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  • 高齢化社会で異業種連携 PGAと第一生命の合致した危機感

    片山哲郎
    1962年8月3日生れ。月刊誌GEW(ゴルフ・エコノミック・ワールド)を発行する(株)ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長。正確、迅速、考察、提言を込めた記事でゴルフ産業の多様化と発展目指す。
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    第一生命保険と日本プロゴルフ協会(PGA)は2月1日、「社会貢献の包括連携協定」を交わした。PGAとの連携は「金融業界初」ということもあり、稲垣清二社長は記者発表で友好ムードを演出した。 「実は私、18歳からゴルフをしてまして、大学時代はサークルで活動していました。なので今、ちょっと震えています。あの当時、学生三羽烏といわれた倉本会長が隣に座っておられる。憧れの選手でしたから(笑)。私のスコアは国家機密です」 これを受けた倉本昌弘会長は、満面の笑みで頷いていた。両社が連携を交わしたのは、多くの共通点があるからだ。 約5700人の会員を抱えるPGAは、公益社団法人という性格上、ゴルフを核とした「生涯スポーツ振興」を使命に掲げている。一方の第一生命は「健康増進・豊かな次世代社会の創造」などをミッションとしており、グループ企業と共同で地方自治体と連携した社会貢献活動を行っている。 両社の接点は昨年8月のことで、倉本会長によれば、 「私が地域貢献の講演をした際、聴衆の中に第一生命の役員がいて、一緒にやれるのではという話になりました」 以後、半年ほどの話し合いを重ね、連携事項が固まった。具体的には(1)子どもの育成に関すること、(2)スポーツ新興に関すること、(3)健康増進に関すること、(4)その他地域社会に関すること、の4項目だ。

    意気投合した本当の理由

    両社の思惑が一致した背景には、置かれている立場の事情がある。大和総研は昨年10月、保険業界の将来について分析レポートを出しているが、これによれば、 <20年後に労働力人口が50%を下回れば、業界の保有契約高が2015年の858兆円より13%低下(約100兆円減)すると見込まれる(中略)2035年には主要顧客層の団塊世代が、すべて死亡年齢に達する> など、将来の暗い予測を明かしたもの。超高齢化社会の到来は、すべての産業に共通の課題を突き付けるが、保険業界にとっても厳しい現実といえるだろう。 このあたりの詳細を、第一生命広報部の宮田翼課長補佐が次のように話す。 「当社が昨年度支払った保険金は、死亡保険が4375億円、入院等の保険・給付金が1268億円で、合計5643億円です。死亡保険が9万1727件、入院等給付金が112万7594件ですから、合計120万件ほどですね。 直近10年ほどの傾向を見ると、入院等給付金が増加傾向にあり、病気になるひとの数は確実に増えているのです」 この点が保険会社の懸念だが、問題を解決するためには健康寿命の延伸が不可欠になる。しかし、 「そのためのソフトパワーが当社にはありません」 と前置きして、稲垣社長がこう続ける。 「健康増進活動は、入院給付金の支払いが減ることにつながるため、とても重要な活動です。なのでPGAとの連携は、ゴルフを通じて健康を促し、支払いを減らすことが期待できる。ウインウインの関係を築きたいと思っています」 一方、約5700人の会員を抱えるPGAにとっても大きなメリットがありそうだ。会員の大半がレッスンで生計を立てるため、ゴルフ人口の減少は死活問題。ゴルフ人口の定義は諸説あり、「800万人規模」が妥当な線と見られるが、団塊の世代が後期高齢者に突入する2020年を過ぎたあたりでシニア層のゴルフリタイアが加速する。 ゴルフ市場の中核を成すこの層が離脱すれば、マーケットは一気に縮小する。倉本会長は、 「ですからゴルフ業界は、若者需要の創造を含め、早急に底辺の拡大をしなければならない。その際、第一生命が保有するネットワークは非常に魅力的だし、様々な活性化の青写真が描けるのです」――――。

    1000万人の顧客リスト

    具体的にはこういったことだ。第一生命は全国に1300の営業所を網羅しており、4万人の「生涯設計アドバイザー」(営業スタッフ)が1000万人の顧客を抱えている。 「顧客とはフェース・トゥ・フェースの付き合いなので、非常に緊密な関係です」(稲垣社長) このネットワークを活用すれば、健康増進による保険金の支払い減と、ゴルフ人口の増加という一石二鳥が期待できる。以下、倉本会長の独演会を聞いてみよう。 「いろんな青写真が描けると思うんですよ。たとえば、営業拠点の近くでシニアツアーをすることもあるでしょう。入場券を営業スタッフに配ってもらえれば、試合会場に足を運び、ゴルフに触れる機会ができる。これは保険営業のツールにもなるはずです。 1000万人の顧客には、それぞれ家族がいますよね。すると膨大な数の家庭に向けて二世代、三世代のゴルフが提案できる。我々の会員は全国にいるので、彼らが企画すればいろんな提案が行えます。 強調したいのは、ノンゴルファーとの接点がもてることですよ。我々はこれまで、新規需要の開拓をゴルフ業界の枠内でやってきましたが、フリーペーパーで募集してもまったくひとが集まらない。ノンゴルファーの目に触れないから、効果がなかったわけなんです。 でも、第一生命のネットワークを使えば、ゴルフをしないひとに訴求できる。この点は非常に大きいと考えます」 PGAはこれまで、東西各1拠点のゴルフ練習場で新規ゴルファーの創造策を試行してきたが、成功モデルの確立に苦労して牛歩の印象は否めない。一転、第一生命とのトップ交渉で1000万人のインフラを手に入れた。 「そのうち1万人でも2万人でもいいんです。ゴルフに触れる機会を提供すれば、確実に物事は前進しますから」 子ども向けには「スナッグゴルフ」、地域企業の新人研修で「ゴルフマナー講習」の計画もある。 記者発表終了後、会場に設営した「スナッグゴルフ」の実演を倉本会長が行った。上着を脱いだ稲垣社長も、これに続く。カメラの砲列に囲まれて、緊張の面持ちで数発打った。 保険会社とプロゴルフ団体という異色の組み合わせは、ネットワークとソフトパワーの融合例として注目を集めそう。そのスタートラインに立ったばかりの倉本会長は、 「次の一手も考えています」 と、思わせぶりに笑うのだった。
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