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「ゴルフ愛」で事業をつくるGDOの経営術

ニュース 社長の記事 片山哲郎

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)の創業は2000年5月。ゴルフ場予約サイトの先駆けであり、同時にEコマースとメディア事業の三本柱で認知度を高め、成長してきた。

現在は練習場事業(トップトレーサー・レンジ)とレッスン事業(ゴルフテック)を加えた5本の矢で「複合事業体」を形成している。

予約事業では楽天など、それぞれの分野に強力なライバルが存在するが、「ゴルフ専業の矜持」を芯金にしてワンストップ経営を目指している。原動力はゴルフへの愛だという。

創業社長の石坂信也氏は米国常駐で世界戦略の施策を練る。これを受けて今年4月、国内事業統括として吉川雄大氏が副社長に就任した。GDOの副社長だけにゴリゴリの競技ゴルファーかと思いきや、

「ゴルフは社会人デビューで、スコアは90前後です」

と、意外にも「ふつうのゴルファー」である。しかし「ふつう」ということが、同社の事業展開に大きな意味を持ちそうなのだ。

まずは動画インタビューを、その後、事業戦略の詳細について一問一答を掲載しよう。(GEW・片山哲郎)

副社長就任はコロナの真っ最中

副社長の就任とコロナの直撃がほぼ同時期。大変だったでしょう。

「まったくおっしゃるとおりで、本当に大変でした(苦笑)。

社長の石坂が2年ほど前に活動の軸足をアメリカに移して、新規事業を開拓するという形なんですね。そこで、わたしが4月から国内事業を統括することになりましたが、とはいえ石坂とは、オンラインで密に連絡を取り合っております」

米国での事業はレッスンチェーンの「ゴルフテック」が中心?

「そうですね。弊社がゴルフテックの株式を一定数所有していて、元のオーナーも一部保有はしてますが、基本的には弊社の連結対象事業です。

アメリカはFCを含めて約200か所、日本では13か所でスクールを運営しています」

石坂さんは以前「アメリカに居続けることが大事なんです」と話していて、「米国ゴルフ村」の住人になりきることで人脈なり情報共有が深まるんでしょうね。

「まさにそうだと思います。弊社はグローバル戦略を前提にアジアでも挑戦していますが、アメリカで何がしかの爪痕を残さないとグローバルとは言えません。

そんな考えが石坂にありまして、日本からの出張ベースだと『外の人間』になりますので、ゴルフテックを橋頭保にインサイダーとして入り込もうと。それ以降、向こうで得られる情報の質が格段に変わったそうです」

吉川さんは声がいい。おまけに立て板に水だから、今日は独演会になりそうですねぇ。

「いえいえ。最初は気分よく喋らせるのが片山さんの作戦だとわかっています(笑)」

それは深読みです(苦笑)。いずれにせよ、ゴルフテック以外のグローバル戦略って何ですか。

「正直、それを模索している最中なんですね。

日本では一応、ゴルフ場の予約サービスとECを中心とした物販事業、メディア事業が三本柱になりますが、たとえば物販で進出した場合、並行輸出という形で同じ物が使えるのか、あるいは特許を含めて先行企業が何を抑え、どこにどんな障壁があって、どんなライバルがいるかなどをウオッチしている段階だと思います」

それで吉川さんが国内事業を統括する副社長に抜擢されたと。なぜ吉川さんだったのか。

「そうですねえ。まず、わたしの経歴から申し上げますと、2003年に損保会社からGDOに転職しまして、ゴルフ場に当社の予約サービスを販売する営業からスタートしました。これを10年やりまして、その責任者を経て2013年から全社のマーケティングをやってくれ、と。

それで5年間、全社マーケティングとブランディングを担当して、2018年から軸足を練習場業界の仕事に移しています。副社長を拝命した理由は、マーケティング時代に全社の事業に関わったこともあるのかなと、個人的にはそう思っています」

ECの売上が大半占める

副社長の就任は4月。当時は緊急事態宣言に向かうコロナの緊張期だったわけですが、それもあって今年上半期(1~6月)の連結業績は150億円超で昨対1割ほど落としている。

