ルート変更に踏み切った本当の理由は「混雑」の解消 有馬カンツリー倶楽部社長 谷光高

ルート変更に踏み切った本当の理由は「混雑」の解消 有馬カンツリー倶楽部社長 谷光高
2025年9月、有馬カンツリー倶楽部はアウトコースの「ルート変更」を行った。新たな2番ホールがこれまでの7番ホールとなり、3番ホールはこれまでの5番ホールにという具合である。アウト9ホール中6ホールをシャッフルした。 コースのルーティングプランについてコース設計の書籍や資料では、「与えられた用地の中で18ホールを最初に形作るコースの命」などとある。倶楽部の理事会でルート変更の話をした際にも、設計者保田与天の意向に反しないかと危惧されたが、すでに42年前に隣接する北摂三田ニュータウン建設に伴うアウトコースの大改造を行っていたので、あまり気にするところではなかった。 それでも、それぐらい重要と考えられているルートをなぜ変更したのか。当社のサイトやSNSではそれらしい理由を後付けで考えて記載したが、この誌面では本当のことを書きたくなった。連載タイトルの主旨とはほど遠い内容だが、少しお付き合いいただきたい。 ルート変更を考えるに至ったきっかけは「コースの混雑」である。42年前のアウトコース大改造以来、距離が短く右ドッグレッグの2番パー4ホール、右奥と左手前では使用クラブの番手が変わる斜めのグリーンが特徴の3番パー3ホール、打ち下ろしの距離が短い4番パー4ホール、この3ホールの流れが悪く、とにかくよく混む。 「詰め込みすぎ」などと言われるが、それだけが原因ではない。短距離ホールが続くことが混雑の原因となっていたのだ。 そのためマスター室では、2番のティーで混みあわないように1番パー4ホールのスタート時間を遅らせて調整するが、早くスタートしたいのがプレーヤー心理。いくら調整しても、前組がセカンドショットを打てば、すぐにスタートしていく。そして、2番のティーで詰まる。これを42年間繰り返してきた。 これまで、2番のティーや4番のグリーンを後方に下げられないかなどのホール改造が議題に上がっては立ち消えてきた。東京大学西成先生の渋滞学を、著書や動画から勉強もした。しかし一向に答えが見いだせずに「しゃあないな」とあきらめていた。が、そうは言っても、混みすぎのクレームは後を絶たない。そのたびに議題に上り続ける。 昨年の秋も倶楽部理事長の知人からクレームがあり、再び議題に上がった。その際は、会社役員会で上がった議題ということもあり、久しぶりにさまざまな意見がでた。そして過去にない視点から発せられたのが「1番ホールからの並びが問題なのでは?」である。 1番ホールはレギュラー(ホワイト)ティー377ヤード、直線のいたって普通のパー4ホール。確かに1番がスムーズに進むために、間を開けずに2番ティーに次々とやってくる。その2番ホールは距離が短く、右ドッグレッグのために前の組が完全に見えなくなるまで待たなければならない。ほぼグリーン周りまで人が進んで、ようやくティーショットが打てる。2番のティーショット間隔よりも1番を終えて2番にやってくる方が早いのである。

抜け道を活用する

その意見がでたときに、コースレイアウト図を食い入るように見て思いついた。 [caption id="attachment_91984" align="aligncenter" width="788"] 旧ルート[/caption] 数年前に管理専用道路として、1番から2番ホールへ進むカート道路と、6番から7番ホールへ進むカート道路を繋ぐ抜け道をコース管理が作っていたことを思い出したのだ。 「この抜け道を活用すれば流れを変えられる!」 混雑する2番ホールの前に6番パー3ホールを持ってくることで、コールオン(前組にホールアウトを促す)をしなければ、毎組パー3の1ホール分の時間を空けながら2番ホールに進むことになる。そうすることで2番からの悪い流れを変えられるかもしれない。 他の変更の流れもコース管理道路を活用することで、「うまく調整できる!」と私はその場で大声を上げた。 [caption id="attachment_91985" align="aligncenter" width="788"] 混まなくなった新5番(旧2番)[/caption] 役員会なので慎重な意見もあったが、しっかり検証することと、万が一評判が悪くなった場合には元に戻せばいい、あくまで道路を繋ぐだけだからと、その場で説得した。今まで全く進展しなかったことが大きな一歩を踏み出せるかもしれない。とにかく早く変更してみたかった。 1年後の2025年9月は開場65周年に当たるので、そこに照準を合わせることを早々に決めた。工事前に社内コンペやゴルフ研修などで従業員に何度も新たなルートプランでプレーをしてもらい、感想や印象を確かめてきた。 コース管理の面々には無理を言って、シーズンに入ってからカートが行き交えるだけの道路拡張工事や看板作成をしてもらった。この記事の執筆は10月だから、ルート変更の営業を始めて1か月後。評判は当然、賛否両論ある。 しかし、新5番となった旧2番ホールからの混み具合に関しては、ほぼ解消されたと言っていい。全体の流れやハーフに掛かるプレー時間も以前より良くなったように感じる。 その一方で、茶店がある新4番となった旧6番パー3ホールで混み合うことが多くなった。新たな問題の出現である。 容易に解決できる問題なんて、なかなかないんだなぁと思いつつ、それでも1歩進むためには「まずはやってみる」ことが大切なんだと、改めて感じている。 [caption id="attachment_91986" align="aligncenter" width="788"] 有馬カントリークラブ新ルート[/caption]
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら