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ブリヂストンスポーツの望月新社長が事業再興の青写真を描く

社長の記事 ブリヂストンスポーツ 片山哲郎
BS
ブリヂストンスポーツ 望月 基代表取締役社長 

今年1月、ブリヂストンスポーツ(BSP)の社長に就任した望月基氏は、ブリヂストンサイクル(BSC)の社長も兼ねる。さらに言えば、昨年10月に両社の経営を統括する「バーチャルカンパニー」のBSPCを立ち上げて、そのCEO(最高経営責任者)も務めるというから、一体、何がどうなっているのか?

背景には、五輪を契機にしたBSグループ全体のブランド構想があるという。ブリヂストンは前回のリオ大会から、五輪の公式スポンサーになった。これを契機にグループ力の底上げを図る狙い。白羽の矢が立った望月社長は、社内で「再構築のプロ」とされる。青写真を聞いてみよう。なお、文末にインタビュー動画を2本掲載したので、そちらもご覧頂きたい。

ブランド価値は「広さ」と「深さ」

望月さんは原理原則論者だそうですね。

「論者というか、困った時は原理原則に戻ろうという考え方をもっています。BSで37年間、大半は失敗の繰り返しですが、会社には経営のプラットホームがきっちりある。つまり戻るべき原点がありますから、悩んだらそこへ立ち返ろうと。そんな考えで仕事に臨んでいます」

過去の大きな失敗は何ですか?

「ん~、失敗というか、わたしの歩みの大半は事業の再構築なんですよ。思い出すのは2005年、中国エリア5県を統括する販売会社の社長になったことです。

販社の社長は本社の部長や本部長クラスの仕事でしたが、わたしは43歳の課長で行きました。これは、若い社員に経営経験を積ませるプロジェクトの1期生でしてね、上からは『修羅場経験をしてこい』と。案の定、初日からやられたわけですが(苦笑)」

「やられた」というのは、販社の古参社員に、

「『どうせ我々を踏み台にして本社に戻るんだろ』とか『見下してる』といったような感じでね」

「地元」の子会社としてはそうでしょうね。本社から若い課長がエリート風を吹かせてやって来たわけだから。

「まあ、ねえ(苦笑)。ここはBS100%出資の販売子会社で、化工品を広島の製鉄屋さんとかに売る会社なんですが、その売り先がまた荒っぽくて。わたし荒っぽいの大好きだから、逆に燃えるんですけどね(笑)。今度のスポーツ業界ね、こんなお上品な業界は初めてですよ」

スポーツ(BSP)の社長になったのは今年1月ですが、その前にサイクル(BSC)の社長になってますね。

「それが去年の10月、天から降ってきたんです(笑)。元々は去年の7月に副社長での辞令が来て、サイクルの販売とマーケティングを見てくれと。その3か月後に社長になったと思ったら、今年1月にBSPの社長も兼務せよと。そういった経緯になっております」

それは望月さんの経歴、つまり「再構築のプロ」への期待ですか?

「今回の人事の最大の理由は、五輪絡みという認識があります。当社はリオ五輪から10年間、オリンピック・パラリンピックのグローバルスポンサーになりましたが、その意図はブリヂストンのブランドをもう一段、高める狙いがあるんですよ。

タイヤの世界でBSは大企業かもしれませんが、五輪スポンサー級の企業群ではまだまだ小さいし、桁外れの大企業が沢山ある。BS全体の長期構想を描く上でスポーツビジネスは重要ですが、従来みたいにサイクルとスポーツが個々に動いてたらダメなんだと。改善するには横の連携が必要で、だから再構築をしてきた自分に声が掛ったのかな、という認識がありますね」

五輪を契機にグループの構造改革

世界経済は激変している。IT系は10兆円級の巨大企業が群立してますが、BSブランドの再構築という観点でポイントは?

「まず、五輪は世界最大のコミュニケーション・プラットホームですから、これを契機にブランド力を高めたい。で、ブランドには深さと広さがあると考えます。深さは草の根からハイエンドに至る縦のレベル感の話ですが、一方の広さは幼児、学童からママさん、通勤通学者、あるいは健常者と身障者といったように横の広がりが大事になります。

要するにブランドは広さと深さの掛け算であり、ライフステージ全般にわたって訴求していくという考え方です」

BSはタイヤ、つまり装置産業という体質なりDNAがある。それで3・6兆円の企業規模ですが、もう一皮も二皮もむきたいと?

「はい。タイヤは30~50代の成人男子がコア層なので、70~80代のシニアはターゲットになりにくい。その中でスポーツとサイクルは広さを体現する事業であり、さらに言えば最終消費者にダイレクトでつながるのはスポーツとサイクルの2社なんですよ」

この2社のほかにはない?

「と考えて結構です。売上比率はタイヤが8割、その他が2割ですが、ユーザーに直接つながるブランドはBSPとBSCが担うという意味では、グループ内でも非常に特徴的だし、大事にしなきゃいけない事業です。これをオールBSで活用して、一体化するプラットホームを作り直す。ワンチームでやっていこうという流れがあるわけです」

その流れで、既に具体的な成果はありますか?

「具体的にはこれからですが、BSPのスイミングスクールは比較的早いと思いますね。ここをタッチポイントにして幼児用の自転車を紹介したり、あるいは親会社のBSも一体的に関わるため『タイヤ館』も活用できるんですよ。

タイヤ4本交換するのに1時間ほど掛かるでしょ。するとその間、クラブのフィッティングをしたり、サイクルの試乗をしましょうと。特にゴルフとクルマは親和性が高いから、いろんな挑戦ができますよ」

パラ競技の車椅子テニスをサポートしてますが、サイクルと協業で車椅子に注力するとか。

「そうですね」

手引きカートの電動化とか。

「可能性はあると思います」

質実剛健のブランディング

次にゴルフ事業について伺います。市場の印象はどうですか。

「主要取引先にご挨拶を終えた段階ですが、ゴルフとサイクルは似てるなあと思うのは、自転車の国内需要はピークの1200万台からほぼ半減なんですよ。ゴルフもこれと似た状況で、市場性や当社のゴルフ事業も転換期にあると思います。昔はピカピカだったけど、自分達が招いた混乱を含めて苦戦中だと。

で、御誌が毎年8月号でやってる『メーカーランキング』がありますね。あれを最初に見せられたとき、実は愕然としちゃいましてね。BSグループでいろんな事業をしてますが、多分、あそこまで低い評価を受けてるのはひとつもない」

そうですか。で、実際に小売りをまわってみて?

「同じでした(苦笑)。このことは、当社がお客様本位ではなく、社内の論理でやってきた証拠なんだろうと思うんですよ。なので、まずはこの点を早急に見直したいと考えております。

それと同時に、オールBSの力を結集して戦略の選択肢を広げることも重要になります。ゴルフ単独では間尺に合わない投資でも、オールBSだと行けるという判断もあるでしょうから」

すると広告、販促、プロ予算等を「親」から引っ張って来ることもある。

「案件によってはそうですよ。ブランドは個社のモノではなく、BS本体の掌握になる。すると予算は、100%個社がもたなくていいですよと」

極論すると独立採算ではなくなってくるし、スポーツとサイクルの融合体はBSブランドのPR部門という役割が強くなる。

「そういうことです。まさしくそのイメージなんですよ。資本的には親子関係かもしれませんが、新しい考え方では親会社のBSと子会社のBSPとBSCが横並びになるんです。縦関係だと忖度したり委縮するので、この感覚も排除しなければいけません。

わたし、58歳でサイクルに行けといわれました。当時は化工品担当の常務でしたが、普通は派遣で行くケースが多いんですね。すると子会社の社員は『つつがなく4年で終わり』と思いますよね。そう見られたら絶対にダメだから、わたし、退路を断ちました。つまり戻り先がないんですよ。

だからスポーツもサイクルも『わたしの会社』だし、腰掛でもありません。縦関係の忖度も一切しません」

ブランド再興の上で芯金になる思想は何ですか。

「まず、コレが欲しい、試したいと思われるボールでありクラブを作りたいし、その際、我々のDNAは、外資系みたいに勢いや流行を一気に立ち上げる手法とは違うと思うんですね。もっとこう、基礎的な技術を背景に高品質・高機能を深掘りする、その流れでワクワク感を醸成していくと」

外資系みたいに派手な進軍ラッパを吹き鳴らさない?

「自分たちのDNAとして、派手な進軍ラッパはどうでしょう。ぼくは営業の出身だから吹きますが、凸凹の波を作るのはダメだと思うんですよ。BSPは過去、それを散々やりましたが、これからはオールBSのブランドを担う大事な部門だから、スポーツのブランディングがタイヤや化工品と違うのはまずい。

ブリヂストンはあくまで高品質、高機能、信頼性、そこは絶対に外せません。広告をバーンと打って、瞬間上がるけどすぐ沈むってのは問題ですね。地味に映るかもしれませんが」

地味なことでワクワクさせるのは難しいですよね。

「だけど、ゴルフシューズで大好評の『ゼロバイター』がありますよね。これはソールの技術が非常に優れていて、タイヤの技術、化工品の技術、我々のDNAがいっぱい詰まっているんです。それでプレーヤーの足元を固めて商品の魅力を感じて頂く。そのあたりは譲れないポイントです」

質実剛健のブランディング。

「そう。ブランドについてぼくの考えは『シード権』だと思っていて、これがあれば予選を戦わなくていい。たとえば試打室に持ち込まれるドライバーは3~4本じゃないですか。それがシード権で、あの中に入らないとチャンスはない。まずはここに入る状況を作りたいと」

現状は3本に入ってない。

「おっしゃるとおりです。テーラーメイドとキャロウェイがあって、ゼクシオもある。4本目はピンですかね。それと、我々の生命線である『高品質』もミズノとホンマ、特にミズノへの評価が高いから、このあたりをどうやって挽回するかです。見ててください、やりますよ!」

サイクルとスポーツの社長兼務で、片手間になりませんか?

「とんでもない。それぞれ7時間で雑務が2時間。一日16時間働いてます!」

以下、動画を2本掲載する。1本目はスポーツとサイクルを一体化してブランドの底上げを強調する。(約6分間)

次にゴルフ事業の強化策を語る。キーワードは「品質」と「誠実」で、BSの社是に則って捲土重来を期すという。


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ライター紹介 ライター一覧

片山哲郎

片山哲郎

1962年8月3日生まれ、東京都出身。
「月刊ゴルフ用品界」(GEW)を発行する株式会社ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長として、ゴルフ用品産業及びゴルフ界全般の動向を取材、執筆。2014年4月に日本ゴルフジャーナリスト協会の会長に就任(現任)。

ほかにインタラクティービ(J:COM)番組審議会委員(現任)、ゴルフ市場活性化委員会マーケティング委員(現任)、大学ゴルフ授業研究会理事(現任)。

信条は「人の至福は健康で長生きすることであり、これに寄与できるゴルフは『善』である。善なるゴルフ産業が健全発展するために、建設的な批判精神をもち、正確、迅速、考察、提言を込めた記事を書く」――。

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