1. 高齢化社会で異業種連携 PGAと第一生命の合致した危機感

高齢化社会で異業種連携 PGAと第一生命の合致した危機感

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PGA倉本会長と第一生命社長

第一生命保険と日本プロゴルフ協会(PGA)は2月1日、「社会貢献の包括連携協定」を交わした。PGAとの連携は「金融業界初」ということもあり、稲垣清二社長は記者発表で友好ムードを演出した。

「実は私、18歳からゴルフをしてまして、大学時代はサークルで活動していました。なので今、ちょっと震えています。あの当時、学生三羽烏といわれた倉本会長が隣に座っておられる。憧れの選手でしたから(笑)。私のスコアは国家機密です」

これを受けた倉本昌弘会長は、満面の笑みで頷いていた。両社が連携を交わしたのは、多くの共通点があるからだ。

約5700人の会員を抱えるPGAは、公益社団法人という性格上、ゴルフを核とした「生涯スポーツ振興」を使命に掲げている。一方の第一生命は「健康増進・豊かな次世代社会の創造」などをミッションとしており、グループ企業と共同で地方自治体と連携した社会貢献活動を行っている。

両社の接点は昨年8月のことで、倉本会長によれば、

「私が地域貢献の講演をした際、聴衆の中に第一生命の役員がいて、一緒にやれるのではという話になりました」

以後、半年ほどの話し合いを重ね、連携事項が固まった。具体的には(1)子どもの育成に関すること、(2)スポーツ新興に関すること、(3)健康増進に関すること、(4)その他地域社会に関すること、の4項目だ。

意気投合した本当の理由

両社の思惑が一致した背景には、置かれている立場の事情がある。大和総研は昨年10月、保険業界の将来について分析レポートを出しているが、これによれば、

<20年後に労働力人口が50%を下回れば、業界の保有契約高が2015年の858兆円より13%低下(約100兆円減)すると見込まれる(中略)2035年には主要顧客層の団塊世代が、すべて死亡年齢に達する>

など、将来の暗い予測を明かしたもの。超高齢化社会の到来は、すべての産業に共通の課題を突き付けるが、保険業界にとっても厳しい現実といえるだろう。

このあたりの詳細を、第一生命広報部の宮田翼課長補佐が次のように話す。

「当社が昨年度支払った保険金は、死亡保険が4375億円、入院等の保険・給付金が1268億円で、合計5643億円です。死亡保険が9万1727件、入院等給付金が112万7594件ですから、合計120万件ほどですね。

直近10年ほどの傾向を見ると、入院等給付金が増加傾向にあり、病気になるひとの数は確実に増えているのです」

この点が保険会社の懸念だが、問題を解決するためには健康寿命の延伸が不可欠になる。しかし、

「そのためのソフトパワーが当社にはありません」

と前置きして、稲垣社長がこう続ける。

「健康増進活動は、入院給付金の支払いが減ることにつながるため、とても重要な活動です。なのでPGAとの連携は、ゴルフを通じて健康を促し、支払いを減らすことが期待できる。ウインウインの関係を築きたいと思っています」

一方、約5700人の会員を抱えるPGAにとっても大きなメリットがありそうだ。会員の大半がレッスンで生計を立てるため、ゴルフ人口の減少は死活問題。ゴルフ人口の定義は諸説あり、「800万人規模」が妥当な線と見られるが、団塊の世代が後期高齢者に突入する2020年を過ぎたあたりでシニア層のゴルフリタイアが加速する。

ゴルフ市場の中核を成すこの層が離脱すれば、マーケットは一気に縮小する。倉本会長は、

「ですからゴルフ業界は、若者需要の創造を含め、早急に底辺の拡大をしなければならない。その際、第一生命が保有するネットワークは非常に魅力的だし、様々な活性化の青写真が描けるのです」――――。

1000万人の顧客リスト

具体的にはこういったことだ。第一生命は全国に1300の営業所を網羅しており、4万人の「生涯設計アドバイザー」(営業スタッフ)が1000万人の顧客を抱えている。

「顧客とはフェース・トゥ・フェースの付き合いなので、非常に緊密な関係です」(稲垣社長)

このネットワークを活用すれば、健康増進による保険金の支払い減と、ゴルフ人口の増加という一石二鳥が期待できる。以下、倉本会長の独演会を聞いてみよう。

「いろんな青写真が描けると思うんですよ。たとえば、営業拠点の近くでシニアツアーをすることもあるでしょう。入場券を営業スタッフに配ってもらえれば、試合会場に足を運び、ゴルフに触れる機会ができる。これは保険営業のツールにもなるはずです。

1000万人の顧客には、それぞれ家族がいますよね。すると膨大な数の家庭に向けて二世代、三世代のゴルフが提案できる。我々の会員は全国にいるので、彼らが企画すればいろんな提案が行えます。

強調したいのは、ノンゴルファーとの接点がもてることですよ。我々はこれまで、新規需要の開拓をゴルフ業界の枠内でやってきましたが、フリーペーパーで募集してもまったくひとが集まらない。ノンゴルファーの目に触れないから、効果がなかったわけなんです。

でも、第一生命のネットワークを使えば、ゴルフをしないひとに訴求できる。この点は非常に大きいと考えます」

PGAはこれまで、東西各1拠点のゴルフ練習場で新規ゴルファーの創造策を試行してきたが、成功モデルの確立に苦労して牛歩の印象は否めない。一転、第一生命とのトップ交渉で1000万人のインフラを手に入れた。

「そのうち1万人でも2万人でもいいんです。ゴルフに触れる機会を提供すれば、確実に物事は前進しますから」

子ども向けには「スナッグゴルフ」、地域企業の新人研修で「ゴルフマナー講習」の計画もある。

記者発表終了後、会場に設営した「スナッグゴルフ」の実演を倉本会長が行った。上着を脱いだ稲垣社長も、これに続く。カメラの砲列に囲まれて、緊張の面持ちで数発打った。

保険会社とプロゴルフ団体という異色の組み合わせは、ネットワークとソフトパワーの融合例として注目を集めそう。そのスタートラインに立ったばかりの倉本会長は、

「次の一手も考えています」

と、思わせぶりに笑うのだった。

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片山哲郎

片山哲郎

1962年8月3日生まれ、東京都出身。
「月刊ゴルフ用品界」(GEW)を発行する株式会社ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長として、ゴルフ用品産業及びゴルフ界全般の動向を取材、執筆。2014年4月に日本ゴルフジャーナリスト協会の会長に就任(現任)。

ほかにインタラクティービ(J:COM)番組審議会委員(現任)、ゴルフ市場活性化委員会マーケティング委員(現任)、大学ゴルフ授業研究会理事(現任)。

信条は「人の至福は健康で長生きすることであり、これに寄与できるゴルフは『善』である。善なるゴルフ産業が健全発展するために、建設的な批判精神をもち、正確、迅速、考察、提言を込めた記事を書く」――。

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