1. 社長の記事

暴走事故と免許返納「シニアゴルファー問題」をPGM田中社長語る

社長の記事 片山哲郎
PGM代表取締役社長 田中耕太郎氏

国内141コースを運営、来場者796万人を数えるPGMは、今年3月期の前期決算で売上高825億円、昨対1.7%増を記録した。昨年7月の西日本豪雨など多くの天災に見舞われただけに、田中耕太郎社長は「かなり頑張った」と胸を撫で下ろす。

が、ゴルフ場業界を取り巻く環境は厳しさを増す。最たるものが市場の中核を成すシニアゴルファーのリタイアで、社会問題化している高齢者の暴走事故や免許返納がゴルフリタイアを早める可能性もある。つまり、四面楚歌の状況なのだ。

このような現状をどのように捉えているのだろう。田中社長に展望と解決策を聞いてみた。本文はGEW(月刊ゴルフ用品界)7月号「VIPの視点」を要約、併せて動画インタビューもご覧頂きたい。(聞き手・片山哲郎)

天災によるコース崩壊は保険適用外


前期は悪要因が重なりましたが、決算は健闘の部類ですね。

「ありがとうございます。ご存知のように昨年は、7月の西日本豪雨に記録的な猛暑、二度の大型台風縦断があって、最後に北海道の地震(胆振東部地震)です。これによって第2四半期(7~9月期)の業績は大きく左右されました。特に豪雨の被害は甚大で、今も4コースほどが通常営業できていません」

どんな被害状況ですか。土砂で1ホール丸潰れとか?

「いやもう、凄いですよッ。フェアウェイの陥没なんてもんじゃなくて、岸和田CC(大阪府)なんかは進入路が消えてしまった。ここは27ホールだったので、9ホール潰して進入路をつくったり・・・。あの様子は言葉では表現できませんね。

ただ、通期の業績は秋の天候が安定して、冬場も雪が少なかったでしょ。来場者は796万人で、来場者数と売上は前年をクリアできました。平均客単価も微増(9218円)だったから、計画値には及ばないものの、かなり頑張ったと思います」

災害の保険適用は?

「ゴルフ場には施設賠償保険があって、クラブハウスには適用されますが、コースは適用外なんですよ。ウチだけじゃなく西日本のゴルフ場は相当やられたし、復旧費用はどこもかなりでしょう」

数億円規模ですか?

「そんなものではありません。回復に10億20億掛かるとすれば、財務的に弱いところは廃業に追い込まれてしまう。ゴルフ場業界はプレー人口の減少など多くの課題を抱えていますが、異常気象は一番深刻かもしれません。ゴルフ場は赤字経営が多いので、諸問題に耐えられなければ売却案件が増えるかもしれませんね」

高齢者の免許返納問題は?


自然災害の一方で、昨今は高齢者の暴走事故と免許返納が社会問題化しています。深刻なのは、業界の上顧客である団塊の世代がクルマを手放すと、ゴルフリタイアが前倒しで加速する。これも大きな問題じゃないですか。

「もう、毎日ニュースでやってますよね。それで免許返納が加速すれば業界への悪影響もあるでしょうが、この問題で最初にピンと来たのは自走カートの運転ですよ。脇見運転したら崖や池に落ちますし、この面での危険性が高まっているのかなと。

安全管理をこれまで以上に強化すると同時に、電磁誘導カートへの切り替えですね。当社の場合は自走カートが全体の6割以上と多いので、特に山岳コースは切り替える必要があるでしょう。

また、池の縁石を補強したり、危険個所の案内板を増やしたり。全長7㎞のカートパスを細かく点検して十分な対策を講じること。そんな思いが日増しに強くなっています」

18ホールの場合、必要なカートは何台ですか。

「一日50組とすれば、予備を含めて60台は必要になります」

1台の値段はいくらですか。

「一般的には、5人乗りのガソリン車で1台120万~130万円はすると思いますね。頑張れば10年は使えますけど」

なるほど。1コースで全部交換すると7000万円ほどの出費になる。で、免許返納問題は、業界にどれほどのインパクトを与えると考えられますか?

「その点はいろんな見方がありますが、まず、免許返納のスピードは早まると思います。その衝撃度ですが、来場者の年齢構成比を見てみると、当社の場合は延べ800万人で80歳以上が3%、70代は20%だから合計23%です。

さらに後期高齢者の75歳以上でラインを引くと10%になりますが、仮に75歳以上の層があと5年でゴルフリタイアすると仮定すれば、返納問題によって来場者の1割が消えるスピードが早まると。すると、その分を若い来場者で埋める作業が大事になる。つまりこの問題は、」

来場者80万人分の補充作業という見方もできる。

「おっしゃるとおりです。と同時に、この問題をクルマ離れの観点で考えてみると『電車でゴルフ』の環境整備、つまり送迎バスの有無が重要視されるので、この部分を強化する必要もあるでしょう。 

実は今、46コースで送迎バスを出していますが、需要の大半は関東のコースなんですね。関東には系列59コースありまして、その6割に当たる35コースで送迎バスを出しています。

これ以外では大阪で10コースほど出していますが、逆にまったくないのが名古屋圏と中四国、九州、東北で、このあたりは電車でゴルフの文化がないというか、」

そもそも電車が通ってない。

「そう(苦笑)。むしろ自宅からクルマで30分とか、クルマ社会を前提に成り立っているから『電車でゴルフ』は都市部の課題でもあるわけですよ。で、これに関連するのが人手不足です。

この問題も極めて深刻なんですが、自社でバスを出す場合は自前の従業員を確保するのが難しくて、採用しても年配者が多い。それで事故でも起こされたら大変だし、そのリスクを考えると簡単にバスは出せません。それと、送迎バスを出せるのは最寄駅から30分以内が目安なので、対応できるコースも限られます」
 
すると、電車で行けるゴルフ場の価値は上がっていく?

「んー、どうでしょう(笑)。そのへんはよくわかりませんが、返納問題に話を戻すと、これは80代が大半じゃないですか。この世代は当社の3%で、しかもこの3%はほとんどメンバーです。

ということは自宅から近い、電車で行ける。80過ぎたビジターがクルマで来場されるケースは限りなくゼロに近いはずだし、そう考えればリタイアは、自然の摂理で仕方ないのかなと。個人的にはそんな印象をもっています」

若いゴルファーを増やす具体策


自然の摂理で減少する分を若返りで埋める必要がある。その際、シニア層が保有する会員権を下の世代にシフトする必要もありますね。

「はい。その施策を以前から進めていて、この5年ほどは自社発行の補充会員募集をやっています。PGMには18万人の会員がいらっしゃって、平均年齢は63歳ですが、補充会員の平均は50代半ばなんですよ。

イメージ的には、75歳以上の会員が100人ゴルフリタイアで退会したら、その半分を若返りの会員で補充する感じで、トータルの会員数は減少傾向なんですが、2~3年掛けて補充する活動を大半の系列コースでやっています。

もうひとつ、プレミアムステージというのがありまして、これは65歳以上で会員権をもっている人は二親等以内の方に譲渡できる。本人は会員じゃなくなるけど、会員待遇でプレーできます」

名変料は?

「いずれも掛かりません」

若い世代にとって名変料は理解しにくいし、会員権が10万円なのに名変料が100万円のケースも珍しくない。これは会員権の流動性を阻害する面もありますね。

「それを言ったら会員権相場にも触れなきゃダメですよ。つまり相場があるから名変料があるわけで、昔からのやり方が残っているわけですが、同様に預託金というのも不思議でしょ。だから今、当社が自社発行している会員権は預託金がなくて、入会金だけです」

というか、預託金はゴルフ場をつくるための錬金術だった。

「まあ、バブル時代に1000万円の会員権があったとして、預託金7割、入会金3割で、7割の分を10年、15年の据え置きでゴルフ場に預けたと。それで(返せなくて)どんどん潰れたという流れですよね。会員権相場があり、預託金があって名変料があるというのは、多分日本のゴルフ場だけでしょう。

だから今、自社発行分について名変料はありません。先述の施策を5年ほどやっていて、新しい会員の平均年齢は56~57歳。一番安い会員権は10万円ぐらいで高いのは100万円ほど。それで年間5000人ほど入会しています」

古参の会員が若者をにらむ


次に「グランPGM」の話を伺います。これはハイエンドの12コースをグループ化する試みで、系列141コースを階層化する試みですね。傍目にはアコーディアの「トロフィア」と似てますが、狙いは何です?

「そもそもの問題意識は、ゴルフ場来場者の属性がバラバラというところにありました。初心者もいればシングルもいて、対象者が不明確なんですよ。

ゴルフ人口の減少理由を考えると、シニアが多くて若者が少ない。若者がやらない理由は沢山ありますが、年配者が多いから自分達が浮いてしまうという問題も指摘されます。

年配者が中心だと、ゴルフ場のオペレーションもそれに合わせるじゃないですか。食事のメニューがシニア向け、松の盆栽が置いてあったり、囲碁・将棋がデンとある。スタートホールでは後続のシニア会員に睨まれたりして(苦笑)」

あの態度は本当に問題ですね。ゴルフが上手いだけの古株が、牢名主みたいに威張ってる。威圧されてゴルフが嫌いになった若者は星の数ほどいるでしょう。

「で、若い方が初めてゴルフ場に行きました、それで諸々の光景を目の当たりにすると、エッと息を呑むわけです(苦笑)。

そこでグランPGMの話ですが、ゴルフ界の課題を若者、女性、インバウンド需要の開拓とすれば、これからのゴルフ場は個々のターゲットに合わせて照準を定める必要がある。その特色づけのひとつとして、まずはハイエンドの10コースほどをまとめてみようと。

実際、お題目だけじゃ進まない部分が多いんですよ。業界は今、レディス開拓を掲げてますが、阻害要因のひとつにキャパシティの問題があって、女性用ロッカーが10個しかない、あるいは浴場のカランが3つで家風呂と変わらないとか。

古いコースは女性用施設が貧相極まりないし、男女の使用面積比率が95対5も珍しくない。女性の浴場、ご覧になりました?」

ないですよ。見たら通報されてしまう(苦笑)

「なるほどね(笑)。もうひとつがインバウンドで、これも外国人来場者が5割以上占めないと成立しにくい」

わかります。特に韓国のゴルファーは非常に熱い。勝った負けたで大声で話すと、日本人との軋轢が生じてしまう。

「そう、つまり『混在』ですな。若者や女性が増えないのも混在が大きな要因で、たとえばフルコース4万円の高級レストランにジーパンの若者が来ていたら、二度とそこには行きませんよね。

ゴルフ場も同じことだから、グランPGMは単価を上げて、1万3000~1万4000円に設定してます。141コースの平均単価が9218円だから3割ほど高いわけですが、その分組数も制限する。

一日60組入れるコースはスタート間隔が5~6分で詰まるけど、これを8分間隔にすれば45組程度だけどゆったり楽しめる。早朝・薄暮プレーをやらずにコースの常態を良好に保ち、スタッフのサービスも高級ホテル並みを目指したい。

141コースの平均従業員数は18ホールで60人超ですが、グランPGMの場合はクラブハウス内のスタッフを通常の1.2倍程度に考えています」

ネット予約への制限は?

「グランPGMは大手2社(楽天GORA、GDO)からも予約できますが、枠数はかなり狭めています。提供は冬場の枠だったり、枠自体を公開しない日もあって、メンバー優先でコントロールしていきます」

志向性に合わせた分類法


141コースをマッピングする上でハイエンド、若者、女性、インバウンドがあるとして、それ以外の分類法はどうですか。

「その話でいうと『スルー』もひとつのカテゴリーになるでしょうね。本州では9ホール終えてランチが当たり前ですが、沖縄・北海道はスルーじゃないですか。これを本州でも増やしたい」

それは大賛成です。ゴルフの難しさは、スタートの3ホールで心と身体をコース空間に馴染ませることもありますが、ようやく慣れて来たのに「お昼です」って。食事で腹が膨れ、また頭の3ホールからやり直す。後半のスコアが悪いのは昼飯のせいですよ。

「まあ、それはともかく(苦笑)、スルーの文化を本州でつくらないと若者が増えないと思うんですよ。特に関東圏はゴルフ場行くのに1時間半、帰りは渋滞で2時間。朝は4時とか5時に起きて、コンペのパーティやったら帰宅は夜。これでは本当に苦痛です。

スルーで早めのスタートだと、一日を有効に使えますよね。これやらないと若者は増えません。現状、スルーの試みは5コースでやっています。コシガヤGC(埼玉県)を皮切りに、東京ベイサイドGC(千葉県)、今年に入って多治見北GC(岐阜県)と名阪チサンCC伊賀コース(三重県)などですが、今後、毎年2コースぐらい増やす感じで進めます」

「カジュアル・スルー」がひとつのカテゴリーになると?

「はい。今の状況で劇的に若者を増やすのは難しいと思いますが、当社には141コースあるのでチャレンジできる。

新しい試みは定着するまでに時間が掛るんです。スルーの導入も当初は反対の声がありましたし、業績的にもマイナスが生じる可能性がある。でも、当社の場合は他のコースでカバーできますから」

全体最適の中で個別の挑戦ができる強みがある。

「そう。ですから単体の経営者の方とは考える土俵が違うと思うんですね。別の観点で言えば、去年銀座にオープンしたインドア施設もそうです。手ブラでレッスンを受けられるし、みんなでワイワイ楽しめる。女性の来場率は3~4割じゃないですかね。

オープンして1年未満ですが、銀座を基点にゴルフ場への誘導を考えていきます。ここで様々なノウハウを構築したら、他の大都市圏に水平展開することを含めて議論したい。いろんな面で改革を進めていきますので、期待してください(笑)」

*月刊ゴルフ用品界(GEW)7月号「VIPの視点」から抜粋・要約。以下、田中氏との動画インタビューを2パートに分けて掲載する

Part1(約6分間)

part2(約4分間)


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ライター紹介 ライター一覧

片山哲郎

片山哲郎

1962年8月3日生まれ、東京都出身。
「月刊ゴルフ用品界」(GEW)を発行する株式会社ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長として、ゴルフ用品産業及びゴルフ界全般の動向を取材、執筆。2014年4月に日本ゴルフジャーナリスト協会の会長に就任(現任)。

ほかにインタラクティービ(J:COM)番組審議会委員(現任)、ゴルフ市場活性化委員会マーケティング委員(現任)、大学ゴルフ授業研究会理事(現任)。

信条は「人の至福は健康で長生きすることであり、これに寄与できるゴルフは『善』である。善なるゴルフ産業が健全発展するために、建設的な批判精神をもち、正確、迅速、考察、提言を込めた記事を書く」――。

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