マイカスタム第13回 初級者マッチョに中空アイアンと重量級シャフトで振りづらさを提案

マイカスタム第13回 初級者マッチョに中空アイアンと重量級シャフトで振りづらさを提案
コンセプト、ジオギャラクシー、ゴルフパフォーマンスなどを経て、2023年12月に独立したのがティームスのクラブフィッターの徳嵩力一氏。これまでプロを含め5000人以上にフィッティングを提供してきた。 現在は東京や千葉のレッスンスタジオを中心に出張フィッティングを行っている。そんな徳嵩氏が今回診た患者が、30代で元アメフト選手のA氏。パワーはあるが、使用中のクラブが軽すぎてスイングが安定しない。そこで提案したのが、ミステリーの中空アイアンとトゥルーテンパーのDGS400。そのポイントは重くて振りづらいクラブだとか。

どこを重くするかが最大のポイント

プロを含め5000人ものフィッティングを行ってきた徳嵩氏は、最近気になることがあるという。 「大手メーカーの完成品クラブが軽すぎるという点です。速く振れるゴルファーであれば効果はあると思いますが、軽すぎる場合が多いですね」  クラブはヘッド、シャフト、グリップがあり、これまではシャフト、グリップで軽量化を図ってきたが、昨今は技術革新で中空ヘッドなど軽いヘッドもある。その軽いヘッドの出現で、クラブバランスを変えずにクラブ全体の総重量を重くすることもできるのだとか。 「どのパーツを重くするかが重要だと思います」  その考え方がハマったのが、今回の患者であるA氏。元アメフト選手の30代男性は、初級者だがパワーに合わない軽すぎるクラブを使用しており、クラブをしっかり振ることができず、スイングが安定しない。スコア100を切れない状況だが、あまりにも軽すぎる身体能力とミスマッチなクラブを使うことで、トップしかでないという。そのA氏に薦めたのが、ミステリーの中空アイアン『HS820』とトゥルーテンパーの『DGS400』。重心距離長め&ヘッド重量が軽めのアイアンヘッドと、重量級のシャフトで何が起きたのか?

重いから手で上げられない その振りづらさがスイングを作る

徳嵩氏が説明する。 「ヘッドは中空ですが、重心距離が長く、しかしながら、通常のヘッドと比べれば1番手ほど重量が軽い。つまり、軽いけど、つかまらないヘッドです」  そのヘッドに、超重量級の『DGS400』を装着することで、使用中のアイアンと比較して、新しい7番アイアンは約20gの重量アップを実現した。 「いわゆる重くてゆったりしたクラブになります。通常なら、このヘッドに重量級のシャフトは採用しませんが、なんせ元アメフト選手。パワーがありますがスイングができていない。力任せに手だけで振ることができない、振りづらさを具現化したクラブで、このゴルファーにだから提案した組み合わせになりますね」  ヘッドの重心距離の長さもポイントだという。 「つかまりづらいというのも、ヘッドが重く感じるひとつの要素で、それも振りづらさに影響します」  もうひとつ、ヘッドの特徴があると徳嵩氏は説明する。 「このヘッドは低重心過ぎないヘッドで、上下の打点のミスに強いと思います。軽いヘッドでトップが出るA氏には、このようなヘッドが必要なんです」  軽すぎたクラブでトップが止まらなかったA氏はどうなったのか?

軽すぎるクラブへの警鐘 速く振れないなら重くすべき

A氏は、このミステリー『HS820』 とトゥルーテンパーの『DGS400』 の組み合わせで、身体を使ったスイングが身に付き、スコアも100を切った。なにより重量が重いため、自信をもってスイングができるようになったという。 「最初にも話しましたが、軽いクラブは速く振ることができると大手メーカーは謳っていますが、実際そうではないゴルファーは多いですね。ひとつの基準はHSで、軽いクラブでHSが速くならないゴルファーは、逆に重いクラブを使った方がHSは速くなる傾向が強いですね」
それに加え、 「軽いクラブは、軽いからテークバックしやすいですよね。それでオーバースイングになりがちで、上体が伸びてしまいます。伸びると戻ろうとするのがヒトの動きで、それがあるからトップやダフリが出てしまいます」 レアケースとはいえ、振りづらさを追求したヘッドとシャフトの組み合わせ。これもマイカスタムといえるだろう。

メーカー担当者コメント

和宏エンタープライズ 社長 足立昌也氏 「あまり聞かない組み合わせですが、絶妙ですね。『HS820』のヘッド重量が軽く、そして重心距離が長い特徴を、マッチョでも手だけで振っているゴルファーに向けて振りづらさに変換している点は大変興味深い。当初はシニア向けに開発した商品でしたが、HS の速い人にも使ってもらえているので参考になりますね」

ティームスとは

〒285-0850 千葉県佐倉市西ユーカリが丘1-8-17 info@tmsgolf.co.jp この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。