武蔵野美術大学北徹朗教授「ゴルフ場の熱中症対策は沢山ある」

武蔵野美術大学北徹朗教授「ゴルフ場の熱中症対策は沢山ある」
武蔵野美術大学の北徹朗教授(医学博士)は、ゴルフと熱中症の関係を調査・研究している。とはいえ同氏がユニークなのは、ゴルファー向けというよりも、むしろ「ゴルフ場目線」に立っているところだ。 キャディの歩数や「深部体温」を計測したり、支配人の意識調査を行うことで、熱中症対策の現状と課題、解決策を提示する。「月刊GEW」6月号に掲載したインタビュー記事をウェブ用に再掲する。

なぜ熱中症の研究なのか?

大学の体育教員で医学博士でもある北さんが、なぜ「ゴルフと熱中症」の研究を始めたんですか。 「ゴルフの熱中症には専門のメディカルドクターもいらっしゃるので、私から専門的な発言をするべきじゃないとは思いますが、それを前提に申しますと、ゴルフは屋外で4時間半ぐらい日に当たるし、高齢者も多いじゃないですか。 なので、単純にリスクが高そうだから調べてみようと思ったわけです。ただ、そもそも熱中症とは別に、ゴルフ場でキャディの歩数を調べたんですね。ゴルフ場スタッフの労働環境を調べる目的でした」 あれは骨粗鬆症がテーマだった? 「いえ、骨粗鬆症というか、鶏と卵の話と似てるんですが、そもそも骨が強い元気な人がキャディをやっているのか、それともキャディをやってるから元気なのか・・・。ほかの調査では、ホテルで荷物を運ぶポーターも骨が強い人が多いんですね。骨は刺激が加わると強くなるので。 それで、女性の場合は50歳を過ぎるあたりで骨が弱くなりますので、キャディの場合はどうだろうと。ふと思ったのがキャディの歩数調査の動機です」 ふと閃いたわけですね。研究テーマの発見は思いつきが多いわけですか。 「だいたいそうです」 学者の本分は研究して論文を発表することだから、テーマの「発見」が生命線になる? 「そうですね。まず、思いついて、それからほかに誰がどんな研究をしているのかを調べます。昔は図書館で丸一日調べたものですが、今は世界中のデータベースがネットで拾えるから比較的楽なんですよ。で、スポーツ分野でゴルフ関係の研究は、そもそも事例が少ないんです」 それは、ゴルフを研究する学者が少ないという意味ですか。 「というか『日本ゴルフ学会』には、過去30年の研究動向を調べた査読付き論文が百数十篇載ってるんですが、断トツで多いのがバイオメカニクス的な研究なんです。要するにスイングの動きなどが中心で、さっきの骨とキャディ業務の関係みたいな研究はあんまりないんですね」 すると、北さんみたいに産業の視点でゴルフを研究する学者はいない。独壇場ですか? 「いえいえ(苦笑)。でもまぁ、自分で言うのもアレですけど、新しいことを思いついたら大半は最新の研究になりますので」

