スタジオCGAは東京都内の有力工房で、多くのプロやアマゴルファーが集う。山崎康寛代表が2006年に開業して、2021年6月には同じ東京都練馬区内に移転、室内練習場を備えた工房としてリニューアルした。練習して、レッスンを受けて、クラブの面倒を見てもらえる工房だ。今回の「マイカスタム」はHS50m/s以上ながら、ドライバーだけ球筋が定まらない男性ゴルファー。中上級者向けのヘッドに、カットすると40g台の軽柔シャフトを提案した。
ユーチューブの悪影響 振れないのにハードスペック
多くの工房と同じように、山﨑氏も集客にSNSを利用するため、新規ゴルファーの来店も多い。そして、彼らの多くがユーチューブの影響でハードスペックのクラブを使っているという。
「とあるチャンネルを見た人が多いですね。ギア好きのゴルファーで、そのままユーチューブを信用して、出演者が使っているハードスペックのクラブと同じスペックを使っている人が多い」
具体的には、
「出演者はハードスペックのクラブを振りこなせます。プロ向けのヘッドにPGAツアーでもハードスペックと言われるシャフトの組み合わせです。クラブ全体の重量は問題ない場合が多いですが、シャフトのフレックスが硬すぎる。振り切れないし、シャフトをしならせることができない状態のゴルファーが多い」
コロナ過の用品市場の低迷で、ユーチューバーを用品メーカーが多用するなど、一時期は多くのメーカーがSNSを中心としたPRに切り替えた。その一つがユーチューブ。その悪影響があるという。
そんなゴルファーが多い中、今回の登場人物は40代男性で、HSは50m/s以上。スコアも70台のアスリートだが、ドライバーだけ球筋が定まらない。そこに中上級者向けのミステリー『CF455ツアー』とFSPの軽柔シャフト『MX-V BRN』という新商品。
『CF455ツアー』は大慣性モーメントとバランスの良い重心設計により、安定した方向性と圧倒的な飛距離を達成したヘッド。一方の『MX―V BRN』は軽量で低振動数ながら、ボロンと5軸カーボンの強いコシが当たり負けを防ぎ、ミスに強くボールを弾き飛ばしてくれるという触れ込みだ。この組み合わせで、一体どうなるのか?
硬いシャフトはトゥダウンしづらくヒールヒットになりやすい
今回の登場人物は40代男性でハードヒッター。HSも50m/s以上だが、ドライバーが苦手。日本人ゴルファーにありがちだが、例にもれずハードスペックのシャフトを使っている。
「硬いシャフトは、しならせることができにくい、ねじれをうまく使えないという点があります。スイング中はクラブの重量による遠心力で前方に引っ張られるので、トゥダウンしにくい硬いシャフトだと、フェースセンターで構えていても、インパクト時にはヒールに当たってしまう。しならせられない、ねじれを使えない場合、それが硬いシャフトのメリットなんです」
一方で、軽くて軟らかいシャフトは、スイング中のヘッドの位置を感じやすい。最初はタイミングを合わせるのが難しいが、しなりやねじれが適度にあって、トゥダウンしやすく、インパクトでセンターをとらえやすい。もうひとつある。
「硬いシャフトはしなりづらいので、手で振ろうとします。ダウンスイング時のタメもできにくく、結果的にしなりを使えず、ヘッドも走らないですね」
山﨑氏自身、頚椎ヘルニアを患い、硬いシャフトが使えない。HSが低速化した時に、軽く軟らかいシャフトをテストしたという。
「結果、今回のケースと同じで、HSが速くなりました」
ヘッドスペック
カット後40g台のシャフトは普通なら競技者には提案しません
とはいえ、『MX-V BRN』はカットすれば40g台のシャフト。さらに振動数もクラブにして209cpm。それだけを見れば、通常なら競技ゴルファーに推奨しない。ただ、このシャフトは5軸カーボンとボロンで先端強度を高めたモデル。軽くて柔らかいのに当たり負けもせず、軽量感もあまり感じない。
「今回のゴルファーはミート率も上がり、HSも以前よりも増しました。球筋も安定しましたね。なので、このセッティングはひとつのひな型になりそうです」
クラブを軽く感じない理由も明確だ。
「軽くてもシャフトがしなれば、インパクトでトゥダウンを起こします。その結果、ヘッドは地面方向に垂れますから、ヘッドの重心がシャフト軸線から離れます。だから、スイング中にクラブを軽く感じないんです」
その意味では、山﨑氏は「軽硬」シャフトもあまり推奨しない。
「『重柔』『軽柔』が最近はオススメです」
HS50m/s以上のゴルファーに40g台の軽柔シャフトと中上級者向けヘッド。工房ならではの知恵が結集した組み合わせと言えるだろう。
シャフトスペック
メーカー担当者コメント
和宏エンタープライズ 足立昌也氏
『CF455ツアー』はつかまり過ぎない低スピンヘッドですが、シャフトはFSPさんの『MX-V』をベースにもう少しHSの速
い方向けに作ってもらったんです。ただ、想定HSは上限が45m/sだったので、HS50m/s 以上のゴルファーでもマッチすると聞いて、ポテンシャルの高さを感じましたね。
スタジオCGAとは
スタジオCGA
〒177-0044
東京都練馬区上石神井1-25-3
TEL 03-5903-9108
https://cga-golf.cc/
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。