キャロウェイゴルフは先頃、都内渋谷のイベントホールで2016年度新製品&石川遼プロとのボール使用契約に関する記者発表会を開催した。記者100名ほどを集めた発表会では、ボーイング社とのパートナーシップで空力特性を向上したというメタルウッドの新製品『XR16シリーズ』も紹介されたが、最も力を入れた印象が強かったのが、やはりボールだ。
ボールは市場で一定の評価を得れば、安定した売上が毎年見込める。浮き沈みの激しいクラブビジネスよりもリスクが少ないといわれる。よって、どのメーカーにとってもボール事業で数字が欲しいというのが本音だろう。ただ、生産設備の確保や特許を含めた開発力が重要なアイテムだけに、どこでもできるというわけではない。
キャロウェイも以前からボール事業に注力してきたが、昨年発売した『クロムソフト』が市場で評価され、かなりの手応えをつかんだという。そこで一気呵成にボールマーケットを攻め込むという販売戦略を本格化、石川プロの契約に至ったというのが背景だ。

数字的には現在10%前後と推察されるマーケットシェアを今期中に15%前後まで引き上げることが目標(前年比150%)で、長期的には「アメリカのブランドにおけるトップシェア」を目指すという。強敵の『タイトリスト プロV1』を抜くのが至上命題とのこと。
しかし、先述した通り、ボールは開発力が生命線。現状よりも明らかに優れた製品でなければ、プロは絶対に替えない。事実、石川プロも、「ボールとウエッジには、強いこだわりがある」と語り、自分が本当に納得しなければ、ボールの変更はありえないというほどだ。
その石川プロに、「感動した」と言わせたのが、3月4日から発売される『クロムツアー』。このモデルは、2月11日に上市される『クロムソフト』(前作の3ピース構造から4ピースに改良されて飛距離とスピン性能が向上したというニューモデル、両モデルともにオープンプライス)のツアータイプという位置づけ。キャロウェイも、「トータルパフォーマンスに優れ、全てが高次元の最高峰ツアー系ウレタンボール」と自信を見せる新製品だ。
「正直、ボールの性能評価はクラブ14本でテストしているので難しいですね。例えば、番手によって求めるスピン量が違うなど、一つのカテゴリーがよくても、他のカテゴリーでは理想と異なることもあるわけです。その当たりを昨年、一年間かけてキャロウェイさんと試行錯誤してきましたが、今回遂に全ての面で満足できるボールが出来上がりました。私のこだわりを形にしてくれたキャロウェイさんのスタッフには、本当に感謝しています」(石川プロ)
石川プロによれば、ドライバーの直進性を伸ばして飛距離アップしつつ、アイアンの飛距離は変えたくないなど、二律背反ともいえる要素がツアープロには求められるというが、それを叶えたのが『クロムツアー』とのこと。「このボールは、自分が打ちたいショットを分かっているのではないか」と脱帽するほどの実力があると惚れ込む。あとは、「本当に自分の技術だけ」と高い信頼を寄せているのだ。
キャロウェイは今後、石川プロをボールのスポークスマンに据え、様々なPR戦略でボール事業の強化を図っていくが、果たして、その勢いがボール市場の勢力図を大きく変えるのか。
「キャロウェイのボールには、勢いを感じますね。今まではアベレージ向けのボリュームゾーンでは人気がありましたが、アスリート向けの存在感は薄かった。それが昨年発売した『クロムソフト』でアスリート系を好む新規ユーザーも取り込み始めています。石川プロのユーザーへの吸引力も加味すれば、今年は伸ばしそうですね」(ヴィクトリア営業本部ゴルフグループの竹中穂高氏)
専門量販店もその勢いを感じている。キャロウェイのボール事業は、今年の大きなトピックスになることは間違いなさそうだ。