「楕円の転がり」が運んできた プロ大会の開催

「楕円の転がり」が運んできた プロ大会の開催
僕が経営するセブンハンドレッドクラブ(栃木県)のビジョンは「みんなが幸せを実感できるゴルフ場」だ。このビジョンを実現すべく「みんな」を拡げ、「ゴルフをしない人にも親しんでもらえる」ゴルフ場創りに邁進してきた。ゴルフ場が地域の公共財のような、馴染みのある存在になるべく、地元・さくら市役所とフットゴルフの市民大会や、街コンの場にゴルフ場を提供するなど多くの連携を行ってきた。 あまりにも「ゴルフ以外」の取り組みに注力した結果、「ゴルフに力を入れていない」と思われがちだが、国内2000余コース分の1でしかない単独経営の当社が普通の経営をしていたら、その他大勢に埋没する。だからこそ、「ゴルフ場のゴルフ以外の活用可能性」を武器として、ゴルフ場を市民に開放し、社会的な価値を高めることで存在価値を追求してきた。本音を言えば、悩みながら走っている。ゴルフ以外のことに本気で取り組む一方で、ゴルフにも真剣に取り組むというスタンスを、わかりやすく世間に伝えることは難しい。26歳だった僕が、父から事業承継して5年目。自分の真価が問われてきた。

ご縁が繋がることのチカラ

そんな折、知人の紹介で、「プロを招いての新しいゴルフ大会の会場として、セブンハンドレッドの名前があがっている」 との話を聞いた。「え!?」と喜びが溢れた。主旨はこうだ。人材・雇用に関わる業務全般を主業務とする(株)エイジェックの古後昌彦社長は、栃木ゴールデンブレーブスを運営するなど栃木とゆかりが深い。その同社と「女性が輝く社会の構築を応援していくための女子プロゴルフミドルトーナメント」をコンセプトとするLADYGOの共催で、栃木でゴルフ大会を開きたい。その関係者から、 「栃木で開催するなら会場はセブンハンドレッドが良いのではないか」と候補に上がった。僕たちにすれば、こんなに嬉しいことはない!僕は高校時代、ラグビーで「花園」に出場したことがある。そのラグビーには「楕円のご縁」という言葉がある。楕円球が想像できない弾み方をする面白さのように、想定外のご縁が生まれ、何かコトが動き出す。今回はまさにそんな感じ。ゴルフ以外の活動に取り組んできて、その楕円の転がりが本業のゴルフに跳ね返ってきた。「露出しておいてよかった」と心から思えた瞬間だ。

トーナメントを開催する大変さ

「エイジェックLADYGOカップinとちぎ」(2023年8月19日開催)の会場は当クラブとなった。栃木では女子プロゴルフの大会が少ないコトも相まって、地域の皆さんから応援の声を沢山頂いた。とは言え、当社での大掛かりなゴルフ大会の開催経験はゼロ。前職でゴルフ大会運営を経験した社員が先頭に立ってくれ心強かったが、検討課題は山積みだった。 コース管理から、プロアマ含めた当日のおもてなし、市役所との連携や、町の商工会への協賛依頼、BS放送のための放送環境の整備等々。 プロのメジャー大会と比べれば規模は小さいが、本稿で書ききれない程の準備やドラマがあった。笑い、泣き、対立、共感・・・・。僕たちが当たり前に見ているゴルフトーナメントの舞台裏には、多くの人の努力や支援がある。そのことを知り、改めて感謝の念が湧きあがった。 ゴルフトーナメントを開くことで、ゴルフ場としても、働く社員・組織としても、グッと成長するんだと実感できた。組織にも「成長痛」があると言われるが、その痛みと、超えた時の成長を実感できた。

想定外の未来を創り続けるために

2019年に事業承継した際「いつかプロがプレーをする大会を招致したい」と、会長である父と話していたことを思い出す。当時は繋がりもなく、無名のゴルフ場だった中では想像出来ないことだった。大会会場に選んでくれた共催の2社に心から感謝申し上げるとともに、改めてご縁の大切さを実感した。今後も縁を頂く、挑戦を続け、その挑戦から弊社に興味を持ってもらえるように心がけたい。 当日のギャラリーは606人。大会を通じて、地域の方々に「セブンハンドレッドはゴルフでも仕掛けた」と思ってもらえたことは、今後のゴルフ場経営において有用だったと感じる。ゴルフ場が地域にあって良かったと思ってもらえるよう、ゴルフ以外のことを本気で、但しゴルフは真剣に取り組んでいきたい。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら