テーラーメイド改めホンマの菱沼常務が「転職理由」を語る

テーラーメイド改めホンマの菱沼常務が「転職理由」を語る
テーラーメイドゴルフでマーケティングディレクターを務めていた菱沼信之氏は11月1日、本間ゴルフの常務執行役員に就任した。国内キーアカウント営業本部長とマーケティング本部長を兼務するもので、テーラーメイド時代に培ったキャリアをホンマの成長へ移植する。 テーラーメイドは10月、アディダスゴルフとの分離を終え、新体制による巻き返しを図っていた。その矢先にキーマンと目された菱沼氏が競合他社へ移ったことは、同社に少なからぬショックを与えた。 菱沼氏はなぜ、新天地を選んだのか。同氏との一問一答を再現しよう。

挑戦したかった

テーラーメイドからホンマに移籍した理由は何ですか。 「いろんな状況を見るにつけ、より挑戦的なチャレンジをしたかったのが理由です。日本はゴルフ業界だけではなく、経済的にも産業構造的にも大きな転換点に立っている。それと、わたし自身は36歳ですが、そのような年齢や家族的なことも含め、挑戦するにはベストなタイミングだと思ったのです」 新生テーラーメイドでチャレンジするという考えはなかった? 「もちろん、それも遣り甲斐のあるチャレンジだし、もの凄く悩んだわけですが、先ほど申し上げた諸事情を考えて、外に出て挑戦しようと決めたのです」 転職先は業界内のホンマではなく、業界外という選択肢もあった? 「実際、業界外からの話もありましたが、外の業界だと一定の研修期間が必要になりますよね。でも、業界内だとすぐに成果を求められるし、2020年の東京五輪をキーワードにした場合、向こう1~2年の勝負になるじゃないですか。 そこで、業界内と外のどちらがよりスピーディーでアグレッシブに動けるかを考えて、業界内の環境がいいと思ったし、これまで競合他社の立場でホンマを見てきて、魅力的なパワーブランドだと感じていた。そのあたりも決め手になりました」 業界の外よりも、内側のライバル企業に転職したほうがイバラの道になるかもしれない。 「同じ土俵ですからね、そうなるかもしれません。ただ、ホンマの魅力は商品の高い品質に加えてソフト面の運用サービスも素晴らしい。ですからこれらを前提にして、ホンマが次のステージに上がるための役割を担いたいと考えています」 常務執行役員として、営業とマーケティングの本部長を兼務するわけですが、これについての意気込みは? 「そうですね、マーケティングから営業まで、一気通貫で担う立場なので、製販一体のアプローチに丸々携われる。物作りをどのように展開して、消費者の需要を促し、店頭の消化を促していくか。 ホンマは何をゴルファーに訴求したいのかを、1社ずつの小売店に掘り下げて提案したいと思います」

「革新」と「職人」の融合

テーラーメイドは革新的な商品開発、ホンマは職人集団といったように企業イメージは両極ですが、そこにギャップを感じないか。 「逆に、その両極を融合できればホンマの次のステージが描きやすくなるはずだし、その際、自分の経験を発揮すれば融合できると思っています。市場はイケイケではないので、一本一本の品質や付随するサービス、ソフト面を高める上で、これまでの経験を生かしていきます」 ホンマは現在、劉建国会長の号令一下、世界戦略に本腰を入れています。その際、北米市場での認知度アップが不可欠だから、テーラーメイド時代に米国駐在が長かった菱沼さんに白羽の矢が立った。当初はそのようにみていたわけですが。 「ホンマは米国や欧州に支社を立ち上げていますが、わたし自身が直接タッチする職域ではないと思います。 ただ、日本向け、欧州向け、米国向けということではなく、ホンマには日本の『おもてなし』的な繊細さや品質の高さがありますので、日本がやっていることを軸にして、それが海外市場に染み込むように体現できれば、世界展開につながっていくでしょう」 テーラーメイドの看板選手だったセルジオ・ガルシアは今、フリーの状態です。ホンマの契約を働き掛ける? 「それはどうでしょう(笑)。魅力的な話だし、アイデアとしては面白いですね」 働き掛ける? 「ホンマの新しい見せ方としては面白いと思います。ただ、従来と180度違う見せ方ではなく、ホンマがこれまでプレゼンできなかった部分を届けるのがわたしの着眼だし、役割だと考えています」 働き掛けない? 「アイデアとして伺っておきましょう(苦笑)」 劉会長とのビジネスランチで意気投合したそうですね。 「劉会長は日本好き、日本のブランド好きで、ホンマブランドの成長には絶対的な自信をもっていますが、会話の内容はご想像に任せます」 劉会長は拡大主義者ですか。 「数字は残さなければいけないでしょうが、一般的な意味でのシェア主義ではありません。ブランド価値を高めるためにも、きちんと段階的にステップを踏むことが大事です。 その際、ホンマにとってクラフトマンシップは重要なエンジンなので、この点を蔑ろにすることなく、丁寧にホンマの魅力を訴求していきます」 以上、菱沼常務との一問一答を要約した。同氏はテーラーメイド時代、日本モデルの『グローレ』に深く携わった経緯があり、『ゼクシオ』の対抗商品として一定の地歩を固めた実績がある。 ホンマは12月、二代目となる『ビジール』を発売するが、これも『ゼクシオ』の対抗商品という位置づけだ。同社は現在、販促戦略の最終の詰めを行っているが、ここには菱沼常務が『グローレ』で培ったノウハウが反映されるはず。 「革新」と「職人」の融合――。第一ステージは『ゼクシオ』対『ビジール』で幕を開けそうだが、むろん、テーラーメイド陣営も「因縁の対決」に腕を撫す。今年の年末商戦は面白い。 【関連記事】 [surfing_other_article id=518] [surfing_other_article id=32245] [surfing_other_article id=32367]