1. AbemaTVツアーはノーキャディの「担ぎ」でやってほしい

AbemaTVツアーはノーキャディの「担ぎ」でやってほしい

社長の記事
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3月30日に初日を迎えるNovil Cup(JクラシックGC、徳島県)を皮切りに、「AbemaTVツアー」12試合が開幕する。日本ゴルフツアー機構(JGTO)の下部ツアーであるチャレンジトーナメントが改称されたもので、無料視聴のインターネットテレビを運営するAbemaTVが全試合を「完全生放送」する。

同社がツアーの冠スポンサーとなり、放映権料もJGTOに支払うことから、賞金総額は1億8300万円(1試合1500万円以上)と大幅増、今季から全試合3日間競技となる。青木功会長は、

「ありがたい話です。選手には頑張ってもらいたい」

と、喜色満面の様子だったが、これを機に提案したいことがある。それは、同ツアーはキャディを使わず、選手自身がキャディバッグを背負ってプレーする「担ぎ」(かつぎ)でやってほしい、ということだ。

ゴルフ本来の魅力である「自己責任」や「自律心」、あるいは内面の過酷さを視聴者へ伝えるのに最適なプレースタイルだと思うからだ。

リオ五輪でのゴルフシーン

そう思ったきっかけは、リオ五輪でのゴルフ中継だった。

最高のアスリートが集う五輪は、鍛え抜かれた「肉体の祭典」でもある。体操選手の筋骨隆々、マラソン選手の無駄がない痩身など、各種目の競技性がそれに適した選手の身体を作り上げ、見る者を圧倒する。

これらと同じ五輪の土俵に立ったとき、ゴルフ競技からは見る者を圧倒する凄味が伝わってこない。その原因を考えながら五輪のゴルフ中継を見ていると、「コレなのか」と思い当たったのがキャディの存在だった。

あたかも「家来」のようにキャディを従え、荷物運びから道具の手入れ、「主」が打った芝生の穴を埋めるなど、ゴルフ中継では当たり前の光景が、他の競技との比較において緩慢な印象を与えてしまう。使い古された言葉だが、「ゴルフはおやじのスポーツ」「ブルジョア・スポーツ」との印象を色濃くした。

むろん、キャディという職業を否定するわけではない。双方の関係は夫唱婦随にも似て、選手のメンタルコントロールも行うなど、一流のキャディは重要な役割を担っている。だが、たとえば国内ツアーで優勝争いをしている選手同士が談笑しながら歩くうしろを無言のキャディがついてゆくような光景は「真剣勝負」とは程遠い。

ゴルフはメンタルのスポーツといわれるが、その内面をテレビ画面に映し出すのは至難の業で、結果、牧歌的な光景に終始する。

「担ぎプレー」の凛々しさ

AbeamTVは、従来にない中継内容でゴルフの魅力を訴求して、コンテンツの価値を高めたいと考えている。一番のウリは時間無制限の「完全生中継」で、トップスタートから最終組のホールアウトまでを、1、17、18番の3ホールと、注目組を追い駆ける形で放送するという。

カメラの台数や中継コストは「細部を詰めている」段階だが、当初は広告収益等が見込めず赤字になることを考えれば、大掛かりな部隊編成は難しい。同社スポーツ局の古川雄太マネージャーは、

「ですから、解説はビギナー目線を大事にして、テロップには選手のマニアック情報を挿入するなど、視聴者が親近感を覚える工夫をしたいと考えています」

その「親近感」を醸成するには、生活者である視聴者の心に訴え掛けることが必要だろう。生活者である視聴者は、家のローンを払い、乳飲み子を抱え、場合によっては過酷な労働を強いられるなど、人生の厳しさと向き合っている。

レギュラーツアーを目指す下部ツアーの選手も同様で、トラックの運転手をしながらツアープロを夢見る者がいるかもしれない。アルバイトのラーメン店で、朝5時から仕込みをしているかもしれない。そんな情報をテロップで挿入しながら、キャディバッグを担いで歩く選手の姿が映し出されたらどうだろう。

自分でバンカーショットの跡を均し、フェアウェイの穴を目土する。雨天のグリーン上で傘をさしかけるキャディはなく、すべてを自分一人で黙々とこなす。その凛々しさが、視聴者の胸を打つのではないか。だからこそ、「この1打」の緊張感が伝わってくるのではないだろうか。

キャディバッグを担ぎながら、フェアウェイを大股で歩くたくましい尻。そのシリを大写しで茶間の間に届ければ「あらステキ、おしりのポケットに広告をつけようかしら」と、どこかの女性社長がスポンサーになってくれるかもしれない。

できることなら、キャディバッグの口枠にピンマイクをさして、アイアンヘッドが揺れて触れ合う金属音を拾ってもらいたい。地響きするダウンブローのインパクト音を、ピンマイクで視聴者に届けてもらいたい。

従来のスイング論やコース解説に終始せず、AbemaTVには本当のゴルフの魅力を伝えてもらいたい。

選手会は「担ぎ」を容認するか

JGTOはある種、不思議な組織といえる。ツアーメンバーの賞金の一部が組織運営の原資となり、その選手たちが上層部の顔触れを決める側面がある。これを束ねるのが選手会で、今季から国内復帰する石川遼が選手会長に就任した。石川はJGTOの副会長に選任される可能性もある。

ゴルフ中継改革を実現したいAbemaTVとJGTOの話し合いは、大詰めに入っている頃だろう。同業他社とのコンテンツ争奪に明け暮れるAbemaTVにしてみれば、一刻も早く視聴者を囲い込んで、有料会員化や広告収益につなげたいはず。その際、ただでさえ視聴率が低い男子ツアーの「下部ツアー」で、従来通りの中継では苦戦が明らか。藤田晋社長は、

「従来とは異なる中継で、魅力的なコンテンツに仕上げたい」

と意気込むが、ノーキャディの「担ぎ」は、ゴルフの本質的な魅力や厳しさを視聴者に伝えるプレースタイルと思えてならない。

ただしこれは、選手の「労働環境」を過酷にする。選手会でNOとなれば実現の見込みは薄いかもしれないが、取り敢えず数試合で導入してみる価値はあろう。思いのほか視聴数が多くなれば、担ぎのキャディバッグを1社独占で提供したいなど、新たなスポンサーが現れるかもしれない。是非、一考を促したい。

※2018.03.20追記
JGTOの副会長に就任した石川遼もこの提案は面白いと語った。

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片山哲郎

片山哲郎

1962年8月3日生まれ、東京都出身。
「月刊ゴルフ用品界」(GEW)を発行する株式会社ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長として、ゴルフ用品産業及びゴルフ界全般の動向を取材、執筆。2014年4月に日本ゴルフジャーナリスト協会の会長に就任(現任)。

ほかにインタラクティービ(J:COM)番組審議会委員(現任)、ゴルフ市場活性化委員会マーケティング委員(現任)、大学ゴルフ授業研究会理事(現任)。

信条は「人の至福は健康で長生きすることであり、これに寄与できるゴルフは『善』である。善なるゴルフ産業が健全発展するために、建設的な批判精神をもち、正確、迅速、考察、提言を込めた記事を書く」――。

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