1. ゴルフとSDGs

同じ屋外だけど異なる市場性 コールマンから見たアウトドアとゴルフ産業

ゴルフとSDGs 社長の記事 片山哲郎

アウトドア用品最大手のコールマン・ジャパンは、長引くコロナ禍にあって好調を維持。ゴルフ同様、3密回避が容易な屋外レジャーということで人気が高まっている。

同社でマーケティング・ディレクターを務める根本昌幸氏によれば、ゴルフとアウトドア、特に自然相手のキャンプは大きな違いがあるという。ドレスコードなど多くの制約や決め事があるゴルフに比べて、キャンプには融通無碍な自在性がある。

コロナ下で人生を見つめ直す中高年が「ソロキャンプ」にハマるなど、新たな動きもあるようだ。

ゴルフとアウトドア。その比較論を多面的に試みることで、ゴルフ産業の新たな可能性を発見できるか?

「GEW」2021年12月号掲載

不況と震災に強い産業

「わたしゴルフ、まったくやりませんので、取材受けてどうなるのかなって思うんですけど、大丈夫ですか(笑)」

その方がいいんです、まったく新しい話が聞けて。

「そうですか。それではよろしくお願いします」

「オートキャンプ白書」によると、2020年に1回以上キャンプに出掛けた人口は610万人で前年比3割減ですが、これはコロナの影響によるものですか?

「おっしゃとおりです。コロナの影響で遠出ができず、キャプ場もクローズしたことで参加人口が大幅に減りました。

この市場の過去の流れを振り返ると、ターニングポイントは2008年のリーマンショックで、その後徐々に上向いてきて、大きく弾みがついたのが2011年の東日本大震災なんですよ」

なるほど、不況や震災があると伸びる業界なんですね。

「という側面はあります。特に震災では防災用としてアウトドア用品が注目されて、新しい需要が生まれました。

これと並行するように『山ガール』などの言葉が生まれて、洋服もアウトドアカジュアルの流れが来たという動きの中で2011年から右肩上がりです。当社の場合はここ3~4年、二桁近い成長率です。

まあ、ずうっと好調なところにコロナが来て、『密』を避けられると脚光を浴び、初心者が一気に増えたという感じですね」

でも「白書」の参加人口は大幅減です。

「そうですね。先ほど申し上げたように2020年はゴールデンウイークから夏休みまでずう~ッと自粛が続いたので、母数がギュッと絞られた。それでも売上が伸びたのは10万円の給付金効果です。

給付金でキャンプ用品を買ったけど、場所が閉じてるから使えない。行けないのに買っちゃった人が沢山いて、『おうちキャンプ』が流行りました。

近くの公園でバーベキューやったり、身近な場所でキャンプみたいな遊びが増えたんです」

なるほど。ベランダでキャンプ気分を味わう「ベランピング」や「グランピング」も流行りましたが、あれは御社なりキャンプ業界の仕掛けですか?

「いえ。業界の仕掛けではありませんが、流れとして、キャンプ用品は以前から日常に浸透していたと思うんですよ。

普段着でアウトドアの洋服を着たり、仕事でバックパックを背負うことが日常的になって、家の中にわりとキャンプ用品があると思うんですね。それで、ベランダでキャンプ気分を味わう動きが自然に芽生えたり」

正直ですねえ。オレが仕掛けたと言ってくれると、記事に弾みがつくんですが。

「アハハハッ。すみません、ご期待に添えなくて。ウチもキャンプ場に行けない人に近場の遊びを提案したり、SNS含めてやりましたけど、それが火をつけたとは思えないし、思ってもいないんです」

自然と増えちゃった?

「増えちゃった…まあ、本音はそんな感じだと思いますねぇ」

そのあたりは頷ける話です。ゴルフメーカーもSNSで商品情報を発信しますが、情報の海に埋没して効果は把握できません。せいぜい視聴回数やPVを見て、効果があると思い込む程度でしょう。

「そうなんですよ。当社にもネットを使った戦略イメージはあるんですが、それがブームや売上に直結したとは思えません。

背景にはもっと大きな社会の動きがあって、コロナの前あたりから『ソロキャンプ』の動きも出始めた。ピン芸人のヒロシとか、諸々の動きが複合的に重なって、まずはマーケットから自然に派生する。ぼくらは乗り遅れないよう必死についていく。そこが非常に大事だと思っています」
 
一億総発信の中で、一企業がどうこうできる話じゃない。むしろ現実の動きに間髪入れずついていく俊敏さが大事だと。

「まったくそう思いますね」

数値化できない生のマーケット

キャンプ用品市場の「外周円」はどこに設定してるんですか?

「んー、難しいですね。どこまでをキャンプ用品に入れるかで、市場規模の数字も変わってきますから。

当社の場合はバックパックがあって、椅子やテーブルもそうですが、純粋にキャンプ用品と言えるのかな、という商品が多いんですね。たとえば一本の包丁がある。これってキャンプ用品と言えますが、台所用品でもあるわけで、そもそも市場規模という概念が、何をもって、という感じが強いんですよ」

実態は誰もつかめない。

「そうでしょうねえ」

ゴルフ業界も同じです。距離を測るGPS系の商品や、中古品市場を含めると、誰も正確な市場規模はわかりません。というか、そもそも正確な市場規模って何なのか、という話ですね。

「我々の業界の場合は、ホームセンターからのPOSデータが出てこないのが大きいと思うんですよ。中心の販路はスポーツ量販店やアウトドア専門店になりますが、ホームセンターやGMSにも入っていて、最近はコンビニも置くようになりました。

何かといえば、燃料とか消耗品関係ですね。キャンプ場の近くや山間部のコンビニだと置いてくれるんですよ」

細々した物が多そうですが、SKU(在庫管理単位)で何種類ですか。

「実は、ウチの場合はさほど多くないんですよ。300~500の間を行ったり来たりで、一時は1000近くありましたが、かなり減らしました。

調理用具みたいな物もあったけど、自宅にある物で間に合うんですね。キャンプ用との違いはあんまりなくて、それなりにフッ素加工のフライパンとか包丁とか、3~4種類あったものの、不用だろうと考えて在庫をかなり圧縮しました」

包丁に『コールマン』の刻印があると、それっぽくて売れるだろうと。

「昔はね(苦笑)。今はそんな時代じゃないですから」

テントだけで60種類

競合企業は20社ぐらいですか?

「そうですねぇ。いろんな分野を含めればそれぐらいだと思います」

その中で御社の立ち位置というか、ビジョンはどんな感じなんですか?

「我々はアウトドアメーカーですから『自然の中で、ヒトと自然をつなげ』ながら『人間性の回復』を促すのがビジョンです。

それを『道具で実現』するのがミッションで、ヒトが自然の中で遊ぶ、如何に快適に安全に楽しんでもらえるか、これをお手伝いする会社です」

W・C・コールマンが創業したのが1900年、米オクラホマ州のランプ会社が発祥ですが、当時のランプは今も使えるとか。

「使える物もあります」

そんな話を聞くと、実質本位で、土臭い森の中から生活の必要に応じて生まれた会社。そんな武骨さを覚えますが。

「おっしゃるとおりなんですよ(笑)。自家製ランプの製造は1903年ですが、電気が通ってない時代にオイルランプで発祥して、そこから生活必需品にも派生していく。

もともと、機能しなければ支払い不要というのが出発時点の合言葉で、生活必需品なのでそのあたりの品質は非常に厳しい。それで国からの信頼を得て、第二次世界大戦では軍隊が使うキャンプ用コンロも開発しました。

まあ、そういったことを契機に大きくなった会社なんですよ」

わたしはまったくキャンプをしませんが、察するに、キャンプ関連のファッションメーカーとギアメーカーがあるとすれば、御社はゴリゴリのギアメーカー?

「ウチはもう、まったくギアです。バックパックは全体の1割ぐらいだから、中心は完全にギアですね。

主力商品のテントは60種類ほどで、あとはタープと呼ばれる日除けとか、次にファニチャー系の椅子・テーブル、ベッドみたいなもの。それからグリルやランタンの燃焼器具です」

ゴルフクラブは毎年新商品が出て、どれだけ飛ぶかを競ってますが、キャンプ用品も性能競争があるわけですか?

「そうですね。当社オリジナルのガソリン器具などは基本、100年前と構造が変わらない物もありますが、最近ではLEDライトの商品があったり、テントやタープ、椅子・テーブルも素材を含め新しくなっています。

他社との競争はテントの場合『立てやすさ』や『通気性』『耐熱性』もありますし、何ていうか…ゴルフの場合はひとつの行為だと思うんですよ」

球を打って穴に入れる。

「はい。でもキャンプにはもの凄く多様性があって、人数もソロキャンプからファミリーや友人、行く場所も海・山・川に標高の高低や風土の違いもある。

自分がやりたいキャンプにそれぞれ最適な道具があって、そこを突き詰めるとマニアックになっちゃうし、だからテントが60種類もあるんです(笑)」

テントの何が違うんですか。

「たとえば海は日差しが強いから遮光性が高い素材を使う。冬山は暖かさが必要だし、クルマで行くのか自分で持ち運ぶのかでも違ってきます。

運ぶには軽さが必要なので、多少快適性を犠牲にしても軽くする。ソロキャンプの一人用はウチの場合1・5~2kg未満で、業界では1㎏未満もあるんですよ」

するとウチの方が0・1g軽いとかで張り合ったりする。

「そうそう、あります(笑)。ポールは質のいい7000番台のアルミを使っていて、亜鉛とマグネシウムを添加してあるとか。ニッチだけどマニアックな人には響きますよね」

30代のファミリーが顧客の5割超

ゴルフはスコアで消費者を区別できますが、キャンプの場合は?

「やっぱり経験年数でしょうね。経験者と初心者では選ぶ物が違いますし、それで当社は価格帯が上・中・下となっています。初心者は取り敢えずやってみたい。

ウチの対象者は30代のファミリーが中心ですが、その中で初心者だと可処分所得の関係もあって価格で選びます。最近はリセールバリューを考えて購入するので、初心者でも中・上級者用を購入するケースが増えました」

メルカリとかヤフオクで売買する?

「それでね、けっこういい値段で売れるんですよ。新品で一番高いテントは10万~15万円。フォーシーズン使えて通気性が良く、コットンを入れた生地だから冬暖かく夏涼しい。

ポールもアルミで軽くして、防水・耐水性も十分ある。これがリセールだと、程度にもよりますが新品の半額ぐらいで売れるんです。

逆に一番安い新品は3万円ぐらいからで、リセールは高くて4000~5000円でしょう。

もっと安いのは中国メーカーで1万円を切りますが、最近はアマゾンが凄いんですよ。中国メーカーがダイレクトで売ってくるので、」

店頭に並べず空中戦でガンガン売る。

「そういうのは1万円未満でもありますね」

値段とクオリティは当然、反比例するんでしょうね。テントのポールが折れたりとか。

「まあ、弱い物はあり得ますね。地面に刺すときにポキッとか、FRPのポールは比較的熱に弱いんです。日本の夏は40度を超えて、砂浜なんかもっと熱い。

すると、常にテンションが掛かった状態で張ってるので、何もしなくてもポキッとか…。カーボンの棘が指先に刺さると、これはけっこう痛いんですよ」

痛いでしょうねえ。年代別の販売構成比はどうですか。

「やはりお子さんのためにキャンプをする30代のファミリー層が一番多くて、5割を超えると思います。

次に大きいのは子供が卒業して、夫婦や友人と楽しむ40~50代の層が増えています。これが全体の3割ほどですね。

残りの2割が20代の若いご夫婦や一人で行くスタイルで、最近はソロキャンプが活発だから2割より少し多いのかな」

羨ましいですねえ。ゴルフ界も若い世代を狙ってますが、なかなか…。コロナで偶発的に増えたけど、シニア需要が中心です。

「だって、キャンプには言い訳があるじゃないですか」
ファミリーで遊べる。

「はい。ゴルフはお父さんだけが楽しむイメージが強くありますから(苦笑)。ただ、30代のファミリーも子供が小学校に入ってスケジュールが合わなくなると、離脱するケースが多いんです。そのあたりが今後の課題ですね」

自分でつくる融通無碍な時間

ここまで聞いて何ですが、キャンプの何が楽しいんですか?

「うん。キャンプの楽しみは、わたし個人の場合『つくる』ことです。まず寝床をつくる、食事をつくる、遊びも自分で考えてつくるのが楽しいんですよ。

事前に行く場所も考えるし、要するに常に考える、空想するわけなんです。それが習慣化すると本当に楽しくて、今度はカヌーやってみよう、トレッキングをやってみようとか」

なるほど。行く先々でいろんなコトと「接着」できる。

「だから行く場所をいろいろ選べるんですね。あと、一番いいのは自分のペースでやれることです。

旅館だと食事や風呂の時間がどうこう言われますが、キャンプは自分の好きにできますし、今夜の食事はコンビニ弁当でいいやとか」

コンビニ弁当は邪道でしょう。

「そんなことはありませんよ(笑)」

「キャンプ道」から外れるでしょう。

「いやいや、最近は多いんですよ。最近のコンビニのお惣菜って本当に美味しいじゃないですか。あれを湯煎して、それっぽい食器を使えば見た目はアウトドア料理になる。

自分のやりたいことを工夫すれば、いろんな時間がつくれるし、そのあたりの自在性がキャンプの魅力だと思いますね」

融通無碍で懐が深い。それで最近、山林買ってワーケーションみたいな話もありますが、ヘタするとえらい目に遭うそうですね。

「そう、間伐なんか大変だと思いますよ。テレビがコロナで密を避けましょうと、それでキャンプがバブルですが、真に受けて気軽にやると問題が生じます。

ちゃんとできる人はいいんですが、少なからず失敗する人もいて、それが先ほどの話、離脱率を高める一因になるんですよ。

最初は『俺のキャンプ場つくるぞ』って意気込みで山を買っても、サラリーマンのままで土日だけでは、多分、厳しいでしょう」

安いんですよね。

「安いです。今はひと山100万~300万円で買えちゃうので。だけど電気水道を引っ張るだけで、ヘタすりゃ1000万円ですよ」

ていうか、電気なんか引っ張らないで百年前のランプで頑張ってほしいですよ。

「本来は、そんな意気込みだったと思うんですよ(苦笑)。だけど電気ガスがないところで、現代人が生活できるのか…。

別荘として考えても、電気は我慢できるとして水道がなければ無理でしょう。『トイレどうすんの?』って話になりますから」

それで諦めて放置すると、業界のイメージが悪化する。現実は甘くないですね。

「あのぉ、業界もそうなんですが、地方自治体のイメージも悪くなってしまう。だから啓蒙活動が必要なんですね。

当社はキャンプのインフラづくりとして、キャンプ場をやりたかったけれど、外資系は固定資産をもつのが非常に厳しいんです。今はできない状況なので、既存のキャンプ場と連携して正しいやり方をPRしてるんですよ。

で、PRや啓蒙活動の重要性は、過去の痛い経験と無縁ではありません。実は、わたしが弊社に入ったときに第一次キャンプブームがあったんですが、ブームが終わったらとんでもないことになってしまった。そんな反省があるんです」

キャンプと社会課題の関係性

とんでもない…?

「はい。第一次ブームは1992~97年で、日本にオートキャンプが入って大ブームになりました」

バブル景気は91年に終わってますね。

「そのバブルが終わったときに四駆ブームがあったじゃないですか。バブルの最後にスキーがあって四駆があって、四駆のオコボレみたいな感じでキャンプがついてきた。

四駆ブームはすぐに終わりましたが、キャンプは4~5年続いたんですよ。で、当時キャンプ用品を初めて売りまくったのがダイエーさんで、ダイエーが米国産牛肉を輸入しはじめて、あれがカンザスビーフだったんですね」

なるほど、面白そうな話ですね。

「はい、ウチの本社はカンザス州です。それで『アメリカで流行ってるキャンプってのがいいらしいぞ』とダイエーの創業者の中内さんが言ったらしくて、最初『コールマン』はダイエーの並行輸入だったんです。

それが日本でバカ売れして、途中からウチも入って売りまくって、ブームが終わった98年にドカーンと落ちた。市場が消えちゃったわけですよ」

消えたって、凄いですねえ。

「本当に消えました。原因はさっきの話、キャンプの正しい遊び方を伝えなくて、物だけ売ったからですよ。

当時はキャンプ場も増えました。自治体が『キャンプはいいぞ』って話になって、地方創成の一環としてどんどん造った。道をつくって、ロッジやコテージつくって…。それでブームが終わって野ッ原になった」

ダイエーも罪作りなことをしましたねぇ。当時のキャンプ場の数はわかりますか。

「いやあ、まったくわかりません。それで野ッ原になったわけですが、2000年の後半から若者が再生をはじめたんですよ」

地元の青年会が音頭を取って?

「というか、都会の若者の『Ⅰターン』とか『Uターン』だと思いますね。当時は意識が早い若者の間で環境がテーマになった頃で、アウトドア好きはミニマルな生活や自給自足、環境意識が高いですよね、志として。

それで地域再生や野ッ原になった土地から事業を興したり、そんな動きが2000年の後半から起きて、今はその流れがどんどん強まってます。規制が緩和されて、民間活力が入りやすくなったのも一因でしょう」

空き家問題も凄いですね。所有者不在の総面積は九州全土に匹敵する。空き家の再活用も今の話につながりますか?

「んー、大きな括りでは入ると思いますね。実際、古民家をベースにしたカフェや、庭がキャンプ場というスタイルもあって、今でこそグランピングが注目されてますが、もともとは今の話の一環として立ち上がっているんです」

となると、キャンプの遊び方の多様性は、社会課題への対応を含めた必然とも言えますね。

「ああ、それはそう言えるでしょうねえ。それこそ第一次キャンプブームはオートキャンプで、四駆でファミリーでしたけど、今は一本のストーリーじゃなくてもの凄く多様なんですよ。

一例が先ほどの『ソロキャプ』で、当社のソロキャンプ用品はここ3~4年倍増中、コロナ以降は供給がまったく追いつきません。

それで最初は独身者がソロキャンプに行くもんだと思ってましたが、よくよく市場を見ると家族持ちのお父さんが一人で行くケースが目立つわけです。

コロナで出張がなくなり、在宅時間が多くなって、一人の時間、自分だけの時間を大切にしたいなぁと思いはじめる。40~50代にその傾向が強いんです」

コロナで「死」を身近に感じたこともあるんでしょうね。特に中高年は感じやすくて、「俺の人生、このままでいいのか」とか。

「ですよねぇ。前から言われてましたけど、定年でずう~っと家に居ると奥さんが困るじゃないですか。あれがコロナによって前倒しになったような気がするんですね」

「濡れ落ち葉」ですね。あれはヒドイ言い方で、掃いても掃いても家にへばりついている。

「そうそう(苦笑)」

SDGsはそもそも企業体質

キャンプ、始めようかなぁ…。

「実は、全部まとめて宅急便でキャンプ場に送るだけという『ソロ用セット』をしますが、10万円未満です。テント、寝袋、マットに焚火台、全部で8品目ほどで、自分は電車で身体ひとつ」

着いたら山男が歓迎してくれて、メシの炊き方を教えてくれる。

「というキャンプ場もあります。教えてくれる、やらせてくれる」

やらせるのが大事ですね。コンビニ弁当で星空眺めてもソノ気になりませんから。で、宿泊はいくらですか。

「関東だと一泊5000円ぐらい。地方に行くほど安くなって、北海道は200~300円のキャンプ場も多くあります。

バイクで走って、ソロキャンプして、自分だけの時間を堪能する。そもそもキャンプには定義がないんですよ。テント張って寝るだけの話なので」

消費者が勝手に遊び方を考えて楽しむ。

「そうです。なので我々の仕事は遊び方の広がりに、どうやって追い着くかなんですね。最初のブームはぼくらが散々火をつけて、そこからドカンと落ちて試行錯誤を繰り返し、思うのは、世の中の流れ、世の中の変化が凄く大きいじゃないですか。

我々がブームをつくるなんて話じゃなくて、ほんのちょっと芽生えた社会の動きを敏感に察知して、如何に素早く反応できるかなんですよ」

そこは身につまされる話です。ゴルフにはドレスコードなど決め事が多くて、スポーツなのに18ホールの途中で昼飯を食えとか制約がある。

いわゆるタコツボ体質で、外界と向き合う姿勢が弱いんですね。今はSDGsの潮流ですが、この点についてはどうですか?

「米本社のカンザス工場は最近、100%グリーンエネルギーにして、中国やベトナムの協力工場もリサイクル等の努力目標が増えてます」

日本法人としての活動は?

「本来は生分解素材の開発等も必要でしょうが、日本はそこまでの設備がないので商社と協力して素材を探したり、リサイクル率の向上などが中心ですね。

日本仕様の商品が7割を占めるので、海洋プラスチックを何%入れるとか…。

それ以外ではMFYRという活動にも注力していて、これはムーブメント・フォー・ユア・ライトの頭文字ですが、廃棄製品に命を吹き込む活動なんです。

今は取引店からの返品や一部不良品に対して、廃棄テントの生地を使うアップサイクルが中心ですが、いずれユーザーから古い物を回収して、テント以外の寝袋もアップサイクルしていこうと」

製品寿命が長いのも御社の特徴ですね。

「そうなんですよ。当社の一番のメリットは『ロングライフ商品』で、十数年変わらない商品もそこそこあるし、修理して使える物は積極的に直します。

千葉県の流山に修理センターがありましてね、夏場なんか凄い量の修理品が来るんですよ。ここでバーナーやランタンの点火不良、テントのほつれとかを直しますが、直すと生き返るじゃないですか。それを積極的にやっています」

直すと新品が売れなくなる。

「あのぉ、修理するときにアップグレードできたら面白くないですか? つまり修理じゃなくて、カスタムという考えです。

FRPのポールが折れたら『アルミのポールに替えませんか』、2~3年で次のテントが欲しくなっても、新品である必要はないから『屋根のこの部分をいい生地に替えませんか』と。

先ほどSKUを絞ったと言いましたが、絞れば部品が共通化しやすくなって修理対応が容易になる。余計な物はつくらない、安物の使い捨て商品ではなく、長く使える物を修理する。このあたりの考え方にコールマンのポリシーが込められています」

本当にキャンプを愛する人に、必要な物だけを提供したい。

「まったくおっしゃるとおりですッ」

ゴルフ本来の魅力を考える

ゴルフのイメージはどうですか。

「ゴルフって……なぜだか廃れませんねえ(笑)。あれだけ広い空間を散歩するみたいにリフレッシュできる。若者からシニアまで楽しめて…んー」
……以上、ですか?

「知らないんですよ(苦笑)」

そのゴルフ場がグランピングをやり始めたのはご存知ですか。

「実はゴルフ場からけっこうな数の問い合わせを頂いてます。2年ほど前から多くなって、1ホール潰してほかの用途に使いたいとか、平坦だし、芝が綺麗でハウスがあるので『キャンプ場にいいですよ』といった売り込みがあって、いくつかお手伝いしたんですよ」

今の話ぶりだと、積極的に関わるという感じではないですね。

「んー、ゴルフ場って人工的な自然じゃないですか。だからグランピングにはいいと思うんですね。常設でテント張って、食事やお風呂はハウスを利用する…。

ただ、それだとキャンプを楽しみたい人は物足りなさを感じると思うんです。ホテルの箱庭みたいな感じなので、別にウチの道具じゃなくても十分かなと。

ゴルフ場との可能性は否定しませんが、コールマンの場合はオーセンティックなキャンプに集中したいので」

商売ではなく、ブランドのマインドとしてキャンプに集中したい、と。

「まあそうです。スキー場からも夏場をどうにかしたいと相談が来ますが、そもそもスキー場は斜面だし、同じ山を使うビジネスでも我々とはちょっと違うんですね」

「ゴルフ産業」はどう見えます?

「スポーツ産業では圧倒的に大きいですが、イメージ的にはプレーフィも道具も高いですし、家族持ちには厳しいのかなぁ…」

そのイメージを変えるには?

「今言ったことの逆を考えれば、とは思いますね。子供にゴルフ場を歩かせることが、子供にとって楽しければ『また来たい』となりますよね。するとグランピングもありでしょうし…。

ただ本質的には、ゴルフ自身がもってる魅力で考えるべきだと思うんです」

キャンプ場の真似事じゃなく。

「はい、ゴルフ自体のスポーツをある部分、思いきって変えちゃうとかね。いちいちスコアを気にするんじゃなくて、ゴルフ本来の何かがあるはずです。

それが何かは知りませんけど、業界としてゴルフの本質的な魅力をもっと掘り下げることも大事ではないでしょうか。個人的にはそう思います」

「GEW」2021年12月号掲載


GEW VIRTUAL GOLF FAIR 2021

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ライター紹介 ライター一覧

片山哲郎

片山哲郎

1962年8月3日生まれ、東京都出身。
「月刊ゴルフ用品界」(GEW)を発行する株式会社ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長として、ゴルフ用品産業及びゴルフ界全般の動向を取材、執筆。2014年4月から3期6年、日本ゴルフジャーナリスト協会会長(現顧問)

ほかに武蔵野美術大学特別講師(ゴルフビジネス論)、インタラクティービ(J:COM)番組審議会委員、大学ゴルフ授業研究会理事、ゴルフ市場活性化委員会マーケティング委員(各現任)

信条は「人の至福は健康で長生きすることであり、これに寄与できるゴルフは『善』である。善なるゴルフ産業が健全発展するために、建設的な批判精神をもち、正確、迅速、考察、提言を込めた記事を書く」――。

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