熱中症の症状はどのようなもの

とにかくキャディの歩数を調査した。それから熱中症という流れですが、どんな経緯で熱中症に? 「キャディの歩数を調べて驚いたのは、もの凄く歩くんですよ。私の調査結果では一日2万1606歩で、それ以上に驚いたのがコース管理の人。なんと4万3629歩も歩いてました。 ただ、問題は歩く時間帯なんですね。コース管理の仕事はお客さんを入れる前の早朝とプレー後の夕方に歩数が極端に増えますが、キャディは日中のもろに暑い時間に歩くので、当時出したレポートにも『キャディ業務は心配だ』と書いている。それが熱中症に着想したきっかけです」 肝心な話、熱中症というのは何ですかね。 「・・・ん?」 熱中症はヤバいと言われるし、僕もそう書いてますが、実は何がどうヤバいのかよくわからない。 「なるほど。私は専門家ではありませんが、授業で学生に説明する資料がありますので、まずはこれを読んでみます。 熱中症とは、高温多湿な環境で体内の水分及び塩分、すなわちナトリウムなどのバランスが崩れたり、循環調節や体温調節など、体内の重要な調節機能が破綻するなどして発症する障害の総称です。 目眩や失神、筋肉痛や筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛や吐き気、嘔吐、倦怠感、意識障害、痙攣、手足の運動障害、高体温などの症状が現れます」 う~ん、長いですねぇ。 「すみません、もうちょっとです。症状は、いわゆる立ち眩みの『熱失神』、こむら返りや筋肉の痛みの『熱痙攣』、脱水が進行して嘔吐などが起こる『熱疲労』、それから意識障害や全身の痙攣などが現れる『熱射病』に分類されます。 このような症状が重症度によって軽症のⅠ度、中等症のⅡ度、重症のⅢ度に分類されるんですが、重症になると脳や内臓障害も起きますし、最悪の場合は死に至ってしまうわけです」 なるほど・・・。 「熱中症になるには3つの条件がありまして、『環境』と『行動』と『からだ』です。 まず環境ですが、これはWBGT(暑さ指数)の要素になっている『気温』『湿度』『輻射熱』(日射・放射等周辺の熱環境)で、近年WBGTが気温よりも重視されてますが、これは気温が高くても風が吹いていたり、湿度の関係で身体への影響が変わるからです」

WBGTの構成要件を考える

気温はわかりますが、湿度はなぜマズいんですか。 「人間は汗を出して深部体温を下げるんですが、ダラダラ汗をかかなくても毛穴から蒸散してるんですね。ところが、湿度が高いと皮膚にまとわりついて蒸散しにくくなる。それで深部体温が下がらないのが良くないんです。 熱中症で一番バシッと決まるパターンは、高温多湿の無風状態なんですよ」 3番目の「輻射熱」ってなんですか。 「あれはですね、地面のアスファルトからの照り返しや、近くにエアコンの室外機があったり、マンホールの鉄製の蓋があったりすると、」 反射熱みたいなもの? 「まあそうです。太陽からの強い日射や、道路や建物などからの放射で多くの熱をもらうんですが、これは気温に反映されなくて、周辺の物自体の熱なんです。 WBGTの測定器は気温、湿度、輻射熱が個々に表示できますが、3つ合わせたWBGTが気温よりも大事になるわけです」 今年4月の「改正気候変動適応法」で、WBGTが35を超えると特別警戒アラートが出ることになりましたが、この35は気温の目安だと何度ぐらいですか。 「気温約40度がWBGT35の目安ですが、環境省などが指針としてるのはWBGT31以上で35度以上。この場合、運動は原則中止という指針です。 28~31以上が31~35度で、激しい運動は中止。25~28が28~31度で、積極的に休憩をとるなど、それぞれのレベルに応じて指針が示されています。 ただ、ゴルフ場って広いじゃないですか。日向もあれば日陰もある。18ホールの場所によってWBGTは大幅に変わるんですね。特に日陰で風通しの良いホールは数字が低くなるでしょう」 WBGTの測定器をスタート室前のアスファルトの上に1台だけ置くゴルフ場もありますね。それで「35」だからヤバいとなっても、実際にはコースの場所によってまったく違う。 「おっしゃるとおりです」

「からだ」について考える

以上が「環境」の話ですが、「からだ」についてはどうですか。 「熱中症に関わる『からだ』の要因としては、激しい労働や運動によって体内に著しく熱が生じたり、暑い環境に対応できないことが挙げられます。 特に身体の調節機能が衰えた高齢者や、肥満、糖尿病、精神疾患をもっていたり、下痢などで脱水症状や二日酔い、あとは寝不足も、WBGTが高くなくても熱中症のリスクは高くなります」 飲酒はなんでマズいんですか。 「まず、脱水症状になりますよね」 なんで? 「アルコールは利尿作用があるのが大きいです。寝不足で酒飲むと物凄く酔っぱらうじゃないですか。寝不足と二日酔いは大敵です」 3番目の「行動」は? 「これは、激しい運動などで体温を上げるような活動です。上腕を曲げると片方が収縮してもう一方は弛緩しますが、筋肉の動きが激しくなると体温は上がる。体温の上昇と調整機能のバランスが崩れると、身体にどんどん熱が溜まってしまうんです。 身体の奥の『深部体温』は、健康時に37度前後に保たれてますが、これが上がるといろんな不調が生じるんです。意識が朦朧とする、頭痛、吐き気、倦怠感などの症状が出た場合は、深部体温の上昇によって脳や消化器官、肝臓に影響が出ている可能性がある。 あるいは全身の痙攣や意識障害を起こすとか。身体の奥底の温度は普通、そう簡単に上がらないので」 深部体温は、内臓や脳の温度とも言えるわけですか。 「そうですね。これを正確に測る方法としては直腸や膀胱、血液もありますが、一番簡単なのは耳の穴に1cmぐらい検温器を入れる鼓膜温の計測があります」 先日NHKの番組で、脳は非常にデリケートだと。1度上がるだけで大変だと話してました。 「そうですね。個人差はあると思うんですが、一般的には0.5度上がっただけでも影響があると言われるので、1度上がったら相当なことだと想像はできますよね」

真夏のキャディは過酷な労働

北さんは2021年8月に、冒頭の「歩数調査」とは別にキャディの「体温変化」を調べてます。これ見ると、けっこう厳しい数字が並んでます。 「そうなんです。この調査はキャディの『着衣環境』を調べたもので、8月の別の日に首都圏のふたつのゴルフ場でやりました。 Aコースの被験者は51歳の女性で、当日の気温は29.6~41.8度とかなり高かった。湿度は38.7~67.2%、WBGTが27.7~33.9、風速は0.1~3.49m。 それからキャディ服はポリエステル95%と綿5%の長袖で、背中は通気構造で内側はメッシュ素材、帽子はヘルメットという条件です。 驚いたのは、キャディ業務の前と後で鼓膜温が約3度上がってたことなんですよ。業務前が36.3度で後が39.2度という結果だったので、」 えっ、3度上がるって凄いですよね。 「かなり凄いです。一般的に深部体温が40度以上になると、脳機能に障害が起こる危険があって、これが続くと脳だけでなく、肝臓など全身の臓器に障害が起こる可能性も指摘されますから」 キャディ帽というか、ヘルメット内の温度はどうなっていたんですか。 「大きくふたつのピークがありまして、正午前の温度が44.3度、午後2時前が38.9度でした。 キャディ帽は一見、ツバが広くて白いから涼しそうに見えるんですが、中はヘルメットだし、頭に汗止めのタオルを巻いてからヘルメットを被るキャディもいますので、もの凄く暑いんですよ。 ユニホームも長袖で首までしっかりボタンをしているのと、化繊の白い手袋をするのも問題です。クラブ持って動き回るから運動量も非常に多い。ですから夏のキャディ業務は、極めて過酷な労働なんです」 もうひとつのBコースは? 「Bコースのキャディは27歳で、当日の最高気温は36.8度、WBGTのピークも31.7だったので、Aコースよりは楽な条件でした。鼓膜の深部体温も前と後で同じ35.5度だから、全然変わらなかったです」 今年の夏は去年よりも暑そうだし、仮に熱中症でキャディさんが亡くなったら一大事です。ただでさえ人手不足なのにキャディの成り手がいなくなる。ゴルフ場側も責任を問われる。

WBGT計測器の保有率約1割

厚労省は企業に対して、暑熱下における職場環境の改善を指示してます。この点について北さんは、ゴルフ場支配人の意識調査も行ってますね。 「はい。2022年3月に支配人の意識調査を行いまして、225コースにアンケートを送り81コースから回答を得ました。 まず、厚労省が出した『職場における熱中症予防マニュアル』についてですが、このマニュアルを『知ってるが読んだことはない』が20.3%で、『知らない』は22.0%。合わせて4割以上の支配人が中身を知らないという結果が、当時は出ています」 だけどそれは2年前の調査でしょ。今はもっと意識が高まってるんじゃないですか? 「だといいんですが・・・。この調査をした2022年は暑さ問題がもの凄く言われた年なんですね。2019年の5月26日に北海道で観測史上最高の39・5度を記録して、道内のゴルフ場で36歳の男性が熱中症の疑いで亡くなってます。 この年、ファン付きウエア市場が急拡大して、ゴルフ場でも目立ちはじめている。ですから2022年の段階では、もっと意識してるだろうと思って調べたわけですが、」 支配人の意識は低かった? 「はい」 となると、今の意識も2年前と大して変わらない? 「どうでしょう、かもしれませんが・・・」 同じ調査で深刻なのは、ゴルフ場のWBGT測定器の保有率です。これが当時8%で、9割以上が持ってなかった。今も同じならかなり問題ですね。 「今の保有率はわかりませんが、ただ、熱中症はゴルフ場にとって自分事になってないような気はしています」 測定器の保有率は論外としても、ゴルフ場がやれる熱中症対策はいろいろあるんじゃないですか。 「そうなんです。9割以上のゴルフ場は一応、会員制が建前なので、メンバーの心象を害さないためのドレスコードがありますが、ウエアを外に出すと4度涼しくなるという調査結果もありますので、シャツインが必須というドレスコードが変わってくれば、もっと楽になるのかなぁと」 色の調査もありますね。 「あれはうちの大学院生が中心になって調べたんですが、色によって温度は変わります。様々な色の帽子を屋外に並べて帽子内温度を測ったところ、綿ポリ製の薄いピンクが38.4度で一番低かったです。 次が黄色の40.2度、白の40.3度と続くんですが、帽子の表面温度は白が圧倒的に低くて、これは日射反射率や吸収率が原因だと思います。 それと、去年から日本の紫外線量が急激に増えて、オーストラリア並みになってますが、紫外線については黒っぽい色が通しにくいので、一概に白がいいとは言い切れない面もありますね」

考えられるキャディの対策

キャディの熱中症対策はどうですか。 「キャディ対策という意味では、頭部が熱くなるのが一番問題なので、ヘルメットの構造を、通気性が高いものにするのが効果的だと思います。 それと、温度計付きヘルメットはどうでしょう? ヘルメットに温度インジケーターを付けて、青は大丈夫で黄色は注意、赤は危険とか、外からわかると休息させる目安になるじゃないですか。とにかくヘルメット内は高温なので、そのあたりの工夫が必要でしょう」 冷却機能付き手袋というのも商品化されてますね。 「はい。すでにデサントも商品化してますが、実は手の平は深部体温を下げるのに効果的だという研究結果が出てるんです。 よく、脇の下を冷やすといいと言われますが、手の平には動脈と静脈が入れ替わる動静脈吻合血管がある。手の平を冷やすのを『手掌冷却』と言いますが、これがとても大事なんです。 冷やす適温は12度で、運動を開始する30分前のプレクーリングが有効だと言われています」 すると、キャディがナイロン製の白手袋をしてるのは逆効果? 「おっしゃるとおりです。ゴルフ場によっては接客マナーとして白い手袋を義務付けたり、キャディ本人も日焼け止めのつもりかもしれませんが、手掌冷却の観点では逆のことをしているわけです」 なるほど、知らないっていうのは怖いですねえ。 「そうなんです。プレクーリングの観点で言えば、プレーヤーはスタート30分前に練習グリーンにいることが多いじゃないですか。ジャストアイデアなんですが、12度に保たれる冷感グリップがあれば夏のヒット商品になるかもしれませんね」 グリップメーカーに提案しておきましょう(笑)。

ゴルフ場ができる対策は沢山ある

ほかにゴルフ場ができる対策は? 「それが、まだまだあるんですよ(笑)。たとえば複数のホールにクーリングエリアを設けて、大型扇風機を置くのもいいですよね。大学の体育授業でも使ってますが、タイマーを1分ぐらいにセットして風に当たる。1台13万円ほどで買えますが、凍らせたペットボトルを扇風機の前にフックで掛けると効果的です。 クーリングエリアにはアイスボックスを置いて、冷たいおしぼりや氷などで手掌冷却するといいかもしれません」 なるほど、簡単にできることはけっこうあるんだと。にも関わらず、ゴルフ場は熱中症対策に消極的だと映ってしまう。なぜですかね。 「まず、知らないこともあるでしょうし、変える勇気がないのかもしれません。大袈裟に騒ぐと、お客さんが離れるんじゃないかと心配になるとか」 知らないから過剰に身構えるんでしょうね。WBGT計測器の保有率もそうだけど、ヘタに置いたらプレー中止を迫られるとか。でも、測り方によって安全な場所も沢山ある。 「知ればお金を掛けずにできることは沢山あるわけですよ。環境省や食品メーカーのウェブサイトには熱中症対策にお勧めの食事がいっぱい出てるし、塩キウイスムージーも良いと言われるので、これを朝食や茶店で出せば、1杯700円ぐらいで売れると思うんです」 世間に情報は山ほどある。 「あります。それから熱中症は本人の自覚が大事なので、それを促す方法としてはチェックインシートも考えられます。 シートには前夜の睡眠時間や飲酒、朝食の有無といった項目を設けて、チェックすれば本人の意識づけになりますし、ゴルフ場も『この組は注意しよう』と把握できる。 あと、コースマッピングも有効だと思うんですね。ゴルフ場はホールによって高台や窪地、池や林といったようにWBGTが違うので、WBGTが高いホールはスコアカードに簡単なマークを付けて、ここはムリして歩かないでカートに乗ろうとか。 熱中症は本人の気づきが大事なので、社内でPOPやポスターを作って目立つところに貼っておく。それだけで大分違うと思います」 食堂のメニューに「熱中症に塩キウイスムージーをどうぞ」とかね。 「そうですよね。以前GEWに、ゴルフ場の農園でバナナをつくってるという記事が出てましたけど、それと同じ発想で、熱中症に効く果物を自分の農園で栽培して、大々的にPRするとか。 健康志向の高まりで農薬を気にする人もいるでしょうが、『無農薬の〇〇スムージーです』って提供すれば喜ばれると思うんですよ」 それはいい発想ですね。地産地消に取り組むゴルフ場のレストランはこれから増えるだろうし、熱中症に効くとなれば一石二鳥。 「ですよね(笑)」 熱中症というと危機感ばかり先に立つけど、前向きに社内で議論すればいろんなアイデアが出て、むしろ会議が楽しくなるかもしれない。 「それって非常にいいことですよね。会議を通じて社員の意識も高まるし」 言い足りないことはありますか。 「まだまだいっぱいあるんですけど」 いっぱい書くと散漫になるので、ポイントだけでいいでしょう。 「じゃあ、大丈夫です(苦笑)」

学者の「机上論」と言われたくない

最後の質問です。北さんは学者として、社会に役立つ研究をしてますが、その研究は論文を書くための机上論として満足なのか、それとも社会の現場に落とし込むのが目的なのか。「現場」は学者の領分じゃないのかな? 「あのぉ、自分で言うのもおかしな話ですが、ここまでいろいろ考えてる大学の教員は少ないと思うんですよ。ですから、たとえばゴルフ場経営者の方に『机上の空論だよ』って片付けられるのは、正直、そうじゃないって気持ちは強くあります。 それと、私が現場を大事にするのは、現場の方と話していると、より現実的な落としどころが見えてくるんですね。今度、あるゴルフ場チェーンの経営会議に参加して熱中症対策を話すんですが、幹部や支配人がいらっしゃるので、僕の話を一方的にするんじゃなくて現場の声に耳を傾けたい。それが今から楽しみなんです(笑)」 学者の世界は「象牙の塔」と言われますね。社会と隔絶されたところで研究に没頭する。つまりこの言葉には「学者バカ」みたいなニュアンスがあるじゃないですか。 「あのぉ、僕の場合はあくまで、実社会に役立つことをやりたいんですよ。ゴルフ産業の研究は2003年頃に始めまして、いろんなアンケート調査をしたり、海外のゴルフ場を調べたり、沢山研究をしてきました。 でも、誰にも読まれず無視されて、苦しい時期があったんです。もうやめようと思って最後に出したプレスリリースを、GEWが取り上げてくれたじゃないですか。2015年のことです。 それをきっかけに注目されて、ゴルフ業界の人脈もできました。ですから、僕の研究が注目されて、ゴルフ産業発展の一助になればとても嬉しいし、もの凄くやり甲斐を感じているんですね。 とにかくゴルフ業界に還元したい。社会の役に立ってこその研究だと思ってますから」
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら