「ゴルフって初心者が一人で予約を取ることは難しいですよね? 必然的に誰かに連れて行ってもらうことになるわけですが、そうなると連れて行く方も他の組を気にしながらプレーするから負担になる。
結局、まずは練習場でみっちり練習してから、となってしまいます。ゴルフに興味を持ち始めた人も負担になって、コースでゴルフする楽しみを知る前にリタイアしちゃうこともあるわけです。その負のサイクルを取り払いたい」
そう語るのは、リソルゴルフの富樫孝之社長。同氏が語るように、ゴルフには初心者にとって高い「壁」がある。
ゴルフ自体の細かいルールはもちろん、「紳士のスポーツ」という抽象的な概念からくる「暗黙のルール」があるため、他のスポーツに比べてカジュアル感は少ない。そういった「壁」を取り払う秘策を同氏に聞いた。
「初心者」も「練習」しながら楽しめるゴルフ場
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リソルグループが進める太陽光発電[/caption]
同社は先頃、ゴルフ場と練習場を融合した「ゴルフトレーニングフィールドPies 福島石川」(福島県石川郡)をリニューアルオープンした。
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親会社のリソルホールディングスは、元々ミサワホームグループだったこともあり、ゴルフ場やホテルの運営、福利厚生などを行うほか、不動産事業やリゾート地の再生事業を専門とする。
「このゴルフ場は元々、27ホールからなる名門コースでした。ピーク時は年間約6万人の来場者がいましたが、東日本大震災などもあり、5~6年ほど前から経営が厳しくなったことに加え、施設の老朽化もあり、一昨年に18ホールに短縮し、さらに昨年には6ホールにして営業していたのです。
福島は被災地ということもあり、再生エネルギーの気運が高かった。そこで約18ホール分の土地を太陽光発電所にし、ゴルフ場を新しい形で再生しようとなりました。
そこで思いついたキーワードが『練習』です。従来通り6ホールをゴルフ場として営業し、眠っていたホールを『実際のコースを利用した本格的な練習フィールドに』というコンセプトでリニューアル。元々コースだったので、本格的なバンカーやアプローチの練習ができることが特徴です。
1組で3バッグ、4バッグという常識に囚われずに、2サム割増を設けないようにしました。もちろん、一人でのプレーもどんどん受け入れます。一人プレーの場合は割増料金をいただく代わりに2球打ちOKとし、そこにも練習の要素を入れています。
ドレスコードも不要とし、最低限の安全が保たれれば、基本的にどんな服装でプレーしても大丈夫です。

また、初心者用にガイドグリップをつけて身長別に選べるようにした独自開発のクラブを無料貸し出しして、スイングの負担も減らします。2打目以降もティーアップOK、バンカーからも手で出して打ちやすいところから打ってもらうなど、初心者のゴルフデビューができる場所を想定しています。将来的には練習と実践の融合として、ジュニア育成に協力できるようにしたいですね」
ゴルフ場なのにこんなことやっています

同氏は自らを「ゴルフ業界では無名で影響力はない」と表現する。ただ、「ゴルフ業界の常識を知らないからこそ思いつくことがある」と語る。
「私は元々、ミサワホームで住宅販売を10年やっていたので、ゴルフ業界では新参者だと思っています。
ゴルフの仕事に就いてからは、本社のゴルフ運営部、北武蔵カントリークラブの支配人、スパ&ゴルフリゾート久慈の支配人など、本社と現場を行き来しましたが、一人のお客様にじっくり向き合う住宅販売に対して、ゴルフ事業は顔の見えない多くの人にどう売っていくかが大事です。
そこで、お客様に楽しんでもらえる新しい発想を重視しました。
近隣のゴルフ場に先駆けてバイキングを導入したり、早朝プランを始めたり、時間単位ごとに顔の違うプランを提供しました。1日で100組廻れるタイムスケジュールを組んで、詰まることもなく最大で91組294人を入れたこともありました。
ユニークなのが、1日で45ホールをプレーする『夏の鉄人』というプラン。早朝から夕方までゴルフ漬けになれるんです。さらにハーフをプラスして54ホール回った方には鉄人の証であるバッグタグをプレゼント。
普通に考えたら、一日に54ホールプレーなんて誰がやるんだって思いますよね(笑)でも、『バカじゃないのお前』って言われると嬉しいってあるじゃないですか? そういう遊び心が大事。おかげさまで人気のプランで、年間延べ4000人が利用します。
他にも、バーベキュー、電磁誘導カートに乗ってお化け屋敷、ハロウィンパーティーなど色々なことをやりましたね。私も仮装してお客さんを送り出したりしてね。元々そういうのが大好きなので、自分が楽しんでいるのかもしれません(笑)」
リソルゴルフが考えるこれからのゴルフ場

上述のように、新しい試みを行いながら昨年4月にリソルゴルフの社長に就任した同氏だが、今後のゴルフ場をどう変えていこうと思っているのだろうか。
「ゴルフ場は未だに富裕層の場所というイメージがあって、地元の方が足を踏み入れにくい空間になっています。それどころか、地元の方でもどこにゴルフ場があるか分からないなんてケースもある。ゴルフ場ビジネスで大切なのは、『プレー以外でも必要としてもらうこと』だと思います。
昨年の西日本豪雨の際、瀬戸内ゴルフリゾートで食事と水と浴場を提供しました。これからのゴルフ場は防災基地としての役割も担えると思っています。だからこそ、日頃からレストランを開放したり、教室を開いたりしてゴルフ場の場所を知っておいてもらえないと、いくら物資を提供しても全員に行き届かない。
今後は、ゴルフ場をセグメント化してそれぞれの特色を出しつつ、若年層がゴルフを始めやすい施策作りをしていきたいです。ゴルフ場のオペレーションに関しても、機械化や地元のボランティアを取り入れたコスト削減のシステム作りなどチャレンジしたいことが沢山あります。
『アミューズメントパークの一つにゴルフコースがある』。そんな形も面白いのではと思っています」