マイカスタム第4回 ポケキャビに競技者向けシャフト ヘッドを遅らせてつかまえない

マイカスタム第4回 ポケキャビに競技者向けシャフト ヘッドを遅らせてつかまえない
ゴルファーズ・ガレージ・サムライといえば以前はユーチューブでチョンマゲのカツラで試打インプレッションを行っていた工房。中古店から始まり、いまでは埼玉県屈指の工房としてゴルファーの信頼を獲得している。そのクラフトマンが取締役の枝松和健氏。今回の目からの鱗のマッチング「マイカスタム」は、スライサーが球をつかまえすぎて、よりフックになることを抑制したセッティング。その意外な組み合わせが興味深い。

力自慢が硬いシャフトで身体が開く 小さいヘッドに短いシャフト

サムライの常連には、建築関係の力自慢ゴルファーが多く、軟らかいシャフトだとスライスするが、硬いシャフトでも振り遅れてスライス・・・。どっちにしても、スライスに悩むゴルファーが多いという。原因は少々複雑だ。 クラブが長いと、しなってくれると思い込んで身体が開く。シャフトの先端がインパクトに間に合わず、かつ、しなりを利用できず打ちにいってしまう。 これを解決するために、インパクトまでのタイミングが短い短尺で、返りやすい小ぶりのヘッドを組み合わせる。それによってスライスを抑制する。この考え方は一般的なのだという。 枝松さん自身、逆の症状に悩まされた経験があるという。それはインサイドアウトのスイングで球を右に打ち出し、つかまえるとドローではなくフックが出る。その時に考えた解決策が、今回紹介する「マイカスタム」のセッティング。『ロッディオ』のポケットキャビティのヘッドに、コンポジットテクノの競技者向けのシャフトを合わせる。これにより何が起きたのか?

スライサーなのにつかまって左へ ヘッドを遅らせる組み合わせ

今回の被験者ゴルファーは、42歳でHS45m/s前後。ゴルフ歴10年で、週1回ラウンドする。少しアウトサイドインのスイングで、入射角が若干強く、ドライバーでは右に飛び出してスライスするが、フェアウェイの範囲にボールが収まるから問題なし。ただ、短いアイアンは引っかかってスコアにならない。 そこでチョイスしたのが、ロッディオの『PCフォージドアイアン』だ。ポケットキャビティのヘッドだが、ヘッド重量が少し重めの270.5g(#7)。打感が良く、それでいて易しいヘッド。 このヘッドに合わせたシャフトがコンポジットテクノの競技者向け『ファイアーエクスプレスMS-I 100』。アスリートゴルファーが理想とするアイアンシャフトという触れ込みで、重量も7番で 102gとなっている。 この組み合わせによって、ヘッドでボールをつかまえる試みだが、ヘッドとシャフトが重い仕様。スイングのトップからダウンにかけて、ヘッドを身体の右側に落とし、さらに、総重量でクラブを身体の右側に落とす。その結果、ヘッドだけではなく、クラブが振り遅れて、スイングがインサイドからインパクトを向かえるようになるという。 ヘッドスペック

打ち出しが右に出てつかまる スライサーがストレートになる

もともとロッディオの『PCフォージドアイアン』は、打感の良さを求めながら、スリットが深くてMOIも大きく、ソールも幅広なアベレージ向けヘッド。一方で『ファイアーエクスプレスMS-I 100』は、重量級のカーボンシャフトで、手元が重く感じる。この組み合わせは、アベレージ向けヘッドと競技者向けシャフトの組み合わせになり、通常なら軟らかく軽いシャフトを入れて、楽にゴルフをさせるヘッドだ。 その常識に反して、ヘッドとクラブをインサイドからインパクトに向かわせ、かつ、球をつかまえるためにヘッドとクラブを落とすことで、インパクトを遅らせ、スイング軌道とつかまり具合を調整したという。 これによって、左に打ち出して、つかまりすぎて左に行くゴルファーが、正常なロフトでインパクトを向かえることによりストレートの弾道になった。 それにしても、ヘッドやクラブを振り遅らせてスクエアなインパクトを向かえることは、「振り遅れ」を良しとしない常識のフィッティングでは考えにくい。これも特殊なケースと言えるのだろうが、ゴルファーにとっては、大きな弾道の変化になる。逆転の発想が「マイカスタム」だということだろう。 シャフトスペック

メーカー担当者コメント

コンポジットテクノ 中山豊昭氏 「パワーがあるからと言って重量級のシャフトが使いこなせるわけではないので、やさしいヘッドに『MS-I 100 』を装着するケースもあると思います。ただ、量販店に並んでいるナショナルブランドではあまりないセッティングですから、これぞカスタムといったセッティングだと思いますね」

ゴルファーズ・ガレージ・サムライとは

〒351-0015 埼玉県朝霞市幸町2-5-23 TEL 048-423-7750/ FAX 048-423-7751 http://samurai-golf.net/ この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年9月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。