26年続く女性向け企画「東急レディスゴルフ」が人気のワケ

26年続く女性向け企画「東急レディスゴルフ」が人気のワケ
「普段会うことのない女性同士が、東急のゴルフ場を通して仲良くなる。お金には代えられない価値だと思います」 東急電鉄の西嶋健太郎氏は日焼けの残る笑顔でそう語る。 東急電鉄は、9月5日まで「東急レディスゴルフ2018」を開催している。同イベントは東急電鉄、東急リゾートサービスなどが共同で開催しているレディスゴルファー向けイベントで、協賛には住友ゴム工業、JTA、キリンが並ぶ。今年で27回目と歴史は古い。東急グループは全国に29ヶ所のゴルフ場を運営するが、何故レディスに特化したイベントを26年も続けているのだろうか?

東急レディスゴルフとは?

同イベントは、特別な手続きは不要で参加できる。具体的には、全国29ヶ所の東急グループのゴルフ場で「東急レディスゴルフに参加する」と伝えてラウンドをするだけ。条件は一般レディスゴルファーということだけだ。参加賞としてもれなく、東急レディスゴルフオリジナルパッケージのスリクソンボールと、キリングループ飲料がプレゼントされる。さらに、各ゴルフ場のイベント参加者から無作為に2名が選出され、11月に宮古島で行われるサンクスフェスタに招待されるというものだ。 [caption id="attachment_47742" align="alignnone" width="788"]東急レディスゴルフ サンクスフェスタが開催される宮古島の「エメラルドコーストゴルフリンクス」[/caption]

開催のきっかけ

1回目の開催は1992年まで遡る。元々は東急グループゴルフ場のメンバー向けインナー企画で、メンバーの家族をゴルフ場に連れてきてもらい、ゴルフに触れるきっかけにするという色合いのものだった。それが、4年ほど経過したあたりからイベントをオープンにして、レディスゴルファーのゴルフ場利用拡大と、レディスゴルファー同士の親睦の目的で、現在の形になってきたという。当初は東急グループのゴルフ場の内、イベントへの参画は7割ほどからのスタートだったが、徐々に増えてグループ全てのゴルフ場参加まで漕ぎつけたとのこと。前出の西嶋氏によると 「当時はゴルファーもそれほど減少はしていませんでしたが、レディスゴルファーを増やしていくことが今後のゴルフ場には必要だという、ある種の危機感というものはあったのかもしれません」

なぜ「レディス」なのか?

東急グループゴルフ場の6月から9月の利用者の内、平日の来場者の4割が女性で、中には女性のみのグループも多いという。土日の平均プレー代が1万5000円~1万8000円なのに対し、平日は9000円~1万円と、価格の安さも一因だと思うが、来場者の平均年齢も50~60代が中心ということもあり、子育てが落ち着いた年代の女性が平日にゴルフを楽しむという傾向があるのではと西嶋氏は言う。東急グループはその点に着目し、暑さで来場者の落ち込む夏場に「レディス」に特化したイベントを開くことで来場者を増やそうと考えたようだ。 「女性同士の良い意味でクローズなコミュニティに可能性を感じています。ゴルファーがゴルファーを連れてくるといった形で、女性のネットワークはとても強いと感じています。また、来場者の方の声を聞くと、普段なら抵抗のあるワンピースや短めのスカートが、ゴルフ場なら着ることができる。そんな自己表現の機会がゴルフだと感じている女性が多いようですね」

東急レディスゴルフの事業規模と成果

1995年のイベント参加人数は3000人弱だったが、年々500人ずつ増え続け、2014年には3万人に達したという。さらに、2017年は3万3000人に到達し、今年は昨年に比べ一気に2000人アップして、現時点で既に3万5000人のイベント参加人数がいるとのこと。一般レディスゴルファーであればレベルは問わないという気軽なスタイルからリピーターも多く、順調に推移しているとのこと。イベントの収益について西嶋氏は 「東急線の車内広告やイベントの特設ページでの告知、東急グループゴルフ場での訴求などで、宣伝費として200万円ほどかけています。ただ、イベントの集大成として行われる宮古島でのサンクスフェスタは、旅費なども含めて全て東急が負担しています。宮古島に2泊3日で行くだけでも7万円ほどはします。全29のゴルフ場から2名を選出しますから、計60名分の費用を負担するだけでも、400万円以上かかっています。イベント単体で言うと、正直赤字ですね(笑)」 ただし、毎年続けていることには東急グループ全体としての意義があるという。 「イベントへの参加者も年々増えていることも効果としてありますが、それによってゴルフ場を知ってもらい、リピーターになってもらえることが大きいです。東急グループのゴルフ場には『東急』とついていない所もあり、イベントを通して東急のゴルフ場だと知ってもらうことで、ブランディングに繋がるという意図もあります。また、ここ5年ほど宮古島をサンクスフェスタの開催地としていますが、これには宮古島の認知度の向上という意味も含んでいます。事業単体というよりも、事業を通して得られる効果を長期的に見ています」

レディスゴルファーを増やしていくために

年々減少するゴルフ人口を増やすために、女性ゴルファーの誘引は突破口になる。同イベントは、最初の意図こそグループのゴルフ場のためだったとは言え、将来的には業界全体のゴルファー創出につながる可能性もある。また、同イベントに協賛する住友ゴム工業は、不定期で「レディスゴルファー活性化委員会」を開催し、業界で働く女性の情報共有の場を設けている。協賛のみならず、メーカーも巻き込んでイベントを成長させていけば、やがてこれが一般のレディスゴルファーを受け入れる間口に繋がるかもしれない。 「サンクスフェスタも、元々は『大会』と名付けていましたが、大会となると身構えてしまい辞退者も多かったため、イベントを楽しいものと捉えてもらうために、サンクスフェスタとしました。今後は、ゴルフの競技性を解消していきたいです。ゴルフの敷居を下げて、もっと若い世代の女性も気軽にゴルフを始められるようにしていきたいですね」 なお、同イベントは9月5日まで開催している。イベントへの問い合わせ・参加は、「東急レディスゴルフ2018」公式サイトまで。