刺すだけで直る「棒状」のボールマーク修復具

刺すだけで直る「棒状」のボールマーク修復具
2025年10月に、有馬カンツリー倶楽部を運営する弊社が開発した「ディボットスティック」を発売して13年目を迎えた。「ディボットスティック」はティーペグ兼ボールマーク修復具という2ウェイ商品だ。  「グリーンフォーク」ではなく「ボールマーク修復具」と称しているのは、ディボットスティックの先端部が「フォーク(分岐・枝分かれ)」ではなく「スティック(棒状)」になっているから。関東でも同形の製品をインフルエンサーが販売しているが、これは弊社とライセンス契約を交わしたものである。 [caption id="attachment_93401" align="aligncenter" width="788"] ディボットスティック [/caption] ベントグリーンのボールマーク修復方法は、着弾してグリーンが凹んだ部分の外側から中心に向かい、斜めにグリーンフォークを刺し、柄を立てるようにして芝を中央へ寄せ戻し、最後にパターのソールで軽く叩いてならすのが正しいと言われている。 しかしゴルフ場へ入社してから15年間、コース管理に在籍していた私はこの修復方法を好まない。その理由は3つある。 寄せるときに芝の根やランナー(ほふく茎)をブチブチ切ってしまうことがひとつ。2つ目は、グリーン面が固いと力がいること。グリーンフォークの形状によっては刺さらないときもあり、非力な女性や子どもは直しにくいだろう。 そして3つ目は、周りからきれいな芝を寄せてあげても、それは患部を一時的に覆い隠すだけで、数日もすれば患部は顔を出し、結局長い期間ボールマーク跡が残ってしまう。 ボールの強い衝撃を受けた患部の芝生表面は必ず枯れる。周囲から無理やり寄せられたために患部は強く固結してしまい、水も空気も地中に通らない。そうして患部は長く残ることになる。 どうすれば芝生は回復するのか? 周囲から健全な芝生が伸びてくるのを待つしかない。 グリーンフォークは全国のゴルフ場のスタート室で、昔から無償配布されてきた。プラスチック製やステンレス製など素材は様々。形状も様々。フォークになっている部分の根元が太く分厚いものや、簡単に折れそうなほど細いのもある。 形状によって使い方が変わるかどうかも大半は明示されず、直し方はゴルファー自身に委ねられる。そうしたことも、私がグリーンフォークを好まない理由の一つである。 昔々、ゴルフの上級者から、 「コウライ芝のボールマークはグリーンフォークを刺して患部を押し上げて直してきたけど、ベント芝は周りから寄せて直すんだよ。ベント芝の根を切らないようにね」 と教えられた。 だが、 「持ち上げようが、寄せようが、根を切ってしまうことには変わりないのに……」 私は釈然としなかった。 ゴルフ場はバブル崩壊以降、経費削減を厳命してきたが、グリーンフォークの無償提供を止めるわけにはいかなかった。ゴルフコースの品質を保つには、ボールマークはゴルファーが直すという「マナー」が必須だったからだ。 当時、有馬CCでは年間約3万5000人の来場者があり、年1回、約1万本のステンレスグリーンフォークを仕入れていた。スタート室前に「ご自由にお取りいただき、グリーンの維持にご協力ください」と掲示して、在庫が減れば嬉しい反面、「取るな、減るな」と願う気持ちもあった。減ればその分、コストが増えるからである。 そんなことに無頓着なゴルファーのキャディバッグには、様々なゴルフ場のグリーンフォークが入っている。ほとんどが忘れ去られ、バッグの肥やしと化している。 そうした状況が続くと、グリーンフォーク市場は縮小し、メーカーは苦境に立たされるはず。完全に負のスパイラルに陥っていた。 【エアレーション効果】 そんなとき、私は一つのボールマーク修復具に出会った。 2013年1月、サンフランシスコのゴルフ場から持ち帰った、先端がスティックタイプでプラスチック素材のボールマーク修復具。裏には“PitchPro Golf.com”とある。 すぐに書かれているサイトを見た。その名は「the PitchPro divot tool(ピッチプロ・ディボットツール)」。 すでに日本でもスティックタイプのディボットツールはあったのだが、修復方法が明示されていなかったため、グリーンフォークよりも使い方が困難な代物だった。 しかしピッチプロは違った。Youtube動画で修復方法を教示していたのである。 メーカーが使い方を教示していることに驚いたが、さらにその直し方に驚愕した。動画で見せていたのは、ボールマークの患部に対して何度も斜めに刺しているだけなのである。 「こんなんで本当にボールマークが直るのか?」 と、日本に帰るや否やグリーンで試したら、本当に直ったのである。 科学的な理屈はわからないが、とにかく平らになる。また刺すだけで直るなら非力な人でも使いやすい。 さらに気づいたことがある。グリーンフォークで直すよりもはるかに芝生の回復が早いのである。 この理屈はすぐに分かった。何度も抜き差しすることで患部をほぐし、空気と水の通りを良くし、空いたところから新芽が出やすくなる。つまり「エアレーション」である。 このツールは、ボールマークを本当の意味で修復できる優れものだと実感した。13年前の出会いが「ディボットスティック」開発へのきっかけとなったわけだが、皆さんにもぜひ試して頂きたい。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2026年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら