NGKがゴルフ場の被災状況まとめる
3月下旬時点の状況は、「宮城、福島、茨城、栃木県北部の物的被害が深刻なことに加え、原発事故や燃料不足、計画停電による客数減が懸念されます。資金繰りの悪化により、経営難に陥るところが出るかもしれない。実際、従業員の解雇に踏み切ったコースも現れています。連絡が不通だったコースを除き、人的被害はありませんでした。それが不幸中の幸いです」(NGK)。
長期化が懸念される福島第一原発の放射線漏れによる被害は、福島県内の調査対象3コースが「営業再開の目処立たず」と報告しており、同様の問題を14コース程度が抱えると推測される。放射線被害の現状確認をすることで「安全宣言」を発し、営業再開につなげることが重要だが、「公的機関による汚染調査は、ゴルフ場にまで手がまわらない状況です」――。
岩手県以北のゴルフ場は震災の影響が比較的軽微だったが、先述の4県を中心に深刻な状況に置かれている。コース内の土砂崩れや陥没・亀裂、クラブハウスの一部損壊を含め、営業再開の目処が立たないのは宮城県7、福島県12コースで、茨城県内の22コースが3~8月の休止(未定3コース)を余儀なくされそう。栃木県内では1コースが「壊滅状態」と回答している。
また、計画停電への対応については、レストランや浴場を閉鎖して、スループレーを導入するコースも多く、カートの充電は夜間に行うなど、柔軟な姿勢で臨んでいる。
最大の問題は、資金繰りの悪化により経営難に陥るコースが現われること。国内約2400のゴルフ場は、過剰な価格競争などで、平時においてもキャッシュフローベースで赤字のところが多かった。近年では中国、韓国系の投資家が安値で買収するケースも目立っているが、今回の「震災不況」により、ゴルフ場業界の様相が一変する可能性も囁かれはじめた。
さるゴルフ場関係者がこう語る。「本社が関西、中部でも、東北地方に工場をもつ企業は多い。被災の影響で業務に支障を来たせば、本社周辺のゴルフ場でも需要が減ってしまうのです。このあたりの状況を、注意深くみていく必要があります」。仮にゴルフ場の閉鎖が相次げば、プレーの場を喪失し、ゴルフ人口の縮小につながりかねない。また、外国人観光客の増加に注力する観光庁は、ゴルフ場の有効活用で海外ゴルファー誘客のインバウンド効果を検討していたが、それらの青写真も大幅に狂ってしまう。
危機感を募らせるNGKは、政府の緊急融資や雇用助成金制度の活用を加盟コースに訴えるなど、ゴルフ場業界の下支えに懸命だ。ゴルフ場とプレー人口が減少すれば、ゴルフ用品業界にも深刻な影響を与えるだけに、業界の一致団結で気運を盛り上げる必要がある。