女子大生が「ゴルフ場でやりたいこと」を実現 後日届いた感想文に筆者は頭を抱える 有馬カンツリー倶楽部社長 谷光高

女子大生が「ゴルフ場でやりたいこと」を実現 後日届いた感想文に筆者は頭を抱える 有馬カンツリー倶楽部社長 谷光高
今年6月13日、武庫川女子大学経営学部の西道実教授のゼミ授業が有馬カンツリー倶楽部で行われた。西道先生は心の働きを人間関係から研究する社会心理学が専門だ。同ゼミでは「ゴルフ産業」をひとつの研究テーマとされており、ゴルフ練習場・多田ハイグリーンの野原和憲社長が積極的に協力されている。 そんな中で「女子学生たちにゴルフ場を体験させたい」という依頼が私のところにきた。快諾即答し、どういうことを目的にゴルフ場を体験してもらうかについて野原社長を通じて打ち合わせをおこなった。その席で私は、 「学生みなさんがゴルフ場で体験したいことを自分たちで主体的に考えて、それを実行する授業はどうか」 と提案した。当コースはこれまでゴルフ初心者の大学生にコース体験をしてもらう「Gちゃれ」など、楽しいラウンド体験を目的に、ゴルフについてわずかながらの知識や技量の習得を進めてきた。毎年実施することで、余計なものをそぎ落とし、効率よく上達するカリキュラムが洗練されてきた実感はある。 しかし一方では内容が固定化し、新鮮さがなくなっている気もする。別視点で考えると、初心者の学生に「ゴルフはこうやるもんだ」と強要してきたといえるのではないか、と思うようになった。 そこで今回は、ゴルフ場側からカリキュラム等に一切の要望を出すことなく、学生さんたちにゴルフ場でやりたいことを自由に考えてもらうことにした。 自分たちが想像していたゴルフ場と、実際に来て見たゴルフ場とは違いがあるのか。主体性を持つことで見る角度が変わってくるかもしれない。そこで感じたものが、素直なゴルフに対する感情であり、私にとってはそれを知る機会にしたいと考えたわけだ。その結果、事前のゼミ授業ではいろいろな案が出た。 ・バレーボールがしたい ・バドミントンがしたい ・BBQがしたい ・星空観賞がしたい ・芝生の上で寝ころびたい ・クラブハウスを見学したい ・クラブハウスのレストランでランチしたい ・ゴルフカートでドライブしたい ・ドライバーでかっ飛ばしたい ・コースでゴルフを体験したい ・コーチにゴルフを指導してもらいたい 予想以上に様々な意見が拾えたことは収穫だった。さすがに、お昼からの半日授業なので、星空観賞とBBQは除外したが、それ以外はすべてOKとした。 いよいよ当日、16人の女子学生がやってきた。 まずはクラブハウス見学から。ポーターにキャディバッグを預けるところからスタートし、チェックインからチェックアウトまでの流れとともに施設と役割を説明した。コース管理事務所では管理費についても説明し、あまりにも巨額の経費がかかることに多くの学生が驚いていた。 次はレストランでランチタイム。アルコールの注文や食後のデザートもしっかり堪能。もっとゆっくりさせてあげたかったが、大幅に時間オーバーとなり先を急ぐ。 ここからようやくゴルフ練習。スナッグゴルフで模擬ゴルフを体験したあと、ドライビングレンジとカート運転講習の2か所を2チームに分かれて各30分、交代でレッスンを実施した。 その後、コースでラウンド体験というところだが、自由時間が削られたのでスタート前のティーグラウンド上で〝バレーボール〟がはじまった。10番ティー横の18番ホールでラウンド中のお客様が、ジーっとこちらを凝視していたのでヒヤヒヤしたが、学生のみんなは全く意に介さず楽しんだ。 そしていよいよ自分たちでカートを動かしながらのラウンド体験。ティーショットをかっ飛ばす人もかっ飛ばせなかった人もいたが、みんなそれなりに楽しんでくれたようだった。さて、ここからが重要である。 後日、西道先生から学生の感想が送られてきた。自分たちで考えた企画が実現したこともあり、とても詳細かつ素直な感想をたくさん頂戴した。しかし、私にとっては大きなダメージを受ける内容も多く含まれており、そのひとつが次の感想だったのである。 「ゴルフ場はあえて高貴な部分を残しており、上手くならないと行けない場所」 私が、ゴルフ場の運営を含めた舞台裏をオープンに見せたことで、ゴルフへの高い障壁をより強く感じさせる結果となったようだ。にもかかわらず我々は、 「気軽にゴルフ場に来てね」 と伝えている。彼女たちにすれば「気軽さ」とは程遠い現実を直視する一日となったようで、改めてゴルフ場と世間を隔てる壁を確認した。 今回のようなイベントや「Gちゃれ」の体育授業では、気軽にゴルフ場でゴルフを楽しむことができる。しかし、自発的に初心者が気軽にゴルフを楽しめるような環境は、今の有馬カンツリー倶楽部にはない。 経営は、事業継続が第一の目的であるため、会員をはじめとする一般ゴルファーを最も大切にしなければならない。なおかつ初心者も受け入れていきたいという考えそのものが無謀なのかもしれない。 しかし、より多くの若年層や初心者にゴルフを拡げていくには越えなければならない壁でもある。長年答えが出ない難問に正面衝突した気分だ。どうすれば初心者が気軽にゴルフ場に足を運べるようになるのかをもっと真剣に考えなければ。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら