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認知症予防にゴルフは役立つ!超高齢化社会の到来に朗報

社長の記事
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どのような親子関係であれ、子にとって「親」の存在は大きいもの。その親が認知症になり、知らぬ間に徘徊している様は悲劇にほかならない。老々介護も社会的な問題だ。

超高齢化社会の到来で、このような状況が深刻化するなか、ゴルフが認知症予防に効果的と証明された。ウィズ・エイジングゴルフ協議会(WAG)の高橋正孝会長が、喜色満面の様子でこう話す。

「ゴルフが認知症予防に効果的と証明されました。脳で一番大事な記憶機能の維持・改善や向上心にも寄与できる。この成果を世に広めて、ゴルフの価値を訴求したいですね」

現在、国内で65歳以上の認知症患者は500万人に迫る勢いで、2025年には700万人に達すると予測される。65歳以上の5人に1人が罹患する計算で、これに関わる社会的費用は14兆5000億円と莫大なもの。それだけに、研究を推進する高橋会長の喜びは察するに余りある。

ゴルフが社会に役立てる。しかも、国家的問題の解決につながるとあって、業界関係者にも喜ばしい話だろう。

ゴルフと認知症研究

ゴルフと認知症研究

WAGの発足は2016年3月のこと。高橋会長は1都10県(508倶楽部)が加盟する関東ゴルフ連盟(KGA)の理事長も務めているが、ここに社会貢献の一環として「ゴルフと認知症研究」の案件が持ち込まれた。

「とても意義のある試みだと思いました」

ということで、同氏は日本プロゴルフ協会(PGA)などゴルフ関連5団体に協力を求め、500万円の資金を集めた。さらに国立長寿医療研究センターや杏林大学、東京大学等の協力を得て、同年10月に共同研究がはじまった。

研究内容は、ゴルフ未経験の高齢者にゴルフをさせ、その後、記憶力等の試験を行ったもの。被験者は健康な65歳以上のノンゴルファー106名。実験フィールドは高橋会長が代表を務める日高CC(埼玉県)ということで、県内に10万枚のチラシを撒いて募集した。

計3回の事前説明会に450名ほど集まって134名が希望したが、書類選考等で106名に絞られた。参加者の平均年齢は70.3歳で男性53.8%、女性46.2%の割合。これを「ゴルフ組」と「しない組」に53名ずつ分けて、前者は昨年4月までの半年間、週1回のペースで24回のレッスンを受けた。

前半14回は練習場での指導(各1時間半)、後半10回がコースレッスン(同2時間)で、スクランブル方式によるプレー体験。実験を終えて双方の認知・運動機能等を測定したら、わずか半年の体験にも関わらず、

「『ゴルフ組』に明らかな効果がありました。認知機能低下の予防には、有酸素運動と認知課題を同時に行うデュアルタスク運動が効果的とされますが、ゴルフは両方を満たせるのです。認知症は薬剤治療が難しいので、今回の成果は非常に大きいですね」(高橋会長)

ゴルフと認知症研究

ゴルフは予防の「三位一体」

今回の実証実験を主導した国立長寿医療研究センター・予防老年学研究部の島田裕之部長が、「ゴルフ組」に見られた成果を次のように説明する。

「ふたつの簡単な指標を紹介すれば、単語記憶が13から14へ1ポイント増加。論理的記憶は14.5前後から16程度に1.5ポイントほど向上しています。

認知症の発症に影響するのは糖尿病、高齢からの肥満や鬱、喫煙などがありますが、もっとも影響する要因は運動不足です。

認知症の予防には認知的予備力(頭の体力)があって、これを鍛えるには運動や脳トレが有効です。さらに、社会的なネットワークも必要ですね。様々なひとと会話をして交流することが重要だから、この点、ゴルフは効果的といえるのです。

ゴルフは適度な運動と、打数を思い出すなど脳トレの効果もあり、同伴競技者と会話もできる。これらの3要素を一度に満たせるのがゴルフなのです」

認知症は、核家族化の常態により話し相手がいなくなることも大きな原因だ。「独居老人」は社会との接点を失ってしまい、喜怒哀楽を感じることなく自分の殻に閉じこもってしまう。これでは、長生きしても虚しいばかり。

島田部長は、今回の実験で参加者の継続率が98.9%と、ほぼ「皆勤」だったことを高く評価しているが、ゴルフを通じた新たな人間関係が生きる喜びを与えてくれたとも解釈できる。

「このような高い継続率には、指導者の素晴らしい教え方とゴルフの高い魅力が影響していると思われます」(島田部長)

「実験終了後、参加者のゴルフ継続率を調べたところ、月2回ほど練習場へ通う者が約7割にも達していました。実験を機にサークル的な交流が芽生え、アンケートへの回答も『ゴルフ場に感動した』『体力と頭を使う楽しい運動』『周囲に広めたい』といったように、ポジティブな意見が多かったですね」(高橋会長)

つまり、高齢者の生き甲斐づくりに役立ち、併せて認知症の予防にも効果的という一石二鳥。今回指導を行ったのはPGAなどプロゴルフ団体の会員だが、倉本昌弘会長は、

「ゴルフは健康にいいとされてきましたが、信用されない面もあった。それが今回、医学的な見地から証明されたことは非常に大きい。

我々は常々、ゴルフで健康寿命の延伸を目指してきましたが、今回の結果は、今後のレッスンの指針になると思います」

と、手応えをつかんだ様子だった。

ゴルフ界の長老はみんな元気

今回の研究は、わずか半年の初心者体験に過ぎないが、ゴルフが日常的な趣味になればさらなる効果が期待される。

認知症の予防にゴルフは役立つ!超高齢化社会の到来に朗報

それでは、ゴルフは脳に対してどのような影響を及ぼすのか。本誌は昨年5月、日本学術振興会の安西祐一郎理事長(全国大学体育連合会長)に取材した際、ゴルフと脳の関係について以下のやり取りを行っている。ちなみに同振興会は年間予算約2900億円で、国内の研究者6000人ほどに研究費を配分する学術機関。

運動と脳の働きには、密接な関係があるわけですか。

「もちろんです。それは非常に大きいし、決定的な関連性がありますね。

脳は様々な部位が複雑に関係していて、身体を動かすのは頭の上部の頭頂葉です。この頭頂葉と思考を司る前頭葉がつながっている。人間は、社会生活において脳の多くの部位を動かさないと暮らせません。

脳の真ん中に脳幹があって、脳幹は生命の本能などに関係しています。脊髄から脳の真ん中に神経が通っていて、そこから大脳に行きますが、特に皮膚の刺激や骨格・筋肉の動きは、背骨の中にある神経系を通って脳幹に行きます」=中略=

そのような観点で、ゴルフはヒトに対して有益な効果があるのでしょうか。

「その効果は高く評価しております。ゴルフはコミュニケーションの場でもあり、老若男女でやれるので『縦』の交流が得られるほか、技術的にもバラエティに富んでいます。

風向きやグリーンの起伏、バンカーなど、様々なことを考えるので非常にいいと思いますし、ほかのスポーツに比べて、かなり異なる要素が入っていると思います」

安西理事長は、ゴルフの効果をそう話す。歩行を中心とした適度な運動、世代を超えた会話が心地よい刺激を与え、グリーンの起伏を読む行為など、そのすべてが脳に好影響を与えるという。

そのせいかどうか、ゴルフを長年、日常的にプレーしているゴルフ団体のトップ達は、高齢ながらいずれも元気。その脳を研究機関で検査すれば、ノンゴルファーの同世代に比べて優秀な結果が得られるかもしれない。

80歳、ゴルフ歴60年の高橋会長が今後の展開をこう話す。

「机の前に座ってる場合じゃありません。この成果を訴求するにはスピード感が大事なので、わたし自身が自治体のトップと交渉して導入を促すつもりです。

わたしが理事長を務めるKGAは昨年4月、一般社団法人になったので、ゴルフを通じた健康寿命の延伸など社会貢献活動が重要になる。すでに複数の自治体から『マニュアルがほしい』との要望もありますので、ゴルフで認知症予防の導入に向けて積極的に動きたい」

得られた結果を「学術的成果」にとどめることなく、世の為ヒトの為に生かす構え。

以上の成果を「業界の視点」で捉えれば、高齢者のゴルフリタイア防止に生かせるメリットがある。ゴルフ業界は、団塊の世代が後期高齢者に突入する2020年以降に大量のゴルフリタイアが発生することを懸念しており、高反発ドライバーの訴求などで「延命策」に余念がない。

ただし、より本質的な価値は健康寿命の延伸に寄与できることだ。健康で天寿を全うすることが人生最高の至福であり、そこにゴルフが役立てる。その意味で今回の実験結果は、大きな価値があるといえる。

今後の課題は、「ゴルフの価値」を多くの人と共有するための具体策づくりにほかならない。当面の青写真は、KGAが各自治体に働き掛けて高齢者用プログラムの導入を図りつつ、約5700名の会員を有するPGA等が指導者を派遣することだろう。場数を踏めば専用の指導スキルが向上し、実績を積むことで自治体の予算化も期待できそう。

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片山哲郎

片山哲郎

1962年8月3日生まれ、東京都出身。
「月刊ゴルフ用品界」(GEW)を発行する株式会社ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長として、ゴルフ用品産業及びゴルフ界全般の動向を取材、執筆。2014年4月に日本ゴルフジャーナリスト協会の会長に就任(現任)。

ほかにインタラクティービ(J:COM)番組審議会委員(現任)、ゴルフ市場活性化委員会マーケティング委員(現任)、大学ゴルフ授業研究会理事(現任)。

信条は「人の至福は健康で長生きすることであり、これに寄与できるゴルフは『善』である。善なるゴルフ産業が健全発展するために、建設的な批判精神をもち、正確、迅速、考察、提言を込めた記事を書く」――。

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