「ゴルフスタジアム被害者を守る会」が4月30日、都内の会議室で設立された。
レッスンプロを中心に被害者1000人以上、被害総額は推計40億円規模とみられ、これまで「ゴルフスタジアム信販問題被害者の会」としてさくら共同法律事務所の西村國彦弁護士らが被害状況をまとめてきたが、名称を変えて正式に発足。5月中に法廷闘争へ踏み切る構え。
当日参加した被害者は98名で、弁護士16名、報道陣10名の計124名。会場に設置した募金箱に10万1000円が寄付され、当日中に71名が「被害者の会」に入会、本日(5月2日)現在計97名が入会している。
本部役員は今西圭介代表(090-8875-7956)を筆頭に副代表、会計、会計監査、世話人の計11名(事務局2名)。これとは別に全国10地区に支部長を置き、全国に点在する被害状況の把握と入会促進を行っていく。本部役員と支部長はいずれも被害者が務める。
弁護団はさくら共同法律事務所の西村弁護士、東京新宿法律事務所の中村得郎弁護士(各都内)により構成されるが、今後、各地区の弁護士に呼び掛け協力事務所を設ける方針。すでに中部と関西の2地区で決まっている。
弁護団は「集団訴訟」として本件を社会問題化することを目指し、上限1200人と推計される被害総数のうち「最終的には800人程度の入会を目指す。事態は急を要するため、5月の早い段階で第一次訴訟を起こし、6月には数百名規模の第二次訴訟、7月の第三次訴訟で出し尽くすイメージで臨む」(西村弁護士)という。
訴訟相手は信販会社(8社以上)となる。目的はゴルフスタジアム(以下GS)によるリース・クレジット被害から会員を救済することで、GSが販売したソフトを購入するために信販会社と高額なローン契約を結んだことから、生活破綻の危機に瀕していることを重視。信販会社に対して債権取立てやブラックリストへの登録をしないよう求めていく。
また、40億円以上と見られる債務残高の大幅減額、理想的には「残債ゼロ」を目指す方針。「GS問題は非常にショックな事件。千数百名のプロやショップ、練習場が40億円以上の被害に遭ったことは許せない。小口リースの悪徳商法といえるもので、法的手続きに入った信販会社もあるので徹底的に戦っていく」(西村弁護士)
「西村弁護団」と契約を交わす際には着手金8万円(税別)と実費1万3600円(税込・追加実費なし)が必要。弁護団の報酬は会員が得る経済的利益の8%(税別)だが、上限は40万円となる。これは500万円の残債がゼロになった場合の報酬額に相当するが、仮に1000万円の残債がゼロになっても40万円が上限となる。
被害者をできるだけ一本化したい
以下、総会で行われた質疑応答を要約する。回答者は西村弁護士。
大阪や名古屋で個別にローン会社を訴える動きがある。つまり「西村弁護団」に参加しない被害者も出はじめているが。
「その動きは知っているが、他の法律事務所と我々で主張内容は大きく違わないと思う。彼らがどこの裁判所でやるかわからないが、我々はできるだけ当方の弁護団に集まってもらい、東京地裁で集団訴訟を起こしたい。
信販会社が十分な調査確認をせずに契約を締結した場合は、確認義務違反になる。確認義務を怠ると、信義則上、背信性が疑われ、残債務を否定できる判例もある。我々は債務不存在を主張して、集団訴訟を順次起こす」
着手段階で約10万円の費用が掛かるが、これが厳しい場合は?
「原則的には気持ちよく払ってもらいたいが、払えないひとは個別相談で分割になることも考えられる」
月々の返済が8万円あり、これを全額支払わないとブラックリストに載って商売が難しくなる。返済額を半額の4万円にして戦うことは?
「減額すると債務を認めたことになるので和解となり、裁判ができなくなる。実際、GS側の弁護士の話に乗ったひとが数名いた。信用リスクを害したくないと考える被害者の場合は、信販会社に対して裁判中はブラックリストに載せない提案をしていくつもり。そのうちの1社は了解している」
ブラックリストに載せないことを書面で確約した?
「確約というか、口頭での話だ」
騒動の発端であるGSへの対応は?
「一番の問題はこちらにあり、GSの動きは監視するが、今は信販会社との裁判を優先する必要がある。すでに支払督促という法的手段をとった信販会社もあり、急を要する問題だ。このようなケースでは、被害者が1人だと無視されるが、千人規模になれば裁判所も無視できない。リース問題にカタがつけば、GSにも対応していく」
以上が質疑応答の要約だが、「被害者の会」と弁護団はゴールデンウィーク中にも各所で説明会を開き、会員の入会率を高める方針。個別訴訟やGS側の弁護士など、被害者の争奪戦が起きている印象もあり、パワーゲームの様相を呈す。
「西村弁護団」の戦略骨子は、数を集めて社会問題化し、信販会社が主張する法的正当性を世論によって覆すこと。時間が経てば自己破産が相次ぐことも懸念され、諸事スピード感が求められる。(片山哲郎)