御徒町のコトブキ「2店舗閉鎖」で反転攻勢の青写真

御徒町のコトブキ「2店舗閉鎖」で反転攻勢の青写真
都内御徒町に3店舗(ワールド、バーディ、北口店)を構えるコトブキゴルフは3月末、バーディ館(売場面積272坪、6階)と北口店(33坪、2階)を閉鎖し、ワールド館(386坪、5階)の単独営業に踏み切る。この決断について安本昌煥社長は「ルビコン川を渡る覚悟」と心情を語った。 「ルビコン川」は古代ローマ時代、ポンペイウスとの対決を決意したカエサルが「賽(サイ)は投げられた」と号令を掛け、後戻りできない覚悟で渡った川。転じて「重大な決断」を表わすもので、同氏の決意が伺える。 コトブキゴルフの創業は1966年、翌年2月に法人化しており、シントミゴルフ、二木ゴルフと並ぶ御徒町の御三家と呼ばれた。バブル全盛期、ワールド館は年商約30億円で単独店舗日本一の売上を記録し、世界一との見方もあったほどだ。 以後、都内恵比寿に高級志向の「エビスゴルフクラブ」を出店して「脱御徒町」を掲げ、都内西部地区の需要開拓に挑戦したが、約10年間営業したのち2013年12月に閉店。御徒町での一極集中に回帰している。 今回2店舗を閉鎖することについて、安本社長はこう話す。 「当社は御徒町アメ横地区で53年間、ゴルフ専門店一筋で一度もリストラをすることなく、ワンチームの心意気で頑張ってきました。しかし、年を重ねるごとに市場環境は厳しさを増し、企業形態に変化が求められてもいた。今回の2店舗閉鎖は変化に対応するもので、新たな展開で巻き返したい」 同氏が指摘する環境の変化は、団塊世代の高齢化とECの台頭によるリアル店の疲弊に集約される。価格競争の激化により粗利の確保が難しくなり、集客が見込める繁華街に複数店を構える必要性がなくなってきた。 特に深刻なのが団塊の世代の高齢化だ。この層は1947~49年生まれの約680万人で、日本のゴルフ市場を牽引してきた大集団。その第一陣が昨年、日本人男性の「健康寿命」である72歳に突入し、ゴルフリタイアの顕在が兆してもいる。これら諸事情を勘案して、 「同一商材で同一商圏3店舗は、必要ないとの結論に達したのです」

モノからコトへの展開探る

ただし、今後については前向きだ。4月以降は旗艦のワールド館とEC(KG-NET)に経営資源を集中させ、 「すべての人員、商材、機能をこの2つに特化して、効率の高い経営を目指します。特にウェブ経由のビジネスを強化・拡充する方針で、モノからコトへのビジネスモデルに転換したい」 同社は比較的早期にECへ参入していたが、御徒町に大型2店舗を近接したことでネットとリアル店の価格整合に苦しんだ。それも当然で、同一商圏に3店舗、計691坪の売場は如何にも大きい。今後、これが半減することで自社競合の余地をなくし、併せてECとの連携で新展開を図っていく。 モノからコトへの転換については模索中だが、1フロア約70坪のスペースがあるため、最新の機材を取り揃えたインドアスクールやゴルフフィットネスの導入で、売場と連動させる可能性もある。過去数年、最新のIT機器を備えたインドア施設の台頭が目立っており、5Gの普及を視野に入れた次世代レッスンへの期待も高まる。 「そのあたりについては専門企業との交流を深め、様々な意見を聞いていきたい。創業54年目にしてルビコン川を渡るからには、従来にない挑戦をしなければと考えています」 今後、反転攻勢の青写真を描いていく。