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インバウンドとレディス開拓がゴルフ界の課題  ゴルフ産業を創った男(13)

月刊ゴルフ用品界(GEW)2005年1月号~2006年3月号に掲載していた大西久光氏の「シリーズ温故知新」をウェブ用に再編集したものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。写真は文章と直接関係ありません。


ゴルフ場の活性化が、ゴルフ界の再生につながる。その際、会員制コースが「パブリック化」している現状は、チャンスだと大西久光氏は強調する。少子高齢化の進展など、公的指標は将来の暗さを指摘するが、そうではないとの主張である。

アジアに向け、日本のゴルフ場の素晴らしさをアピールし、インバウンド需要を取りつ付ける。また、女性のゴルファー比率を米国並みの2割に高めれば、波及効果が倍加する。

これらは大西氏が12年前に主張したことだが、今なおゴルフ界は実現できていない。

インバウンド需要を刺激せよ

日本のゴルフ場をどのように活性化していくのか・・・・。これは、ゴルフ産業の将来を考える上で極めて重要なテーマです。

その際、様々な見方があるでしょう。大雑把に分ければ楽観論と悲観論で、後者の根拠は公的な指標に基づいています。日本は今後、少子高齢化や消費税のアップ、団塊世代のリタイアなどで、消費パワーが極端に落ち込む。だからゴルフへの支出も激減して、業界にとってはピンチだと。筋の通った考えで、理論的にも説得力はあるでしょう。

だけど私は、楽観論の立場をとっています。それは数字には現れない様々な要素があるからです。たとえば韓国のゴルフブームです。強いプロの登場もあって注目を集めていますけど、国内には200コース(当時)しかないため完全な需要過多に陥っている。プレーフィは高額で予約もとれないなど、日本のバブル時代と同じです。

こういった人達が、日本のコースへ大挙して来る。ソウルから飛行機で1時間程度の九州は韓国人ゴルファーが非常に多く、日本には韓国の10倍以上のコースがあるため、いろんなバリエーションも楽しめる。旅行会社が観光とのパックを企画するなど、需要創出が図られているのです。

もともとゴルフ場は土着性が強いため、限られたエリアを商圏としてきたわけですが、ITの普及もあって世界は飛躍的に広がっています。東南アジアのゴルファーで日本でのプレーを希望する人は多いから、国内の指標だけでは将来の可能性を推し量れないわけですよ。特に韓国と日本は、ワンマーケットと考えるべきでしょう。

韓国のゴルフ熱は、米女子ツアーで活躍する韓国人選手が支える面もある。USLPGAに参加する韓国人プロは98年に1名だったが、現在は27名に激増し、今季メジャー2勝(全英女子オープン=ジャン・ジョン、全米女子オープン=バーディ・キム)を挙げたのも記憶に新しいところ。

韓国メディアはプロ入りしたミシェル・ウィーの報道に際し、韓国名のウィ・ソンミを表記して愛国心を煽っている。今年の韓国アマを制したのは男子中学生のノ・スンヨル(13歳)だが、このような低年齢化は加熱するジュニアゴルフの一端を表わす。今後10年間で180コースの開場が計画されてもいる。

だとすれば、日本のゴルフ業界は韓国及びその他諸国のゴルファーに、魅力的なアプローチをしなければなりません。充実したコースと低料金を備えるなら、商機はあると考えます。

「プレー環境」の著しい好転

もうひとつ、少子高齢化によってプレー人口が減少すると、ゴルフ場は廃業して野ざらしになるという指摘もありますが、私は違うと思いますね。第一に、ゴルフ場が保有する土地なり施設は、ゴルフ場以上の価値を生みにくいという事実があります。実際、果樹園や宅地、産業廃棄物の処理場など、様々な再利用プランが描かれましたが、数コースを除いてはゴルフ場であり続けている。それは何かということです。

産廃施設などは地域住民の理解を得るのが難しく、宅地も許認可を得るのが困難です。40万坪という広大なスペースを果樹園にしても、ゴルフ場以上の価値を生み出すのは不可能でしょう。切り売りで墓地にするのはありだとしても(苦笑)、少なくとも、ゴルフ場以外の用途で再生するのは極めて困難な作業なのです。

以前、住友商事は関連のゴルフ場を北海道の自治体にタダで寄付しました。そこまで極端ではないけれど、野ざらしよりはマシということで捨て値の売却が続いている。その受け皿となったのが外資ですよ。利に聡い彼らは安値でコースを買い叩き、独自の経営ノウハウで再生を目指していますけど、これによって始まったのがメンバーコースのパブリック化です。

つまり、従来のゴルフ場経営は、造成にかかわる負の遺産を抱えていたから厳しかった。民事再生等で負債が消える、あるいは大幅に減免されるなら、十分に運営できるのです。原価が安くなれば経営コストは下がるという、ごく単純な理屈ですよ。

バブル以降にオープンした600コースの大半は、すでにパブリック状態になっています。メンバーの同伴がなくても誰でも簡単にプレーできるし、ネットでの予約も普及して、価格もかなり下がっている。

私が強調したいのは、ゴルファーにとってプレー環境は著しく好転している。海外ゴルファーの受け入れを含め、需要は促進できるのです。

「実質的なパブリックコース」の増加は、ゴルフの大衆化を加速させて既存ゴルファーのプレー頻度を高める効果が見込めるという。その先例が米国のゴルフ産業だ。現在米国には約2万5000コースが存在し、その8割が会員のいないパブリックだ。

米調査機関のNGFによれば、全米のゴルフ人口は約2600万人で、そのうち年間8ラウンド以上プレーするコアゴルファーが1280万人、この層の年間平均プレー回数は37ラウンドとなっている。そのプレー環境を支えるのが安価なパブリックコースというものだ。(数字はいずれも2005年当時)

女性はゴルフ場で「カツ丼」を食べない

私は、日本がアメリカ的になるのは良いことだと考えます。もちろん預託金問題で多大な迷惑を被ったメンバーには、きちんとケアをする必要があるでしょう。しかし、あらゆる面でビジターとの格差を保てる本当の会員制コースは全体の2割、残りの8割は実質パブリックになるはずで、この流れは止まりません。

こういった傾向を「良いことだ」と考えるのは、プレー回数が高まるからです。一般的な認識は、ゴルフ人口が減るとプレー回数も縮小するというもので、これには誰もが頷くでしょう。

だけど、仮にゴルフ人口が減ったとしても、回数が増えれば底上げできる。アメリカのプレー料金は日本の半額ですが、プレー回数は2倍、プレー人口は4倍になっていて、これはゴルフ場の8割がパブリックということと無縁ではありません。

ですから、日本がその方向に進むなら、いくらでも対応策はありますよ。

日米の違いをもうひとつ挙げるなら、それはゴルフ人口に占める女性の割合です。日本は11%、アメリカは22%になっている。レディスの新規開拓は、ゴルフ界にとって重要な課題です。仮にアメリカと同じ割合になれば、ゴルフ人口そのものが増えるでしょう。

加えて日本人のデート費用の総額は年間3000億円とも言われ、その数%をゴルフに引っ張るだけでかなりの効果が期待できる。

女性対策を取り入れるゴルフ場も増えていますが、まだまだ十分ではありませんね。大体、女性が昼食でカツ丼なんか食べませんよ(笑)。レストラン改革や女性だけのスクランブル競技など、参加しやすい工夫はたくさんある。これらを着実に実現すれば、ゴルフ場がデートコースになるのも夢ではありません。

パブリック化が進むなら、若い女性のファッションにも寛容な態度で臨むべきでしょうね。タトゥーはさすがに問題ですが、10年後、日本が社会通念として容認するならば、ゴルフ場も考え直すかもしれません。

いずれにせよ、ゴルフ場の経営を正常化するには経理の公開を含めた透明性を追及すること。メンテナンスや接遇マナーの専門知識を導入して、他のサービス業と比べて遜色ない満足感を提供する必要があります。


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ライター紹介 ライター一覧

片山哲郎

片山哲郎

1962年8月3日生まれ、東京都出身。
「月刊ゴルフ用品界」(GEW)を発行する株式会社ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長として、ゴルフ用品産業及びゴルフ界全般の動向を取材、執筆。2014年4月に日本ゴルフジャーナリスト協会の会長に就任(現任)。

ほかにインタラクティービ(J:COM)番組審議会委員(現任)、ゴルフ市場活性化委員会マーケティング委員(現任)、大学ゴルフ授業研究会理事(現任)。

信条は「人の至福は健康で長生きすることであり、これに寄与できるゴルフは『善』である。善なるゴルフ産業が健全発展するために、建設的な批判精神をもち、正確、迅速、考察、提言を込めた記事を書く」――。

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