60年変わらぬゴルフ場のカレー EC販売で人気商品になった!

60年変わらぬゴルフ場のカレー EC販売で人気商品になった!
有馬カンツリー倶楽部の経営は、ゴルフ場運営会社の新有馬開発株式会社とレストラン運営会社の株式会社ニューアリマの2社で構成されている。ともに同じ代表者の兄弟会社である。 2022年4月、会社設立以来60年を超えて初めて、2社それぞれのパーパス(企業の存在意義)を定めた。新有馬開発は「すべての人にゴルフを拓き、これからのゴルフ文化を創造する」とし、ニューアリマは「すべての人に食を拓き、これからの食文化を創造する」とした。 これまでに紹介してきた〝Gちゃれ〟や〝ファーストティ〟などの取り組みが、ゴルフ場運営企業の存在意義を示すものとなったが、レストランについても「すべての人に食を拓き」に基づき、同様の取り組みを始めている。 ゴルフ場に来場されるゴルファーにしか提供してこなかった〝ゴルフ場の食〟を、ゴルフをしたことがない人も含めて広く提供するという取り組みである。 その第1弾がオリジナルレトルトビーフカレーのEC販売だ。国民食といえるカレーは、ゴルフ場レストランにとっても定番食である。限られた時間内で速やかに提供でき、気軽に食べられるメニューとして、日本のほとんどのゴルフ場で存在していると思われる。 有馬カンツリー倶楽部レストランでもオープン以来の定番メニューとなってきた。フルーツチャツネを使った甘味と少しの辛味、じっくり煮込んだ濃厚なコクのある昔ながらの欧風カレーである。 ビーフカレーはオープン以来60年に渡り同じレシピで作られており、 現在の料理長で6代目。初代料理長が作ったレシピを、代々受け継いできた。 初代料理長は明治から続く神戸の老舗ホテルレストランで腕を磨いた人で、ゴルフ場のレストラン設立時にヘッドハンティングしたそうである。当時のホテルで提供していたカレーレシピに料理長のアレンジを加えたものが、有馬カンツリー倶楽部カレーのレシピとなった。

自社ECで1000食販売

60年間、倶楽部メンバーを中心に多くのゴルファーに「美味しい!」と親しまれてきたカレーだが、このままでは、ゴルフと無関係な人には知ってもらうことも食べてもらうこともできない。ゴルフ場ではこんなに美味しい食事を提供しているんだということを知ってほしい。美味しい食事がゴルフを始めるきっかけになれば、どんなに素晴らしいことかと思い、EC販売をはじめようと考えた。 本当は料理長が作ったカレーを提供したいが、さまざまな超えるべきハードルがある。そこでまずは味を再現したレトルトから始めようと考えた。OEMの会社に何度もサンプルを作ってもらい、1年を掛けてようやく完成。 まずはマクアケというクラウドファンディングの先行販売サイトで1か月間販売した。 目標金額25万円に対し100万円を超える支援を頂いた。これをきっかけにインターネットのヤフーニュースで「神戸のゴルフ場で出されたカレーがうますぎて驚愕」という記事が掲載されると、自社のショップサイトにおいて1か月間で1000食を売り上げた。北海道在住の女性によるリピート購入コメントでは「これまでにこんなに美味しいレトルトカレーを食べたことがない」という評価を頂いた。 このことから〝ゴルフ場の食〟にはまだまだ大きな力が秘められていると確信した。 現在、事業再構築補助金を活用し、料理長が調理した冷凍食品を中心とするEC販売の準備を進めている。また、レトルト第2弾としてカレー同様に60年間変わらない味のビーフハヤシが完成、2023年7月に先行販売を開始する。

ビーフカレーの60年変わらない製造工程

●カレールーを作る 1)玉ねぎなどの野菜をカットし、ソテーパンに牛脂を溶かして野菜ソテーをつくる。 2)強力粉とカレー粉を野菜ソテーと合わせる。 3)低温オーブンでカレールーの水分を抜く。40分おきにスパテルでルーをかき混ぜる。 4)4時間後、カレールーをフードカッターで粉砕し、サイドオーブンで2時間焼いて完成。 ●ビーフカレーソースを作る 1)カレー肉をカットし、フライパンで肉をソテーしたのち、チキンブイヨンで20分煮込む。 2)作ったカレールーをチキンブイヨンでミキシングし、カレー煮込み用の鍋に入れる。 3)フルーツチャツネ、ウスターソースなどの調味料を合わせ、火にかける。 4)カレーソース濃度を確認して、肉を入れて再度煮込む。 5)カレーソースの状態を確認して、玉ねぎ、ニンニク、土生姜を加えて仕上げる。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら