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  • 若手の成長を阻む「永久シード」の廃止望む ゴルフ産業を創った男(7)

    片山哲郎
    1962年8月3日生れ。月刊誌GEW(ゴルフ・エコノミック・ワールド)を発行する(株)ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長。正確、迅速、考察、提言を込めた記事でゴルフ産業の多様化と発展目指す。
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    月刊ゴルフ用品界(GEW)2005年1月号~2006年3月号に掲載していた、大西久光氏の「シリーズ温故知新」をWeb用に編集したものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。写真は文章と直接関係ありません。
    今から十数年前の2004年、既にそれは明らかな現象として起きていた。ゴルフツアーにおける男女の逆転現象である。この年、賞金ランクトップの獲得賞金額は、女子が男子を上回り、テレビ視聴率も逆転している。翌2005年はこの傾向に拍車が掛り、二桁台の視聴率を連発する女子ツアーに比べ、男子ツアーは3%台と低迷していた。 それにも関わらず、1試合当たりの賞金総額は男子が女子の倍という「不合理」が常態化しており、いずれスポンサーは本格的な「男子離れ」を起こすと大西氏は警鐘を鳴らしている。 これを回避するためには、制度的な欠陥を改善する必要があり、なかでも「永久シード権」は、若手の成長を阻む既得権になっていると指摘。「一刻も早く撤廃する必要がある」と主張する。 毎週火曜日掲載・写真提供大西久光氏 前回の記事はこちら
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    2018年07月02日 19時59分

    真剣に改革したLPGA

    今、男子ツアーは危機的な状況に陥っています。最大の理由はAON(青木功、尾崎将司、中嶋常幸)に続くスターの不在であり、男子ゴルフが社会的に魅力あるコンテンツになっていないことも影響してると思いますね。ゴルフ人口は国民の1割といわれますが、最大の問題は残り9割の人々がどのような印象を持っているのかです。 一部の「実力プロ」の喫煙問題すら解決できないJGTOの指導力を見るにつけ、男子ツアーの再興は難しいと言わざるを得ません。 JGTOの関係者は、女子ツアーの人気を「一過性」と見ているようですが、私は違うと考えます。 LPGAが発展する要素はいくつもあって、たとえば女子のプロスポーツで1億円も稼げる競技はゴルフを除いて見当たらない。だから優秀なアスリートがこぞってゴルフ界へ入ってくるわけですが、一方の男子は野球やサッカーなど稼げる競技が分散している。 伊沢、片山、谷口などはいずれも身長170㎝ほどですが、よその競技では180㎝を超えるアスリートが鍛錬した肉体と精神力で真剣勝負を繰り広げている。単に肉体的なハンディを言うのではありません。問題は、スーパーアスリートが入ってこないゴルフ界の制度的な障害もありましてね、私はここを懸念しているわけですよ。

    永久シードは即座に廃止すべき

    最大の障害は資格制度でしょう。相撲やプロ野球はスカウティング活動を行って、有望なアスリートを発掘しているわけですが、ゴルフ界だけは「資格を取れ」と強要する。そんな世界がどこにありますか? たとえば「日本アマ」の優勝者にツアーへの道を開放すれば一生懸命タイトルを狙うだろうし、道筋を示せばサッカー少年の意識もゴルフへ向いてくるでしょう。 「永久シード権」も同じです。これが過去に活躍した選手の既得権になって、若手の出場枠を圧迫するなら、即座に廃止すべきですよ。 女子ツアーの活況は、たしかに偶発的な面もあります。宮里藍選手の女子高生Vなどは、意図的に作れるストーリーではありませんからね。ただ、「藍ちゃんブーム」は制度変更も背景にあるわけで、ここに注目する必要があります。 「アマチュアがツアーで優勝した場合、4週間以内に選手登録すれば1年間の出場資格を取得できる」という規定がそれで、宮里藍さんは適用1号になっている。タイガー・ウッズは全米アマの3連覇で参戦し、すぐにシード権を取ってしまった。つまり、旬を逃さないということです。JGTOはこの点が遅れている。 スポンサーへの配慮も同様です。企業は人気選手が「プロアマ」に出場することを期待しますが、ワールドカップ優勝(2005年、南ア大会)の後にも関わらず宮里、北田もきちんと出ていました。樋口さんに「よく出ますね」と尋ねたら、「出なきゃ失格。義務付けています」と‥‥。 宮里藍ちゃんのコメントは実直で爽やかな印象を与えますが、これはお父さんの教育が大きいものの、LPGAの研修も無視できません。改革の成果だと思います。 実は2002年頃、女子ツアーを取り巻く環境は非常に厳しいものでした。TBSは当時、「今後女子ツアーの中継はやめる」ことを検討したり、既存トーナメントは日曜だけ、新規トーナメントは放映しない方針だったようです。当然、LPGAの危機感は尋常ではなかったはずですよ。 それで奮起したのか、女子ツアーの視聴率はしばしば10%を超えますが、この数字はゴルファー以外の視聴者がいることを表しています。つまり、プレーしない9割の国民を意識しないと、これからのプロスポーツは成立しないということです。 大西久光 ゴルフ産業を創った男

    男女賞金王の逆転現象

    昨年(2004年)、男女ツアーの視聴率は逆転現象を起こしたが、今年はその傾向に拍車が掛かっている。ビデオリサーチによれば6月5日時点の視聴率(最終日・関東地区)は、男子が7戦を消化した時点で「日本プロゴルフ選手権」の4.8%が最高。4%を超えたのは計3試合で、最低は「JCBクラシック」の2.3%、7試合の平均視聴率は「3.6%」という惨状だ。 一方の女子は10戦を消化して13%超が2試合(ヴァーナルレディス=13.7%、リゾートトラストレディス=13.1%)で、7試合が二桁の大台を突破している。圧巻は10試合の平均視聴率が11.0%を記録したことだ。つまり、視聴率の側面では女子ツアーは男子ツアーの3倍もの価値があり、スポンサー企業にしてみれば恰好の宣伝材料になるわけだ。 昨年、男子賞金王の片山晋呉は1億1951万円を稼いだが、これは女子ツアー2位の宮里藍より350万円ほど少なく、「男女逆転」の象徴的な出来事となっている。 女子の1試合当たり賞金総額は5000万円(当時)です。開催コストはその3倍程度が一般的なので、スポンサー企業の負担は1億5000万円というものです。対する男子は1億円の3倍で3億円。それにも関わらず視聴率が圧倒的に違うわけだから、スポンサーが「これはおかしい」と考えるのも当然で、いずれ男女の賞金が逆転することもあり得ます。 男子ツアー最悪のシナリオは、賞金5000万円ほどの大会が年20回ほどになり、マイナーツアーになってしまうことですよ。アジアと日本の対抗戦(ダイナスティカップ)で日本は敗北を喫しましたが、こういった事例はマイナー化に拍車をかける。ワールドカップの北田選手は「これを外したら日本へ帰れない」と必死だったそうですが、男子にそこまでの覚悟はあったのか‥‥。残念で仕方ありません。

    ESPNに蹴られた顛末

    ところで、男子ツアーの衰退は日本のスポーツ文化、あるいはスポーツエンターテイメントそのものの未熟さと無縁ではありません。この点、日米の違いは驚くほど大きいし、ダイエーホークスを買収したソフトバンクの孫さんが「いずれ日米でメジャー決戦だ」とおっしゃったが、正論だけど違和感がある。ハッキリ言えば、それは難しいというのが私の印象です。 実は90年代、ダンロップフェニックスをアメリカで中継してもらうため、ESPN(全米最大のスポーツ専門ネットワーク)に番組を売り込みに行ったことがあるんですね。フェニックスは賞金総額2億5000万円で、世界の一流選手が参加する国内最高峰の大会ですが、私自身、極東の一大会であることに限界を感じておりました。 そこでESPNを使って認知度の向上を図ろうと考えたわけですが、逆に「数百万円払え」と言われてしまった。その意味は、放映権料を払ってまで中継する価値はないと判断されたのです。 このとき痛感したのは、アメリカのスポーツ産業の凄さです。まず、メジャーリーグを中継するために世界のテレビ局が莫大な放映権料を払っている。プロバスケットやアメリカンフットボール、PGAツアーも同様です。 要するにスポーツエンターテイメントが強大な集金マシンとなって、世界のマネーが流入する。だから超一流が集まるし、イチローや松井も日本を出た。孫さんの発言に違和感を覚えるのは、そういった背景によるものです。 産業規模が大きいから凄腕のプロデューサーも揃っている。R&Aはミシェル・ウィーに全英オープンを開放する動きを見せてますが、一歩も二歩も進んでいるアメリカは、アニカ・ソレンスタムを男子ツアーに参加させた。プロ野球の交流戦ですら紛糾した日本とは、雲泥の差と言えますね。 そんなわけで、JGTOの再興は並大抵の努力では難しいと思いますが、だけどやりようはあるはずです。 プロ野球の観客は年間2000万人ですが、ゴルフ場では延べ9000万人が実際にプレーしているので、新しい魅力を創造すれば再生の道も開けるでしょう。プレー中の喫煙は魅力づくりの阻害要因になる。だとすれば、煙草を吸った選手は失格にすればいいんですよ。 煙草を吸って失格という「事件」がメディアに取り上げられれば、世間の注目が集まって、ニュース性も生まれます。禁煙ムードに関わる話題は新聞のスポーツ面ではなく、社会面に掲載されるかもしれない。ニュースとはそういったものですから。 JGTОは、かりそめの「実力プロ」に気兼ねしてるようじゃ駄目ですよ。強い指導力を発揮する必要があります。 月刊ゴルフ用品界(GEW)2005年7月号「シリーズ温故知新」掲載
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