新競技「ゴルフトライアスロン」 地域経済を活性化できる3つの理由(後編)

新競技「ゴルフトライアスロン」 地域経済を活性化できる3つの理由(後編)
10月29日にアップした前編に続き、「ゴルフトライアスロン」の後編をお届けする。同大会は10月12日、三重県の津CCで行われたもので、筆者が主催者となった。以下、一問一答でこの大会の概要を説明しよう。 [surfing_other_article id=50899]
各競技のポイントとはどのように計算されるのですか? 「各競技のポイントが公平になるように考え、ランとバイクは1秒1ポイント、ゴルフは1ストローク40ポイントとしました。18ホールの距離はおよそ9km、これを1km6分で走ることをベースに考えると54分で走り切ります。 ポイントにすると3240、ゴルフではスコアが90ストロークとすると3600ポイント、バイクは30kmを時速30kmで走ると60分で、ポイントは3600ポイントとなります。普段からランやバイクをやって鍛えている人は、それなりの結果が出るのが面白いところです」   企画から大会の実現まで4年近く掛かったそうですが、どうしてそんなに時間がかかったのですか? 「2つの理由があります。まず、事前に参加人数が読めず、運営方法が具体的に見えなかったこと。ゴルフ場の全面協力、つまり貸し切りにしなければ開催できず、その場合、ゴルフ場への売り上げの保証が担保できるかどうかわかりません。 また、貸し切りでない場合、一般ゴルファーがプレイしている中で、どのように競技ができるのかも難しい問題でした。しかも、ゴルフのプレイ終了後のコース内でのランは、一般ゴルファーが全てホールアウトしていないとできないので、これも時間が読めない部分でした。 2つ目は面白い企画だやってみよう、と言うゴルフ場が皆無だったこと。前例がない競技なので、一般のお客様に迷惑がかかることと、ゴルフ場のスタッフにも負担がかかるため、内容を詰める必要があったのです。 そうした中で昨年、海外勤務から帰国した息子が『これ面白いよ、最初は俺と二人だけでもやろうよ、それからどうすればよいか考えよう』と言ってくれたことが行動に移すきっかけになりました。 そこで、津CCの小島伸浩さんに企画書を持っていったところ『うちでやろう、最初は20名くらいのトライアル大会にして、色々経験して、その後本格的な競技会にしていけばいい。全面的に協力する。開催日は国民体育の日あたりがいいだろう』ということで、10月12日にトライアル大会が決まったわけです」

ゴルフ場ビジネスにも変革効果

ゴルフトライアスロン 開催に際して懸念されていた諸問題はどのようにして解決したのですか? 「少人数での開催を想定して、ゴルフ場の小島社長が陣頭指揮を取ってくれて、全体運営は支配人が、施設利用についてはコース管理担当者、マスター室担当者、食事関係は食堂の担当者などが個別に打ち合わせを数回行い、情報を各担当者がシェアできるよう配慮してくれたことが大きかったですね。 ゴルフとランをどうするかは最も苦労した部分ですが、一般のお客様がスタートする前にラン競技を終え、すぐにゴルフのスタートをすることで大きなトラブルは回避できると考えましたが、9ホール終了後は一般のお客様のスタート時間と重なってきます。 そこをどのようにクリアしようかと相談したところ、ゴルフはアウトからのスタートにし、インコースの入る時間帯の予約はその日取らないようにして、すぐに10番ホールに進めるようにしましょう、同時にスピードアップのため2サムのプレイを決断しました。 まず、ランのスタートは6時30分に設定し、集合時間を逆算で朝一番の5時30分にして、ゴルフ場の関係者も5時に出勤。これでゴルフとランのめどがつきました。あとはバイクです。自転車は公道を走るため道路の使用許可を警察に申請する必要があります。ゴルフ場には元警察官が在籍されているのでアドバイスを受けられました」   開催の目的は3つ(ゴルフ人口の増加、ゴルフ場ビジネスの再認識、ゴルフツーリズム)あるそうですが? 「はい。トータルとして大事なことは『ゴルフの再認識』です。流行りのランニングとスポーツサイクルとゴルフを組み合わせることで、新しいゴルフスタイルを確立し、ゴルフの面白さを再認識させたかった。 現在ゴルフのコアプレイヤーは60歳代の男性とかなり老齢化が進んでいます。また、若者や女性の新規参入者が増えつつも3年以内に半数がやめてしまう現実があります。老齢化がこのまま進めば、ゴルフ人口の激減だけではなく、ゴルフ場の閉鎖も余儀なくされる。 わたしはゴルフ市場活性化委員会のメンバーですが、ゴルフは面白い楽しいから始めませんかの呼びかけだけでは難しく、具体的な活動、特にイベントなど実体験の中で面白さに気づいてもらいたいと感じています。だからスポーツが好きなアスリートにレベルや年齢、性別に関係なく参加してもらうためゴルフを趣味の一つのアイテムに加えてもらう狙いがあります。 2つ目の狙いは、ゴルフ場ビジネスのあり方を少しだけ変えたいというものです。ゴルフ場運営は画一化していて、どこのゴルフ場に行ってもほぼ同じような形のプレイしかできません。なぜ、若い人たちがゴルフをしないのかという理由の多くは、ゴルフ場側にあると見ています。 彼らは『ゴルフは敷居が高い』と感じていますが、その理由は、料金を払う来場者に対してあまりにも規制が多いからです。つまり、『ゴルフをやらせてあげる』という視点での運営の仕方です。 まずドレスコードですが、これはスポーツする場所でなく社交場ですと自ら宣言しているようなもの。さらにプレイヤー以外はゴルフ場に入れず、ティグランドを選んでプレイできない。カートの使用を義務化したり、プレイファーストと初心者には冷たい点、ルールが分かりにくいなどが障壁です。プレイヤー視点でなく『ゴルフ場視点』で多くが決められているのです。 また、ゴルフ場は『器産業』だから収容人数に限界があり、18ホールの一般的なゴルフ場は1日150〜160名程度が限界とされます。限界になれば顧客単価を上げねば増収はあり得ず、満員にしようとすれば価格競争を強いられ収益は悪化します。従業員も長時間労働を強いられ、優秀な人材の確保が難しく、離職率が高まればサービスの低下を招きます。 そこで、ゴルフ場という器を『ゴルフをする場所』から変える必要があります。ゴルフ場には大型の食堂があり、大小の会議室も備え、広大な芝生を敷き詰めたフィールドがあります。これを『ゴルフ+新ビジネス』に利用できないかと考えました」   マラソンは人気がありますね? 「マラソン大会は大きなところでは数万人、普通でも数千人が集まる人気があります。そこで、例えば500人のクロスカントリーの大会を夕方開催したらどうでしょうか? 9ホールであれば30分、18ホールでも1時間、準備や表彰式の時間を考えても3時間もあればできます。一人3000円の参加費でBBQやシャワーの使用ができれば割安感があり、150万円の売り上げが見込めます。頭の痛い固定資産税を新たなビジネスでカバーできたら収益は大きく改善できます。 ゴルフ場を18ホールのランとしたのはこのような狙いがあり、これをきっかけに新たな視点でゴルフ場という器を見直してビジネスチャンスを広げていただきたい」

