ぼくが経営しているセブンハンドレッドクラブ(栃木県)は「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」をビジョンとして掲げている。そのため過去の連載では、ゴルフ場としてのクラブライフに触れることは少なかった。当コースには個人会員がおらず、法人無記名会員だけで運営してきたため理事会などの組織がない。だからこそ、他の会員制クラブに比べて自由な企画が発想でき、ゴルフ場を地域に貸し出す等の意思決定も即座にできる強みがある。
そのため、個人会員の影響力が強い他のゴルフ場経営層から、
「セブンハンドレッドだからいろいろできるんだよね」
と言われることが多く、そのたびに複雑な思いを禁じえなかった。なぜなら、ゴルフ場は資金面で運営を支える「会員」のための倶楽部である。その会員がいないゴルフ場でいろいろな挑戦をしたところで、「参考事例」としての評価しか得られず、社会的な意義もない。
そこで一念発起! 会員制クラブの「存在意義」を変えるため、個人会員の新規募集を決断した。
会員と共創するために
昨今、起業家の想いや商品・活動に共感した人から資金を募るクラウドファンディングが普及している。ぼくは、この「想い」を重視する社会的気運の高まりは確実に広まると信じている。そこで、我々が掲げる「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」という想いを理解いただき、新しいゴルフ場創りを一緒に行うパートナーとして会員を集めたいと考えた。ポスターのメインビジュアルに「我々はこんなゴルフ場にしていきたいんだ!」という将来のイメージを込めて「公園のようなゴルフ場の様子」をデザインしてみた。
募集開始は2022年10月1日、募集人数は30口。入会金の76万円には税金と預託金の10万円も含まれている。年会費は税込みで5万2800円。すでに約10名の新会員が誕生しており、
「ゴルフ場を地域コミュニティに開放するというビジョンにワクワクしています」
という、嬉しい言葉も頂いた。
これからは「数の時代」ではなく「質の時代」だとぼくは思う。一人ひとりとの関係性を大切にしながらビジョンに向けた共創の実現を、新会員と一緒に実現したい。
ゴルフ場のDX化に向けて
新会員の誕生に関わり、もうひとつ用意した仕掛けがメンバー関連業務のDX化だ。自分は会員権売買を主業務とする住地ゴルフの代表も務めているが、この仕事を通じ、メンバーの管理業務が紙でやり取りしている部分が多いことを知った。
お客様は紙に記入したり、書類をなくしたり、郵送したりと煩わしい部分が沢山あり、一方のゴルフ場側もお客様から届いた書類を入力したり、書類を集めたりと双方で多くの作業が発生している。自分がセブンハンドレッドに入った2016年当時に驚いたのは、
「こんなに紙を使うのか」
ということであり、あの衝撃は今でも忘れられない。SDGsの観点からも、貴重な資源である紙を極力使わない入会フローは、今後のゴルフ場業界において必須だと考える。
そこで、お客様の要望に応じて、情報共有や会員契約の書類についても全てオンラインで完結する入会フローを作成した。入会前の面接もオンライン会議で行えば、入会希望者がどこにいても面接できる。
現在、入会希望者の約3割が完全オンラインでの入会を希望され、特に東京都内など遠距離の在住者からは評判がよい。もちろん、クラブの雰囲気やコース状況は実際に来場して体感頂く必要があるが、入会希望者の大半はすでに細かい様子をご存知のはずなので、顧客視点に立つ上でもオンラインの会員入会フローは求められるのではないかと思う。
これまで法人無記名会員で運営してきたセブンハンドレッドクラブにおいて、「個人記名会員」を募集することは大きな転換点になってくる。ゴルファーにもっと愛されるべく、競技会や倶楽部ライフの充実を図りながら、ノンゴルファーの皆さんにも開かれたゴルフ場創りを爆速で進めていきたい。新年も、よろしくお願いいたします!
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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