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    バブル期に売上世界一のコトブキが「このままじゃゴルフショップはなくなる!」

    片山哲郎
    1962年8月3日生れ。月刊誌GEW(ゴルフ・エコノミック・ワールド)を発行する(株)ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長。正確、迅速、考察、提言を込めた記事でゴルフ産業の多様化と発展目指す。
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    今年3月、JR御徒町駅前に3店舗を運営していたコトブキゴルフはバーディ館と北口店の2店舗を閉鎖、ワールド館に集中して専門店の新たな可能性を模索する。 実はこのワールド館、バブル時代には単独で年商30億円を記録して、「単店世界一」の売上を記録している。今年創業54年。旗艦店への一極集中を決断し、そしてコロナ禍に見舞われた。 「変化がおそろしく速い時代にあって、ヘタをすれば我々小売りはいらなくなる」――。 ECの伸長や、メーカーの直販体制が進む中、安本昌煥社長は口元を引き締める。世界一のゴルフショップだった同社は今後、どのような青写真を描くのか? (聞き手・GEW片山哲郎)

    初心者セットが2倍売れた

    この夏、ゴルフ市場は総じて回復基調ですが、「コロナ特需」の面が強いですね。そこでまず、ここまでの商況を振り返ってください。 「わかりました。まあ、1~2月はコロナの影響が少なくて、昨対をクリアしていますが、ウチには特殊事情がありましてね、3月末にバーディ館と北口店を閉めたじゃないですか。 それで3月は閉店前の在庫削減とコロナのダブルパンチで厳しくなって、4月にコロナの本格化でさらに暗転した。2月頃は春節で中国人のインバウンド需要も多かったけど、4月の売上は6掛けで、5月は半減。この頃が本当に厳しかったですね」 で、緊急事態宣言の解除を受けた6月から上向いてくる。 「はい。5月26日の解除後に客足が徐々に戻りますが、解除後も感染者数は一進一退を続けました。増えると高齢者の来店が極端に落ちる、減ると増えるという繰り返しで、」 高齢者は重症化率が高いから怯えるのも当然でしょう。ところで、安本さんはいくつになりました? 「十年(とおねん)取って57です」 67歳ですか。コロナになったらヤバいですね。 「だから健康に気をつけて、今朝も6時からスポーツジムで走りましたよ。余命はあと33年しかありませんから(笑)」 百まで生きる? 「そのつもりです。いずれにせよ、感染者の増減で高齢者の需要が凹んだ分を若者需要が埋めてる感じもあるんですよ。 実は、初心者セットの売上は数量ベースで2倍を記録するなど、絶好調でしてね。これはコロナでゴルフが見直された結果だと思いますが、売価はキャディバッグ付きのフルセットで7万~8万円が中心です」 初心者セットの売れ筋はどれですか。 「まずキャロウェイの『ウォーバード』が好調で、BSの『ツアーステージ』も人気ですが、それ以上に注目すべきはレディスクラブなんですよ。もの凄い勢いで売れていて、こちらも倍増の実績です。 強いのはやっぱり『ゼクシオ』で、キャロウェイの『ソレイル』にBSも健闘してますが、『オリマー』もそこそこ頑張ってます。 『ゼクシオ』はメンズも健闘してますが、レディスは圧勝状態で、前作の『テン』に比べると遜色はあるけど勢いは続いてます。 ウチの場合はフルセットで『ゼクシオ』を買うとキャディバッグをサービスしてるんですよ。それで過度な値引きをしなくても、フルセットの購入者が非常に多い。実売30万円を超える商品だから、売場にとってはありがたいですね」 値引率は商品によってマチマチでしょうが、押し並べて御社の値引率は何割ですか。 「まあ、他店並ですよ(笑)」 2割5分引いてポイント還元を1割つけるとか? 「そこまではいきません。ウチのポイントは7%だから」 すると全体的には3割引が目安ですか。 「そのあたりはご想像に任せますが、競合他店の売価をマメにチェックして思うのは、最近はみなさん、意外と値引き幅が少なくなっていて、店頭では以前の価格競争が影をひそめた感じですね。 お客さんはいろんな店をまわるじゃないですか。それでウチの店員が他店の値引情報を聞くとですね、値引率はかなり少ないんです」

    夏は売れ筋商品が店頭から消えた

    売価の安定はいいことですね。ゴルフクラブは一時、発売と同時に3割引、その後4割引とか荒れ放題だった。 「そうですねえ」 二木ゴルフは本社ビルを売却しましたが、金融機関から適正利益への要望があったかもしれないし、アルペンも経営層の減俸に踏み切った。ゴルフショップは以前の売上拡大主義から利益主義に転換している。 「でもねえ、そうするとお客さんはネットに行くよ。あっちは今も荒れ放題だから。まあ、それに負けないための付加価値をリアル店は実現する必要があって、ウチはネットに対抗する値段が出せないから、ほかのメーカーとの交換キャンペーンなど知恵を絞ってやっています。 これは過去十数年の課題ですが、ネット価格に負けないリアルの在り方は常に模索するところですね。それで当社ではゴルフゾンの計測器『GDR』を複数台設置して、フィッティングに注力してるんですよ。 土日は試打で3組ほど待ちが出る人気ぶりで、データ解析によるフィッティングは非常に好評です。おかげで成約率もかなり上がりました」 成約率は何割ですか。 「もちろん100%まではいかないけど、8割にはなりますね」 それは凄い。以前は「一生懸命接客しても、客は聞くだけ聞いて安いネットで買ってしまう」と憤慨してましたが、状況が一変したわけですか。 「う~ん、変わったというか、相変わらずECの売価は荒れてますからねえ。ただ、フィッティングによる成約率の向上は、評価すべき点だと思っています。 それは外ブラも同様で、外資4社(テーラーメイド、キャロウェイ、ピン、アクシネット)も成約率が高いんですよ。先ほど6月までの商況を話しましたが、夏場はピンの売上が目立っています」 『410』のクローズですね。 「そう。『410』のクローズアウトで、夏商戦はピンの売上が外ブラ全体の4~5割を占めました。それで商品が店頭から消えちゃったわけですが、それだけじゃなくて『SIM MAX』や『マーベリック』も売れ筋は店頭にまったくない。お盆明けの売場は売る物がなくて困りました(笑)」 欠品で困ったという話は、近年はあまり聞きませんが、コロナの影響も大きいでしょう。値引幅が少なくなったのもそうですが、コロナで生産量が減った分、市場全体が生産調整したのと同じになった。 「それもかなり大きいですね」 で、夏場は欠品で商売にならなかった? 「それがですねえ、在庫が底をついたと思ったら、8月に出たプロギアの『RS5』が絶好調なんですよ。全体的に物がないから、売場としては出たばかりのプロギアを薦めましたが、試打で『GDR』の計測値を見ると非常にいいんです。 今回の『RS5』は物がいいし、実際に打てば外ブラに負けてない。そのことを証明しましたよね。だって、毎日アイアンセットとウッド2~3本が必ず売れるんだから。たった1店舗で毎日売れるって凄いですよ。 なのでプロギアの責任者には『今度のRSは大事に売りましょうよ』って話しました。まあ、これには裏があって、オフレコだから後で話しますが、とにかく『RS5』は好調です」

    国内大手の弱点は社長交代の早さ

    このところピンは絶好調ですが、その要因をどう見ます? 「まあ、渋野が出たり、若手の女子プロを粘り強くサポートしたこともありますが、価格的な優位性も見逃せません。ピンのウッドは実売価格が3万円台半ばだから、特に国内他社と比べて価格競争力があるんですよ。 でね、これは企業のポテンシャルの話ですが、たとえばヨネックスはジュニアへの投資がもの凄いじゃないですか。でも、」 育つと外資系を含む他社に取られてしまう。 「それをヨネックスの米山会長は『仕方ない面もある』と達観した感じもあるんですが、つまり嘆いても仕方ないと思うんですね」 仕方ない? 「はい。だって外資企業は世界のマーケットをカバーしているけど、日本のメーカーは国内と東南アジアの一部でしょ。外ブラが1モデル10万本作ったとして、日本は1万本にも満たないから、スケールがあまりにも違いすぎる。 大量生産によるコスト格差は歴然とあるし、R&Dへの投資もハンパじゃない。このあたりは『SIM』と『マーベリック』を見ればわかりますよ」 国内メーカーは開発面でも劣勢だと? 「ところがですよ、国内メーカーの話を深く聞くと、彼らも凄い開発をやっている」 どっちですか? 「ねえ(笑)。要するにね、日本のメーカーも素晴らしい開発をしているけど、美味しいところは全部外ブラに取られちゃう、という話です。 プロギアは前作のカチャカチャでネック部分を2軸でやったし、ヘッドの異素材ハイブリッドはBSが先鞭をつけている。昔も今も、日本メーカーの技術は凄いんですよ」 国内メーカーはトーナメントを開催したり、市場育成に多大な投資をしてますが、美味しいところは外資に刈り取られると。それは「仕方ない」わけですね。 「仕方ないというか、構造的に太刀打ちできません」 「構造」というのはスケールの話? 「それも当然あるけれど、たとえばピンは過去十数年、若手の女子プロをサポートして、それが2~3年前から開花している。つまり軸がブレないわけですよ。 一方、日本の大手メーカーを見ると親会社からゴルフ事業の社長に下りて2~3年、腰掛的にやるだけじゃないですか。少なくとも5年や10年やらないと長期的な戦略は描けないし、そういった構造がある限り、ぼくは難しいと思ってますよ。 国内の大手は総じて同じで、ヤマハもポリシーが見えなくなった」 具体的には? 「飛び系アイアンのハシリとして『UD+2』が出たじゃないですか。あれは画期的な製品だし、非常にヤマハらしかった。 その前に『RMX』で革新的なことをやったのがヘッドとシャフトの別売りで、そのメリットを理解させるために販促チームが店頭を訪問した。それで顧客の声を聞いてカスタマイズする一方、ブランド的には藤田と谷口の裏付けがあった」 あれは流通戦略としても革新的だったですね。当時、ヘッドとシャフトのマッチング販売は売り方としても多大な労力が必要だった。一言でいえば面倒臭いわけですが、汗をかいてメリットを浸透させた。 「そう、あれは在庫の持ち方としても非常に挑戦的でしたね」 それを浸透させる下準備に時間を掛けたわけですが、今はネットでイメージ動画を配信するとか、それはそれで大事だけど、やり方が簡便になったんですかね。 「あの頃のヤマハには迫力がありましたよね。流通を巻き込んで変えてやろうって気概があった」 ヤマハのポリシーは何ですか? 「だから『革新』ですよ。単に商品開発の話じゃなくてね」 つまり革新的じゃなくなった? 「と思いますよ」 なぜですか? 「わかりませんよ(苦笑)。ただねえ、これはヤマハさんだけの話じゃなくて、もっと言えばゴルフ業界だけの話でもなく、前任者が実績を残すと後任は守ろうとするじゃないですか。それで新しいことがなかなかできない。 だから根本的に変わるには、一度落ちるしかないんです」 そもそも企業は伸縮する生き物だから、局面的には落ちることもある。問題は、下降期にファイティングポーズをとれるのか、このあたりの胆力と構想力が試される。 「あのねえ、ぼくはヤマハに期待しているし、BSにも期待してるんですよ。BSのノウハウは素晴らしいし、クラブの性能も高いんです。だけど目立った優位性が表現できてない。 昔ターボラバーをやったじゃないですか。あれをもっと磨き込んで、磨いた先に製販一体で全国展開するとかね。ちょっと古い話だけど、大須賀さんが社長だった頃のBSは非常に迫力がありました」 ナイキのボールをBSがOEMで作って、タイガーに使わせる。それでタイトリストが得意だった糸巻きボールの牙城を引っ繰り返した。慌てたタイトリストはソリッドボールの『プロV1』に踏み切りましたが、大須賀さんは世界を見ていた。糸巻きの技術や特許はタイトリストに勝てないから、ソリッドボールの土俵に引きずり込もうと。 「ねえ。当時のBSは、やることなすこと迫力がありましたよね」 タイトリストを特許侵害で訴えたり。とんでもない金額で訴えて、NHKのニュースにもなった。 「その大須賀さんが社長をやめてからローコスト戦略に切り替えてしまった。中国のベンダーが賃上げに入った時期のことで、これを抑え込もうとしたわけですよ。でもね、当時は『ゼクシオ』の台頭期と重なっていて、店頭で両社のクラブを見比べるとゴルファーはわかる。 だって、自分が使う道具だから。個人的には、あの政策が市場での評価を下げた一因だと思えますね」

    メーカーと小売りの共通課題

    ミズノへの評価はどうですか。ミズノは逸早くカスタム戦略に注力して、利益体質に転換した。それで値引競争に巻き込まれにくい点が売場に評価されてますが。 「んー。ミズノが、ということではなく、カスタムで製品を絞り込むと市場での存在感が薄くなるんですよ。 固定経費を賄うためには、損益分岐点の一定水準を超える売上が必要になる。だけどカスタマイズに絞り込んで、昔は1000売れたのが300になれば、当然、固定費の捻出が難しくなるじゃないですか。 これはメーカーに限った話ではなくて、我々小売りも同じですが、規模と利益のバランスは常に悩むところですね。 ウチは同業他社と同じぐらいの店頭価格で売ってますが、本当は定価で売りたいんですよ。だけどそれで売上が落ちれば、経費が賄えなくなってくる」 一時は大手のメーカーも小売りもシェア主義に走って、プライスリーダーを目指しました。それで他社を振り落として、寡占化して価格決定権を握ろうと。 「それで失敗したところは沢山ある」 ところで、ショップの場合は仕入れを除けば、コストは家賃と人件費に集約されますが、御社は自社ビルだから家賃がない。従業員は何人ですか? 「今は社員が50人ほどですが、バーディ館と北口店があったときは78人ぐらいでした。このワールド館には事務とネットショップもありますから、店はふたつなくなったけど人員は半分になっていません。 でね、それが功を奏したと思えるのは、10年以上通う馴染み客は気に入った店員を指名するじゃないですか。だからベテラン社員の存在は非常に大事だし、売上に直結するんです」 実は今日、早めに来て接客トークを盗み聞きしました。客のフリをして。 「怖いねえ(笑)」 ベテラン店員が二人組に接客していて、上司と部下だと思いますが、年配客が「このひとに任せれば間違いないから」って。店員も単に物を売るだけじゃなく、ゴルフのトータルアドバイザーみたいな感じで話していて、信頼感が伺えましたね。 「ありがとうございます」 顧客は暑い中わざわざ足を運ぶわけだから、ECを超える何かがあるんだなぁ、と。 「そうです、そうです。そこは非常に大事なことです」

    数か月前は極限状態だった

    3月に閉店した北口店(売場面積33坪、2階)は小ぶりですが、大型のバーディ館(同272坪、6階)は今後、テナントビルにでもするんですか? 「ぼくの弟がコトブキの専務でしたが、閉店に際してバーディの建物は彼が見ることになったので、いろいろ判断するでしょう」 それでゴルフ事業は安本さんの専権になるんでしょうが、このワールド館(同386坪、5階)はバブル時代、単店で世界一の売上を記録してるんですよね。 「そうです。当時はワールドだけで30億円を売りました」 それは凄い。今はどれくらいですか? 「まあ、当時とは比べ物にならないですよ(苦笑)。ただね、3店舗を合わせた昨対実績には届かないけど、さっきの話、単店ベースでは驚くほどいいんです」 いくらですか? 「まあ、あんまり強気なことを言うとアレなんでね、詳しい数字はオフレコにしておきますが、コロナ禍の分を差し引いても大健闘です。 だって、キャロウェイ、ピン、テーラーメイド、売る物ないんだから(笑)。ショートパンツも完売だし、シューズは昨対200%ですよ。これは若者需要が盛り上がった結果だと考えてます」 コロナの反転需要があったとしても、経営戦術が奏功した? 「経営戦術とかね、そこまで大それたことは言えませんが、今年の頭はインバウンド消費がけっこうあって、店によっては売上の2~3割を占めていた。 それが消えた。消えたのに数字が伸びてるのは、日本人がゴルフに興味をもちはじめたということでしょう」 というか、3店舗が1店舗に集約されて、2店舗分がワールドに集中した。要因はこれでしょう。 「それはたしかに大きいです。そもそも2店舗を閉めたのは、この商圏で3店舗は多いと考えたのが理由ですから。 今のアメ横は昔ほどひとの流れがないし、外国人でもっていた。それが消えて、浅草も同じですが、閑古鳥が鳴いてますよ。だから逆にバーディ館と北口店をもっていたら、かなり苦しかったと思いますね」 閉店は絶好のタイミングだった? 「結果的にね。閉店に伴う経費も出ましたが、ありがたいのはメーカーさんの協力でね、閉店を睨んで発注を抑えていたところにコロナが発生した。それで在庫の戻しに応じてくれたり、支払いの先延ばしも受けてくれて」 なるほどねえ。今は「完売」で笑いが止まらないけど、つい数か月前は、 「コロナと閉店のダブルパンチで極限状態だったですよ」 経営はジェットコースターみたいなものですね。上がったり下がったりで心臓にわるい。 「ほんとだよねえ(苦笑)」

    問われる専門店の価値

    で、2店舗閉鎖の理由は商圏の疲弊と同時に新展開への挑戦もありました。挑戦は、具体的に何ですか? 「新展開はEコマース以外にもあるんだけど、ちょっと今は言えないですねぇ。コロナの収束を含めて今後の情勢を見ています」 じゃあ、今後の情勢をどう見ます? 「それについて私見を述べると、アパレルと同じようになる可能性が高いと思ってます。代表的なのがナイキで、自社サイトで集中的に売ってますよね。ゴルフも外資だけではなく、国内メーカーも自社サイトの充実で直販の流れになっている。 それとテーラー、ナイキ、キャロウェイは自社でアウトレットをもっていますよね。そう考えると、みんながユニクロになっていくんじゃないか」 キャロウェイは中古クラブを自社サイトで引き取る活動をはじめましたが、この流れが加速すると顧客の囲い込みが強化されて、物販もサブスク的な連続性で形態を変える。すると小売りは、 「いらなくなるでしょ。市場は劇的に変わりますよ。 そんな環境で参考になるのは関西の朝日ゴルフです。業界では唯一残ったゴルフ問屋というか、ヤマニさんも頑張ってますが、朝日の内本社長は自社ブランドで距離計(イーグルビジョン)を立ち上げたりとメーカー色を強めている。 アレが理想だなって気がしますね」 朝日ゴルフは以前、主力の卸部門でテーラーメイドなど外資系メーカーの売上依存が高かったけど、今は自社ブランドの構成比が5割を超えたと思います。 「そうですか」 これは内本さんの悲願だった。他社への依存度が高いと経営自体が馬なりになるから、安定性を著しく欠く。 「言えますよね。それとヤマニも自社で作って展開している。そんな方向性になるんだなあ、と」 コトブキもメーカーになる? 「ねえ、どうしようかな。余命はあと33年だから(笑)、死ぬまでにはやりたいですよね。だけど市場はもっと縮小していきますよ」 その「市場の縮小」ですが、これをどんな概念で捉えてますか? 「ん、質問の意味がわからない」 市場の「外周円」の話です。中古クラブは「市場」に入りますか。 「当然入るでしょ。ゴルフ用品を個人売買するネットオークションも入ります」 以前、キャロウェイのボーズマン社長が「中古やネットオークションは新品市場に多大な影響を与えているけど、その実態は誰にもわからない」と。つまり、市場の総体を合算すると新品市場は減るけど「全体」は増える。誰にもわからないボリュームが格段に増える。 「それは流通量の話でしょ。金額ベースで落ちるのは確実です」 そうですね。個人売買が広がれば新品市場には一銭も落ちない。つまり、業界に1円も入らない「ゴルフ市場」が急拡大している。 「だから会社は数量ベースではなく金額ベースで経営しています」 キャッシュフロー経営ですね。 「そう。その際、今の話を含めてね、一括りで『ゴルフ業界』なり『用品市場』を語れない時代になってますよね。こっちのマーケット、あっちのマーケット、よく見ればあそこにもマーケットがあるということで、そうなると実態はつかめません。 問題は、従来は新品のクラブを買うマーケットだけが我々の意識に存在していて、市場構造もそうでした。我々もそこで生きてきたし、メーカーもそう。その部分だけを切り取れば市場の縮小は確実だけど、それ以外の部分が大事になる」 現状、新品市場を支えるのがシニア層で、 「その需要がなくなると我々業界は、若者の可処分所得と向き合います。実は昨日も営業会議でその話になって、若年層の予算感を聞いたんですよ。 ぼくね、セットで5万円ぐらいだと思っていたの。だけど接客している社員に言わせれば『社長、3万円台ですよ』だって。スマホやゲームに小遣いが取られて、ゴルフクラブには3万円」 中古やネットオークションを使えばもっと安く買えるから、これがますます肥大化する。「市場」の実態がわからなくなるし、そもそも若者は実生活の相場観が違います。 「言えますよね。アパレルで若者に人気の『グローバルワーク』はしゃれたシャツが千数百円でしょ。それでゴルフができますし、彼らの相場観がそこだとすれば、ゴルフシャツの1万2000円なんか信じられない値段ですよ。あと『ワークマンプラス』ね」 作業着だと思っていたら、アウトドア系の商品で勢いがある。 「あそこのTシャツなんか数百円だし、ファッション要素も入るから女性客も多いんですよ。せっかく若者がゴルフ市場に入ってきても、現状ではここのギャップが埋められないし、青写真も描けない。どうしよう、という感じですね(苦笑)」 安本さんが百歳になったとき、コトブキゴルフはなくなってる。そんな話を一生懸命してるんですか? 「いやいや(苦笑)。ただ、残るとしても業容は大きく変わるでしょうね。ゴルフがバックボーンだとしても在り方を変えなきゃいけないし、だって百年の歴史をもつ百貨店やアパレルのレナウンが飛んじゃう時代ですよ。コロナが加速度的に変化を早めている」 10年の変化が半年だから。これはもう、有無を言わせないスピード感ですね。 「ほんとだよねえ。そう考えると今は外資系のギアが好調だけど、それもいつどうなるかわからないし。まあ、新展開を考えているので、時期が来たら連絡します」 ゴルフギアって何ですかねえ。 「大人のオモチャですよ」 安本さんが言うとビミョーなんですよね(笑) 「真面目に聞いてくださいよ。やはり飛ばしたいという欲があって、スコアを縮めたい欲もあるから、妄想に駆られて新しいクラブに飛びつくんです。でね、それはそれでいいんです。 ゴルフは健康志向を満たせるし、ヒトとの出会いや屋外の魅力もある。それだけにゴルフにはまだまだ可能性があるし、我々がやれてないことも沢山ある。そう考えると、」 ゲホッ、ゲホホホッ。 「なにっ、コロナ? 花粉症?」 換気で窓を開けてるから、室外機のチリが喉に入ったんです。 「ああ、よかった」 百歳まで生きてください。
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