1. 社長の記事

JGTO石川選手会長「アマ優勝の賞金はジュニア支援に回すのが本質」

社長の記事 片山哲郎

日本ゴルフツアー機構(JGTO)は12月9日、都内のホテルでスポンサーや業界関係者らを集めツアー終了の表彰式を行った。賞金ランキング賞、最優秀選手賞には2年連続で今平周吾が選出され、ほかに「三井住友VISA太平洋マスターズ」でアマチュア優勝を遂げた金谷拓実の特別賞など、計17部門で表彰された。

「ゴルフ日本シリーズ JTカップ」を制し、今季3勝、賞金ランク3位となった石川遼は選手会長として約3分間、メモを持たずに流暢な挨拶で締め括った。

「我々は、ただゴルフが上手いだけではなく、いろいろな責任と役割を担っています。皆さんが喜ぶことが一番大事だし、それが一番の恩返しになる。男子の良さをメディアに取り上げて頂き、強力に発信していきたい」

写真は、記者会見を終えてスポーツ各紙の報道を見る石川。メディアを通じた男子ツアーの発信を重視するだけに、「日本シリーズ」優勝を伝える各紙の大見出しは満足な成果といえそうだ。

とはいえ、選手会長としての2年間は「完全に不完全燃焼でした」と反省する。JGTOの副会長、選手会の会長、さらに目玉プレーヤーとしての活躍が求められる一人三役をこなしたが、満足のいく出来ではなかったという。

72ホールやるべきです

72ホールやるべきです

表彰式終了後、JGTO青木功会長、賞金王の今平、選手会長の石川が記者会見に登壇、本誌はそこで2つの質問を行った。ひとつは今平と石川に対して「短縮試合」の在り方について。もうひとつは青木会長と石川に「アマに負けたプロが繰り上げ賞金をもらうこと」の不条理について。

今季は米ツアーの「ZOZO選手権」が開催され、豪雨による日程延長と「無観客試合」の併用で72ホールを終わらせている。一方、今平の2勝はいずれも「短縮試合」であり、米ツアーとの違いが浮き彫りになった。温暖化による気候変動が加速する中、このままでは短縮試合の増加が懸念される。

また、「三井住友VISA太平洋マスターズ」ではアマの金谷に敗れたショーン・ノリスが、優勝賞金4000万円の獲得とランキング加算で今平と賞金王を争うなど、スッキリしない展開もあった。これらについて本誌が壇上の三者に尋ねたものだ。以下、質疑応答を再現しよう。

まずは今平選手、2年連続の賞金王おめでとうございます。その上で、今季2勝(ブリヂストンオープン、ダンロップフェニックス)のいずれもが悪天候による短縮試合でした。今平さんはZOZO選手権にも出場しましたが、こちらは月曜の予備日を使って72ホールを終わらせている。日本の賞金王として、日米の違いをどう受け止めていますか?

「やはり、大会自体は4日間をプレーして、気持ちよく終えることがいいと思います。日本と海外の試合を同じようにするのは難しいと思いますが、選手の願いとしては、予備日を設けて、4日間やりたい」

これはシステムの問題なので、今平さんの賞金王にケチをつけるつもりはありませんが、72ホールやるべきだと?

「そう思います」

石川選手会長にも同じ質問をします。

「月曜に予備日を設けて72ホールを目指す(米ツアーの)姿勢は見習うべきだし、日本も月曜に予備日をとってほしいと思っています。72ホールを戦うことで実力がつくし、最後まで最善を尽くす姿勢は大事です。今年の『日本プロ』は日曜日に36ホールやりましたが、本当の予備日として月曜があることが望ましい。

ぼくだけではなく、選手たちの純粋な気持ちとして72ホールを戦って1位を決めたいと思っているはず。特に今後、気候変動が大きくなる中で試合をやることを考えると、72ホールを目指す姿勢を選手間で共有して、現状は厳しいかもしれませんが、どうやって実現するかを考えたいです」

「短縮試合2勝」での賞金王は、今平の胸中に釈然としない思いを残したように見える。土曜日に「無観客試合」となった「ZOZO選手権」では、午前3時半から130人体制で8時間、前日の豪雨による排水処理を行った。第1組のスタートは午前10時。その2~3ホール先を選手と追い駆けっこをするようにメンテナンスする綱渡りだった。

会場はアコーディア・ゴルフの習志野CCということもあり、系列コースからの応援で人海戦術が可能だったとの見方もあるが、少なくとも、72ホールの完走を目指す米ツアーの執念が際立った。「日本シリーズ」の72ホール目で優勝を取り逃がした今平と、プレーオフで決着をつけた石川。最終戦のドラマを見るにつけ、完走の重要性が改めてわかる。

アマの賞金をジュニア支援に

アマの賞金をジュニア支援に

次に、青木会長と石川に、アマ順位の獲得相当額をプロが得ることについて聞いた。青木会長には記者会見の質疑応答で、石川には囲み取材終了後に単独で尋ねた。

青木会長に伺います。本来、アマ選手が得られたはずの賞金をプロが繰り上げで得ることに、個人的には強い違和感を覚えます。現状を改め、アマ順位相当の賞金をプールして、ジュニア支援に回すことがフェアだと思えるし、子供へのゴルフ支出で家計を圧迫することも緩和できる。如何でしょう?

「最近のアマは強い選手が多いですが、それでも近年勝ったのは松山や金谷君ぐらいだから、万度(ばんたび)起きているわけではないと思います。それと、スポンサーとの関係もあるのでいろいろな調整も必要になるでしょう。ただ、提案されたジュニアについては検討しており、いずれはそういうふうにしなければと考えている回答を、出せるようにしたいですね」

「アマ賞金」の使途は検討中でよろしいですね。

「(頷く)」

石川の回答は以下の内容だった。

アマの賞金をプロが繰り上げでもらうことについて石川さんはどう考えますか?

「そうなった過去の経緯を詳しくは知りませんが、今後もアマが勝つ可能性はあると思っています。今のシステムで宙に浮いた4000万円は(ショーン・ノリスが得ても)仕方ないとは思いますが、ぼくもジュニア時代に様々な経験をしているので、ジュニア支援に回すことは基本的に賛成です」

青木さんはスポンサーとの調整もあると話していますが、何が障害になるのか?

「というか、説明の仕方によると思うんですね。それが必要だと、具体的なビジョンをスポンサーに示せば、特別な支障はあるのかなって思いますけど。大事なのはビジョンです」

石川さんは選手会長も務めている。つまり選手の利益代表者です。これまで得られたアマの賞金がなくなると、選手会で反発が起きませんか?

「そこはゴルフ界にとってどっちがいいのか、が本質だと思うんです。今の選手も大事ですが、ジュニア育成は将来のゴルフ界が発展するためにはとても大事な課題ですよね。その部分はJGTOが先頭に立ってやらなければいけないし、自分もジュニアからやってきたので事情はよくわかります」

ジュニア支援に回すのは賛成だと。

「はい、個人的には賛成です」

石川自身、2007年の「マンシングウェア KSBカップ」で高校生V(15歳)を飾っており、父・勝美氏との二人三脚でジュニア時代に苦労を重ねてきた。それだけに、コメントには説得力がある。

将来が期待されるジュニアゴルファーは、競技成績が優秀なほど家計が圧迫される傾向にある。移動や宿泊、プレー料金の合計が「年間500万円」というケースも珍しくなく、逼迫した親が子供にスコア至上主義を植えつけて、スコアを誤魔化す「消しゴム事件」など看過できない問題も指摘される。

日本プロゴルフ協会の倉本昌弘会長は、「それが多くの挫折者を生む」と警鐘を鳴らすが、高額な負担それ自体が青少年のゴルフ参入を阻み、一部の裕福な家庭の子息に限られ、結果、多くの子供が他のスポーツに取られるという悪循環も無視できない。

これを解決する一助として、「アマ基金」なる機関を創設、アマ選手が得られたはずの賞金を総じてここにプールし、ジュニア支援に回すことは有効だろう。その際、世帯の収入証明などを提出して所得が低い家庭への支援を優先すれば、貧富の差による機会均等の損失を緩和できる。

また、プロが照れ笑いを浮かべて受け取る「繰り上げ賞金」は、ゴルフファンに強い違和感を与える。その違和感の正体は「みっともない」という印象に尽き、他のスポーツと比較したプロゴルフ界の甘さを露呈させる。

不完全燃焼の2年間

不完全燃焼の2年間

石川は記者会見の冒頭、2年間務めた選手会長職について「アッという間の2年でした」と振り返り、こう続けた。

「男子の魅力を伝えるには、こちら側の努力がもっと必要だと痛感しましたが、逆に言えばそれだけノビシロがあるということです。ただ、選手会の在り方やその他についても完全に不完全燃焼でした。選手を守りたい気持ちと、その前にファンに喜んでもらうにはどうしたらいいかを常に考えてきた。

27歳と28歳の2年間で、難しいことが沢山あったし、もっと知識が必要だとも思いました。日本のゴルフ界の発展に向けていろんな発信をしていきたい」

JGTOの副会長と選手会の会長を兼務することは、企業において副社長と労働組合の委員長を兼務することに似ている。双方は二律背反の関係だが、その両立に苦しんだ様子が伺える。

温暖化による気候変動は今後、さらに猛威を振るうと予想されるが、それを織り込んで「72ホールを目指したい」という石川のコメントは、「男子ツアーの魅力を高める」ことと通底している。

「渋野さんに倣って世界に羽ばたける男子を育てることが急務」と語る石川。そのためには「アマ賞金」の有効活用と「短縮試合」の解消がカギになりそうだが、同時にJGTOの執行部が長期的なファン目線に立ち、旧弊を打破する自己改革も求められる。


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ライター紹介 ライター一覧

片山哲郎

片山哲郎

1962年8月3日生まれ、東京都出身。
「月刊ゴルフ用品界」(GEW)を発行する株式会社ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長として、ゴルフ用品産業及びゴルフ界全般の動向を取材、執筆。2014年4月に日本ゴルフジャーナリスト協会の会長に就任(現任)。

ほかにインタラクティービ(J:COM)番組審議会委員(現任)、ゴルフ市場活性化委員会マーケティング委員(現任)、大学ゴルフ授業研究会理事(現任)。

信条は「人の至福は健康で長生きすることであり、これに寄与できるゴルフは『善』である。善なるゴルフ産業が健全発展するために、建設的な批判精神をもち、正確、迅速、考察、提言を込めた記事を書く」――。

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