくて済むので安く仕上がりますが、著名設計家への依頼は設計料だけで1億円近く、さらに彼らは海外からシェイパーチームを連れてくるため旅費や欧米基準の日当でコストは跳ね上がります。弊社のプロジェクトに集まったシェイパーは5名で、一人当たり日当は650ドル(9万7500円程度)。日本人のフリーシェイパーの3倍です。優れた才能には高い報酬を惜しまないという、日欧の文化の違いも実感しました。 <h2>一生涯ゴルフを楽しむ</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/04/2501tanimizu1.jpg" alt="" width="788" height="525" class="size-full wp-image-87190" /> ベンジャミン・ウォレンとその仲間たち 改修にはクラシック理論を取り入れました。この理論は、ゴルフコース設計の原点とも言える戦略性に優れた8つのレイアウトを指します。ノースベリック・ウエストリンクス15番par3の『レダンホール』、セントアンドリュースオールドコース17番par4の『ロードホール』が代表的。スコットランドで学んだ設計家たち(C・B・マクドナルド他)が米国に向かい、世界トップ100に入るコースを沢山造りましたが、彼らはこのクラシック理論を基盤としながら戦略性のある美しいコースを後世に残しています。 ザ・クラシックGCのアウト7番のpar3は『レダンホール』を採用し、会員から評価を得ています。この『レダン』は、グリーン周りがバンカーで囲まれ、ティーイングエリアに対してグリーンが斜め45度を向いている。グリーン右サイドは右から左に大きく傾斜し、左サイドは手前から奥に傾斜しています。 これらの改修で次回の日本女子オープンに臨み、大商圏からの誘客を目指しますが、別の視点では、弊社が考えるゴルフの理想を追求することも大きなテーマ。それは、一度ゴルフを始めた人を、死ぬまでゴルフに夢中にさせることです。 最近、米国の知人に、アメリカ人ゴルファーの関心事を尋ねたら、こんな答えが返ってきました。 「ポッドキャストでゴルフコース設計者の話を聞く人が増えている」 ポッドキャストはインターネットラジオです。米国の熱心なゴルファーはクラブセッティングやアマ競技を一通り楽しんだ後、コースレイアウトの歴史や設計家についての研究を始めており、ポッドキャストで情報を得ているそうです。 ゴルフ場開発が止まった日本では、上田治氏や井上誠一氏に続く次世代設計家の輩出が目立ちませんが、世界ではギル・ハンスやトム・ドーク、カイ・ゴルビーなどの気鋭設計家が活躍中。彼らについて学ぶことは、ゴルフ人生を文化的で豊かなものにし、成熟したゴルファーを生涯夢中にさせることができる。私はそのように考えているのです。 ザ・クラシックGCのバンカーを担当したクイン・トンプソンのポッドキャストはこちらから。 <a href="https://podcasts.apple.com/jp/podcast/the-tie/id1583596139?i=1000551517712" rel="noopener noreferrer" target="_blank">Quinn Thompson-Designer and Craftsman of Bunkers</a> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2025/04/2501tanimizu3.jpg" alt="" width="788" height="300" class="size-full wp-image-87192" /> ザ・クラシックGCのバンカーを担当したクイン・トンプソンのポッドキャスト特集 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2025年04月20日
