上を向いて歩こう。昨年より、本誌よりご指名を頂き、1年弱を寄稿させて頂きましたが、今月で最終稿となります。一般的には斜陽産業と評価されるゴルフ業界において、「挑戦」というテーマでゴルフ場業態の未来構想や私どもが営む小さな会社のプロジェクトをご紹介させて頂きました。福岡・ザ・クラシックゴルフ俱楽部でのナショナルオープン、そしてスコットランドチームとの18ホールズの大改修。未熟な内容でありながら、多くのレビューを頂いたことに感謝申し上げます。今回はこれまでの寄稿のまとめとして、結びを書き上げたいと思います。
地元縮小に備え、商圏を拡大する
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ザ・クラシックGC No.7 レダンホール[/caption]
私どもは九州・福岡をベースにゴルフ場事業を展開しています。天神ビックバンや博多コネクテッドという地元の大型開発が進む都市でありながら、県全体で見れば、人口は年々減少しています。ゴルフ場の売上高は、端的に述べれば【商圏内ゴルフ人口×獲得シェア×客単価】で表せますので、獲得シェアや客単価を年々高めなければ、売上の維持が見込めません。それでも厳しいので商圏を拡大する発想も不可欠です。
ゴルフ場の商圏とは、一般的に第一次商圏が半径50キロ。第二次商圏が半径100キロと考えられます。いわゆる地元のお客様をベースとして、このエリアの中でお客様を誘引し、事業をしています。この地元商圏のゴルファーが年々減っていくことは明らかなので、新しい商圏形成により売上を補填しなければなりません。言葉を換えれば、大商圏(観光商圏)からいかにお客様を誘引できるかということです。
福岡から考えれば、関西・関東は非常に大きな市場であり、併せてアジア諸国もターゲットとなります。これらの地域からは、3~4時間の移動を要するため、それ相応の来場動機の提案が必要です。その要諦は、心理的な付加価値づくりという一点に集約されます。
来場動機は、大きく「経済性(安くてお得だから通いたい)」と「心理性(たとえ高くても遠くてもプレイしてみたい)」の2つに分かれます。100円ショップのようなリーズナブルなお店に1時間かけて買い物に出かける人は見当たりませんが、高級寿司店やフレンチには県を跨いで移動される方は多いでしょう。このように、商圏とは、付加価値に比例するものなので、地元商圏の市場規模が縮小する以上、付加価値づくりに邁進し、商圏を拡大する努力が求められると考えています。
付加価値づくりの方向性として、弊社ではトーナメントを誘致することに重きを置き、同時にエリートゴルファーの技量を引き出す戦略性のあるコースレイアウトへと改修することに取り組んで参りました。ナショナルオープン、スコットランドチームとの18ホール全面改修等、これまでご紹介したプロジェクトは決してオーナーや会員の思い出づくりではなく、地方の小さな会社が生き残りをかけた生存の術と言えます。
ゴルフコースの原点を継承する
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ザ・クラシックGC No.15 ロードホール(リバース)[/caption]
ゴルフ場の価値を高める挑戦として、サービスの見直し、食へのこだわり、各種イベントを開催している中で、最も大事なことはゴルフコースに時間とお金をかけることと肝に銘じています。先般、ゴルフ場の世界ランキングTOP100が発表され、ここ数年の傾向として、例えばオーガスタ・ナショナルのようなガーデンスタイルのコースよりは、雑草が生え、広く見渡せるリンクススタイルのコースが上位に入っています。そして、上位に入るゴルフコースの共通点として、18ホールズの歩きやすさを主とするルーティングが重要であることは言わずもがな、クラシック理論というゴルフコースの原点的な戦略レイアウトを忠実に採用することが挙げられます。
クラシック理論には8つのテンプレートがあります。よく耳にするのは、「レダンホール」でしょう。スコットランド・ノースベリックの15番H Par3は世界的に有名なレダンホールのオリジナルです。ザ・クラシックGCの7番Hでは、レダンホールを再現し、一つのシグネチャーホールとして掲げています。
その他「ロード」「アルプス」「パンチボウル」「リーベン」等のテンプレートも実に魅力的です。「リーベンホール」とはFWに対して、池や川・バンカー等のハザードが斜めに配置され、勇気をもって攻めれば、セカンドからピンまでの距離が短くなりベストアングルからセカンドショットを打てます。その一方で安全なティーショットを選択すれば、グリーン手前のマウンドによりピンがブラインドとなり、視覚的にセカンドショットの難易度が高まります。ザ・クラシックGCの16番Hは、リーベンホールを形成するに恵まれた環境であったので、同テンプレートを採用しました。
若手設計者やシェイパーたちと四六時中、この理論をベースにゴルフ場改修談義をしたことは、ゴルフ屋としての貴重な経験です。クラシック理論に関する文献が国内に乏しいことは不都合ではありますが、今後も継続して、ゴルフコースの原点を研究して参りたいと思います。
危機感から生まれる挑戦的未来
人手不足、預託金問題、夏の猛暑、ゴルファーの高齢化……。ゴルフ場から人やお金が消えていく条件が年々高まっています。おそらく現状の延長線上で事業を展開すれば、その波に飲まれていくと危惧しています。株式市場に目を向けると将来的に伸びていくと評価された銘柄にお金や働き手が集まっています。企業の大小問わず、ゴルフ場という商売においても、掲げる未来に如何に共感・共鳴頂けるかが、従業員確保や会員権販売において重要になってくると考えています。
2026年、私どもが運営する佐賀クラシックGCは、開場30周年を迎えます。周年記念として、ロゴを改修し、お披露目を控えています。新しいロゴは佐賀県の県木であり、神社のご神木としても祀られるクスノキをモチーフとして採用しました。当ロゴを大きなシートに印刷し、その葉に従業員一人ひとりが成し遂げたい未来を書き留める30周年ビジョンマップを作成予定です。当マップが倶楽部をより良い方向に牽引することを祈念します。
厳しい時代だからこそ、力相応に挑戦的な未来を構想し、これからも皆様にご期待頂けるゴルフ場を志して参ります。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年9月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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