大雑把にいえば国内120億、海外30億という割合ですが、中長期的な国内外比率はどうですか。

「もちろんゴルフテックについては事業計画がありますが、国内外比率は明確に定めていないんです。

まあ、今回コロナで感じたのは、不測の事態の難しさですね。インドアレッスンみたいな店舗事業は行政の要請で休業を迫られ、アメリカもまったく同じです」

アメリカのほうが厳しいですね。特にカリフォルニアあたりはロックダウンと休業要請を繰り返した。

「そうですね。休業中の売上は基本ゼロになって固定費だけは出ていくと。アメリカの200店舗は軒並みクローズになってしまい、今も打席制限を設けながらの稼働です。国内のゴルフテックは6月1日に再開しましたけど」

とはいえ、コロナの今年を除いては順調な歩みを見せてます。前期の連結業績は342億円超で、国内は268億円超。いずれも増収増益ですが、過去5年で見るとどうですか?

「おかげさまで、ずう~っと右肩上がりを続けております(笑)。先ほどの3事業に加えまして、練習場事業はトップトレーサーの販売(23施設)がそれなりに来ていて、さらにレッスン事業も加わります。売上的には圧倒的に物販が多いのですが、」

物販事業の販売比率は全体の7割ぐらいですか。

「んー、細かいセグメントは非公表ですが、7割には届かないという感じでしょうか」

条件が揃えば若者はゴルフをする

ゴルフに関わるすべてをカバーしたいのがGDOの野望というかポリシーですが、コロナで若者需要が盛り上がったのは御社にとっても好事でしょう。

「そうですね。特に緊急事態宣言明けの盛り上がりは弊社のデータにも表れています。

ただ、弊社には436万人の会員がおりますが、20~30代の構成比は2割程度と少ないので、全体に与えるインパクトは強くない。実感値としては、凄いという感じではないんですね。

ただし、若者台頭の兆しはもの凄く意義があると思っていて、コロナで得た最大の学びは、業界は長年若者需要の創出に苦しみましたが、環境が整えばゴルフをしてもらえることが明確になった。

果てしない徒労ではないんだと、実感できたところに意義があります」

暖簾に腕押しじゃないんだと。

「そこは本当に大きいと思いますね」

さて、先ほど上半期について軽く伺いましたが、今年第3四半期(1~9月)までの商況はどうですか。まずは物販から。

「4月はさすがに10%以上の落ち込みでしたが、5月には前年並みに回復して、6月以降は前年超えという推移です。

9月は昨年、消費増税の駆け込み需要があったので、それを加味するとあまり伸びた感じはないんですが、若者の動きは堅調で、4月の前年割れの時期でもこの世代は割れてません。

今後はコロナの状況によりますので、若者需要はまったく読めませんが、伸びる前提で考えるのはリスキーだと思っています」

リスキーでもやるぞ、という判断が働いた場合、どんな若者対策がありますか。

「そうですねえ。具体的にはマーケティングの投資の仕方だと思ってまして、現実には世代を切り分けるマーケティングをしてませんが、前提としてこれぐらいのリターンが来るだろうというシミュレーションがあって、来なければロジックを調整して下げるという形ですね」

んー、全然わからない。

「すみません(苦笑)。要するに販促及び広告宣伝です。我々の投資はオンラインが中心なので、広告もグーグルやフェイスブックなどデジタルメディアに出稿しますが、検索連動型のリスティング広告などにおいて、投資のサジ加減を見るってことでしょう」

なるほど、若者市場は小さいから投資を控えるわけですね。

「というわけではなく、若者がこれぐらい稼働するんじゃないかと試算して、見積もったリターンに届かない可能性があると判断したら、追加の広告宣伝が必要になるかもしれない。このあたり余裕をもって覚悟するという話です」

う~ん。よくわからないけど、GDOはメディアだから、ある種の公益性を持っている。多少持ち出しでも若者に投資するぞって気概なり考えはありませんか。

「その考えは、ございますッ。コロナの結果として今の盛り上がりは想定していませんでしたが、若者のゴルフへの注目度は確実に高まっているじゃないですか。

レジャーの選択肢が狭まる中で、相対的にゴルフが選択されやすい状況下、既存ゴルファーへの継続的な施策だけではなく、そうじゃない人に対してもドカ~ンと何かやりたいなと。今、具体的な施策を練っている最中なんですよ」

ドカンと予算化する?

「予算化を含めて考えますが、ただまあ、ドデカイ花火が上がるという感じではなくて、我々の身の丈に合った規模感ですね」

ウミガメに食べさせないように

なんか、禅問答みたいになってきましたねえ。オフレコはオフレコと言ってください。書きませんから。

「そうですか。その意味ではオフレコになるのかもしれませんが、大事なのはイベントを中心にゴルフへの注目度を上げる話しだと思っていて、弊社は以前から従来のゴルフとは違う形のゴルフを手掛けています。

走りながらプレーするスピードゴルフや雪上ゴルフ、LEDの光るボールで夜、湘南ビーチで球を打ってもらうとか。社内的には『従来のゴルフで新規開拓は難しい』と考えていまして、未経験者にゴルフをアレンジして寄せていくという作業です」

ゴルフもどき?

「そうなんですが、打てば楽しさがわかりますよね。それが裾野を広げるための肝になる活動だと思っていまして、従来型のゴルフで集まらないなら、やってほしい対象者に合うようアレンジする。

社内的には『ゴルフを持ち出す』と言ってまして、」

持ち出すとは?

「はい。外に持ち出すという意味で、そのひとつが海で遊ぶ若者に『砂浜で打ってみてよ』というやり方です」

それってオフレコじゃないでしょう。周知の活動だから、別に書いてもいいですよね。

「そうですね(笑)。これらは実績の話ですから」

同じ文脈で女性はどうですか。

「あのぉ、一般的には女性固有の対策があるのかもしれませんが、弊社としては女性向けの企画とか、ジェンダーで切り分けることに積極的じゃないんです。大事なのは性差ではなく趣向ですから。

去年、宮古島でロックフェスがありまして、ここに協賛でゴルフを持ち込んだんですよ。会場の横にビーチがあって、そこで海に向かってボールを打つイベントをしたら、これがもの凄い反響で、1000人近い若者が男女関係なく盛り上がって(笑)」

打ったボールが気になります。

「浮くボールを使いましてね、弊社のスタッフが海にぷかぷか浮いて回収しました」

ウミガメが食べないように?

「はい、そこはとても大事ですから(笑)。企画の意図としましては、男女関係なく『音楽好きの若者』という括りです」

なるほど。業界がレディス対策を考えると、昼食にプチケーキを出すとかステレオタイプになってしまう。つまり表層の企画ですね。女性だからプチケーキ、クラブの色はピンクとか。

御社の場合はそうではなく、もっと内面の嗜好性に刺すことが大事だと。

「おっしゃるとおりで、個々のマインドをどう見るかがとても大事だと思うんですよ。成果の有無は、やってみないとわからない部分もありますので、やり続けることが本当に大事。ある意味、この活動にゴールはないと思ってます」

激変するゴルフ場の「予約市場」

予約事業はどうですか。というのも、御社がこの事業を始めて20年。当初はフロントランナーだったけど、状況は急速に変わっています。

たとえばPGMは10億投資して自社クラウドを持った。予約や集客を含めて自前路線を強化しています。

「そうですねえ。まず、競合という意味では100コース以上あるアコーディアとPGMは、ポータルサイトという見方もできますので競合ではないと思っています。

単独系のゴルフ場も自前のウェブ予約を持っていて、我々はこれを『自社ウェブ』と呼んでるんですが、実は我々の商品にはゴルフ場向けの『自社ウェブ予約システム』もありましてね、予約の仕組みを商品として提供してるんです」

それは「WEB PACK」という商品ですね。

「そうです。この商品の背景を説明しますと、GDOが立ち上がった2000年頃は『インターネットってなに?』という話や、ネットでビジターを集客することに懐疑的なゴルフ場が多かったんです。新参者の我々が『ネットで集客しましょう』と営業しても、ゴルフ場にしてみれば胡散臭かったわけですよ。

その胡散臭さを消すために、ゴルフ場に対して『御社も自社でオンライン予約システムを持ちましょう』と働き掛けたんですね」

百聞は一見に如かず。自分でやればどんなものかわかるわけで。

「おっしゃるとおりです。で、GDOで集客すると1回あたり数百円の手数料が掛かりますが、2回目もGDOから予約が来たら、また手数料が掛かるじゃないですか。

ゴルフ場にとっては負担が重いから、GDOからの予約は新規顧客の獲得チャネル用に使って頂き、2回目以降はゴルフ場の自社ウェブでビジターを囲ってくださいという提案です。

GDOとゴルフ場はコンフリクトしませんよ、と」

コンフリクトって?

「ああ、摩擦です。対立、軋轢というような意味でして、それを生まないための方策が自社ウェブ・サポートの考え方です」

顧客を渡すわけですか。ずいぶん気前がいいですねぇ。

「渡します。というか、ゴルフ場には囲い込む努力をして頂き、同時に弊社もゴルファーに『2回目もGDOを使ってください』と選ばれる努力をするわけです。ゴルフ場も我々と同じシステムを使っているので、」

同じシステムを使いながら、その上でフェアな競争をしましょうと。別の観点で言えば「仕組み代」で稼ぐ発想ですか?

「そうですね。仕組み代のほかに運用のお手伝いもしています」

つまりゴルフ場は御社の顧客であり、ライバルでもあるという面白い関係性ですね。一方でガチンコ勝負の相手は楽天になる。こちらは「楽天ID」の強みを生かしてレベニューマネジメントに注力していますが、御社はこれに対抗しますか。

「いえ、しません。レベニューはゴルフ場の収益を最大化するためのロジックなので、ゴルフ場が値付けする際の根拠になります。

一方、我々が提供する予約システムは、そこで決められた値段をオンライン上で売る『販売の仕組み』だから『対抗』という形にはならないと考えております」

「根拠」と「仕組み」という観点で見れば、GDOはゴルフ場の仕組みを抑えている。つまり蛇口を握っているんだと。

「いえ、そこは蛇口を抑えるという話じゃなくて、」

ゴルフ場の自社ウェブに入るって、そういうことでしょ。

「まあ、形としてはそうかもしれませんが、ゴルフ場の自社ウェブを我々が操作できるわけではないので、入り込むとか抑え込むというイメージではなく、あくまで仕組みの提供にすぎません」

コンサル事業への進出は?

とにかく御社は「仕組み」と「実数」をもっています。実際のゴルファーの動きがわかるから、机上の分析よりも遥かに強力なデータですね。その「仕組み」から得た情報を解析して、コンサル業に発展しますか。

「う~ん。コンサルという肩書で料金を頂くことはしてませんし、やる計画も今はないですね。やらないと決めたわけではなく、最適価格を一定のロジックに基づいて提供することをコンサル業としてやるかとなれば、正直、そこまでの状態にはなっていないんです」

「状態」というのは?

「状態というか、体力ですね。レベニューマネジメントのロジック開発には莫大な投資が必要なので、我々の体力ではなかなか・・・。

まあ、弊社には予約、買い物、スコア管理やニュースの閲覧といったように、ゴルファーの趣味嗜好を分析する材料は沢山あります。

それでゴルフ場に対して『御社は〇〇なゴルファーに好まれるから〇〇のプランにしましょう』と提案はしますけど、それでお金くださいとは思ってないんです。あくまでウチを使って頂く材料にすぎません」

個人的には「アーコス」に注目していて、あれをグリップエンドにカチッと着けるとショット履歴が収集できる。それで御社はゴルファーが何を読み、何を買い、どこでどんなショットを打ったか全部わかる。

「まあ、物理的にはわかります(笑)」

するとメーカーは御社へ日参して「GDOさん、次は何を作ればいいですか?」と教えを乞うんじゃないですか?

「そうなれば、それほど嬉しい話はございません、ハイ・・」

そうなってない?

「なりきれてないですねぇ」

それはリソースの配分という意味で?

「それも、あります」

GDOは事業単位が複雑に絡み合う構造だから、優先順位の付け方も大変なんでしょうねえ。

究極のワンストップを目指す

メディア事業はどうですか。基本はゴルフ関連情報の配信ですが、収益は広告がメインですね。

「メディアは業種としての性質上、やはり波があるんですね。どのメディアも事情は同じでしょうが、広告主がコロナでコスト圧縮に走ったのでかなり苦しい状況です」

どれぐらい苦しいですか?

「う~ん、だいぶ、です」

上手く逃げましたねえ。

「誘導尋問に引っ掛かるところでした、あぶなかった~(笑)。片山さんの取材は気が抜けません。

で、この間、我々の在り方を改めて顧みたんですね。そこで浮き彫りになった一番の課題は、プロモーションの提案方法です。たとえばメーカーが新製品を出したときに単発というか、案件単位の提案をしている。

これを梃入れするためには、年単位とまでは言いませんが、広告主のトータルコストの中で一定のシェアを預けてもらえる存在にならないと、挽回できないと思っています」

一方ではユーチューバーが雨後の筍状態で、多くのメーカーが便利扱いしてますね。どう見えます?

「そこは役割分担があるのかなぁと思っていて、バズらせるにはユーチューバーなりインフルエンサーは有効かもしれませんが、購入のレベルまでもっていくにはユーチューブでは完結しないと思うんですよ。

購入までにはいくつも段階があって、知識を深めるのに静的なコンテンツを読む、あるいは試打会で実際に打ったりと複数の要素が絡むじゃないですか。ユーチューブはあくまで振り向かせる役割で、そこから先にはつながりにくい、と」

知識を深めるには読書だし、雰囲気を伝えるのは映像、体感するには試打といったようにそれぞれ持ち味がある。

「そうなんです」

それをGDOはワンストップでやりたいと。

「やりたいですねえ(笑)。現状、ユーチューブで花火をあげることはできてないので、その領域も得意ですってなりたいですね」

吉川さんがユーチューバーになればいいでしょう。その誠実な人柄で「ん~、なかなかいいですねえ」とやれば売れるかもしれない。イケメンだし。

「いえいえ(苦笑)。まあ、そのあたりは、今後力を入れるべき分野だと思っています。

それとは別に動画コンテンツは今年、ディスカバリーゴルフと提携して、USPGAツアーを8月からGDOの画面で流しているんですよ」

それは知りませんでしたが、米ツアーはNHKとジュピターゴルフネットワークが莫大な金額で放映権を取っている。そこに割り込むって凄いですねえ。契約形態は?

「実はマーケティングパートナーという言い方をしてまして、先方にすれば有料視聴者を獲得するのにGDO会員へのアプローチが有効だと。一方の我々はPGAツアーのライブ配信という虎の子のコンテンツが手に入ります」

バーターですね。

「バーターです。もちろん個人情報そのものは提供しませんし、GDOのドメイン上で配信して、視聴会員になりたい人を送客するという話です。ディスカバリーゴルフの日本法人と交渉して、予選ラウンドだけですが、数試合流したところ反響は上々です」

予選ラウンド限定なんですね。

「はい」

まあ、それでも美味しい話には違いないけど(笑)

安売り競争は自分の首を絞める

とまあ、御社はいろんなことをやってますが、社員数は何人ですか。

「今は500人近くですね」

それを事業別に割り振ると?

「実は、弊社の場合は単純な割り振りにならないんですよ。たとえば物販事業ですが、ここはEコマースと中古ショップのゴルフガレージがあって、売上は圧倒的にECですが、人数ベースでは半々です。

予約事業につきましては、弊社は名古屋、大阪、福岡に支社があって総勢60名ほどですが、予約以外にローカルの広告営業や練習場向けの営業も兼業しているので、単純に事業別の構成比は出しにくいんです」

それでも敢えてザックリ言うと?

「んー、そうですねえ、予約と物販がそれぞれ100名強、ゴルフテックは本部を入れて100名弱、メディアは編集と運営を入れて40~50名というイメージで、ここはウェブ制作も手掛けています。

トップトレーサーの練習場事業は20名ほどの規模感で、あとは間接部門等という感じですね」

そのあたりも御社ならではでユニークです。個別の事業収益と人数には凹凸があって、全体としてバランスをとっている。複合事業体ゆえの柔軟性で、全体の利益頭は予約事業ですね。

「はい、利益面では圧倒的です」

一方で全体のキャッシュフローは最大売上の物販事業が支えていますが、一時は大手量販との価格競争が壮絶でした。今は落ち着いたけど。

「そうですね。売上を取りに行くために、無理して叩き売りみたいなことは『しない』というスタンスを決めてますので」

数年前は大手量販が「GDOの安売りを止めろッ」て目の敵で。

「濡れ衣です(苦笑)。昔から目の敵という感じはあるんですが、他の流通を見渡して下を潜るぞという感じは正直、本当にやってないとキッパリ申し上げます。

そこはメーカーとの信頼関係もありますが、安売りに依存するとキリがないし、結局は自分の首を絞めるので歯を食いしばって頑張ろうと。で、この話はゴルフ場のプレー単価もまったく同じなんですよ」

そこは「業界観」の話ですね。プレー単価の下落はゴルフへの敷居を下げるけど、歯止めがきかないとゴルフ場自体が疲弊して結局はフィールドが減ってしまう。

「はい。それでゴルフ場から『どうやって単価を上げたらいいんだろう』という相談を日々受ける中で、これに応えたいのが営業マンの心理ですが、業界はマクロでデフレという状況下でずう~っと同じジレンマを抱えている。答えを見出せてないのが正直なところです。

活性化にはプレー人口を増やす視点と、一人当たりのプレー回数を増やす視点がありますが、前者の場合は『手軽なゴルフ』が切り口で、スルーやハーフでサクッと帰る。これが定着すれば敷居は下がります。

でも、ゴルフ場はでかい固定資産を抱えていて、ハウスには維持・修繕費も掛かるので『レストランをやらないと利益が出ない』という事情も十分わかります」

ゴルフ場の造成ラッシュは70~80年代で、80年代半ばからのバブルに向かってクラブハウスも豪奢を競った。でかい空間容積を競ったわけですが、今となればクリーニングコストや光熱費もばかにならない。

「まったくおっしゃるとおりです」

で、大半は開業から40年ほどだから、ハウスの建替え時期を迎えます。そこで求められるのはゴルフ場経営者の思想ですね。形骸化した豪華路線をやめてスタート小屋だけにする。それで実質路線に転じるとか。

その際、御社の茅ヶ崎GC(神奈川)がモデルケースになりそうです。9ホールのコースで最新の手引きカートにフリードレスコードなど、次世代ゴルフのニューノーマルを体現している。

「ありがとうございます」

あれは自己資産ですか?

「いえいえ、自社ではとても持てません(苦笑)。茅ヶ崎は受託運営で、賃料をオーナーである自治体に払っています。

その経緯を簡単に話しますと、以前からゴルフをしない人にゴルフをさせるには『今までと同じじゃダメでしょ』という議論が社内的にあったものの、好き勝手にやれる自己資産がなかったわけです。

GDO流を気兼ねなくやれる『研究開発の場』がほしかったところに、茅ヶ崎の案件が出てきましてね。是非やりたいと手を挙げて、ようやく自分たちの『ベース』が持てたんです。ニューノーマルを体現する場としてもいろんなチャレンジをしていきます」

ゴルフは社会人デビューです

吉川さんはゴルファーですか?

「はい。下手ですが大好きです(笑)」

ゴルフの何が好きですか?

「なんですかねえ~。巷で言われる気持ちよさ、打つときにでっかい空間を独り占めできることでしょうか。やってもやっても上手くならないところも好きですし、単純にゴルフ場が好きなんです。

ゴルフ場営業の時代は支配人と商談しながら窓外の景色を眺めたりして(笑)。みなさん自分のコースを愛していて、そんな話を聞くのも好きでした」

ゴルフデビューはいつですか。

「大学を出て8年間、損保会社で働きましたが、そこでゴルフを覚えたんです。営業でゴルフは必須でしたから。スコアは90前後なんですが、本当に大好きで」

立場上、言いにくいかもしれませんが、一番好きなコースはどこですか。

「それはやはり、言いにくいですねえ(苦笑)。う~ん、一番好きということじゃなくて、一番衝撃を受けたのは小樽の旧コースなんですよ。本場のリンクスには行ったことがないんですが、きっとこんな感じなんだろうなあ、と思わせてくれる感があって」

一連の話を聞いて思うのは、吉川さんは「普通の感覚」のゴルファーですね。それが好ましいと思えるのは、ゴリゴリのゴルファーだとゴルフの「べき論」にとらわれたり、いびつになるケースもある。

プレイ・ファーストで前の組を煽る、威圧するなどが典型ですが、煽られてゴルフをやめた初心者がどれほどいることか・・・。煽り運転とまったく同じでタチが悪いし、業界にとっても損失が大きい。

「そこはまったくおっしゃるとおりです。で、その話は練習場も同じだと実感するのは、トップトレーサーを導入する際に常連さんが抵抗勢力になることがあるんですよ。

トップトレーサーはバーチャルの的当てゲームとかエンタメ要素がありまして、練習場のオーナーさんには『将来のゴルファーを育てましょう』ということもセールストークのひとつなんですね。それで若者が楽しくて騒いじゃう。すると『どうにかしろッ』て常連からクレームが入るんですよ。なるほど、こういう対立構造かと。

怒る気持ちもわからなくはないんですが、もっと大らかに交われる関係になればハッピーだし、そこをどうにかしたいですよね」

GDOが「一番わかってる!」

3~5年の中長期で、GDOをどんな会社にしたいですか。

「そうですねえ。ご承知のとおり、弊社の事業領域にはそれぞれ強い競合がいます。予約事業は楽天さん、物販は大手2社(アルペン、ゼビオ)が強固だし、メディアはゴルフ以外にも沢山の競合がいる。

そこでウチの存在感は、ゴルフ専業の強みを生かして『ゴルフといえばGDO』と思って頂けることに尽きます」

会員は436万人。ノビシロとしてはどうでしょう。

「436万人は事実ですが、実際の稼働会員はそこまでおりません。会員登録を忘れた休眠会員も大勢いらっしゃるので、ここの復活が非常に大事。その面では伸びる余地は十分にあります。

GDOを思い出して頂くには、肝はデータなんですね。たとえば片山さんが過去に一度はGDOを使っていたら、コミュニケーションを設計できます。

そのときに大事なことは、受け手が気持ち悪くない程度にポップアップをサイトに出したりと、とにかく『気持ち悪い』感覚を排除することなんです。じゃないとストーカーみたいになってしまうので(笑)」

わかります。AIがスマホの検索履歴を監視して、「あなたが知りたいのはこれでしょ」とばかり、次々情報を送ってくる。ネットの世界は非常に気持ち悪いです。

「その気持ち悪さを排除するのがとても大事なんですね。送信するメッセージの内容を我々は『シナリオ』と呼んでますが、たとえば片山さんが購入したいドライバーをカートに入れたまま『もう一日考えよう』と放置して、その後24時間動かない場合は『在庫が少ないのでお急ぎください』というメッセージが入ったりします。

データの動きをトリガーにして配信するメッセージには、沢山のシナリオがあるんですが、これはAIじゃなく、我々人間が考えるんです。放置したままの片山さんは今、どんな気持ちなんだろうって推論する」

酔っぱらってたんでしょ。

「すると『お酒は冷めました?』というメッセージも考えられるじゃないですか(笑)。そういった心境を辿る作業を『カスタマー・ジャーニー』と呼ぶんですが、休眠会員の復活を含めて会員の意識に根付くには、気持ちいい、違和感がない、気が利いてるメッセージが非常に大事なんですよ。

その際、我々はゴルフ専業だからゴルファーの気持ちが一番わかる。そこの熱量は他社にない強みだと思ってます」

なんか、文学的な話ですね。ITの分野でアルゴリズムが急加速している反面、ヒトの情緒の解釈が肝になる、と。「ゆらぎ」や「f分の1」といったように、人間回帰が改めて注目されている。

「そこの探求なんですね。愚直にそれを続けながら、信頼感や『なんとなく好き』という感覚的な価値の話です。

たしかに楽天のスーパーポイントには絶対的な価値がありますが、我々が追求するのはGDOが好きだから『GDOで予約しよう』『クラブを買おう』という感覚的な価値観なんです。

ゴルファーの気持ちを徹底的に深掘りして『なんとなくGDOが好き』、その次には『大好きだ!』と言って頂ける企業を目指します」

美しい言葉でいえばゴルフ愛ですかね。観念的だけど、観念が複合事業体の芯金になっている。

「そこはとても大事です!」


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ライター紹介 ライター一覧

片山哲郎

片山哲郎

1962年8月3日生まれ、東京都出身。
「月刊ゴルフ用品界」(GEW)を発行する株式会社ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長として、ゴルフ用品産業及びゴルフ界全般の動向を取材、執筆。2014年4月から3期6年、日本ゴルフジャーナリスト協会会長(現顧問)

ほかに武蔵野美術大学特別講師(ゴルフビジネス論)、インタラクティービ(J:COM)番組審議会委員、大学ゴルフ授業研究会理事、ゴルフ市場活性化委員会マーケティング委員(各現任)

信条は「人の至福は健康で長生きすることであり、これに寄与できるゴルフは『善』である。善なるゴルフ産業が健全発展するために、建設的な批判精神をもち、正確、迅速、考察、提言を込めた記事を書く」――。

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