1. 社長の記事

サプライチェーン寸断 コロナ感染でゴルフ界対応急ぐ

社長の記事 片山哲郎

「とにかく風評被害が広がらないよう、一刻も早く手を打つ必要があります」

日本ゴルフ場経営者協会(NGK)の大石順一専務理事は、新型コロナウイルスの拡大を懸念して語気を強めた。NGKはゴルフ場経営者が集まる一般社団法人で、加盟・関係約300コース。今週中にコロナ対策の指針を作り、配布する。

要点は3つ。①来場者向けに入場時や食事の際のアルコール消毒、うがいの徹底。②従業員に検温と体調不良時には休みを促し、ゴルフ場側も極力対応すること。③館内のテーブル、手すり、フロントカウンターなどをアルコール消毒すること。

「接客業なので従業員にマスクの着用など強制しにくい面もありますが、『呼び掛け』として今週中に各コースへ配布します。ゴルフ場は安心・安全という雰囲気づくりを徹底して、来場者の落ち込みを抑制したい。

過去数日、複数のゴルフ場に電話で聞いたところ、コンペのキャンセルもあるようです。

東日本大震災級の『ゴルフ自粛』とまではいかないでしょうが、ゴルフは屋外のスポーツであり、客足が遠のかないよう早めに対策を打っていきたい」

一方、レッスンプロを中心に約5600人の会員を抱える日本プロゴルフ協会(PGA)の対応はどうだろうか? ゴルフの指導は「濃厚接触」の可能性が高く、協会として指針を出す必要があると思われるが、

「今日の会議でもコロナ関連の話は出ましたが、指導の現場対応については具体的な検討課題になっていません。国や自治体の指針に準じる形で、状況を見守りながらになると思います」(伊藤靖士広報部長)

PGAは3月下旬、春休みのジュニアゴルフ教室を全国34カ所で予定するが、中止か続行かの判断は状況を眺めながらになる。

サプライチェーン寸断の影響

日本ゴルフ用品協会は(JGGA)2月21日、ジャパンゴルフフェア(3月3月19~21日、パシフィコ横浜)の中止を決めた。国内外のメーカーが一堂に会し、昨年は6万487人の来場があった。球春到来を告げるイベントだけに、業界に与える影響は大きい。

来場者の感染や出展社員の罹患を避けたものだが、ゴルフフェアの収益(出展料)はJGGAの屋台骨でもあり、苦渋の選択を迫られた。

関連メーカーにとって深刻なのは、多くのゴルフ用品が中国で生産されていること。各種工場の操業停止を受けて、製品・部品の輸入がストップ。サプライチェーンが寸断され、春商戦の見通しが立たない企業も多い。以下、その声を列記しよう。

「大問題です。当社は深圳でキャディバッグを作っていますが、2月半ば現在で中国政府から工場の稼働認可が下りず、納品が遅れる可能性大。特に季節商品のウエアは深刻で、旧正月後の商品は港で順番待ちの状態です。1カ月遅れれば大打撃を受けてしまう。アジアへの出張は全て取り止めました」(ヤマニ西和敏専務)

「上海の協力工場から2月9日に操業再開と聞きましたが、今も自宅待機の社員が多く現場は停止中。当社は『匠ジャパン』というブランドをアジアに輸出していますが、韓国の代理店によれば小規模なゴルフ展示会が中止になったそうです」(共栄ゴルフ工業坂本敬祐社長)

「東莞でキャディバッグを製造しており、納期が1~2カ月遅れそう。春節を終えた工員が寮に帰ったけれど外出禁止で、工場は動きません。このままではキャンセルが続き売上減は必至の状況」(インタープランニング堀眞壽社長)

「深圳で製造しているグリップ交換液やテープなどに納期遅れが出ています。物によっては中国から韓国経由で入れる手もありますが、中国製品は韓国の税関で止まってしまい、輸入再開の目処が立ちません」(グラスト大道浩一社長)

「行政指導の自宅待機で工場は『開店休業』状態。売上数割減を想定します。国内製造にシフトすることを真剣に考える必要があるでしょう」(インフィニット秋山弘充代表)

「今年秋冬物の展示会をしましたが、中国工場がストップ、サンプルもオーダー通りの色があがってこないなど影響が出ています。アパレルは世界観が大事なので、それが出せないことに歯痒さと苛立ち感じますね」(ヘイズワークス竹本修社長)

「大打撃です。当社ではレーザー距離計の入荷が完全ストップ。特に懸念されるのはグリップで、生産拠点の大半が中国だからまったく目処が立ちません。毎年ゴルフフェアに合わせて取引先と会合をしているので、ホテル等もキャンセルです」(渡辺製作所渡辺浩美社長)

このように、各所で怨嗟の声が渦巻いている。

中には「脱・中国」を加速させる動きもある。従来のチャイナ・リスクは、中国の国営クラブ工場が政治的な判断で急遽閉鎖されるなど、体制による不安定さが指摘されたが、コロナ災禍は中国の隠蔽体質が事態を拡大しており、東南アジアへの脱出に弾みがつきそう。

同時に、製造の精度が高い国内工場に回帰して、単価アップを目指す動きもある。

新製品効果で好調の反面

実際、売場の状況はどうだろうか? 二木ゴルフの北條圭一取締役は、

「2月は新製品効果と暖冬で絶好調。昨年同月比で二桁強の売上増です。郊外店はマイカーでの来店が多いことも、コロナの影響が少ない一因だと思われます」

と前置きして、こう続ける。

「ただし、中国工場の目処が立たず、複数のメーカーから入荷の予定が立たないとの返事をもらっています。需要があるのに物がない。この状況が3月以降、深刻化しそうな雲行きです。

それと、当社の旗艦店があるアメ横界隈は人がいなくて大打撃。アメ横は中国人旅行者が多いというイメージもあり、日本人の来訪も減っています」

同社は現在、接客時のマスク着用は販売員個々の判断に任せているが、試打室のアルコール消毒等については今後の検討課題としている。

マイナス6・3兆円?

各種調査会社はコロナによる悪影響を試算しはじめ、収束まで3カ月掛かる場合は1・2兆円、1年の場合は6・3兆円のマイナス効果等を指摘するが、これに昨秋の消費増税が加わって個人消費を押し下げている。いわゆるダブルパンチとなり、GDPのエンジンである個人消費の動きが鈍い。

前出の大石専務理事がこう話す。

「景気は気分、ムードが大きく左右します。ゴルフは屋外で楽しむだけに、消毒等を徹底すれば落ち込みを回避できるはず。コンペのパーティ等は簡単に終わらせればいいんです。とにかく自粛ムードを回避することが先決です」

ゴルフは安全――。そのようなイメージを確立するためにも、業界挙げて衛生面の徹底が急がれる。

ゴルフフェア2020は中止に


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ライター紹介 ライター一覧

片山哲郎

片山哲郎

1962年8月3日生まれ、東京都出身。
「月刊ゴルフ用品界」(GEW)を発行する株式会社ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長として、ゴルフ用品産業及びゴルフ界全般の動向を取材、執筆。2014年4月から3期6年、日本ゴルフジャーナリスト協会会長(現顧問)

ほかに武蔵野美術大学特別講師(ゴルフビジネス論)、インタラクティービ(J:COM)番組審議会委員、大学ゴルフ授業研究会理事、ゴルフ市場活性化委員会マーケティング委員(各現任)

信条は「人の至福は健康で長生きすることであり、これに寄与できるゴルフは『善』である。善なるゴルフ産業が健全発展するために、建設的な批判精神をもち、正確、迅速、考察、提言を込めた記事を書く」――。

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