有馬カンツリー倶楽部では2025年1月からアプローチ練習場の拡大工事を自社で少しずつ進めている。コース管理のスタッフだけではなく、前キャディーマスター兼ゴルフプロコーチもわざわざ大型重機の免許を取り、ユンボに乗って土を動かしている。ひとえに「ゴルフが上手くなる練習場をつくりたい」との一心からだ。
日本最初のゴルフ練習場は、1929年にオープンした霞ケ関カンツリー倶楽部(埼玉県)の併設練習場だと言われている。その後、多くのゴルフ場に併設する形で練習場が作られてきた。
有馬CCの練習施設は、手前味噌だが、関西屈指との評判がある。人工芝15打席、天然芝2打席、約1万m2の広大な平坦地には260ヤードのドライビングレンジとベント芝の練習用パッティンググリーンが6面、アプローチ練習エリア、練習用バンカーなどが揃っており、会員の入会動機にもつながる当クラブ最大の特徴である。

そのため「一般開放して営業しないのか?」と聞かれることもあるのだが、当日プレーするゴルファーや会員のためのサービス施設のため、広く開放することはできない。しかし単なる「サービス施設」のままにするつもりはなく、一般開放をせずに、何とか練習施設の事業化をできないものかと思案している。
近年、この練習場を活用して子どもたちや学生、社会人など多くの「ゴルフ初心者」を受け入れてきた。その中には「打ちっぱなしの練習場には何回も行ったことはあるけど、ゴルフ場ははじめて!」という人も多い。そして、こうした活動を続ける中で、ゴルフ場でおこなう練習の重要性がはっきりと感じられるようになってきた。
それは、人工芝での練習と、天然芝のゴルフ場でのプレーには「大きなギャップ」があることだ。

練習場に通う目的は、大きく3つあると言われている。
1)スイングの形をつくる
2)スイングのリズムをつかむ
3)アプローチを身につける
だが、これらを練習場で身につけても、ゴルフ場での本番ではなぜか上手くいかないケースが多い。
インドアゴルフ大手のステップゴルフは2023年11月、会員に向けて調査を行ったが、その結果インドアゴルフのデメリットが明らかになったという。ゴルフ場では天然芝の長さや傾斜、風などの諸条件が異なるため、インドア環境と実際のプレー環境は違う。そう感じる会員が約56%にのぼっている。

また、株式会社ライズ・スクウェアが2022年12月に発表したシミュレーションゴルフ経験者アンケートでは、シミュレーションゴルフのデメリットとして一番多かったのが「コース感覚とは違う」だった。
2010年代以降、IT技術が進化し、弾道測定器やスイング解析システムなど、最新技術を導入したゴルフシミュレーターが登場。コロナ禍以降、インドアゴルフが爆発的に増え、近くでいつでも気軽に練習できる環境が整いつつある。
しかし問題は「次の一歩」だ。筆者は、ゴルフ場でプレーする楽しさを感じられる環境づくりが、最も重要だと考えている。
JGRA(公益社団法人全日本ゴルフ練習場連盟)も同じ問題意識をもっており、ゴルフ練習場には人が集まるものの、ラウンドプレーへの移行が進まず、短期的にゴルフを離脱する人が増加中。この問題を深刻視しているようだ。

ゴルフ場に行ったことがない、ゴルフ場に行っても練習場のように上手くいかず、楽しくない、という環境を変える必要がある。そのためには練習段階で天然芝に慣れ、自然環境の中で練習するカリキュラム、つまりゴルフ場の練習施設を「練習の場」として活用することが有効ではないだろうか。実現するには、我々ゴルフ場が練習場やゴルフスクールと連携する必要がある。
有馬CCでは、併設練習場を一般開放するのではなく、契約企業とBtoB活用することで、練習施設の事業化を目指していきたい。
練習場やゴルフスクールにとっても、カリキュラムに提携ゴルフ場での練習を取り入れ、練習ギャップを埋められれば、独自色の発揮や集客に役立ち、会員の短期離脱を防げるはず。さらにこうした事例が積みあがることで業界の横断連携が進めば、ゴルフ人口の減少を食い止められるのではないだろうか。
すべてがwin-winになることを夢見て、一歩一歩前進したい。
[surfing_other_article id=88226][/surfing_other_article]
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら