6月29日から7月2日まで、ザ・ノースカントリーゴルフクラブ(北海道)で、国内男子ツアー「セガサミーカップ2023」が開催された。コロナ禍の影響で2020年は中止、2021年は無観客、2022年は制限付きとなっていたが、4年ぶりのフル開催。雨が降り悪天候だった昨年に比べ、北海道らしい爽やかな天気に恵まれて、予選ラウンドからギャラリーは倍増。4日間の観客数は8408名で、昨年比239%となった。
主催者は総合エンタテインメントセガサミーホールディングスで、ゲームをはじめとしたエンタテインメントコンテンツのほか、スポーツ、リゾートなど幅広い領域で事業を展開。「感動体験を創造し続ける~社会をもっと元気に、カラフルに~」をミッションに掲げる。至る所に大会の盛り上がりを狙った目新しい試みが満載で、子どもから大人まで多くのギャラリーが盛り上がり、マスクを外して笑顔を見せる姿が見られた。
「ゆるセガサミーカップ」では、ゴルフ観戦において日本初のデジタルツインを活用し、人気ゴルフ女子のなみき、あおい夏海、Rumi、望月優香がそれぞれ違う場所から試合の模様を配信。視聴者はPC、スマホからバーチャルゴルフ場にアクセスして、ライブ視聴が可能に。
現地の臨場感溢れる映像を見ながら配信者とチャットができたり、GDOがアパレルメーカー4社「Clubhaus(クラブハウス)」「Golfickers(ゴルフィッカーズ)」「FLOG.G.C.(フロッグ ゴルフ クラブ)」「NAKED GOLF(ネイキッド ゴルフ)」とタイアップして、大会限定オリジナルアイテムやウェアを販売するなど、多様化するニーズに応えるコンテンツを提供。セガサミーホールディングスの大塚博信執行役員は、
「今までの一方通行で受動的な配信から、能動的に楽しめるコンテンツへの足掛かりとして成果がありました。通信環境の整備や、企画内容を精査する必要はありますが、大きな可能性を感じています」
と今後に手応えをつかんだ様子。
ギャラリープラザでは「千歳うまいっしょ祭り」と題し、千歳市をあげての一大フェスティバルを開催。「食(たべる)・遊(あそぶ)・踊(おどる)・音(みゅーじっく)」をテーマに企画を立てた。日本発のプロダンスリーグ、Dリーグに参戦中の人気ダンスチーム「セガサミールクス」のパフォーマンスや、地元の子ども達のダンスに多くの歓声が飛び交った。セガサミーホールディングスの福田将人セガサミーカップ事務局長に話を聞いた。
「企画と運営の責任者として本格的に携わったのは今回から。昨年より1か月弱早い開催だったこともあり、とにかく時間が無くて、直前の3か月はほとんど記憶が無いくらい大変でした。世界で一番騒がしいホールで知られるPGAツアー『フェニックス・オープン』の16番ホールをイメージして、ゴルフ好きの上級者も、初めて観戦する人も楽しめるスタジアム型エンタテインメントホール『The Monster16』を企画しました。
ギャラリーも声を出して応援することに慣れていないし、今回はチャレンジかつテストの位置づけとして、継続して盛り上げていきたいです。野球のスタジアムみたいに、生ビールの売り子がいてもいいですしね。大変だったことは選手目線で競技を運営するJGTO側と、とにかく観客を喜ばせたいと考える我々との意見を調整すること。観戦スタイルをブランド化し、ロゴを映えさせる目的で白い幕を採用しましたが、当初は『選手が眩しいから』と、ご意見も頂きました。また、音や声については、選手から『もっと大きな音楽や声援でもいい』という声もありました」
今年は男女ツアーで7大会が北海道で行われる中、本大会が最初の試合だった。とかく女子ツアーと比べられがちな男子ツアーだが、エンタメ企業のプライドをかけ、斬新な企画で男子ツアー人気再燃のきっかけづくりの爪痕を残した。
大会を盛り上げた関係者やギャラリーに話を聞いた。
タケ小山さん(ゴルフ解説者)
最初にホールMCを務めたのは2014年のヤマハレディースオープン葛城でした。18番のギャラリースタンドにDJブースを設け、ギャラリーに向けて実況解説。ヤマハの指向性スピーカーで、選手には聞こえない配慮をしましたが、風向きなどで音が漏れてしまった。その後パナソニックオープンでは「ザ・ギャラリーホール」が定着し、観客と選手が一体になる瞬間を楽しむギャラリーも増えています。スポーツで大切なのはファンが熱狂する感動と興奮を与えること。日本人は行儀がよく、静かな応援をしがちなので、どんどん声を出して盛り上げたほうがいい。威厳や歴史があるメジャー大会と騒いで楽しめるカジュアルな大会など、トーナメントによってカラーがあっていいですよね。どうせやるなら徹底的にやって、続けていかなければ。
藤澤響花さん(モデル)
セガサミーカップSNS応援サポーターとして現地レポートをしました。女子トーナメントではお仕事をしたことがありますが、男子は初めて。新しい取り組みが多く、選手がとてもフレンドリーでギャラリーとの距離が近く、毎日とても楽しかった。男子プロは近寄りがたいと思ってましたが、ファンサービスが満載で、SNSレポートでも協力的。音楽をかけて大声で応援できる16番ホールは、まるで海外のようでした。ギャラリープラザはフェスさながらで、子どもから大人まで盛り上がった。3日目終了後におこなったドラコン大会では始球式を務めましたが、緊張で手が震えてショットはゴロ。もう一度チャレンジしたい。
内柴有美子さん(エルグワンディレクター)
ツアー観戦は2度目ですが、国内男子ツアーは初めて。16番ホールは選手と観客の一体感があって、静かに見ているより楽しかったです。18番ホールのスタンドでは、インスタでしか見たことがなかったバックスピンのかかったベタピン連発。あんなに緊張する場面でスーパーショットを成功させるプロの技に感動しました。ギャラリープラザもステージが盛り上がって、コースでも音楽が聞こえていたので、16番だけじゃなく、他でも応援ホールをつくって、映像やプロジェクションマッピングなどの演出を入れてもいいかもしれません。飲み物や食べ物の出店がギャラプラに集中せず、分散しているほうが有難いです。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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