    連載の初回となった9月号では、弊社の成り立ちを中心に執筆しましたが、本号では経営戦略の基本となる考え方を述べてまいります。 弊社は、福岡(ザ・クラシックGC、西日本CC)と佐賀(佐賀クラシックGC)で計3つのゴルフ場を経営しております。本社を置く福岡県は、福岡市を筆頭に人口が増え続けている街がいくつかあります。その要因は大学等の教育機関の充実、空港や新幹線駅へのアクセスの良さ、天神ビックバンや博多コネクテッドの二大プロジェクトの推進等で九州他県からの流入人口が多いことが挙げられます。 ザ・クラシックゴルフ俱楽部からは車で40分(距離30km)で中心地の福岡市中央区天神に辿り着きます。この街は近年、リッツカールトン福岡の開業に始まり、国内最大規模のシャネルの出店や、東京に次いでグーグルが支店設置を発表する等、将来性を感じさせる事業が次々と展開されています。 しかし、福岡県全体としては、2010年から人口減少傾向に入り、2020年は509万人、2030年には495万人と推測され、同年の65歳以上割合は30.4%(日本の地域別将来推計人口2018年より)と推計されています。このような状況を受け、近年弊社は地元やその近隣の「小商圏」のシェア獲得に加え、関東や関西等の「大商圏」から顧客誘引を図ることが経営課題となっています。 小商圏対応と大商圏対応 ゴルフ場の売上高は端的に、 「商圏内ゴルフ人口×獲得シェア×一人当たり消費金額」 で表せます。そこで、競合対策を打ってシェア獲得に励み、ショップやレストランでもう一品の提案をして客単価アップに努めますが、そもそもの母数となる目の前のゴルフ人口が減れば売上の維持・拡大は見込めません。従来は小商圏対応としてメンバーやコンペ幹事など、地元のお客様への密着軸(個人名での呼びかけやハレの日のお祝いなど)を磨き、売上の基盤とすることで十分でしたが、2015年前後より、減少する小商圏内人口に危機感を覚え、関東や関西などの大商圏からゴルファーを誘引し、自然減する客数を補う必要性を感じてきました。 このような単純な思考により、大商圏対応として、プロのトーナメントを開催し、全国的な知名度と価値を上げる運営に舵を切り始め、目安として、小商圏の売上を8割・大商圏の売上を2割に設定しています。大商圏優先に走りすぎると、コロナや災害時で来場者が激減するため、このような配分を考えています。 <h2>日本シニアOPと日本女子OP</h2> 福岡には、客単価4万円のにぎり鮨を提供する名店がいくつかあります。そのカウンターに並ぶのは地元の顧客に加えて東京や大阪の富裕層です。その一方で、大衆食堂に目を向ければ、地元の顧客が主な客層となります。つまり、単価が取れる、換言すれば付加価値のあるお店にならなければ、商圏拡大は見込めないということです。 弊社のザ・クラシックGCでは、経営課題として商圏拡大に取り組んでおり、その戦術として、2017年に日本シニアオープン、2020年に日本女子オープンを誘致して、「メジャートーナメントコース」という肩書きを全国のゴルファーに訴求しました。写真映えするような海も見えず、歴史が浅く、日本のトップ100選にも入っていないコースでは、この方法しか思いつかなかったというのが正直なところです。しかし、トーナメント誘致後の2018年頃から現在まで、毎年2000万~3000万円の売上伸長があり、一定の成果が確認できます。 全国のお客様を誘引する商圏拡大の手段としては、有料広告を打ったり、代理店と提携したりと、様々な取り組みが考えられますが、弊社は広告予算を設けていないため、トーナメントのようなニュースバリューのあるコンテンツをつくり、結果として広く伝わるオーガニックな宣伝広報を心掛けています。 <h2>入会動機の最大化と客層の最大化</h2> 先ほど、ゴルフ場の売上高は「商圏内ゴルフ人口×獲得シェア×一人当たり消費金額」で表されると書きましたが、弊社にはもうひとつ、参考にしている式があり、それは、 「入会動機の最大化×客層の最大化」 です。弊社はこれまで、年商2億円程度の小さなコースから10億円に達する大型コースを経営してきましたが、その「年商差」はこの式で説明できます。年商が小さなコースは入会動機が少なく・客層が狭い。年商が大きなコースは、入会動機が多様にあり・客層も広い。簡単に例を述べれば、 年商2億円のコースは、 <strong>入会動機</strong><br /> 1)メンバーフィで安くプレイできる <strong>客層</strong> 1)初心者 一方で年商10億円のコースは、 <strong>入会動機</strong> 1)メンバーフィで安くプレイできる 2)館内設備に鉄板焼やサウナがあり充実している 3)国内提携コースがあり、ゴルフ旅が充実する 4)トーナメントを開催しており、ステータスを感じられる <strong>客層</strong> 1)初心者 2)中級者 3)上級者(トップアマ) 4)エリートプロゴルファー となります。下に三角形の図を載せましたが、ゴルフ場の売上を伸ばすためには、この三角形を大きくすること(底辺:入会動機×高さ:客層)だと考えています。【底辺拡大】として、ゴルフを安くプレイする以外にいかに入会メリットを提示できるか。【高さ】として、初心者もなんとか挑戦することができ、セッティングに応じてエリートプロゴルファーも満足できるコースの汎用性を、いかに高めるかが弊社のもう一つの経営課題となります。 ハザードが多すぎる、全ホール砲台でグリーンが小さくパーオンできない等、難易度を高めすぎると「もう二度と来ない」と言われてしまうので、中途半端と評価されてしまうこともありますが、商売としてはコースの汎用性はとても大切だと考えています。 本稿に記したことの実践として、2028年の日本女子オープン誘致や、スコットランドの造成家による2年間のコース改修、他のグループコースにおいてもプロツアーのホストに立候補しております。九州という中央から離れた街で、このような挑戦をすることはとても難しいと感じていますが、挑戦は最大の防御という言葉を胸に、ゴルフ事業に邁進してまいります。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2025年01月05日
    クラシックマネジメントグループ株式会社で取締役副社長兼総支配人を務める谷水大祐と申します。弊社は九州を中心にザ・クラシックゴルフ俱楽部、佐賀クラシックゴルフ倶楽部、西日本カントリークラブを運営しており、福岡市内ではトラックマンを装備したインドアゴルフスクール&レンジ「Golf Days」の運営等を行う独立系の中小法人です。 関連会社にはスポーツタレントのエージェント・マネジメント業務を行うCMGスポーツマーケティング株式会社があり、代表取締役を務めております。清水大成プロ、後藤未有プロ、菅楓華プロ、リハナプロらトップアスリートの後方支援が主業務となります。 実は、前職でコンサルティングファームに在籍していた2017年に、本誌で「異業種から学ぶゴルフ界再考術」というタイトルで執筆経験があります。机上でゴルフ界を考えていた時代です。 現在はゴルフ場の現場で飲食の調理以外、ほぼすべての業務に従事して四苦八苦の日々。自然相手のゴルフ場経営は思い通りにならないのが常であり、当連載でも机上論ではなく、現場に基づく挑戦記を執筆してまいります。 タイトルの「上を向いて歩こう」は、ゴルフ場の価値を如何に高めるかを意識したものです。弊社のザ・クラシックGCは2020年「日本女子オープン」を開催し、2028年も開催予定。佐賀クラシックGCはJLPGA認定コースとなりますが、これらも価値向上の一環にほかなりません。 <h2>当社の始まり</h2> <img src="https://cms-backend-gew.com/wp-content/uploads/2024/12/202409tanimizu2.jpg" alt="" width="1000" height="612" class="aligncenter size-full wp-image-84347" /> 当社は、私の曽祖父である谷水信夫が、1961年に京都と滋賀の境の山頂で小さなゴルフ場を開発したことに始まります。 信夫は1912年和歌山に生まれ、戦前は大阪で小さな鉄工所を営み、その後空襲被害の少なかった京都に移りました。京都ではお米のポン菓子の製造機業を展開し、当時珍しかった割賦販売で、関西では8割近いシェアを獲得したとの記録があります。食料危機の改善を見越した信夫は、娯楽の時代を予見して、映画館や旅館業へと事業転換しています。 1957年、霞ヶ関カンツリー俱楽部で開催されたカナダカップを信夫は現地で観戦します。中村寅吉・小野光一組がサム・スニードら世界の名手を抑えて優勝した瞬間、ゴルフブームの到来を予感して、帰りの電車でゴルフ場の開発を決意したそうです。 1961年、滋賀県の山頂で県内2例目のゴルフコースとして皇子山カントリークラブ(設計 谷水信夫)を開場。ゴルフ場としては土地が狭く、開発工事を引き受けてくれる業者もおらず、大学でゴルフをしていた二代目谷水雄三との二人三脚でゴルフ場を設計しました。苦労して資金を調達し、信夫の個人資金も投じて、18ホール・5200ヤード弱のコースを造り上げました。(※2021年皇子山CCは他社へ譲渡) <h2>関西から九州の地へ</h2> その後、銀行から広大な土地の情報を聞き付け、九州の開発に着手。1975年、福岡県北部に西日本CC(設計 ゲーリー・プレーヤー)を開場。1990年には同じく福岡県北部の丘陵地にザ・クラシックGC(設計 鈴木正一/改造 ベンジャミン・ウォレン)を、6年後には姉妹ブランドの佐賀クラシックGC(設計 中村享治)を開場します。いずれも「接待型」がコンセプトで、サービスや食事、館内の設えにこだわりました。 社内に「感動創造課」を設置したところに、弊社の経営方針の一端が表れています。お客様のおもてなしを第一に考える専門部署で、リッツカールトンのゴールドスタンダードに憧れを抱きながら、お客様の心に残るコミュニケーションに注力するのが同課の役割。 近隣には古賀GCや門司GC等、著名設計者による名門があります。歴史があり、確固たる会員組織の団結があり、ゴルフリテラシーも高い。一方で参入する立場の弊社としては、当時の名門が着目しなかったホテルのようなきめ細かいサービスで対抗する、カウンターポジションを目指したのです。 1991年にバブルが崩壊し、1週間に1件ゴルフ場が倒産する時代に突入します。弊社も会員権の償還対応で経営難に陥りました。幸い、事業清算をすることなく代をつないできましたが、ゴルフ業界を取り巻く環境は楽ではありません。人口減少やクラブハウスの老朽化、多様なスポーツの出現等、ゴルフ場業態の好転要素はなかなか見当たりません。 <h2>垂直軸が「背骨」になる</h2> このような状況下、依存する親会社もなく、ゴルフ場単体で商いをしている弊社は、戦略軸の見直しを真剣に行っています。多くの同業者が様々な策を講じていると思いますが、弊社の場合はゴルフ場としての「本筋」(垂直軸)を伸ばすことにこだわっています。 ザ・クラシックGCではメジャー大会の誘致や海外設計家によるコース改修等、本筋を重視。私は前職のコンサル時代に菓子業界を中心に歩きましたが、本筋重視は当時の経験とも重なります。 菓子業の「垂直軸」は美味しいお菓子をつくることです。「水平軸」にはイベントを通じた地域交流や感動接客もありますが、そもそもお菓子がマズければ成果は期待できません。背骨があるから肋骨が機能するという考え方です。 ゴルフ場も同じではないでしょうか。サービスを磨き、交流イベントを行うことも非常に大事だと思いますが、本筋であるゴルフコースを磨かなければ、その他の努力は報われにくいと考えられます。業界のリーダーではない弊社の立場で、このようなことを書くのは気がひけますが、激動のゴルフ場市場を60年以上生きてきた中で肝に銘じていることです。 連載では、小さな会社が女子のメジャー大会誘致に挑戦した戦略的経緯や、スコットランドのデザイン会社と2年間のコース改修プロジェクトを行った体験記等を共有させて頂きます。ゴルフ産業がゴルファーを魅了しつづけ、異業種に負けない市場となることを皆様と目指してまいります。 <hr /> この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年9月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 <a href="https://bt3.jp/url/ts/g/z9lenol2">月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら</a>
    (公開)2024年12月15日