昨年、熱中症による救急搬送者数は4万7877人(5~9月)となり、特に7月は前年比2・5倍と急増した。
地球温暖化が猛威を振るい、ゴルフで命を落とすケースもある。にもかかわらず、ゴルフ場の熱中症対策は旧態依然のところが多く、意識の遅れが深刻だ。
「飲む点滴」として病院での採用が増えている経口補水液をゴルフ場向けに販売する五洲薬品の藤井侃社長がこう話す。
「特に真夏の太陽に当たって体温が上がり、脱水症状を引きおこします。軽度から重度まで3段階ありましてね、軽い症状のI度はめまい、立ちくらみ、生あくびなどで、Ⅱ度は頭痛、嘔吐や倦怠感が出てきます。Ⅲ度は意識障害や小脳失調などを引き起こす重篤なもので、入院加療が必要。痙攣も危ない症状なんですよ」
ゴルフ界は熱中症をナメてるところがあるが、相当怖いのである。
そんな中、PGMがカートに送風機を完備した『CoolCart(クールカート)』の導入を決めた。連続駆動時間は約6時間で、人感センサーにより無人環境時には自動停止する仕組み。さらにクーラーBOX内には、スポーツドリンク、おしぼり、ミストスプレーボトルをセット。
同社広報の大嶋智氏が、「家庭用扇風機の『強』を超える風量が出ます」と前置きして次のように説明する。
「ゴルフ場の熱中症対策は急務で、お客様が快適にプレーできる手段を思索してきました。『クールカート』は親会社平和との共同開発により構想から約6ヵ月を経て完成。本来は7月から導入したかったのですが、部品調達の遅延により1カ月遅れての運用となります。先行予約も好調で、リピート需要も期待されます」
利用料金は一人700円~。8月6日よりハイグレードの「GRAND PGM」関東10コースと「PGMゴルフリゾート沖縄」「KOSHIGAYAGOLFCLUB」からスタート。
9月上旬には全国50コースの運用を開始し計62ゴルフ場へ導入。1コースあたり10~40台、計967台を予定する。パチンコ&スロット機器の「冷却ファン」で培った製造技術がゴルファーを熱中症から守る―。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら