ブリヂストンが開発した「3球フィッティング」 その内容を動画で詳細レポート

たった3球打つだけで、約2万4000通りの組み合わせから最適なスペックを弾き出すという。
クラブのフィッティングといえば、何種類ものクラブを数十発も打ち、体力の消耗で安定したスイングが難しくなることもあったが、そんな心配はご無用というのがこのシステム。
今年7月に開業した「ブリヂストンゴルフガーデン東京」(東京・丸の内)で体験できる。省エネ時代の「最速フィッティング」、その全貌を紹介しよう。
ブリヂストンスポーツは東京、横浜、名古屋、大阪、福岡の5箇所にフィッティング施設の「ブリヂストン・ゴルファーズストア」を運営しており、多くのスイングデータを蓄積してきた。
そのデータと現代のビッグデータ解析を絡ませたのが、3球の試打で2万4000通りのヘッドとシャフトの組み合わせから最適スペックを導く「スイングシミュレーションシステム」だ。
親会社のブリヂストン総合研究所と5年の歳月を掛けて共同開発したという。
弾道計測器の「トラックマン」と、スイング中のシャフト挙動を映像で確認できる「Mトレーサー」を使用して、スイングデータを取得。これを基に、先述したシステムが仮想試打を行って、弾道予測をしてくれる。
その手順を動画にまとめたので、まずは視聴してもらいたい。
というわけで、ゴルファーの①スイング軌道差、②シャフトのしなり戻りのタイミング、③フェースローテーション、④インパクト直前のフェース角、⑤軌道差を測り、同社公認のマスターフィッターが「熟練の目」で最適なモデルを判断してくれる。
特筆されるのは、システムが仮想試打した60パターンのヘッド×シャフトの結果が画面に表示されると、ヘッドスピード、初速、バックスピン量、サイドスピン量、キャリー、トータル飛距離が一目瞭然になることだ。
つまり、ゴルファーは瞬時に丸裸となる。
その際、開発者の石川達也氏(基礎技術開発部)によれば、最新技術とヒトの融合がもっとも大事なのだという。
「我々開発陣はゴルフの腕に自信がありませんから、日々、現場のマスターフィッターとTV電話で会議をしています。
現場で膨大な数のゴルファーと会話し、フィッティングを重ねてきたマスターフィッターの意見は何より重要。このシステムは、彼らのリアルな声を反映させることが肝になるのです」
最後は人間が判断する
このような話は同社に限ったものではない。
現在、フィッティング施設としては国内最先端とみられる「トゥルースペックゴルフ」(東京・六本木)でフィッティングを行う服部大哲氏も同じ意見だ。
同社はクラブと身体にモーションキャプチャーを付け、クラブの挙動を360度、1㎜単位で計測するが、
「最先端の技術は、ゴルファーの特性をデータ的に可視化するだけなので、大事なのはヒトであるフィッターがデータをどのように判断するかです。
身体にセンサーを付けた時、関節の動きが細かく見えすぎるので、データの料理法はフィッター次第といえるでしょう」
「料理法」は、事前にゴルファーと話し合い、悩みや目指すゴルフスタイルなどを熟知することによって決まる。つまり、最新のフィッティング術は、ヒトとITをどれだけ高いレベルで融合できるかがカギになる。
クラブ開発はこれまで、高反発ヘッドや長尺シャフトなど、物性としての飛距離性能が研究されてきた。
ところが、ITの進歩によってスイングとクラブの相性が即座にわかるようになり、「吊るし」と呼ばれる完成品の販売から、パーツを自在に組み合わせるカスタマイズが市民権を得始めた。
その際に不可欠なのがフィッティング。
フィッティングワールドがどこまで進化するか、興味津々。