日本発の競技でインバウンド!

ゴルフトライアスロン ゴルフツーリズムとゴルフトライアスロンとの関係はどのような視点で見ているのですか? 「そこが3つ目の視点です。ゴルフ場は都市から離れたところにあり、プレイするのに1日がかりとなります。これも車を持たない若者や女性にはバリアーとなっています。3つの競技を組み合わせると7時間はかかるので、早朝からのプレイには宿泊が必要です。観光地などが近くにあれば、家族も一緒にと考えるでしょう。 また、この競技はアメリカ西海岸やヨーロッパではすぐにでも受け入れられると思います。 生活環境の面で、ゴルファーがバイクに乗ったりランニングをすることが日常的だからです。この競技を『日本発』の新競技として日本から普及、海外から毎年選手を日本に呼べると考えます。優れた観光地が近くにあれば、競技終了後そこを訪れることにもなり、日本文化、日本食、日本の里山の美しさに触れることで、日本を正しく理解するきっかけになるでしょう。 大会が面白く、日本に興味が湧けば、家族や友人を日本に連れてくることになります。ゴルフトライアスロンという新しい競技会がゴルフ場とその近隣地域に経済効果を生み出せば、ゴルフツーリズムの力も高まるでしょう。さらにいえば、海外から色々なゴルファーが訪れれば、ガラパゴス化した日本のゴルフは変化を迫られます。そんなメリットも期待できます」   今後の展開を教えてください。 「初めての今回は暗中模索でしたが、規模が大きくなるにつれ専門の運営会社に委託する必要もあるでしょうし、スポンサーも必要になってきます。今回、この大会にかける自分の情熱に賛同してくれた新しい広告代理店の人たちが、ボランティアで動画やスチール写真撮影をしてくれました。 これらを見た人が『クールでやってみたい』と思える内容に仕上がっているので、これと企画書を作成してスポンサーを探そうと思っています。 同時にフェイスブックやインスタグラムにも動画を投稿して、競技をアピールしていきます。ホームページを立ち上げるなどやることがたくさんあります。 この活動を通じ、わたしは『日本のゴルフが面白くなる』という気がしています。様々な人との出会いがあり、これも人生の何かの縁なので、ライフワークとして力が続く限り普及に努めたいと思っています。情熱の『熱』は熱ければ熱いほど熱伝導が始まり、遠くまで伝わると信じるからです。 参加選手の顔は、競技中は苦しそうですが、やりきった後は達成した安堵感と挑戦した喜びが自然と笑顔になっていました。日本と世界のプレイヤーの笑顔を見ることと「来年またここで会おう」という会話を聞くことが究極のゴールなのです。次回は2019年10月12日(土)津カントリー倶楽部で第1回の本大会開催が決まっています。是非、ご参加ください」

取材後記

ゴルフトライアスロン 考えることは誰でもできる、それを人に話して考えとして初めて伝わる。しかし、その考えを実際に行動に移すことでもう少し多くの人に伝わる。そして、結果を出して初めて認められる。挑戦者とは考えたことを行動に移す人である。 企画の話を津CCの人達そしてそのゴルフ関係者にした時、「面白いこれはやる価値がある」という声があってここまできたという。日本のゴルフ関係者も注目するだけでなく行動を起こしたらどうだろう。まずはメディアが日本発の大会をどう理解し広めるかがポイントで大きな役割を握っている。さて、どうやるかである。