マイカスタム第2回  メーカー発信ではない性能とバランス軽視の組み合わせ

マイカスタム第2回  メーカー発信ではない性能とバランス軽視の組み合わせ
東京都世田谷区のゴルフステージ成城といえば、25年ほど前に大手ナショナルブランド(NB)の特約店としてスタートし、同時に東京都初の『エポン』特約店として始まった老舗。15年前に地クラブの商いに移行した都内の有力店だ。同店では最近、吉田朋広店長独自の見立てで、ウエッジでのダフリトップが止まった例があるという。それが鍛造ヘッドとカタログにはカウンターバランスという表記のないのシャフトだ。

バランスにこだわるゴルファー それしか基準がなかった!

ゴルフステージ成城の吉田店長が開口一番、業界の習慣について警戒心を露わにする。 「クラブのバランスにこだわりすぎるゴルファーが多く、それにとらわれ過ぎてゴルフが上手くいっていないゴルファーは多いです」 クラブバランス……。ゴルファーがスイングする際のクラブの振り心地を数値化したものだ。それにゴルファーがこだわりすぎて、ゴルフの足かせになっているという。 「大手メーカーのカタログを見ればわかりますが、ほとんどが男性用は Dバランス、女性用はCバランス。ウエッジはD5だとか、それがゴルファーの常識になってしまっています。もちろん、他に基準がなかった時代からの習慣でしょうが、昔と比べれば、アイアンひとつとっても高重心から低重心に変わっているし、ネックも短くなっています。だから、バランスだけにこだわるのは危険なんです」 総重量が同じクラブでもヘッド側にバランスポイントがあれば、体より遠くに重心があるからクラブを重く感じて、振り辛くなる。逆も然りで、バランスが軽いクラブは非力な女性用というのが定番。そのような警戒心と吉田店長の自由な発想が、ゴルファーの悩みを解決している。今回の目から鱗のマッチングは「鍛造ウエッジ」と「棒みたいなカーボンシャフト」だ。

ウエッジもバランス重めが常識!? 棒みたいなシャフトでダフリ軽減

吉田店長が、特にウエッジに対して言及する。 「売れ筋の大手NBのウエッジは、ほとんどがDバランス以上です。Eバランスも珍しくない。そのデメリットはヘッドが落ちやすく、ボールより手前に入ることが多い。つまりダフリが起きるということもそうですが、バランスの重いクラブに慣れ過ぎて、そのようなスイングになってしまったということもあります」 知らないうちに、ウエッジでダフる症状のゴルファーは多い。同店の顧客で50歳代男性は、ラウンド頻度月2回、HSは46m/sと速く、スコアは80台。スインガータイプでアウトサイド・イン。ドライバーのクラブバランスは重めのD3。 そこで敢えて、標準的な鍛造のウエッジヘッドに棒のようなカーボンシャフトの組み合わせを推奨した。 ヘッドはプロトコンセプトの『フォージド・ウエッジ』。打感の良さが際立つメーカー。これに、日本でも密かに人気のあるLAゴルフの『Lシリーズ120ウエッジWV』というシャフト。このLAゴルフは、HSの速い米PGAツアープロに人気というだけあって、重量も120g台と重く余計な挙動が少ない。振動数だけみても345cpmと少し高めで、簡単にいえば棒のようなシャフトだ。 その組み合わせで何が起きるのか? ヘッドスペック

カタログ表記にない手元重心 コックがほどけずダフリが止まる

吉田店長がカタログには記載がないと前置きして、 「実は『120WV』はシャフトのバランスポイントが手元にあるんです。カウンターバランスに感じるんですよ。それによってクラブ全体のバランスが軽くなり、『フォージド・ウエッジ』との相乗効果で、打感を感じやすく、ヘッドの操作性が上がります。なにより、コックがほどけないから、早いタイミングでヘッドが落ちて手前に入ってダフることがなくなります」 これは、吉田店長ならではの見立てだ。そして、吉田店長が語気を強める。 「今回のセッティングは市場のウエッジと異なり、バランスが軽いです。今回のウエッジはバランスがC8で、その効果も大きいと思います。先ほどから話していますが、習慣化しているクラブバランスの考え方にとらわれないことで、新たなセッティングが見つかるんです」 業界でひとつの基準となっているクラブバランス。それにこだわることで、ゴルフが上手くいかないゴルファーは多い。それを逆手にとった組み合わせは、工房ならではの技。特にLAゴルフの『120WV』は、メーカー発信ではない性能を見つけ、ゴルファーの悩みを解決していく。目から鱗のマッチングは、メーカーの情報だけではなく、クラフトマンの視点の置き方によって生まれていた。 シャフトスペック

メーカー担当者コメント

輸入代理店 K.E.Iプランニング 竹渕 幸夫氏 「『120WV』は振動を減衰する素材を採用していて、余計なフィーリングがないシャフトです。それゆえ、プロの印象は打感が良いというのがほとんどですが、カウンターバランスというのは聞いたことがありませんね。新たな発見で、そういう効果もあるかもしれませんね(笑)」

ゴルフステージ成城とは

〒157-0074 東京都世田谷区大蔵2-5-1オークヒル一階 ☎03-3749-0171 https://www.golfstageseijyo.com/ この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。